織斑の末弟   作:影後

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力天使

「それでは、

各班ごとに振り分けられたISの装備試験を行う様に。

専用機持ちは専用パーツのテストだ。

全員、迅速に行え」

 

ロックオンは一人、離れた位置につく。

いや、一人ではない。ロックオンには頼れる相棒が

常に隣にいるのだ。

 

「……来やがったか」

 

現れた破天荒、ロックオン。

織斑十春からすれば、自分を出来損ないと言う象徴。

ニール・ディランディからしてもトリニティの様な、

典型的な快楽型のテロリスト。

調べれば調べる程に織斑千冬を黒に染め上げる女。

ロックオンが一番キライな人種。

 

「テロリストが……」

 

「へぇ……お前は私をテロリストと呼ぶんだ」

 

ソレスタルビーイングとしてのパイロットスーツを来ている

ロックオンに一瞬にして近寄ってくる女。

だが、そんな動きは見慣れている。

 

「あぁ、お前はどうしょうもないテロリストだ」

 

ロックオンはハンドガンを束の額に当て、

引き金に指を置いている。

安全装置も既に外され、束としても零距離射撃で弾丸を

回避できるほど人間をやめては居ない。

両手を挙げ、降参の意思を示す。

 

「へぇ……いったいどうやったのかな?

出来損ないのお前には出来ないことでしょ?」

 

「よせ、ストラトス。束もだ」

 

「……一つ言う。俺はロックオン・ストラトスだ」

 

「へぇ………面白いね、じゃあスト君だ」

 

「ストラトス!銃を離せ!」

 

「ちっ……」

 

銃をしまい、静かに距離を取る。

 

「ねぇ…ロックオン?」

 

「あの女のやることを一々考えるなよ。奴はテロリストだ。

あぁ……判ってるさ、あの女も奴と、

サーシェスの野郎と同じ『世界の歪み』だ」

 

「ねぇ、大丈夫?」

 

「悪いな、一人にしてくれ」

 

そう言いながらロックオンは離れる。

 

「あっ…ストラトス君!」

 

尊敬する師匠に連れられ、

専用機持ちが集まっている部屋に通された。

 

「……来たか。担当直入に言う、この中で国家代表の地位にいるのはお前だけだ。また、状況認識能力が高い事から、

指揮官としても優秀だと私は考える」

 

「何が言いたいんだ」

 

「2時間前、ハワイ諸島沖で稼働試験をしていた

アメリア・イスラエルの合同開発の第三世代型IS

『銀の福音』が暴走。監視空域より離脱した。

お前には専用機持ちを指揮し、銀の福音の迎撃をしてもらう」

 

「……なぁ、ソイツは素人二人を作戦に組み込めと?」

 

「指揮官はお前だ」

 

「……なら、福音の性能を教えろ。ミッションはそれからだ」

 

その場にいる軍属よりも手慣れた返しを行う。

幼馴染達と家族は驚く、冷淡な目。

それは……見たことがないものだ。

 

「衛星による追跡の結果、マッハ2で此処から2キロ先の空域を

通過すると予測されている」

 

「あっれれ!偶然!此処だと赤椿なら余裕で間に合うんだね!」

 

赤椿と言う名称のISをロックオンは知らない。

だが、予想はできている。

 

「……悪いが、降りる」

 

「何?」

 

「俺は赤椿の性能も知らなければ、

どの機体が最も相性が良いかわからねぇ」

 

「そうだね~!なら束さんの作戦で行こうよ!ちーちゃん!」

 

束の作戦はマッハ2で移動中の福音へ赤椿を当て、

更に一撃必殺を叩き込む。

そこに第四世代と言う単語が出てきたから余計に面倒だ。

 

「でもねぇー束さんでもなんでか、

アイルランドがわからないんだよね」

 

「………」

 

「ねぇ…スト君さ?何隠してるのかな」

 

「はっ…俺はただのパイロットだ。機密は知らねぇよ」

 

ロックオンは静かに下がる。

場が重くなるが、束はじっと不穏な笑顔でロックオンを見つめる。

 

「しっかし、海で暴走というと……10年前、白騎士事件を」

 

その時だ、一発の銃声が響いた。

 

「止めろ……ロックオン」

 

「………ぬけぬけと……テロリストが!」

 

ラウラがいち早く気づいた為、

ロックオンのハンドガンから放たれた弾丸は

PICにより停止する。

 

「…へぇ、スト君は知ってるんだ」

 

束に向けられる視線は憎悪。

ロックオンにとって、テロリストと言うのは世界の敵と言う

だけではない。テロリスト全般が家族の仇なのだ。

そして、ラウラに拘束されたロックオンは作戦会議が終了するまでハンドカフを付けられた。

 

「ロックオン。お前、何を考えているんだ!」

 

「邪魔すんなよ、彼奴は……世界の敵だぞ!」

 

「何を、自作自演のテロリスト!俺は」

 

「頭を冷やせ、今は作戦中だ」

 

チームを組んだからこその言葉、ラウラはハンドカフを外し

静かに飛んでいった二人を見る。

 

「成功すると思うか?」

 

「くそ………貧乏籤、引いてやるよ」

 

「あれ、ストラトス君。何を」

 

ロックオンは会議室に入り千冬の前に立つ。

 

「何をしている、ロックオン」

 

「ISの武装展開、及び実弾試験の許可を」

 

「へぇ……面白いね。ちーちゃん!やらせてみようよ」

 

「……許可する。前線には私から通信する」

 

ロックオンはそのまま砂地に立ち、デュナメスを展開した。

ソレを観るのはラウラ、シャルロット、鈴音の3人だ。

 

「全身装甲…第一世代機?」

 

「いえ、聞いたことがあります。

アイルランドのISは軍用品と言う側面が非常に強く、

全身装甲を発展させていると」

 

「ハロ、TRANS-AMだ」

 

「リョウカイ!リョウカイ!」

 

「……赤く…染まっただと?」

 

デュナメスの装甲が赤く染まり、赤色の粒子が放出される。

 

「……ビームなら関係ねえ」

 

GNスナイパーライフルを構え、ロックオンは何かを射撃する。

かなりの距離だが、爆炎が上がる。

 

「…」

 

一発、また一発と粒子ビームは命中する。

だが、急にロックオンは射撃を止めた。

 

「ハロ、TRANS-AM解除だ」

 

「モンダイハッセイ!モンダイハッセイ!」

 

「ロックオン、何があった」

 

「前線がしくじった、スナイパーの役目は終わりだ」

 

「まて!嫁は…嫁は」

 

「射撃支援だ、支援する相手が居ないんじゃ意味が無い。

あぁ、突っ込んで落とされちゃ意味がねぇよ。

上は……何を考えてたんだ」

 

「待ってください!つまり……一夏さんは」

 

ロックオンは何も言わない。

だが間もなく、ボロボロの一夏と泣きじゃくる

赤椿が帰ってきた。

 

「……ロックオン、何故密漁船を破壊した乗員は」

 

「馬鹿な正義感を持つ奴が居るからだ。

アンタは、間違えた。戦争にお遊びしてる奴を向かわせた。

結果はミッション失敗だ」

 

「だが、お前は指揮権を」

 

「当たり前だ、民間人のおもりは御免だ。だから、動いてやる」

 

「………なんだと?」

 

「専用機持ちを動かす指揮権を返せ。

日本政府にとっても福音は邪魔なだけだ。

俺は戦闘データも本国に持ち帰れる。Win-Winって奴だ」

 

慣れない言葉遣い、正直自分のキャラではないと思えてくる。

だが、経験から知っている。あの手の子供は無茶をすると。

まるで、プトレマイオスの仲間達のようだと。

 

「良いだろう、専用機持ちの指揮権をお前に譲渡する」

 

「了解だ」

 

軽く笑い、砂浜に出ると静かにデュナメスに向き合う。

 

「セブンガン…つう割にあんまり持たせてられねぇな」

 

「コードネーム!コードネーム!」

 

「ハロ、エクシアのコードは」 

 

「セブンソード!セブンソード!」

 

「だな、さて……」

 

ロックオンはたった一つだけ命令を与えた。

指揮権はある上、全体連絡をした為上、教員にも伝わる。

 

『国家代表以下の生徒は敵軍用機撃破の任を解く』

 

命令違反を許す気は無ければ、巻き込む理由もない。

 

「ハロ……TRANS-AMを使う!いけるな」

 

「ロックオン、ヤルゾ。ロックオン、ヤルゾ」

 

デュナメスの機体色が紅く染まる。

それだけではない、GN粒子がより圧縮され加速性能。

最高速度を含めた機動力、攻撃力、全てが上がっていく。

 

「…恨は無いけどな」 

 

粒子ビームが福音の胴体に命中する。

かつての戦場であればこれだけで終わっていただろう。

 

だが、世界が違う。能力も違う。

だが、ロックオンのやる事は変わらないだろう。

目の前にいるのは世界の敵だ。

そうだ、ソレスタル・ビーイングが武力介入を行うべき存在だ。

 

「ロックオン・ストラトス!狙い撃つぜ!!」

 

「?!」

 

ロックオン得意の機動射撃、GNスナイパーライフルではない。

GNビーム・ピストルの連射で福音を追い詰める。

 

「逃げてばかりで……ちぃ!」

 

それは2門のビーム砲だった。

ヴァーチェを思わせる様な高火力に一瞬ドキリとするが、

所詮はその程度だ。

 

「ハロ、ミサイル発射!」

 

「リョウカイ」

 

腰部フロントアーマー内に格納されたGNミサイル。

福音は通常のミサイルだと思ったのだろう。

腕で払うようにしたが、着弾したミサイルは装甲に食い込み、

内部に圧縮したGN粒子がミサイルから送り込まれる。

装甲が少しずつ膨張し、中から破裂させる形で破壊される。

 

「くそ……」

 

それは人間の肉体だった。

今迄はパイロット諸共破壊していたが、火力は下っている。

人の体が見えたというだけで、少しやり辛さを感じてしまう。

 

「ちぃ…狙いが振れる」

 

ロックオンのTRANS-AMに福音は追いつけてはいない。

だが、その時は急に現れた。

サークルを描きながら射撃するロックオン。

ハロのおかげで射撃に集中し回避行動は取らずに済んでいるが、

タイムリミットが着々と近付いてくる。

 

「一か八か……狙い撃つ!」

 

相手の高火力に動きを止めるというのは自殺行為だ。

だが、やるべき事だとロックオンはGNスナイパーライフルを構える。

 

「!!!」

 

ビーム砲のチャージが始める。

だが、回避はしない。

デュナメスの額部分にあるブレードアンテナが下がり、

ガンカメラが露わになる。

ロックオンが狙っているのは一つだけ。

超圧縮されたGN粒子ビームによる絶対防御の強制発動だ。

そのためいち早くGNスナイパーライフルを構え、

チャージに入ったが。

 

「ハロ、カウントは」

 

「10..9..8」

 

「………!」

 

スナイパーに必要なのは冷静さだ。

だが、ここで動いてしまえばその分粒子のチャージは長くなるだけじゃない。TRANS-AMの猶予時間も消えるだろう。

 

「3...2...1...」

 

「くそ!」 

 

だが、ロックオンの、デュナメスのチャージよりも福音のチャージのほうが速かった。

チャージされた極大なビームがデュナメスを光に包む。

黒煙を放ちながら落ちて行くデュナメス。

ソレを福音は見つめる。

 

「悪いな、この手の芝居は2度目だ!」

 

デュナメスは確かに黒煙を吐いている。

しかし、それは一部位だけだ。

肩部のラッチに装備される防御兵装たるGNフルシールド。

それがイカれ、パージしたに過ぎない。

 

「悪いが……狙い撃つぜぇぇぇ!!!!」

 

「ヒャッパツヒャクチュウ!

 ヒャッパツヒャクチュウ!」

 

高濃度圧縮されたGN粒子ビームがGNスナイパーライフルから

放たれる。銃身がその熱量に耐えられず、段々と赤熱化してくるが、ロックオンは射撃を止めない。

射撃をやめたのは銃身が完璧に融解し、GN粒子ビームを

撃つことが不可能になったからだ。

黒煙を噴き出しながら海へ自由落下していく福音。

 

「……ミッション完了。デュナメス、帰投する」

 

デュナメスはGNスナイパーライフルを再びマウントし、

静かに空域を離脱した。

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