織斑の末弟   作:影後

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隻眼の生徒会役員

「……くそ………」

 

「ねぇ、ハル君。いい加減」

 

「ハロに頼ってちゃ、駄目なんだよ。

啖呵切ってんだ、俺自身がやれねぇと意味が無い」

 

「それでも私相手に2割の撃墜率。

正直、おねーさん自身なくすわよ」

 

「そうですよ、私に対しても4割で」

 

「……2度も負けねぇ。負けらんね」

 

ロックオン、楯無、そして麻耶の3人は

シミュレーター室にこもっていた。

ロックオンが頭を下げ、頼み込んだためだ。

生徒会の仕事と、教員としての仕事をサポートし、

終わらせた。終わらせられた為、ロックオンの相手をしている。

 

「…2対1なんてそんなの」

 

「……あのテロリストだ。俺には判る。

妹に華を持たせるためだけにテロを起こした。

白騎士もそうだ、奴の自作自演さ。パイロットも想像つく。

俺の…俺の中のニール・ディランディが叫ぶんだ。

テロを許しちゃいけない。

俺の家族みたいな奴を作っちゃいけない」

 

帰ってきてからのロックオンは表では飄々としているが、

一部の生徒、恋人と尊敬する師の前では暗く、怒りに満ちた顔を

見せることを躊躇わなかった。

 

「ロックオン、ヤメロ!ロックオン、ヤメロ!」

 

「ハロもそう言ってるわ。もう、止めましょう」

 

ロックオンは2対1で常に善戦していた。

勝率は2割と芳しくないが、それでも2割は勝っている。

だが、駄目なんだ。ロックオンは理解している。

操縦桿で戦うのと、こうしてパワード・スーツで戦うのでは

勝手が違い過ぎる。

ここで、経験の足りなさがこうして勝敗に直結する。

MSでの戦闘では多数対1の状況も少なく無かった。

むしろ1対1の状況の方が珍しい。

いくら接近戦をしていなかったと言えど、

ロックオンはガンダムマイスターなのだ。

 

「解散よ、食事も取りましょう!

山田先生も、ありがとうございます」

 

「はい、更識さんはストラトス君をお願いしますね」

 

 

ハロを肩に乗せ、楯無と共に食道へ。

 

「…ねぇ、貴方は」

 

「弱くちゃ意味が無い、あの時、俺が勘を取り戻してりゃ…

負けるはずが無かった。俺は殺す事も恐れちゃ居ない。

知ってるだろ、密漁船」

 

「えぇ、一夏君が救助しようとした際爆発したと」

 

「殺した、必要な事だ。

いや、むしろあの女を警戒して出し惜しみした俺が馬鹿だった。始めからTRANS-AMで殺しに行けば」

 

「…ロックオン」

 

「ん!?」

 

身体が抱き寄せられ、厚いキスをする。

 

「んっ…お前、ここは人が」

 

「私より弱いのに生意気なのよ!

自分一人で背負い込むわけ?!」

 

「でもな、俺は人殺」

 

「私も…私の家とあくどい事はしてるわ。

だから、気にしないでよ。貴方が何人殺してようと、私。

更識楯無は貴方を、ロックオン・ストラトスを愛してます」

 

「…楯無」

 

「だから、いかないで………私の前から…

消えないで………私は」

 

「…帰ってくるさ。必ずな。どこに居ても、どんな時でも。

俺の帰る場所は…お前の隣だ」

 

ロックオンはそのまま帰すように熱い口づけをする。

誰に見られても関係ない。

今、愛する人がそこにいる。それだけで心が軽かった。

 

その日から、ロックオン・ストラトスは名実ともに

学年最強の座に君臨し始めた。

ハロのサポートはあったが、それも少しずつ減っている。

特に、レーザー兵器をほぼ無効化する機体『白式』

その、第二形態だろうとロックオンは常に勝利し続けた。

GNライフルとGNサーベルが無効化されようと、

肉弾戦という方法がある。

それに、相手の対応できない射撃で倒せば良いのだ。

一度、同じスナイパー。

そして、エネルギー兵器がメインという事で、

セシリア・オルコットからアドバイスを求められた。

 

「……貴方は何故一夏さんに」

 

「AIでもつけろ、前に言ったろ。

それにオールレンジ兵装ってのはメインと〘同時に〙

使えてこそだ。それが出来ないんじゃ意味ねぇよ」

 

「しかし!私の適性は!」

 

「適性があっても才能が無いんじゃ意味ねぇよ」

 

機動、射撃、オールレンジ兵装の操作。

その3点が同時に行われれば、それはかなりの脅威だ。

常にオールレンジ兵装が死角を襲い、

正面からは無慈悲な射撃。

 

「機体自体は強い、後はお前。乗り手だ」

 

それ以上のアドバイスは出来ない。

いくらロックオンでも他国のサポートなど、

立場が許さないのだから。

 

数日後、1時限目を使い全校集会が執り行われた。

無論、セッティングしたのはロックオンと虚だ。

恋人にして、生徒会長の楯無から頭を下げられ職員室、

学園長、各学級代表に対して連絡を取り合い、

時間通りに行われた。

内容自体は決まって居たが、別方面での問題が多すぎた為、

日程は急遽決まった。

その、別方面の問題の大半が自分だった為、

余計に断れなかった事もある。

 

「……生徒会長登壇。全体気を付け」

 

ロックオンの低い声と鋭い眼光に睨まれた生徒達は

言葉を止め、正面を見る。

 

「うーんと、ストラトス君。お姉さん、ちょっと怖いな〜って」

 

ロックオンは楯無の言葉に頷くと、左斜め後ろに下がる。

鋭い眼光が変わらず生徒を睨んでいるが、

仕方なしと話し始める。

 

「やぁ、皆おはよう」

 

ロックオンと知人が視線を合わさるが、眼光にて

「集中しろ」という言葉を伝える。

それが不味かったのか、1年生方面から小さな悲鳴が上がる。

 

「もう~!ロックオン!自己紹介なさい!

そんな怖い顔じゃ、1年生が怯えちゃう!」

 

「は?」

 

想定外の言葉に声が出てしまう。

楯無の右斜め後ろに立つ虚に助けを求めるが、

視線で「頑張ってください」という言葉を受け取り、

静かに受け入れた。

 

「生徒会所属1年ロックオン・ストラトスだ。

所属はアイルランド。国家代表を務めている。

役職は庶務だ。二つ名は〘成層圏まで狙い撃つ男〙だ。

お前らの、凍ったハートも狙い撃ってやるよ」

 

最期にまるでハンドガンを撃つように指と手で動作をする。

ヨーロッパ系の美形男子と子供ではない大人の声、

そして鋭い眼光を持っていた生徒が、

気さくに見せるその姿。

それらが女生徒の心を掴むのには十分だった。

眼帯や傷のある顔を見せながらも賑やかな笑顔を向ける。

 

「ちょっと下がりなさい!」

 

「会長?」

 

制服の裾を引っ張られ、元の位置に戻る。

一瞬だが見た楯無の顔はにこやかだが、怒っていた。

 

「予想外な事をしでかされて内心酷く驚いてるわ。

話を戻すわね、今年は色々とトラブル続きで挨拶が遅れて

ごめんなさいね。私は、更識楯無。君達の生徒会長よ。

以後よろしくね」

 

楯無の微笑みは異性同性問わず魅了するようだが、

一番魅了したい男は既に自分の物である。

まるでアピールするかのようにロックオンを抱き寄せ、

その肩に頭を乗せた。

 

「更識会長、おやめください」

 

「あ~ん、虚ちゃんの意地悪!」

 

約一名、激しく怒っている様子の女性教師が視界に映り、

直ぐ様本題に入った。

 

「では、今月の一大イベントの学園祭だけれども。

特別ルールを導入するわ!

というのも…ロックオン!虚ちゃん!」

 

呼ばれた二人はステージの端に移動していた。

そして、頷き合うと同時にロープを引っ張った。

横断幕が上がり、スポットライトがそれを照らす。

 

「名付けて〜『各部対抗織斑一夏争奪戦!』よ」

 

そのままトレードマークの扇子を広げると、

横断幕の下のディスプレイに織斑一夏の顔写真と

プロフィールが掲載される。

 

「え……」

「「えええええええええ!!!!」」

 

ホール中の大気を揺るがす程の叫び声。

そして全生徒から一身に受ける視線。

織斑一夏はただひたすらにパニックになっている。

 

「静かに。

学園祭では毎年各部活動ごとの催し物を出し、

それに対して投票を行い、

上位組は部費に特別助成金が出る仕組みでした。

しかし、今回はそれではつまらないと思い。

私は考えたのです」

 

一息つけ、楯無は扇子を一夏に向けた。

 

「織斑一夏を1位の部活に入部させましょう!と」

 

その言葉に溢れんばかりの声が上がる。

だが、いつの間にか隣に来ていたロックオンが、

意気揚々としている楯無からマイクをひったくる。

 

「静粛に。浮かれてるとこ悪いが、悪い知らせだ。

もう時期、秋季大会もある事を念頭に入れて欲しい。

ただ、1位を取るためだけに努力するな。

会長の言葉を思い出して欲しい。

今回は『それではつまらない』。そう言ったんだ」

 

ロックオンの言葉に理解を示したのは2年生だ。

3年生はなんとも言えない顔を向けている。

キョトンとしているのは1年生のみ。

 

「今回、上位部に対して特別予算は付与されない」

 

「「ええええ!!!!」」

 

「その代わりだ。

そして、最終的に来年度の予算案を決定する上で

必要になってくるのは各部の評判だけではない。

理解してくれていると思うが、実績だ。

無論、貴方方は実績を積んできただろうが秋季大会で

それまでの実績を無に返す様な事があればどうなるか、

それを常に頭の片隅で留意し、学園祭に励んで貰いたい。

ハメを外すな、なんて俺達生徒会は言わない。

だが、悔いを残すな。今までの全てを灰燼に帰す覚悟を持て」

 

ロックオンの演説に生徒のボルテージは一気に下がり、

皆が真面目な顔でロックオンを見る。

それらを一瞥し、最期に一言告げた。

 

「…最高の学園祭にしよう」

 

一礼し、所定の位置に戻る。

そして楯無の言葉で解散となった。

 

 

「も~~、ロックオンのせいで皆のボルテージが」

 

「楯無、悪いが俺は真面目にやらせてもらう。

恋人だからとしても、

一個のミスで今までを無にする奴を見たくない。

学園の部活の中にはオリンピック選手候補に

選抜される人も居た。

モンド・グロッソの影に隠れていても、

やはりオリンピックは由緒正しいスポーツの祭典だ。

そんな所にスカウトされるチャンスを自ら消すか?

言わなかったが、

全員が全員IS企業に関われたら良いだろうが、

大半は消えていくはずだ。

ここがエリートでも企業は更に上がいる。

2の手3の手があっても良いだろう。

それに」

 

「それに?どうしたのよ」

 

「お前が万が一に怪我するリスクを減らしたい」

 

「……馬鹿」

 

 

 

 

 

 

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