「では、私達2組の出し物を決めようと思います!
先ず、事前にクラスで決めていた
この3種のうちから選びます」
・飲食店又は販売店
・お化け屋敷
・劇
「ティナ、ありがとう。
その3点のデメリットをハルから話して貰うわ」
「……ハルって呼び方寄せ。俺はロックオン・ストラトスだ」
「はいはい、合同の場所でなら呼ぶわよ。
ハル、速く話して」
「……わかった。
生徒会役員という観点から説明する。
飲食店の場合は生徒の出店と言えど許可が必要だ。
正直、本職でも学生のため客は味なんて期待していない。
が、管理ミスで食中毒を起こした場合や異物混入の
責任は管理者、ひいてはIS学園にも被害が及ぶ。
食材の管理などに必要な物も多い。
販売店も同じだ、クッキー等の場合も同じ。
手作りアクセサリーもあるが手芸部や工作部の事を考えれば、
クオリティは数段低くなる。
学園内にライバルが居るのが大きいな」
「でも、部活でしょ?そっちはそっちで……」
「あぁ、部活という違いはあるがどうせなら
違う方が良いだろ?」
「それは……ね?」「うん、被るのはね」
頷きあっており、声が消える。
「お化け屋敷、コレは………」
「お化け屋敷……お化けなら居るわね。此処に一人」
「……お化け屋敷は特に無いな。最後が……」
「劇か。
判ると思うが、評価を獲るには観てもらう必要がある。
更に長い目で見なければいけないこと。
練習に時間がかなり必要な事。他にも」
ロックオンがデメリットを告げ、最終的に投票に入る。
「…冗談だろ」
それは劇だった。
あまりに想定外すぎて、どうしょうもない。
「あの……ストラトス君。それで、」
「……The Phantom of the Opera。
俺に………怪人をしろと?」
「うん、ストラトス君なら」
「あぁ、我が愛しきクリスティーヌ。
さぁ、謳え。私のもとで、さぁ」
ロックオンは慣れた手つきで、
まるで仮面を外すように眼帯を外した。
生々しい傷痕と、白く濁った瞳がその生徒を
「凄い……凄いよ!あと、人が入れば」
「……そうかい、別にクラス合同でも出し物は問題ないぞ」
「ならちょっと行ってくるわ!」
鈴音はそう言うとクラスを飛び出す。
10分後、1組の一夏とセシリアを連れて帰ってきた。
「……劇、1組2組合同よ!」
「は?」
「あと、会議室に移動するから皆ついてきて!」
行動力の化け物と言わざる得ない。
頭が痛いのを忘れ、なぜか借りれたという会議室へ入る。
「なぁ、鈴。劇やるんだかったら何やるか決まってるのか?」
「……フッフッフ…一夏。聞きなさい!オペラ座の怪人よ!
ついでに言えば怪人役は強制的に決まってたわ!」
「……どうも、ファントムです」
眼帯を外し痛々しい傷痕と白く濁った銀球を1組に見せる
ファントム。もとい、ロックオン。
「一応、第三者視点の意見として何か別の案があるのなら
今ここで受け入れます。オペラ座の怪人はあくまでも1案です。
白雪姫、シンデレラ、眠り姫、メジャーでも構いません」
「えっ?でもそれ御伽噺の」
「何言ってる。お子様向けの作品をやるはずないだろ。
シンデレラなら、足を斬り落とす描写など、
大人向けで行くつもりだ」
「なら、ニーベルンゲンの歌はどうだろうか」
ラウラからその言葉が出る。
「中世ドイツの叙事詩か。
ジークフリートの英雄譚と妻クリームヒルトの復讐劇」
「でしたら!我がイギリスの誇るアーサー王物語が」
「なら三国志も」
「……壮大だな。劇だぞ、台詞覚えられるのか?」
「うぐ!」
「他に意見は?無しか。なら、投票だ」
数分後、結果がロックオンから話された。
「アーサー王物語、オペラ座の怪人、オペラ座の怪人」
「……僅差でオペラ座の怪人ね」
「うぅ、
皆様にアーサー王物語を知ってもらうチャンスでしたのに」
「次は配役だが監督から既に決まった設定がある。
先ず、このオペラ座の怪人は逆ハーレム状態であり、
なおかつ男性キャストは2人のみ。
怪人役のロックオン・ストラトス。
そして、ラウル子爵役の織斑一夏。
他は全員女なうえ………なんだコレ」
「えっと……キスシーンが多いです。
ヒロインのクリスティーヌだけでなく、その………」
「わかった………監督。
台本を事前に用意していたのは色々と言いたいが、
結果的には良かった。俺は休む」
ロックオンはそのまま会議の行く末を楽しみながら台本をよむ。
監督は文芸部出身であり、自分なりに二次創作として新たな
オペラ座の怪人を執筆していた。
ファントム役は戦争を生き延びた元兵士。
顔に重傷を負い、それが原因で婚約者と破局。
家も家族も失い、友人の推薦で夜間の掃除夫として務め、
以後オペラ座の地下に隠れ棲むようになる。
最終的に愛したクリスティーヌに撃ち殺されて死ぬ。
何処までも人間の不条理を説き、
惨めに裏切られ死んでいくファントム。
それでも、最期まで人を憎めず、不条理な世界に悲しむ。
「……お前は、俺とは違うな」
ロックオンは人を憎まないなど、出来なかった。
今でも、ロックオンはアリー・アル・サーシェスを。
この世界を創り出した二人のテロリストを。
そして、自分自身を憎んでいる。
「………」
そして、1日が過ぎていく。
「あぁ……なんで……なんで私は……こんなのなら……
愛など、知りたくなかった。……あぁ……」
「凄いよ!凄いよ!ロックオン!!完璧だよ。
流し読みでも簡単な振り付けお願いして、
ぱっと思い浮かぶそれで私が思い描くファントムそのもの!
でも!もう一つ言うなら、最期にファントムじゃない。
ロックオンの気持ちも乗せてみて!」
ロックオンは監督に言われるがまま、再び演技をする。
「愛など、知りたくなかった。
……あぁ…世界を守る戦争。なのに……俺は…
世界は……どうしてこうも……」
死んだ様に言葉はだんだんとか細くなる。
今回の劇は声を上げる必要はない。
皆がマイクを仕込み、放送で流れる様にしているからだ。
だからこそ出来る演技、続く言葉を繋げずそこで朽ち果てる。
「完璧!完璧だよ!」
「…1回は死んでるんだ。死ぬ演技ぐらいは簡単だ」
「…え?」
ちょっとした冗談のつもりだったが、ロックオンの言葉に
場が一気に冷え込んだ。
「おい、コレは」
「死んでない!ロックオンは死んでない!」
声を荒げるのはティナだ。
2組のメンバーもロックオンを責めるように見つめており、
少女達が何を求めているのかは明白だ。
「悪い、不謹慎だったな」
「死んでるとか…死ぬとかは二度と言わないで。
今の言葉、全然笑えないから」
「そうか……」
ロックオンは謝罪し、そのまま再開する。
覚えられるはずはないが、それでも初回にしては良い出来だ。
その後、自分の仕事を片付けるため生徒会室へ向かう。
「あっ!スーくんだ!」
「…珍しいな、こうして会うのは」
「う~ん、寝てて良い?疲れちゃったよー」
「寝てれば良いさ、俺は仕事が終わり次第訓練だ」
そこに居たのは布仏本音。虚の妹にして同じ生徒会役員。
そして、書記長であもある。
ロックオンは庶務であるが色々な事をこなしており、
はっきり言って本音は立場は上だが、実権はない。
「終わった、俺に用件がある人物がくれば」
「シミュレーターね!りょうかーい」
シミュレータールームはガランとしている。
ロックオンの言葉を受けた3年生や、
部活に入っている生徒は全力で鍛えている。
皆、最期の華は持たせたいのだろう。
「……織斑千冬」
シミュレーターに出されるデータ。
それは暮桜という、世界最強が使っていた機体のデータである。
ブレード1本という巫山戯た機体であるが、
パイロットの技量で全てを覆したものだ。
「なめんなよ……テロリストがぁ!」
表に出ているのは、ニール・ディランディとしての面。
織斑一夏、織斑千冬の弟。織斑十春の気持ちもある。
だが、無差別テロに加担した相手を許せない。
刹那は洗脳された、洗脳されていた。
だからこそ、世界を変えようと戦った。
許す、許せないの時間はとっくに終わった。
「世界を変えちまった責任も……」
「あのテロリストに手を貸した事も……」
「お前は!」
デュナメスが加速する。
そして、手足の様に緩やかな動きを実現していく。
今まで機体だったデュナメスが、今確かにロックオンの
ロックオン・ストラトスの真の手足となっていく。
「ロックオン、アセルナ!ロックオン、アセルナ!」
「ハロ、TRANS-AMだ!」
「リョウカイ!リョウカイ!」
機体色が紅く染まり速度が上がる。
それだけでない、粒子ビームの破壊力が増していく。
「俺は……テメェも倒して………今度こそ!」
手足をもぎ、身動きが取れなくなる。
遥か上空に舞い上がり、
認識外からデュナメスのGNスナイパーライフルを構える。
残った右目に炎が宿る。
最期だ、最後の一発で戦闘が終わるのだ。
「狙い撃つぜぇぇぇぇ!!!!」
超圧縮されたGN粒子が放たれる。
その場には絶対防御という遊びはない。
殺し、殺されるという戦場の中での攻撃。
紛争根絶、それを成そうとし道半ばで倒れた男の執念の一撃。
「……」
「ハイジョカクニン!ハイジョカクニン!」
「………涙か、俺は………泣いてるのか」
シミュレーターが解除される。
だが、頰を垂れる涙がもう一つの魂の痛みを理解させる。
「あぁ、家族を殺すなんて……な」