織斑の末弟   作:影後

28 / 31
ロックオン・ストラトス2

 

「その程度か!動けないんじゃ、ただの的なんだよ!

お前、自分の肩書も理解できねぇのか!」

 

「く……」

 

それは第3アリーナで起きている罵詈雑言の嵐。

回りにいるのは、箒、シャルロット、ラウラ、鈴だ。

教官役を務めているロックオンとロックオンに弟子入りを

志願したセシリアが酷く言われていた。

ロックオンが使用しているのは有線式シールド。

そして機体はかつての愛機にも等しいR2S。

 

「俺は今ハロが居ない、そして左目は見えてねぇ。

にも関わらず、お前は何もできてない」

 

「くっ……」

 

「ロックオン、イイスギダ。ロックオン、イイスギダ」

 

ラウラの腕の中でパタパタと動くハロ。

只管に苦しく、悔しそうな顔をしているセシリア。

 

「…喋れないなら、本気で潰す」

 

「なっ…」

 

「セブンガンだ!受け取れ!!」

 

それはセシリアも知っていた。

知っていたからこそ、ロックオンに師事を頼んだのだ。

有線式シールドの内側にレーザーライフルをマウントし、

遠隔で撃つシステムの構築。

しかも、有線が切れようとも問題ないと来た。

今も有線が外れ、アリーナ内をライフルビットが縦横無尽に

暴れまわっている。

だが、それに比例してロックオンは周囲を回るのみだ。

 

「これでは」

 

「……お前の負けだ」

 

ロックオンはそのまま着陸するとラファールを外し、

ミネラルウォーターを飲み込む。

 

「ロックオン、少し厳しく」

 

「厳しいだ?彼奴が望んだ事だ、優しくするな。

私に、貴方の力を教え込んでくださいましとな。

此処に来る前、貴族たるオルコット家の当主が、

アイルランドの国家代表に頭を下げたんだ。

だから……こうして教えてる」

 

ロックオンに続き、暗い顔をしたセシリアが来る。

 

「判るな、お前は2つを同時にしようとしてる。

頭で判断してBITを動かそうとしてるんだよ」

 

「え」

 

「…ロックオン、それって普通じゃないの?」

 

「普通じゃねえよ。俺が其奴をやってるんだ。

相手の角度、風向き、銃口、本来なら普通の人間は

そんな事できやしねぇ」

 

「でも、ロックオンは」

 

「ハロが居るから何とかなる。ハロが居れば、完封できた。

今回、何発か食らったからな」

 

「……それでも何発なのか」

 

「経験の差だ、伊達にシミュレーションはしてない。

それで、セシリア・オルコット。お前対面して

理解してなかったか」

 

「貴方は、飛んでいるだけでした」

 

「俺はビット兵器を操るセンスはない。

ハロが居てこその力だ、お前はそうだな。

そのセンスがある筈だ、あ………俺が知ってる奴は

脳量子波っていうそうだな第六感に近いもので使ってた

……はずだ」

 

思い出すのはトリニティのオレンジの機体。

確か、ミハイルだったはずだ。

スローネ、殺したいほど憎んでいるあの男。

アリー・アル・サーシェスの愛機となったガンダムの

最初の持ち主。

 

「お前にはその適性、第六感がある筈だ。

直感的に動かせるようにならないか?」

 

「直感的ですか……」

 

「そうだ、自分が危ないと感じる時。

数が多いと感じる時………くっそ、ティエリアが

居れば……いや、場が酷くなるだけか?」

 

ロックオンとしては誰かの相談役になる事や、

緩衝材としての立場なら嫌という程経験している。

問題児3人、刹那、ティエリア、アレルヤ、その3人の

まとめ役として貧乏くじを引いてきたのだ。だからまぁ、

その手の事は出来るが、逆に教えるとなると厳しい。

 

「あーー……くっそ、俺が撃たない的になる。ただし動くぞ。

ファーストステップだ、動く俺に付いてこい。

シューター・フロー…いや、

俺が教えたバレットサークルを作りながらBITで撃て」

 

「そんな」

 

「ミスったら俺が報告書と始末書、罰則を受けるだけだ。

監督責任者としてな。だから気にするな」

 

「……ロックオンに効く罰則があるのか?」

 

「個人的に1組のあるグループの破壊活動に対し、

フルマラソンという選択肢があるんだが………」

 

「巫山戯るな!軍でも毎日フルマラソンなぞしない!

足が壊れるかと思ったぞ!」

 

「俺もお前もそんなに弱く無いだろ、それに俺も走ったろ」

 

「んぐ……兎に角だセシリア。この男に罰則は意味を無さん。

気にするだけ無駄だ」

 

「ええ……改めてよろしくお願いしますわ。

ストラトスさん」

 

「俺の休憩も終わった。行くぞ、バレットサークルは

継続だ、継続しながら念じろ。俺を撃ちたいとな」

 

元々、BIT攻撃と武器による射撃は並列してできていたのだ。

後は動かすのみ。

 

「きゃぁ!」

 

「駄目か」

 

何度も何度もミスをするセシリア。

そんな時に一夏と楯無がアリーナに入ってきた。

 

「やってるわね」

 

「……あぁ」

 

「セシリアに……ハル?」

 

2人に気がついたロックオンとセシリアが降りてくる。

両者共に苦虫を噛み潰したような顔だ。

セシリアは自分が出来ていないことに対しての不満、

教えてもらう、優しくするなと事前に言っている手前、

ロックオンに不満など吐けるはずがない。

ロックオンは自分が正しく教えられているかという不満、

ビット兵器の搭載はイアンに依頼していたが、そもそも

自分はAIに補助してもらっての戦闘であったはずなのだ。

もとより、畑が違う。

 

「苦しい顔ね」

 

「俺は……お前みたいに誰かに教えるのは向かないな」

 

一夏が来たことで、セシリアの顔は少しだが回復した。

だが、逆に言えば少ししか回復していない。

一夏を見てしまった事で自分の状況を改めて理解しているのだ。

 

「でも、貴方だけよ。BT兵器に詳しいのはね。

それに、実際に扱いもしているのだから」

 

「なぁ、俺は……」

 

「止めて、弱音なんて吐かないで」

 

「……判った」

 

慣れないことをしているせいでナイーブになっているのだ。

なら、恋人として少しばかり手伝うのみ。

 

「セシリアちゃん、これから一夏君の訓練に

入るけど良いわね?」

 

「大丈夫です、よろしくお願いしますわ。一夏さん」

 

「えっ、あ?うん、セシリア」

 

「始めにバレットサークルを見せてあげて欲しいのだけれど」

 

「なら、シャルとハルが良いと思うわ。

セシリアには休憩が必要だから」

 

鈴はそう言ってセシリアを休ませる。

 

「という訳だけど、ロックオン。出来る?」

 

「……シャルロット相手に本気で落とせばいいんだな」

 

「違うよ!

どう考えても一夏にバレットサークルを解説するんでしょ?!

なんで本気で戦うことになるのさ!」

 

「俺のR2Sとお前のR2Cどっちが強いかだ」

 

「なんで?!」

 

「……冗談は止めて。やる気は十分ね」

 

「あぁ、畑違いを教えるのは難しいな」

 

「そうね、何事も経験よ。

それに、織斑十春が尊敬する人に泥を塗るのかしら」

 

「んなことはしない。デュノア、落とすつもりで来い。

俺もお前の弾丸を全て潰す」

 

「……良いよ、やるよ!」

 

ロックオンがバレットサークルを描きながらシャルロットと

戦う。言葉どうり弾丸が対消滅しているのだ。

 

「冗談でしょ?!」

 

「サブマシンガンでも、狙い撃つぜ」

 

「そう言えば、なんでシューター・フローじゃなくて

バレットサークルって」

 

「バレットサークル、ロックオンのそれはイカれた技術だ。

シューター・フローの円盤状制御型飛翔による攻撃から、

来るぞ」

 

それは瞬間的な加速を何度も繰り返し、

強制的に自身をコンパスの鉛筆の状態とし、

中心部へ閉じ込めた敵を狙い撃つというもの。

BT兵器用の戦術としてロックオンが導き出したものだ。

 

「これがバレットサークル?」

 

「そう、セシリアちゃんの完成形よ。

シャルロットちゃんを中心にして、ロックオン。

何故かBT兵器とかしている元有線式シールド。

有線式シールドが一つ一つ、

シャルロットちゃんを撃ってるでしょ?

自分を含めた全てで円盤状制御型飛翔での全包囲攻撃。

それがバレットサークル」

 

「……あれが」

 

「他にも、彼のデュナメスのトランザムだったかしら。

あれの超加速超起動でBT兵器無しでも出来るわね。

私もそれで何度も落とされかけたわ。

山田先生がカバーしてくれて助かったけど」

 

「……くっ」

 

「そこまでよ!後は普通のシューター・フローと

円盤状制御飛翔だけにして!」

 

「変わった?」

 

「そう、通常は両方とも動いて輪舞曲する様に

しているから、サークルロンドなんて呼ばれるの。

ロックオンのアレは……山田先生曰く、キル・ゾーンの

設定でサークルロンドとは似て非なるもの。

もう良いわよ」

 

「……試合なら負けてた」

 

「ラファールなら負けなかった。

それを証明してみせただけだ。同じラファール乗りとしてな。

事実俺は乗り慣れない機体で負けた。しかも、パートナーの

足を引っ張ってだ」

 

「……ロックオン、負けに拘るのはよしなさい。

実際強いんだから」

 

「判ってる、言いたかっただけだ。

第3世代にも劣らない、ラファールは良い機体だ。

デュノア、周りが第3世代だからと差を感じるな。

結局は乗り手だ」

 

「……うん、君が異常な事を理解したよ」

 

「…なんでそうなる」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。