織斑の末弟   作:影後

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ロックオン・ストラトス3

 

「惚れた男に格好良い所見せたいって?

まぁ、頑張れとしか言えないが……」

 

「訓練中何を言っていますの?!」

 

変わらずバレットサークルをセシリアに教え込んで居るが、

どうしても別で訓練中の一夏に目移りしてしまっている。

むしろ、一夏が近くにいるからセシリアの士気が

上がっていると思うと、多少なりとも感謝はある。

 

「まただ」

 

「うっ…」

 

ロックオンはレベルを一つ上げ、

6発まで撃つという行動を行なっている。

これはいわゆるショック弾であり、

相手を電磁的にスタンさせるものであり、威力を抑えたものを

ビットに向けて撃っている。

 

「……何も出来ませんでしたわ」

 

「ビット操作を疎かにしすぎだ。俺に何を言われようと、

お前の精神は常に漣であると意識しろ。そもそも、お前も

スナイパーだろうが。なんで環境に左右される」

 

「いえ、別にスナイパーでは」

 

「なら、そもそも取り回しの悪い狙撃用レーザーライフル

なんて使うな、サブマシンガンで良いだろ。そもそも、

レーザーやビームは直線にしか撃てない。

銃口の先から予測可能だ」

 

「…予測して回避先を撃つ貴方に言われたく」

 

「スナイパーだ、それぐらい出来る」

 

文句を一つ一つロックオンは潰していく。

 

「…基礎射撃技術は向上しているが、やはりBT兵器か。

適性も必要で、もっと言えば……そうだな。

センスが問われる装備、お前はセンスが根本的にない。

実験レベルならその程度でも問題ない、だが実戦で駄目だ。

白式という欠陥機に敗北し、福音の時も

お前は狙撃に徹していた。BT兵器を使わなかったのではない、

使えなかった。まぁ、勝ったんだ。文句はない。

……そのセンスを実戦レベルまで上げる方法がない訳じゃない」

 

「それは」

 

「らう……そっちの馬鹿共。此方来い」

 

「馬鹿共とはなんだ!鼻の下を伸ばす嫁を」

 

文句を言おうとするラウラとその他メンバーを眼光で睨見つける。ロックオンの人殺しの冷たい目だ。ラウラは知っているが、

楯無もまともに見るのは初めてだ。

 

「死に物狂いで戦うんだ。休憩もなく、補給もなく、

俺達に嬲られろ。悲鳴を上げようが、泣き叫ぼうが、

誰にも助けてもらえない状況で単身戦え。

ダメージレベルが限界になろうが、血反吐を吐いて…

命をかけて戦え。人間ってのは、命の危機に瀕した時、

火事場の馬鹿力ってのが出るらしい。

後は其奴を火種にして燃え続けるだけだ」

 

「おい、ロックオン。軍人でもない相手にそれは」

 

「……人民軍でも、そこまで」

 

「例えだ、事実。戦えば戦うほどに強くなる。

追い詰められた人間は2つ、挫折するか…折れず進むか。

此奴の相手は俺だが、俺の相手にはならない」

 

「それは」

 

「おいハル!セシリアに失れ」

 

「事実だ、ラファールで負けてる時点で察しろ。

俺はもう、ハロのサポートも、有線式シールドも使ってない。

ノーカスタムのラファールに負けている。

ビットを止められている時点でお察しだ。

……俺はなんて言葉を向ければ良いんだろうな。

実戦で使えない技術に価値なんてねぇ」

 

「ハル!いい加減に」

 

「何か言いたいなら、俺より強くなってから言いやがれ。

俺の弟子だ、師匠がどんな事を言ったとして、

お前には関係ない」

 

一夏を楯無に返し、すぐさま向き直る。

 

「成長度合いのコンプレックス、判るな。

死ぬ気でやらなきゃ強く慣れない」

 

「……私は」

 

「ハロ、此奴のサポートしてやれ」

 

「リョウカイ!リョウカイ!」

 

「え……」

 

「勝手を学ぶのも必要だ。

ハロ用にデータ取りも出来るしな。

まぁ、一回やってみろ」

 

自分自身、もう何を教えて良いか判らない。

狙撃なら専門分野である為、教えられなくはない。

だが、ビット兵器は専門外だ。でも、教えを乞われたからには

やるしかない。難儀な性格だ。

 

「どうした!ハロも居るんだ!ハロを信じろ!」

 

「くっ……ハロ!攻撃!」

 

「リョウカイ!リョウカイ!」

 

4機のビットがロックオンを狙うように自由自在に飛び回る。

そして、セシリアのブルー・ティアーズも機動射撃を続ける。

 

「そうだ、お前の目指すものがこれだ!」

 

「…これは」

 

「でもな、即席で俺に勝てると思うなよ!」

 

ロックオンはすぐさまビットを撃墜する。

実力の差というだけじゃない、ロックオンの空間認識能力が

限りなく高いのだ。

 

「……使えた」

 

「ハロのサポートあってこそだ。どうする、ハロ欲しいか?」

 

「いただけるので?!」

 

「…無理だな、考えたら特許申請出来る代物じゃないか」

 

「それは……確かに」

 

「悪いな、でも、感覚なら掴めるだろ」

 

ロックオンは微笑みながらも渡さないという意思を見せる。

 

「ハロは俺の相棒だ、俺の最高のな」

 

「ロックオン!ロックオン!ロックオン!ロックオン!」

 

ハロもセシリアの腕から離れ、

ロックオンの周りを飛び跳ねる。

恋人なら更識楯無だろう、しかしロックオンの

真の相棒となればこのハロしか居ないのだ。

 

「もう一度お願いします」

 

「……次は本気でやるぜ。実戦も必要だ。

ハロ、R2Sシステム構築」

 

「リョウカイ!リョウカイ!」

 

「ちょっと、私達も居るのだけ」

 

「悪いな、俺名義だ。1-1,使わせてもらう」

 

楯無の口を塞ぎ、ロックオンはカタパルトに入る。

R2からR2Sへと換装し、火が入るのを待つ。

 

「ロックオン、ススメ。ロックオン、ススメ」

 

「R2S、ロックオン・ストラトス。狙い撃つぜ」

 

発進し、対空するR2S。

そして対峙するブルー・ティアーズ。

 

「お願いします、学年最強の座。奪わせていただきますわ」

 

「それで良い、行くぞ。セシリア・オルコット!」

 

そして観客席にいる更識楯無、織斑一夏、

ラウラ・ボーデヴィッヒ、シャルロット・デュノア。

篠ノ之箒、凰鈴音の6名だ。

 

「ラファール・リヴァイブ・ショー・マスト・ゴー・オン。

それを扱うもう一人の……」

 

「しゃーますと?」

 

「違うぞ嫁よ、ショー・マスト・ゴー・オン。

幕は上げられた。山田先生の元専用機だ。

まぁ、今はロックオンが主人のようだが」

 

「…彼奴、私と戦った時は圧倒的なセンスと努力の賜物。

でも、戦闘経験の差で倒せたわ。でも今は」

 

「戦闘経験と言う意味なら私だが、

ロックオンは私と同じ強化人間だ。センスも含め、

セシリアには厳しいだろう」

 

「でも、セシリアを俺は応援する。クラスの仲間だからな」

 

「そうね、頑張れーセシリア!勝ったらキスしてあげる!」

 

「いっ…一夏さんの……ききっ」

 

「……おいおい」

 

ロックオンは呆れ多様に首を振る。

 

「俺には応援は無しか?」

 

「どうせ勝つでしょ。

私でも戦って6-4でしか勝ち越せないのに。

それに、見てるだけじゃ不満なの?」

 

「……いんや。勝利の女神様は常に俺を見てる。

そう言ってくれてるんだ。負けるはずが無い」

 

「……もう」

 

頬を赤らめる楯無と真っ赤な顔のセシリア。

ロックオンは変わらず冷静沈着だ。

 

「ハロ、リミッター解除。推力とあっちに回せ!」

 

「リョウカイ!リョウカイ!

リミッターカイジョ!90セコンド!」

 

「セシリア!」

 

鈴音が叫ぶ、R2Sのリミッター解除。

その恐ろしさを知るのは

 

「セシリア・オルコット、ここがお前の到達点だ。

その身で味わえよ!ハロ、セブンガンだ!」

 

「リョウカイ!リョウカイ!」

 

「開幕から本気ですわね!」

 

それは第2世代とは思えないほどの高機動。

自分の命より、機動力に割り振った状態。

 

「ワイヤーから離脱させろ!」

 

「60セコンド!60セコンド!」

 

「上等!」

 

「……あの時も観ていました。

貴方が…貴方が居るから、私はより惨めになる!」

 

「知ったことかよ!」

 

セシリア・オルコットからすれば同年代、

しかも戦闘経験も登場時間も勝っているはずの相手が

同じ代表候補生という立場の存在に勝った。

判定では敗北だが、勝者が誰かは誰の目から見ても明らかだ。

そして、今セシリア・オルコットはその相手に弟子入りし、

自らを成長させようとしている。

 

「ティアーズ!」

 

「怒りか…それで良い!」

 

感情の爆発、無意識な中での行動。

セシリアのブルー・ティアーズを扱うのに足りないのは

何か、それは意志だ。自らが出来ると思えば飛べる。

やってやるという意志がなかった。

勝てないではない、明確に倒すという意思がない。

だからこそ、コンプレックスを利用したのだ。

セシリアはイギリスからBT兵器とISへの高い適正。

それを見込まれたが、同い年しかも男で、第二世代機で、

やってのけた怪物がいた。

シミュレーター使用時間は常に1位であり、

スコアは勝てた試しがない。

努力という話なら、自分もやってきたのに。

 

「お前はきっと思うだろう、俺が憎いだろうな。

でもな、教えてやるよ。俺は、俺達は……

努力しなければいけない。し続けなければいけない。

特別扱いされ、夢を潰された誰かを忘れちゃいけない」 

 

「それだけで?!」

 

「そうだな!お前は貴族だ!お前は家を守るために努力した。

そして、その努力を受け入れられた!実ったな!

でもな、俺は違う。俺の努力はあろう事か、姉みたいな女に

踏み躙られ、俺が愛してる女も下らない特別扱いを最初に

してきやがった」

 

「それがなんだと言うのです?!」

 

「簡単だ…怒れ、全てにな!

怒りでコンプレックスを破壊しろ!

今の、お前のように!!!」

 

「わかりましてよ!」

 

それは完全なバレットサークルだった。

ロックオンの方が機動力は早く、回避までできている。

しかし、セシリアも負けてはいない。

 

「落ちなさい!!!」

 

「タイムアウトだ」

 

リミッター解除状態が終わり、一気に性能が落ちる。

そこにセシリアのバレットサークルによる射撃が全弾命中する。

ミサイルの爆発と土煙で一瞬視界が消える。

 

「はぁ…はぁ……はぁ……

やりましたわ」

 

「よくやったな」

 

そこにはスクラップ手前とも言えるラファールにのり、

悠然と佇むロックオン。

だが、ところどころ出血し血が流れ出ている。

 

「…危なかった。シールドが間に合わなければ、

また入院だ」

 

「大丈夫ですの?」

 

「大丈夫だ、掠り傷だからな。兎に角、

お前はバレットサークルを使いこなせた。

もし、駄目なら怒りで頭を空っぽにしてやってみろ。

今みたいに使えるはずだ。あと、戦いは最後までだ」

 

「へ?」

 

 

 

 

「最低ですわ!酷いですわ!容赦なしですわ!

鬼!悪魔!人でなし!」

 

「俺のSEを零にしなかったろう。本気の戦いだと、

言ったはずだ。相手に血が出る程度で終わらせるな。

そこにいる中国代表候補生と同じミスだぞ」

 

「いや、ロックオン。子供に血を見て止まるのは無理でしょ。

それこそ、ラウラちゃん位でもないと」

 

ロックオンは無理難題を話している訳じゃない。

相手を完全に沈黙させなかったセシリアの落ち度であるし、

特に卑怯な手を使って勝った訳でもない。

勝手にセシリアが油断しただけなのだ。

 

「むーーーーー!!!!!」

 

「……お前、本当に織斑十春よりも歳上なのか?」

 

ほっぺをぷっくらと膨らませる姿にロックオンは

額に手をあて呆れ返る。

 

「ロックオン、傷は良いのか?」

 

「出血しているがそこまでじゃないな。

保健室に行ってくる。そうだ、セシリア・オルコット」

 

「なんですか、人でなし!」

 

「見事な攻撃だった、良い腕だな」

 

ロックオンはラファールを外し、

荷台に乗せながらアリーナから消えて行く。

 

「素直に褒めれば良いのに…まったく。

一夏くん!今日の訓練は終わりよ。

復習、予習は忘れないでね。

私はこれから恋人の所に行かせて……」

 

その時、楯無の端末にメッセージが入る。

 

『更衣室、助けてくれ』

 

「……行かせてもらうわ」

 

〘まったくもう〙という気持ちと〘私が居ないと駄目〙

という嬉しさに包まれながら、更衣室に向かう。

 

「入るわね」

 

「……痩我慢なんてするもんじゃないな」

 

見るからに重症、

止血は終わっているようだが打撲痕はどうしても消えていない。

 

「保健室、連れて行くわね」

 

「悪い、楯無。ついでに、ラファールの始末書。

必ず書くから、俺のデスクの上に置いておいてくれ」

 

「へ?」

 

ロックオンを保健室に寝かせた後、

格納庫でラファールを見た楯無は絶句する。

ロックオンによる強制的なリミッターの解除により、

スラスター内部は焼け焦げ、撃破寸前まで陥ったラファール。

大破していないが、中破はしていた。

 

「整備課…行きね」

 

とりあえずはロックオンを叱る必要がありそうだと、

整備課にラファールを任せると、保健室に向かうのだった。

 

 

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