織斑の末弟   作:影後

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山田麻耶に敗北したハル。
しかし、ハルは必ずや勝利すると何度もハロが記録した戦闘データを確認し、自身の弱点、戦闘時の注意点を頭に刷り込んだ。


物語の始まり

 

1-2と札が飾られた教室、2つあるうちの後方の扉のすぐ近く。

1列目の5番目。それが、ハルの席だった。

 

「…」

 

参考書を開きながらじっと復習した内容を頭に入れ、ノートに書き起こす。そんな姿をあたりの女子生徒は不思議そうに見ていた。

 

「ロックオン!ロックオン!」

 

「ハロ、どうしたんだ?」

 

「ねぇ、貴男の名前は?私はティナ。ティナ•ハミルトン」

 

「トウシュン•オリムラだ。ハルと呼んでくれ。よろしく、Ms.ハミルトン」

 

「良いよ、私のことはティナで。よろしくね、ハル」

 

「あぁ、ティナ」

 

ハルとティナは握手を交わす。

そこには男女の差と言うのは無いように見え、純粋に微笑むティナにハル自身も優しく微笑み返すだけだった。

他の生徒はまだ距離を測りかねているようで、ハルに話し掛ける事はしない。 

 

「ハルはMiss.オリムラの弟なんだよね」

 

「そうだね、世界一格好良い姉だと思うよ」

 

「やっぱり姉弟だと違うのね、ねぇ、MISS.オリムラの話をもっと聞かせてよ」

 

新たに生まれた関係はまだ発展途上である、友人と呼ぶにはティナをまだ知らなすぎる。

簡単な雑談をしながら時間を潰していると、学園のチャイムが鳴った。

 

「ごめん、速く戻らないと」

 

ティナは二列目の3番目、ハルはティナの背を何処か羨ましそうに眺めた。

自分と違い、きちんとした目的がありこの場にいる。

そして、自分のせいでこの学園に来られない者がいた。

その重しがあるハルにとって、ティナの気楽さが羨ましい。

だが、その思いこそ間違いであると理解している。

彼女も他人を蹴落として、努力してここに居るのだ。

自分がそのような思いを抱くことは侮辱でしかないと。

 

「全員、着席しているのね。良い事よ、誠実さは常に人の根幹となる物だから」

 

入ってきた女教師は規律を重んじているのか、スーツもシワ一つ無く。近寄り難い雰囲気を醸し出す。

 

「今年はイレギュラーがこのクラスに居ますが、私は女尊男卑等と言う馬鹿は考え方は持ち合わせていません。そして、それは貴女達も同じであれとします。もし、侮辱したいのなら実力でやりなさい。後ろからや、隠れてなどみっともない事は止めなさい。良い?『勝利は、危険の中にこそ存在する』。覚えなさい」

 

「「はい」」

 

「素晴らしい返事ね。私の名前はエミリー•シールドルーフ。

ここのクラス担任よ。副担任は本日は休み、帰国に時間がかかると連絡を受けたわ」

 

そこから自己紹介が始まった。

5番目、ハルの番が来た。

 

「トウシュン•オリムラです。日本だと織斑十春。ハルと呼んでください。

IS学園射撃シミュレーター1位。スコア6900を記録しています。シミュレーターですが、命中率は96%。射撃では負けるとは思っていません。よろしくお願いします」

 

「ほぉ、挑戦的な生徒は嫌いじゃない。何時か、君の射撃の腕を見せて貰いたいわね」

 

ハルはクラスメイトとエミリーに軽く会釈し、席に座る。

自己紹介が進んでいく、ハルはそれをただ聞き流す。

名前と特徴だけを覚え、挨拶終わりに拍手をする。

それだけの流れ作業の筈だった。

 

「ティナ・ハミルトンです。アメリカから来ました!お父さんはアメリカ海軍のパイロットで、お母さんはJCSに勤務してます。卒業後はステイツの為に活躍する為、空軍を目指しています!よろしくお願いします!」

 

ハルは何故かティナの話はきちんと聞いていた。

始めて、友人というベクトルではない。

ティナはハルが個人的に興味を持った始めての女性だった。

時間が進み、クラス代表を選出する事となった。

ハルは自分に足りない経験を得る為に立候補を行った。

 

「ハル、なぜ自推をした?」

 

「戦いたいからです、自分は試験時[キリングシールド]に敗北しました。その時、アドバイスを受けました。まだまだ、経験が足りないと」

 

「ほぉ、それで?その後は」

 

「キリングシールドを倒します」

 

ハルの言葉には深い重みがある。

勝ちたい、その為に力を手にしたい。

ハルのそれは威圧として辺りに振り向けられ、誰もが言葉を失う。

 

「他に居ないのか?」 

 

「はい!私も!私も代表に立候補します!!

私はステイツの為に働くんです!日和見なんてしません!」

 

それはティナ•ハミルトンだった。

ハルの威圧を物ともせず、はっきりと物を言った。

だが、ティナを後に誰も立候補は居ない。

 

「二人か、なら……2週間、二人には私のサポートをして貰う。知っての通り、クラス代表とはそのクラスの顔だ。また、各クラスとの連携など、行うべき事は無数に存在する。一度就任したなら、余程の事がない限り全力を通して貰うぞ。良いな」

 

「「はい!」」

 

こうして、二人のクラス代表が生まれた。

放課後、ハルは与えられた部屋に来ていた。

必要最低限の荷物と自分の薬が机に置かれ、共に住むことになるであろう生徒の姿はない。

事前に相部屋になる事は女生徒に伝えてあるらしいが、誰なのだろうという不安がある。

そんな不安を一度回収しようとハロの整備を始めようとした矢先だ。

ハロが叫んだ。

 

「セイタイハンノウ!セイタイハンノウ!」

 

「あら、凄いわね。その機械」

 

ハルは即座にドライバーを右袖に隠し立ち上がる。

人の気配など感じなかった。

部屋に入ってきた?それもあり得ない、防犯の為か学園の個室の扉は少なからず音が出る。

つまり、ハルの背で喋っている存在は気付かれる事なくずっと部屋に居たと言うことだ。

 

「何のようだ」

 

ハルは恐怖を抑え込み、威圧する。

恐怖を支配してこそ、戦えるのだと知っている。

 

「両手を頭の後ろで組み、ゆっくり、こちら振り向きなさい」

 

その言葉に従い、ゆっくりと振り向く。

そこにはIS学園の制服を着用した水色のショートの女性が立っている。

手に扇を持ち、そこには[天晴]と書かれている。

舐めたように喋っているが、隙という隙は無い。

 

「織斑先生の末の弟で14歳って聞いていたけど…随分と野蛮じゃない」

 

「なんです?僕は何も」

 

「流れる様な仕草だったわね、右袖のドライバー。本当、気を付けて無かったら気付けなかったわよ」

 

と女生徒はヘラヘラと笑いながら話す。

しかし、その目は冷徹そのものであり、眼光はまるで狩人のソレである。

 

「……俺をどうするつもりだ」

 

「別に何も。おね~さんは貴男のルームメイトだし」

 

ハルは右袖からドライバーを取り出し、ファイティングポーズを取る。

幼少期、最低限の護身術は学んでおり簡単に殺されはしない。

 

「……監視か?」

 

「…へぇ、なんで?」

 

「俺がこの間合いに入られたんだ。並の奴じゃない」

 

「…更識楯無。この学園の生徒会長よ、宜しくね」

 

ハルはIS学園の校則という髪の束を事前に読んでいた。

その一節にある[生徒会長たるもの最強であれ]

IS学園の生徒会は学生からの推薦や投票だけでなく、実力で奪えてしまう。 

その為か、生徒会長の肩書はIS学園ではかなり大きく強大である。

だが、それ以上にたった一つの明確な称号を持つ存在が目の前にいる。

 

「学園最強」

 

「そっ、宜しくね。織斑ハル君?」

 

「……違う」

 

「え?」

 

「ハルは愛称だ。正式名称は十春(トウシュン)だ。初対面の相手に名前を間違えられるのは好きじゃないな」

 

「あの……それはごめんなさいトウシュン君」

 

「まぁ、以後はハルでよろしくお願いします。生徒会長」

 

 

 

IS学園での生活が1週間が経過した。

 

「ティナ、この書類の添削をお願い。あと、こっちに混ざってたラファールの使用許可申請。俺はアリーナの使用許可申請書類の添削をやるから」

 

「ハル、ありがとう。うっ…これ添削よりも書き直しお願いしたほうが良いかも。あっ、こっちにもアリーナの申請書類が混じってた」

 

ハルは事務作業等を的確にこなし、ティナもハルにサポートされながら二人でクラスの重要書類を捌いていく。

 

「二人共……凄いな。元々何を」

 

「部活に入れない代わりに生徒会役員として書記兼会計として活動していました。何故か出来るからと各部活動や委員会の予算案を渡された事も、重要書類の添削の経験もあるので」

 

「ママがJCSで内勤してるので、書類の大切さと素早い捌き方を教わりました」

 

数日間の事であるが、二人は学園での生活に尽力していた。

ティナはクラス代表として遜色ない活躍をする一方で、ハルは目立った活躍は少なかった。

主に1組の兄である織斑一夏と姉である織斑千冬関係の質問や騒ぎがあり、その度に頭を下げ、情報共有等を行っている。

しかし、書類作業に関してはハルに軍配が上がる。

 

「2週間の期限を設けたが、お前達何方も優秀だな」

 

「ありがとうございます」

 

「…いえ、ティナには及びません」

 

ハルはティナの人心掌握術を羨んでいた。

意見対立が始まればティナが先を見通した発言を行い、妥協点を見つけていく。

 

「ううん、ハルの書類捌きのほうが凄いよ」

 

ティナはハルの作業の速さを羨んでいた。

ティナよりも素早く書類を捌き、気付けば彼女に与えられた分まで手伝い始める。

更に、どんな小さなミスも見逃さず的確なアドバイスを行い書類を返還する。

 

「正直、お前達2人が居てくれるならなぁ……」

 

「マリア先生、二人が難しいから2週間で決めているんですよ?」

 

マリア先生、マリア•アーデルハイト•ベルガ•ミネス。

スペイン出身であり、1年2組の副担任を務めている。

 

「1組は専用機持ちどうしがやり合っているらしいわね、良くやるわよ」

 

「……専用機持ちだろうと、俺が狙い撃つ事に変わりません」

 

「まだ、ハルが出るとは決まってない」

 

ティナとハルは来るクラス代表戦に向けて常に燃えていた。

シミュレーターの使用許可申請も2人揃っての提出であり、良きライバルであった。

 

「頑張りなさいよ、若者世代」

 

「負けられません」

 

「どんな敵でも……」

 

「アイボウ!アイボウ!」

「俺とハロが、狙い撃つ」

 

 

 

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