織斑の末弟   作:影後

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ロックオン・ストラトス4

ひどい雨音の中で二人の男が叫ぶ。

 

「何故だ、何故理解できない!

その男も!お前の周りの女も!

お前をただの飾り程度にしか」

 

「違う…クリスは……クリスは俺の大切な人だ!」

 

「ラウル……お義父さん、もう止めよ?

もう良いよ、もう……」

 

「……お前も……お前も俺を怪物と罵るか!

奴等の……奴等のように」

 

それはオペラ座の怪人の一幕。

原作からかなり改変されては居るが、

そこに拘る『死』の物語は変わらない。

ロックオンのファントムが一夏のラウルに銃口を向ける。

 

「……終わりだ」

 

「駄目!」

 

それをシャルロットのクリスが護ろうとする。

激しい破裂音が響き、ロックオンの胸元が赤く染まる。

 

「無事か?」

 

ミフロイド役のラウラの持つリボルバーから煙が上がる。

ソレを受けたファントムは己の傷に触れ、

静かに嗤う。

 

「お義父さん!」

 

「……嗚呼、我が友よ。俺も今、ソッチへ」

 

「はい、止めて!ロックオン、何が不満なの?

何時も何時も、ほぼ完璧なのに最期だけ……」

 

「……悪い、俺だったらと思ってな。

俺だったら……こんな結末にはならない。

いや…悪いな、直ぐに」

 

「だったら……だったら見せてください。

ロックオンの…ロックオンだけのファントムを」

 

そう言われ、再び最後の場面に戻る。

ラウラのミフロイドに撃たれたファントムは

それでも逃げ出す。

憎しみと、怒りの執念に囚われていた筈の男は、

過去を走馬灯のように見ていた。

 

「何…してるんだろうな………」

 

全員が捌けたステージで、ロックオンは壁にもたりながら

じっとファントムの人生を見直した。

無論、過去なんて書かれていない。

ファントムと自分自身人生を重ね、入り込む。

 

「無様に負けて…俺自身の我儘で……

馬鹿だよなぁ……撃てなかった。なぁ……

クリス……俺は……お前を…護りたかっ」

 

最後まで言葉を発せず、最後の言葉を聞くものは居ない。

ただ、孤独に雨に打たれて死んでいく。

ロックオンもそうだった、問いを誰かに聞かれなかった。

自分自身、あんな馬鹿な事をして死んだんだ。

でも、それをしないと……自分は進めなかった。

進んでも…変われなかった。

 

「……駄目、その結末は嫌だ。そんなの嫌だ!

感動じゃない、ロックオンが魅せるファントムだから。

きっと皆心打たれると思う。

でも、それは演技じゃないでしょ!

私の脚本だし、皆に合ったキャラ。キャラなの!

なんで…なんで本気で死に方を言ってるの!」

 

「演技だよ……流石にこんな死に方は悲しすぎる」

 

「でも……ロックオンのファントムの結末のほうが……」

 

「うん…悲しいけど、辛いけど…

ファントムはそれでいいと思う」

 

演技の練習が終わり、解散となる。

 

「へぇ…組み合同で演劇ね〜。

まぁ、それでファントムなのは良いけど」

 

「まぁ、目はとっくに無いからな」

 

「……それ止めて。あと、ラファールは直ったわよ。

その代わりに貴方は彼等に連携訓練をして」

 

「だとしたら余計に仕事が増えるな」 

 

「頑張りなさい、会長命令よ」

 

「オーライ、やれることはやるさ」

 

翌日、練習等も終えたロックオンは

シミュレーターに専用機持ち達と入っていた。

 

「フォーメーションSW2」

 

「SW2?!」

 

「事前に教えたろうが!」

 

「SW2は白式を中心に隣に僕とラウラ、

後にセシリアとロックオンの居る陣形だよ」

 

「嫁よ、厳しいと思うが必要な事なんだ。

我慢してくれ」

 

シミュレーター内の仮想空間ならばどんな事故も起こらない。

だからこそ、フォーメーションの訓練に最適だ。

 

「次、AW」

 

「ちょっと!箒此方は私よ!」

 

「すまない、鈴!」

 

「……」

 

1度目はフォーメーション自体を把握していない一夏、

2度目は箒のミスにより瞬時にフォーメーションの展開が

できていない。

 

「ロックオン、少し厳しく」

 

「厳しくしなきゃいけねぇ、一夏と篠ノ之は狙われる。

一夏の狙われる理由は俺と同じ男だから。

そして、篠ノ之が狙われるのはあのテロリストの妹で、

第4世代なんて物を唯一所持してる。

もっと言えば、お前等が弱いのもある」

 

「…む、ハル。だがお前も」

 

「なら、第2世代機で第3世代機を落とせ。

俺と同じ事をしてみろ、少なくとも

ラファールか、打鉄で専用機持ちを倒してみせろ。

セシリアは駄目だ、まだ弱点が目立つしバレットサークルも

粗が目立つ。俺が良しとするまで、お前は特訓だ」

 

「やっぱり最低ですわ!酷いですわ!容赦なしですわ!

鬼!悪魔!人でなし!サディスト!」

 

「かぁ……変なの増えやがった。まったく……

兎に角だ、そもそもお前等は弱い。タックで

シャルロットとラウラに挑み、認められる様にはなれ」

 

「ちょっと……なんでアタシを抜いたのよ!」

 

「…お前達は一夏に教えると言ったが、

鈴音は擬音ばかりで、篠ノ之は肉体言語。

セシリアは理論的すぎる。

その点、シャルロット、ラウラは教え方が上手い」

 

「待ちなさいよ、ラウラは」

 

「俺が知っている、面倒見が良いのも……

変に執着しちまった所も。お前は忘れたかも知れんがな、

俺はラウラとチームアップして、シャルロットと織斑を

相手に戦ってたんだ。俺が認めた相手だ。

お前に何か言う筋合いはない。

ハッキリ言うが、お前ら3人は教えるのに向いてねぇ」

 

「……わかったわよ」

 

「なんだ、随分と素直だな」

 

ロックオンからすれば、鈴音の性格を知っている都合。

反論し、何か言ってくると想像していた。

だが、思いの外聞き分けがよく嫌な顔をしながらも、

素直に引き下がったのだ。

 

「私だって理解してるわよ。

実際、何度か命の危機に瀕してる奴を見てるしね。

態々巻き込まない為に、自分一人で終わらせようとする

昔の弟分のことなんだけど」

 

「…知らねぇ話だ。

他にも部隊指揮官としての経験もあるだろう。

俺も、お前等以上に面倒な坊主達の貧乏籤引いていた。

経験の差だ、経験の」

 

「ビンボウクジ!ビンボウクジ!

ティエリア!セツナ!アレルヤ!」

 

「ハロ、お前……まったく」

 

ハロもやはり記憶というかメモリーがあるのだろうか。

織斑十春が作ったはずだが、どうしてもあの戦いと、

仲間たちを知っているように思えてしまう。

だが、貧乏籤は辞めてほしいが。

 

「貧乏籤?」

 

「兎に角だ、連携が出来てれば強くなる。

特に、あの兎のテロリストに言わせれば

紅と白はツーマンセルを前提としてやがる。

そこに射撃支援機が居て3マンセル、4マンセルと、

なれれば戦場も有利になる。憶えられるようになれよ」

 

 

その日は時間ギリギリまでロックオン達は訓練を行った。

更識が教えるよりも、同学年で教え合う方が良い場合もある。

模擬戦と模擬弾訓練、連携の方は中心が初心者たちの為

中々成長しないが、少なくともセシリア・オルコットは

ロックオンの指導のもとで着々と成長していた。

 

 

生徒会室で訓練の様子を流していた更識はふと、

そんな言葉を話した。

 

「今年の1年生は豊作……豊作であってるのかしら?」

 

「お嬢様、豊作というより優秀な指導役が3人居るためかと」

 

「ロックオン、ラウラちゃん、シャルロットちゃん。

この3人がずば抜けているのよねぇ」

 

それは戦闘力という意味ではない。

指導力という点だ、ロックオンは接近戦をしたがらないが、

接近戦でも上位に位置している実力者。

ラウラは軍人、シャルロットも代表候補として十分。

問題なのは、3人中2人が射撃戦主体なのだ。

 

「接近戦を教えられる人、私ぐらいなのよね」

 

「ロックオンはその、凄い嫌な顔していましたね」

 

「スナイパーの矜持だ、そうよ。

でもブレードも強いし多分一夏君程度なら

ブレードオンリーで勝てるわよ。絶対しないけど」

 

「スナイパーですものね。

それで、お嬢様。お仕事は」

 

「ロックオンに任せるから良いわ!」

 

「嫌われますよ?」

 

「それは嫌!」

 

生徒会長とその従者の雑談は一人の男が

入ってくるまで続いたのだった。

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