織斑の末弟   作:影後

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ロックオン・ストラトス5

いよいよやってきた学園祭当日。

ロックオンはただファントムの最後のため、

己の人生を振り返っていた。

もうクライマックスにはいる寸前。

 

「何…してるんだろうな………」

 

全員が捌けたステージで、ロックオンは壁にもたりながら

じっとファントムの人生を見直した。

無論、過去なんて書かれていない。

ファントムと自分自身の人生を重ね、入り込む。

 

 

「無様に負けて…俺自身の我儘で……

馬鹿だよなぁ……撃てなかった。なぁ……

父さん……母さん……俺は」

 

結末は変えた。

だが、その変わった結末にあったのは、

ただ只管の空虚だった。

ただ孤児だった少女を娘として守りたかった父親の狂気。

PTSDも病気だと受け入れられなかった時代の産物。

見るもの全てに植え付けたのは、深い空虚と悲しみだ。

ファントムにとってのバッド・エンド。

しかし、他の者達にとってはグッド・エンドだろうか。

 

「……たく、普通最初にやるか?」

 

「仕方が無いよ。劇の都合、映像撮る必要もあるし」

 

「リハ流せよ、本番流すなよまったく」

 

全てが終わり、ロックオンは生徒会役員として仕事にはいる。

1組2組合同劇が一番最初に終わったのは、

その後の物販コーナー設立の為でもある。

何故か、各キャラの写真集やらまで完成しており、

練習中の風景やらも撮られただけでなく、

今作のパンフレットも販売している徹底ぶりだ。

ファントム以外のキャストとのツーショットもある。

 

「……生徒会役員の空きは1名。

会長は行方不明、副会長はクラスの催し。

トラブルは多種多様、面倒な事だ」

 

迷子から禁止区画への侵入未遂。

窃盗や不法侵入に盗撮、学園祭という警備の穴を付いた

事件が起きすぎており教員だけでなく、

生徒会役員も駆り出されているのだ。

 

「あ、ストラトス君」

 

「山田先生、警備員は何してるんで?

軽く7人は捕まえた。しかもあれ迷子を装ってるが、

全員がどっかのスパイだ。許可さえ貰えれば」

 

「駄目ですよ!ストラトス君は生徒なんですから!」

 

「その生徒に不審者を捕まえさせてる人が言いますか?」

 

「うぅ…すみません。

でも、此方も人手が足りないんです……

ストラトス君のおかげで多少楽になってますから!」

 

恩師にそう言われるのは悪い気持ちはしない。

が、それはそうと警備責任は重大だ。

 

「後で織斑千冬に文句を。

それで?山田先生はなんで俺を」

 

「「兄さん」」

 

「っと…お前等」

 

「その、ストラトス君を探していらしたので」

 

「呼ぶだけ呼んどいて迎えなしかよ」

 

「もう!ライル兄さんは文句ばっかり」

 

そこに居たのはライル・ディランディと

エイミー・ディランディの2人だった。

ライルはロックオンのように成長しており、

身長差はライルの方が3cm低い。

 

「ライル、エイミー、見せたくなかったな。

今の俺の顔は」

 

ロックオンは顔を隠すようにするが、

ライルもエイミーも知っているのかロックオンの

左腕を抑える。

 

「知ってるよ。ニール兄さん」

 

「アンタはそれで良いのかよ」

 

「俺はテロリストを許せねぇ。

必ず殺す、探しだして、父さんと母さんの仇をとる」

 

「アンタは…アンタはエイミーの事を考えてねぇ!

死んだと…思ってたんだ!俺も、エイミーも!

なのに…急に帰ってきやがって!それで復讐だ!?

巫山戯んなよ!俺達弟妹に迷惑ばかりかけて…」

 

「ライル兄さん!」

 

「いい、エイミー。ライルの言う通りだ。

ライル、俺はお前達二人の生きる世界を少しでもマシに

したかった。でも、できやしなかった。

子供一人の力じゃ何もできない。

でもな、今は力がある。必ず成し遂げる」

 

ロックオンはその拳を血が出るまで握り締めた。

2度も同じミスはしない。

今度こそ、勝ってみせるという固い決意。

 

「死ぬ気かよ」

 

「さぁな、ライル、エイミー、楽しめよ」

 

「逃げるのかよ!ニール・ディランディ!!」

 

ライルの叫びにロックオンは振り返った。

 

「違うな、ニール・ディランディは死んだ。

此処にいるのは、ガンダムマイスター。

ロックオン・ストラトスだ」

 

それはある意味での弟妹との決別。

ニール・ディランディも死んだ、織斑十春も死んだ。

此処にいるのは、ロックオン・ストラトスという存在なのだ。

 

「もしもーし、聞こえる?」

 

「会長、何してるんで?

此方はスパイや犯罪者を捕まえるので忙しいんだが」

 

「生徒会の催し、手伝ってほしいのよ」

 

「そんな話聞いてないが」

 

「言ってないもの」

 

そしてロックオンはあれよあれよと

まるでSPの様な風貌に変化していく。

何処かの誰かを護衛しろとでも言うのだろうか。

非殺傷用のゴム弾を装填したM37(チューブ延長型)

を持たされ、

スタンロッドも。

冗談抜きで暴徒鎮圧でもさせるつもりなのだろうか。

予備弾薬はガンベルトにある30発と装填してある7+1発。

 

「催し物だろ、何でこんな」

 

しかもスーツの下には防弾チョッキ。

スーツ自体もカーボンナノチューブで防弾防刃仕様。

本当に何をさせる気だとロックオンは頭を悩ませる。

 

「むかしむかし、

ある所にシンデレラという少女が居ました」 

 

シンデレラ、それが催し物?

ロックオンは訝しむが、目の前に現れた存在に血の気が引く。

 

「え?ハルも呼ばれたのか?」

 

「……足りねぇよ」

 

一夏と共に舞台セットの舞踏会場に入ると、

嫌な音声が流れ始めた。

 

「否、それはもはや名前ではない。

幾多の舞踏会をくぐり抜け、数多の兵士達を薙ぎ倒し、

灰燼を纏わぬことさえ躊躇わない最強の兵士たち。

彼女らを呼ぶに相応しい称号それが……

灰被り姫(シンデレラ)

 

「そして、それに対するのは史上最強のエージェント。

テロリストへの復讐に燃える正義の味方」

 

「つまりは合法的にか」

 

そこに居たのはニール・ディランディの精神ではない。

織斑十春の精神が表に出て、高笑いを上げる。

 

「今宵もまた、血に飢えたシンデレラ達の夜が始まる。

王子の冠に隠された軍事機密を狙い、

舞踏会という死地に少女たちが舞い踊る!」

 

「ハァぁぁ!貰ったぁぁぁぁ!!」

 

「はっ?!」

 

いきなり現れたのは鈴音だった。

だが、あり得ないことにイサカM37の銃口が火を吹く。

 

「最高だよ…最高だよ会長!

ありがとう、ありがとう御座いました!

俺は、俺のストレスの原因達を合法的に打ちのめせる!」

 

「あー……護衛君。君の仕事は護衛だよ!

ちゃんと一夏君を護ったり、してあげ…」

 

「護衛対象も復讐対象だ、多少傷ついても仕方ない」

 

「アンタ本気なの!」

 

「本気も本気だ、始まりの敵が貴様とはな…

数々の雪辱、ここで晴らす」

 

「ハルの馬鹿!邪魔するな!」

 

「生憎だな、今の俺は護衛Aだ」

 

ロックオンは一夏を利用しながら接近戦をする。

スタンロッドで気絶させれば勝利だ。

やりようはある。

 

「はっ!やっぱり生身だと私達には劣るわね!」

 

「なんだと……誰が劣るだ!」

 

「ヤバっ…」

 

鈴音は手裏剣などを投げ、

牽制しそのまま懐に入り込もうとしていた。

だが、ロックオンもエージェントだ。

キャラではなく、経験の差がある。

命のやりとりをしてきた差が。

更に言えば、地雷とも言える一言を受けたせいで

織斑十春の方の理性が吹き飛び怒り心頭という状態だ。

地面に倒れた鈴音を押さえつけ、その額にM37を向ける。

 

「ちょっと!シャレになって」

 

「……寝ていろ」

 

殺すつもりはない、スタンロッドで気絶させるのみだ。

だが、多少なりともスッキリしたのは事実だった。

 

「おっと、早くもシンデレラの一人が倒された。

怒りに任せているように見え、冷静さを失っていない!

これこそ最強のSP、王子の護り手なのか!」

 

「えと、ハル?」

 

「気絶しただけだ。行く…か!……」

 

その時だ、ロックオンの胴体に衝撃が走った。

 

「走るぞ!」

 

「え?ハルなんで」

 

「狙撃だよ!頭を狙わないのは慈悲か?

それとも……兎に角くそ、何撃たれた」

 

ロックオン達がステージから離れると後方では静かに唇を

噛み締める少女がいた。

 

(まさか、ロックオンさんが

護衛に居るとは思いませんでしたわ。

それに、麻酔弾では勝手が違いすぎますわね)

 

そう、狙撃したのはセシリアだ。

ロックオンに仕込まれたのは狙撃ではない。

これがロックオンなら頭を外さないが、

今回セシリアが使っているのは5発装填のダーツ弾。

有効射程30mから50mの代物だ。

顔は危険だから撃つなと厳命されており、

それ以外なら何処を撃っても最大3発で眠りにつく。

だが、ロックオンの装備が意外すぎた。

 

(まだ機会はあります、

IS用装備の使用は禁止、ならば勝ち目は……)

 

スナイパーは居場所を晒さない。

セシリアはドレスを身に纏いながら、

次の狙撃ポイントへ移動した。

 

「……ドローンで撮影か?」

 

「そのドローンは壊しちゃ駄目よ。

サービスシーンとかも撮ってるから」

 

「そうかい」

 

客人もいなくなった校舎でロックオンは自身の手当てを

していた。セシリアに撃ち込まれたダーツの一本が

腕に当たっていた為だ。

上半身、スーツ、シャツと脱いで行き、ダーツを抜く。

何故か血が出ていないが、たった一発受けただけで欠伸が

止まらない。

 

「おっと、なんという事だ。

護衛は麻酔弾を受けてしまった!

睡魔に襲われながらも、王子を守れるのか?!」

 

カーボンナノチューブの癖に針は通すのかと

文句を言いたくなったが、遊びで叫んでもしょうがない。

 

「おい、大丈夫なの」

 

「……護衛対象だ、守り抜くから少し黙って……」

 

「無事か!嫁!!それとロックオン!」

 

「大丈夫?!一夏、とロックオン!」

 

「ついでか……やべぇ……」

 

「おっと、王子様の眠りならぬ護衛の眠り。

意識が段々と落ちていく」

 

周りが五月蝿いのにどうしようもない。

眠いのだ。

 

「嫁は私、この義姉に任せろ!」

「ちょっとラウラ?!私にも任せてね!」

 

嫌な予感がするが、

まあ狙撃や手裏剣使う奴よりはマシだろう。

ロックオンは重くなっていく瞼にを任せ、

闇へと堕ちていった。

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