織斑の末弟   作:影後

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ロックオン・ストラトス6

「ふぅ………がぁぁぁぁぁ」

 

ロックオンは寝ていた筈だったが、直ぐ様目を覚ました。

眠りにつこうとした瞬間、

何者かがスタンロッドを自分に突き立てる。

 

「何という事だ!

エージェントは自身を痛め付けることを厭わない!

しかし、王子は既にシンデレラに攫われた!

どうする、エージェント!!」

 

「誰だ俺に!」

 

だが、ロックオンの周囲に人の気配はない。

ただスタンロッドが落ちているだけだ。

だが、確実に誰かが居た。

気配がした、恋人の気配では決してない。

知人の気配ではない。

だが、何処か近くにいるような気配。

 

「ハル!助けてくれ!!」

 

「……ちっ」

 

「義弟!シャルが裏切った!!」

 

「えぇ!ラウラのが」

 

「……嘘だろ」

 

かなり面倒な状況に理解が追いつかない。

スタンロッドをシャルロットに向けるラウラ。

ハンドガンと盾をラウラに向けるシャルロット。

 

「織斑、どっちが敵だ!」

 

「何ということだ!まさかまさかの土壇場の裏切り行為!

王子は理解できていないぞ?!どうするSP」

 

ラウラとシャルロット、共に友人の関係。

 

「動くな!お前達二人が動けば王子の命はない」

 

「「はぁぁぁぁ?!!!!」」

 

「え?ちょ…護衛が何してるのよ!!」

 

スタンロッドを一夏の首に当て、そのまま下がる。

 

「お前達はこの王冠が欲しいんだろ?

知ってたか、王子の意識がなくなった瞬間。

この王冠は爆弾に早変わり、

お前達からしたら目的は不達成になる。」

 

「この護衛!何考えてるのよ!!

貴方の方がテロリストじゃない!!」

 

「うるさい!どうした、動けば王冠は手に入らん」

 

「く……ロックオンめ、このような手を」

 

「実の兄を人質にするなんて!非道だと思わないの!!」

 

「知るか!積み上がる始末書、

クラス代表がほぼ毎朝居ないHR!

其れ等に伴う二次災害!いい加減にしろ!

俺はもう疲れてる!正直、狙撃された時、

寝れたと思ったら、何者かにスタンロッドで叩き起こされた!

さっきまでも産業スパイや、どっかの国の諜報員。

そんなの相手にしてたんだ!俺を休ませろ!

警備も足りない、人手も足りない!何もかもが足りない!」

 

後半ら辺からロックオンの愚痴になると、

シャルロットもラウラもただ悲しげな瞳になる。

自分達がこうなる裏で、

ロックオンや教師陣は酷く大変な思いをしていたのだろう。

 

「後ろがガラ空きだ!」

 

「王冠ガード!」

 

「いてぇ!」

 

「すまない一夏?!」

 

「ヒュー、サムライガール!想い人の頭に……

え?竹刀じゃなくて、スポンジ棒…本当に何もって」

 

「危ないからと」

 

「……スポンジ棒……スポンジ棒か……

いつもそれなら、何れ程俺が……

僕がどれだけ苦労したか、箒姉さんは理解できないんだな。

壁を壊し、邪魔をする。

アンタや彼奴を義姉と思いたくないのはそういう点だ。

それだったら、素直に告白してきたボーデヴィッヒさんの

方がいい!良いか、朴念仁、唐変木が遠回しに言って聞くかよ!真正面から行け!シャルロットは混浴したらしいぞッ!」

 

「なっ?!ハルなんで知って?!」

 

「待て!本当に悪かったと思っているんだ!

だから正論で攻めるな!それに!ラウラのアレは告は…

待て…一夏貴様ッ!」

 

「ちょっと!なんで僕までも刺すのさ!」

 

「流石ロックオンだな!よくわかっている!!

とり合えず嫁よ!私と風呂にはいるぞ」

 

織斑十春の意識が表に出てきてしまっている。

怒りに任せた、いや怒りを通り越した呆れ。

 

(今ですわ)

 

そして、絶好の機会をスナイパーが撃たない訳がない。

二発目のダーツを確かにロックオンに向けて撃つ。

 

「へ?」

 

「……は?」

 

元々酷く疲れていたのもある。

だから1回目の射撃で寝たかったのだ。

首に刺さったダーツ、それを撃たれ完全に意識を失った

ロックオンは偶然にも一夏の頭から王冠を奪い去った。

 

「ちょっと!

誰でもいいからロックオンからそれを奪いなさい!

さすがに冗談じゃないわよ!」

 

王冠は織斑一夏との同室を手に入れる権利。

無論、そこにロックオン・ストラトスは入っていない。

更識楯無は大切な二人部屋を手放す気は無ければ、

ロックオンの気持ち、警備的な観点から同室は否定だろう。

という願望がある。

兎に角、ロックオンが手に入れることは想定外なのだ。

 

「セシリア!なんてことをしてくれた!!」

 

「知りませんわ!と言うか、本当なら3発で眠りにつく筈で」

 

「それは薬剤の循環を考えてだ!

そもそも一発目を何処に撃った!

背中で、今回は首だ!ロックオンは完全に寝たぞ!

くっ…全然離さん!!」

 

「ちょっと!待って、本当に…握力強すぎだよ!!」

 

「駄目だ…ハルと同室に」

 

「え?同室ってどういう事だよ」

 

「一夏、お前はしらんで良い!!」

 

「えーーと、ハプニングが起きました。

護衛の回収とかわりの王冠を用意しますので、

5分ほどその場で待機してください」

 

短い時間であったが、

学生に酷い印象を植え付けたロックオン。

それを楯無は虚と共に担架で運ぶ。

 

「生徒会室のソファで寝かせましょう。

まさか、ここまで疲労してるなんて。

あの薬、せいぜい1分程度で目を覚ますのよ?!

今のこれ、完全に熟睡じゃない!」

 

「…考えたらストラトス君は激務続きでした。

片目を失い、それを補う訓練だけでなく、

演劇の練習、そして基礎体力向上の為の…」

 

「……睡眠薬で無理矢理寝てたみたいだからね。

驚いたわよ、私が不意にベット横のタンスがおかしい。

そう思ったら、隠し棚が作られてた。

部屋の中に監視カメラは私もいるからつけてなかったわ。

やるとしたらきっと深夜ね」

 

「……お嬢様、彼を本格的に更識家に」

 

「虚ちゃん、何を」

 

「私生活を共にし、小さな違和感にも気付く。

良いではありませんか。アイルランドだけでなく、

千冬先生にもパイプが」

 

「止めて、私はまだ政治的観点で話をしたくないの。

せめて、学生のうちなら彼とは…一人の女の子として」

 

「…始めて聞いたな、お前の本音」

 

「……最低なタイミングで起きたわね。

熟睡してたんじゃなかったの?」

 

ロックオンは一度身体を延ばすとゆっくりとソファに座る。

眠気は完全に消えた訳では無い。

むしろ、このままソファに横になりたい。

 

「寝てるさ、実際眠いしな。

でも、惚れた女が呼んでるなら俺は常に側にいる。

だが…まぁ眠い、本当に眠い。

あの場所でロックオンとしての俺でもない。

ニール・ディランディでもない、織斑十春が出た。

まぁ良いさ、割と本当に眠いんだ」

 

「酷く疲れてるのはわかるけど、

流石に私の仕込みを潰しに来るとは思わなかったわよ」

 

頬を膨らまなせながら文句を述べる楯無。

ロックオンのほうはそう言われてもと言いたげな表情だ。

 

「あ〜、まぁ、その……」

 

別に謝れば済む話だろうが、

普段見せない姿を見せているのだ。

ロックオンとしてはそのような所も気に入っている。

その時だ、学園内から爆発が起こった。

 

「……テロだと」

 

それはロックオンにとって、

ライル・ディランディにとって憎しみと、

怒りの沸点を爆発させるには十分だった。

この世界のアイルランドで、傷ついたエイミー。

あの世界で失った家族たち。

 

「ちょっと!何処に」

 

「うるせぇ!邪魔するな!」

 

普段なら絶対に言わないだろう事、

止めようとした楯無の身体を突き飛ばし、

怒りに燃えるロックオンの瞳は静かに、

そして確かな目的があった。

 

廊下に出れば火災警報器が鳴り響き、

教員が避難誘導を行なっているのが見える。

特に実力のある人員はテロの制圧に向かっても居るだろう。

 

「おい!何をしている!此方へこい!」

 

ロックオンを見つけた教師が叫んだがロックオンは無視し、

廊下の窓を開けた。

状況を認識するなら高い位置が良い。

スナイパーであり、戦争をしてきた経験からだ。

 

「お前は…ロックオン?」

 

「マリア先生ですか。

ロックオン・ストラトスはこれよりテロ鎮圧に向かいます。

戦況は?」

 

「無人機が多数、学園を攻撃。

既に学園内部へと侵入を許してしまった。

戦闘力の高い教員はソチラへ対処にむかっている。

一部は私のように避難誘導及び避難者の護衛だがな」

   

「…面倒だな」

 

ロックオンの機体は屋内戦を想定した機体ではない。

GNピストルにGNサーベルはあるが、

そもそもMSをIS規格に落とし込んだもののため、

アイルランドのISは全体的に屋内戦はできない訳では無いが、

不向きな機体が多い。

 

(父さん?母さん?エイミーッ!)

 

「そうだ……」

俺は、俺はこんな世界を変えるために……

 

「ロックオン・ストラトス。援護に入る」

 

「おい、何を!」

 

窓から飛び出すとデュナメスを起動する。

ここは既にロックオンが生きた場所。

学園という生徒の生きている生活圏ではない。

死の匂いが蔓延する、戦場だった。

 

 

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