「ハロ!シールドだ!」
「リョウカイ!リョウカイ!」
R2Sは有線シールドを正面と背後のスラスターの邪魔にならない位置に配置する。ハロは常にハルの行動を阻害することは無い。
「嫌ね、貴男の相棒は」
「クソッ……」
「汚い言葉を吐くのはモテないわよ?」
「そうかい……」
楯無のIS『霧纒の淑女(ミステリアス・レイディ)』とハルは戦ったことが無い。だが、見える武装はランスとそのランスに備えられた4門の小型ガトリング砲であり、射撃戦であれば自分に分があると考えていた。
「ちぃ…」
ハンドガンを連射しているが、楯無は予測しているように回避する。学園最強の称号は伊達ではない。
対人戦闘の経験が少なすぎるハルは少しだが、焦りを持つ。
「あら、来ないなら…お姉さんから行くわよ!」
「ランスの間合いに入らなければ!」
「残念!武装はまだあるの!」
「シールド!」
「ボウギョ!ボウギョ!」
サーベルが展開されたと思ったら、それは蛇腹剣だった。
バックスラスターをしていたハルに迫る斬撃をシールドで防御する。
「ちぃ!」
だが、ハルは反射でスナイパーライフルを楯無に撃つ。
しかし、その弾丸はランスで弾かれた。
「また、離れたという訳ね」
距離を取れば有利なのは違いない。だが、攻めきれるビジョンが見えなかった。
(……会長は俺の動きを知っている?なら、やる事は一つだ)
「乱れ撃つぜ!」
「これは!」
ハルはサブマシンガンを乱射する。
数撃ちゃ当たるではない、跳弾で確実に命中させる。
「くっ!山田先生が後継者にする理由ね……でも!」
「ハロ!大盤振る舞いだ!」
「パーティ!パーティ!」
ハロはシールドを楯無の周りに浮遊させる。
ソレを確認したハルはサブマシンガンを撃った。
「キリングシールド!」
「違うなぁ!まだまだだぁ!」
ハルは盾に当てて跳弾させるだけでなく、壁や他の物に当てて全てで跳弾させている。
「嘘!なんでこんな」
「さぁな、やれるんだからやるんだよ!」
何度も跳弾し、楯無の予想外の一から弾丸が飛んでくる。
初めての特殊兵装でここまでやれていることに驚きつつ、ISの操作に関しての努力を内心で讃える。
乗れない代わりに休み等を全てシミュレーターで過ごしていたのは知っている。
今現在の1年生でハルと同じだけシミュレーターをしている生徒など居やしない。
「くらいなさい!」
「ハロ、弾き返せ!」
「ムリイウナ!ムリイウナ!」
そう言いながらもハロはシールドに傾斜をつけてガトリング砲の前面に配置し、何枚ものシールドで反射し返す。
ハロのサポートとハルの射撃センスと操縦センスが合わさり、恐ろしく凶悪だ。跳弾により威力は減衰しているが、ハルは跳弾がメインではない。あくまでも応用であり、基本は高い命中精度によるスナイピングだ。
「…はぁ……」
「うそ……ガトリング砲の銃身が!」
距離が離れればそれだけ有利になる。
ハルはランスに付属されたガトリング砲を破壊した。
遠距離攻撃がなくなれば、レンジの差で有利に立てる。
「流石ね、でも…インファイトはとうかしら!」
「残像…いや…なんだ!」
霧纏の淑女(ミステリアス•レイディ)の居た位置に射撃をしたが、そこには実態がなかった。
それどころか、同じような物がそこら中に配置してある。
「何で!」
「俺に……サーベルを」
楯無はランスを視認範囲外から振り下ろした。
レーダーもジャミングしてあり、見えるはずがなかった。
「俺に、サーベルを抜かせた?!」
「そういえば、スナイパーのプライドかしら。近接兵装は抜きたくないのよね」
「よく、ご存知で……たった今、破られたけどな!」
鍔迫り合いをはじき飛ばし、両手にピストルを持って楯無に向けて射撃する。サブマシンガンにも等しい連射。
通常でも難しい行動をいともたやすく行っている。
「やぁ!」
「くそ!」
ハンドガンが破壊され、サーベルを右手に持つ。
ハンドガンとサーベルという、インファイトを優先した武装。
R2Sと霧纏の淑女の睨み合い。
「随分と粘ってくれて……これじゃあ奥の手使ってあげようかしら」
「ハロ!リミッター弄くれ!」
「リョウカイ!リョウカイ!」
R2Sの動きが変わる、楯無からしてもあからさまな加速を行いまるで、高速戦闘仕様かと思わせる。
「…まさか」
「60セコンド!60セコンド!」
ハルの画面にはタイムリミットが表示されている。
ハロを使い、防御に割くエネルギーに全て割り振ったのだ。
ISの内部システムの弄くりは完璧なハッキングであり、学園の備品であるラファールを通常なら出来はしない。
しかし、現在はシミュレーターであり、シミュレーターを書き換えることなどハロにとっては簡単だ。
「はぁぁ!!!」
「これだから天才っていう人種は!」
「俺は天才じゃない……誰でも届く。努力さえすればな……俺はただ只管に…突き進んだだけだ!」
「っ!良い顔をするじゃない…おねーさん、益々気に入ったわよ!だから、奥の手で仕留めて上げる」
「くっ…回避が」
「ミストルテインの槍よ、初めてね。ここまで私を本気にさせたのは」
ミストルテインが槍、北欧神話のヤドリギの槍である。
バルドルの唯一の弱点であるそれがR2Sに振るわれた。
「……流石に、きついわね」
諸刃の剣であるその一撃であたりが爆炎に包まれた。
「あぁ……あんたもせめて、倒れてくれ」
「!」
楯無は気付かなかった。自身の正面に既にハルは居た。
ミストルテインの槍を受け、装甲は剥がれ敗北寸前であった。
だが、サブマシンガンを楯無の腹部に押し当てている。
「がぁ」
0距離からサブマシンガンが無慈悲に放たれ、楯無は落下していく。だが、その時に楯無の視界にWINNERの文字が浮かんだ。
シミュレーターから出ると、丁度良くハルも出てくる。
「……やってくれたわね、春くん」
「ただで負けるわけにはいかないんだよ。一矢報いる、それぐらいはやらんとさ。それに…俺は成層圏まで狙い撃つ男。ロックオン・ストラトスだ。お前のことも、狙い撃ってやるよ」
ハルではない、1人の男の顔で確かに楯無へと言い切り、静かにシミュレーションルームを出ていく。その背中をみながら、楯無は一人取り残された。
「……くっ、良い顔するじゃない。でも、顔だけの男なんて………」
その時だ、シミュレーター室の扉があき冷えた目をした女性が入ってきた。
「何してるんですか、お嬢様」
「アッアッアッアッ?!!虚ちゃん?!なんでいるのよ!」
「何故って………一緒に来たからでは無いですか」
「あっ……そうね、そう」
「2歳差は別に問題はありませんが、顔で堕ちるのはどうかと」
「ちょっと?!」
廊下を歩きながら、ハルは肩にのるハロと会話を続けていた。
「ハロ、リミッターの解除は本番で使えるか?」
「カノウ!カノウ!」
「……機動力を大幅に増幅させ、自身の身体を守る最後の砦(絶対防御)もない。復活まで、最低2分は機能不全。だが………」
ロックオン・ストラトスの拳に力が入る。
「あぁ、やってやるよ。俺の…俺達の運命を変えた奴を、撃ち抜くまではな」
誰もいない廊下がロックオンの目には別の何かに見えた。
自分の知らない誰かが、常に呼び続けている様な不思議な感覚も起こる。だが、突き当りで現実に戻される。
「あっ…ハ」
「………次の対抗戦。俺は生徒会として参戦が決まった。お前の……お前が踏み躙った物も含めて、狙い撃つ」
「あんた……誰よ」
ハルとしての顔ではない、ロックオン・ストラトスとして明確な敵を射殺しようとする殺意があった。
軍属のリンだから理解できたのだろう、目の前の存在は自分の知らない誰かであると。
「……俺はロックオン・ストラトス。成層圏の向こう側まで狙い撃つ男だ。覚えておけ」
妬み、嫉妬、そういった負の感情は受けていたことがある。
しかし、リンにとって織斑一家はその様な感情を向けてこない、癒しであり、ハルは真に弟だった。
「なんで……なんでそうなっちゃうのよ!」
「お前らのしっている奴は居ない、俺は変わる。甘さも、全て捨ててやる。力や権力で他人の努力を」
フラッシュバックするのは自身の幼い記憶。だが、其れ等は無慈悲に燃えていく。新しく、ハルと切磋琢磨したティナの顔が浮かんでくる。
それだけでない、この場において自分と兄というイレギュラーの存在。自分と兄のせいで、失われた誰かの夢、奪ってしまった誰かの夢、それがただ只管に耐えられない。
「その全てを奪う奴らを倒す、そして……証明する。そうだ、俺達は証明し続けなければならない。俺は………力を……力を」
最後にはリンの姿等見えていない様に廊下を歩いていく。
「なによ……ソレ………」
見たことのない弟の顔は酷く悲しく見えた。
「なら、正面から潰してやるわよ。ハル、アンタは私達…一夏と千冬さんの弟なんだから」