「ここは…?」
辺りを見渡すと空に大きな輪、火薬の臭いと少女たちの声が聞こえる。
なぜこうなった? 声もおかしい、若い女性のような声だ。
思い出そう、今までのことを。
リブリアにて生活していた私の名前は『ベイリー・ベール』
第一級グラマトン・クラリックとして日々『感情違反者』を摘発・処刑していた。
ある日、プロジアムという感情を抑制する薬を落としてしまいしかもそれが最後の一つだった。仕方がないと薬を取りに行く途中生産・配布している施設が『違反者』により爆破され服用が困難となった。
その時だ、私に感情が芽生え。自らの異常性を悟ったのは。
私は男性に恋慕を…いや、少し違うな。私は女性になりたかったのだ。
過去の遺物を見た時に知った女性の服、メイク。私は『感情違反者』になったと悟りながらも薬の服用をしなかった。
驚いたのは『違反者』の隠れ家となっている廃墟に入った時だ。第1級クラリックの中でも有数の実力者である、ジョン・プレストンがいたのだ。初対面時互いに驚いた顔をしてしまい互いに『違反者』と知って笑ってしまったよ。
その後、革命に成功し人々は感情を取り戻した。
私が寿命を迎える頃には世界も様変わりしており周りには悲しみの感情を浮かべる人が多かった。私は笑った、あぁ…革命してよかったと。
そうして私は眠るように息を引き取ったはずだった。
が、今はこのような場所にいる。ふと額に手を当てようとすると手の不自然さに気づいた。
やたらと白く、細い。
「女の…手?」
身体を見下ろした、そういえば視線が低い。そして足元が見えない、異常な程の胸部発達…胸?
先ほど発した声それもやたらと高い。
近くのビルのガラスに自分を映した。
膝ほどで切りそろえられた黒髪前髪はキレイに揃えられている(姫カット)。赤い目に整った顔立ち。
黒いシャツに白のジャケット、膝上の黒いスカートをはいていた。黒のニーソックスも見える。
手のひらで掴み切れないほど大きな胸も服装も自らが女性であるということを如実に伝えていた。
私は困惑よりも先に感謝した。何が何だか分からないが女性になれたことに興奮を覚えていた。
ただ、ここは明らかに私が元々いた世界ではない。まずは情報収集だ。
と翻しどこかへと進もうとしたが。
ジャキッ
そのような音と共に両サイドから銃を突き付けられた。
「…?」
両サイドにはヘルメットを被った少女が二人、手にはショットガン。ポンプアクション式の中々いい銃だ。少なくとも学生ほどに見える少女が持つには分不相応だろう。
それにヘルメットで表情は伺えないが頭の上に天使のような輪も見える。あれはなんだ?
「おい、金を出せ」
「大人しくした方が身のためだぜー」
…まさか、恐喝か? このような高価そうな銃器を所持してまさか相手から金を巻き上げるためだけに私に銃を向けているのか?
理解不能だ、この世界の常識がまだ分からない。さて、どうするべきか…。
「おい、聞いてるのか」
「じゃあさっさと気絶させ…待てこいつヘイローがないぞ!?」
ヘイロー…? あの天使の輪のことか? 先ほど見た時私にはあの輪はなかった。
気絶…? ヘイローがないと何かあるのか…?
「え、撃っていいのか!?」
「ど、どうすれば…!?」
ヘイローとやらがない私を見て困惑する二人、周りにいるヘルメットを被った子も銃を向けるべきかどうか悩んでいるようだ。銃を向けていた二人は体を震わせ続ける。どうすればいいのか分からないように。疑問だ、この子達は銃を持っているのにまるで人を殺した経験がないような…。
そう思った瞬間、緊張がピークに達したのが二人が指をかけていたトリガーがカチっと軽く音を立てた。
「-」
その瞬間、ショットガンの側面を叩き銃を回転させグリップを掴み。銃口を両サイドの少女たちに向け。
「えっ!?」
「嘘っ!?」
引き金を引いた。
炸裂音と共に弾が発射され、少女たちが被っていたヘルメットのガラス部分に激突した。
「(しまった…!)」
条件反射とはいえ幼い少女に向かって引き金を引いてしまった。思わず歯噛みする
少女たちはそのまま崩れ落ちるが不可解な点に気づいた。
出血がない…?
見ると目を回しているように気絶していた。うめき声も聞こえるから生きてはいる。外傷もそこまで大きくない。そしてヘイローが消失していた。
…なるほどな。
私はハンドグリップの部分に持ち替え大きく下に振ることで排莢と次弾装填を済ませる。
「どうやら気負いする必要はなさそうだな…」
「もういい…! 撃て! 撃ち殺せ!」
リーダー格らしい少女が周りの少女に指示を出す、辺りの少女はわたわたと銃を構え始めた。
…愛銃がないのがきつい所だな、仕方がない。
私は動いた。
「ひっ!?」
「いやっ!」
近くにいた少女二人に一気に近づく、少女たちは急いで銃を向けようとしたが遅い、ショットガンを放ち二人の顔を撃ち抜き二人はのけ反りながら銃を手放した。
私はショットガンを手放し二人が持っていたハンドガンを奪う。
「グロッグか、悪くない」
二丁のハンドガンを構えた、少女たちも準備が終わったのかこちらに銃を向け発砲した。
その銃弾を
「へっ!?」
「よっ、避け」
驚いた二人の脳天に一発ずつ撃ちこみ少女たちは倒れる。
『ガン=カタ』
統計学的に有利な位置に自らの身体を移動させながら戦闘する事で被弾率を最小限に、攻撃効率を最大限に高めるという合理化された戦闘術。
私はこれでも第一級だったんだ、そんじゃそこらの相手には負けないよ。体は違えど技術はそのままのようでよかった。
少女たちの残り人数は11人。残り弾数は28発…49秒だな。
1分後
「…やはりまだ慣れていないか…体を慣らすことを考えないとな」
そばには気絶した少女たちが倒れていた。余計な外傷はなく誰も一発で気絶させられている。
「この銃は貰っていく、金と命を取られなかっただけありがたいと思ってくれ」
とりあえず必要なものは…愛銃と資金…の前にまずは情報だな、何かいい所でもあればいいが。
と銃をしまい、ポケットに手を突っ込むと何かに手があたった。
取り出すとそれは財布のようで金銭はなかったが身分証のようなものが入っていた。
「はっ、面白いな。触れたことのない言語なのに理解出来る。これが私の名前か」
年号は分からないから細かい年齢は分からないが恐らく20歳前後だろう。
まぁ今のところはその辺はどうでもいい、まずはどこに行くかだ。
「……ど~ち~ら~に」
こういう時は運任せだな。
数か月後
この世界、『キヴォトス』は本当に治安が悪いな。しかも死ぬことがないことが拍車をかけている。
私はラーメン屋で麺を啜りながらそう思った。うん、この柴関ってラーメン屋は本当に美味しいな。最初は麺を啜ることすら出来ずにむせていたが今では美味しく食べれている。
「姉ちゃんいい食いっぷりだね」
「姉ちゃんとは嬉しいな、そんな年でもないのだが」
大将も初めて見た時は驚いた、なんせ人型の獣だ。しかし獰猛と言うよりは愛らしい雰囲気が強い。
ここはアビドスという所らしい。砂漠で埋め尽くされており人も少ないとか。
ここは学校は国家のような扱いらしいがアビドス高校には片手で済むほどの生徒しかいないとか。
私の身としてはもう成人しているため高校に通うことはないが気にはなるな…。
「今日も疲れたよ~」
「ほら、しっかりしてください」
すると二人の制服を着た少女がラーメン屋に入ってきた。
対照的な二人だ。部活帰りとかそういうのだろうか…。
「ユメ先輩は何にします?」
「うーんホシノちゃんと同じでいいよ」
続きは何か思いついたら