ゲヘナに栄光を   作:狼黒

1 / 4
『シャーレ』、邪魔なんだよ

温泉開発部、美食研究会など

ゲヘナには無数の活動が認められていないサークルが数多く存在する

特に先程挙げた2つの部活は他校にまでその悪名が響き渡っている程である

確かに校風に『自由と混沌』を掲げているとは言え、そのせいで世紀末状態になっているのだから逆効果である

風紀委員会が連日駆け回っているとは言え、生徒会の万魔殿との関係があまり良くないため部費を削られまくっている

なお、万魔殿は条件が揃わないと本気を出さない

そしてトリニティとの仲の悪さ、これは学校が設立されてから長い年月が経つが、一向に良くなる気配はない

いつ全面戦争になっても、おかしくないぐらいである

原作では、『先生』と呼ばれる存在がゲヘナの主要な生徒と良好な関係を築いた上に、『エデン条約』が結ばれたことによって多少は良好となり、全面戦争の危機は無くなったのだが

 

 

もし、ゲヘナに最高のカリスマを持つ生徒がいたら

 

もし、その生徒が無自覚にそのカリスマを用いて、ゲヘナの全ての部活から崇拝の念を抱かれていたら

 

もし、その生徒が昔トリニティに誘拐されて、酷い目にあっていたら

 

 

これは、そんな生徒が導く、ゲヘナの物語

 

 

 

 

「…私のミスでした」

 

ここはとある場所の何処か

一人の大人と、連邦生徒会長が座って向き合っている

 

「私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況…結局、この結果にたどり着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて……」

 

後悔しているような口ぶりで、そう語る連邦生徒会長

その足元には、血だまりが出来ている

 

「…今更図々しいでしょうが、お願いします…先生」

 

そう言って頭を下げる連邦生徒会長

 

「きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません」

 

「何も思い出せなくても、おそらくあなたは同じ状況で、同じ選択をされると思いますから…」

 

「ですから……大事なのは経験ではなく、選択」

 

「あなたにしかできない選択の数々」

 

「責任を負う者について、話したことがありましたね」

 

「あの時の私には分かりませんでしたが……今なら理解できます」

 

「大人としての、責任と義務。そして、その延長線上にあった、あなたの選択、それが意味する心延えも」

 

「……ですから、先生。私が信じられる大人である、あなたになら、この捻じれて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を……」

 

「そこへ繋がる選択肢は……きっと見つかるはずです」

 

「だから先生、どうか……」

 

『先生』と呼ばれた大人が、口を開こうとしたとき

 

「困るねぇ連邦生徒会長殿(お嬢さん)…知らないところで色々されるのは」

 

 

ドン!

 

ドン!

 

 

二人しかいないはずの空間に声が響くと同時に、銃声が響き渡たり、血が飛び散る

そして、先生の鼻を硝煙の匂いがついたとき、連邦生徒会長は崩れ落ちる

頭は吹き飛び、心臓の部分に大穴…即死であった

そして、次の瞬間には

 

 

ドン!

 

ドン!

 

ドン!

 

ドン!

 

ドン!

 

ドン!

 

 

再び銃声が響き渡り、血が飛び散る

両目、両腕、両足…撃たれた先生は座席から滑り落ちる

痛みは感じる、しかし声を上げることが出来ない

そんな先生の背に、足を乗せられる感触を覚える

同時に、自分の体が燃えているかと錯覚するような熱さも

 

「邪魔なんだよあんた…安心しろ、役目は引き継いでやるさ…お嬢様学校を潰した後でな」

 

少女の声か

そう考える間もなく、次の瞬間に銃声が響き渡り、頭が消し飛ぶ

それが、『先生』と呼ばれるはずだった大人の、最期だった

 

 

 

 

 

 

 

「連邦生徒会長失踪…そして火災…ねぇ」

 

椅子に座って足を組みながら、テレビの画面を見る少女

上はシャツ一枚、下はパンツだけというその体には、数えきれないほどの古傷が刻まれており、左目は長く伸ばした髪で隠れており、左腕があるはずの場所には、何もなかった

そして、室内にあるベットには、全裸の女子生徒が穏やかな寝顔を立てていた

暫くテレビを見ていた彼女だったが、つまらなさそうに電源を切ると、ベットに向かって歩く

 

「いい寝顔してるねぇ…」

 

ベットに腰掛けながら髪を撫でる

別に彼女が好きではない

ただ昨夜、扉がノックされたので開けてみれば、彼女が顔を赤くしながら『抱いてください』なんて言われただけである

暫く寝顔を堪能していた彼女だったが、扉がノックされる音がする

 

「開いてる」

 

「失礼します」

 

そう言って入ってくるのは、天雨アコ

入ってくると同時に、彼女とベットで寝ている生徒を見て、眉をしかめる

 

「はぁ…またですか」

 

「言っとくけど僕から連れ込んではいない」

 

「知っています」

 

最早この光景も見飽きるほど見てきたアコは、部屋に干されている彼女の制服を投げ渡す

酷いねぇ、と言いながらも難なくキャッチする

 

「んで、今日の状況は?」

 

「いつも通り…とはいきませんね、連邦生徒会が機能を喪失した現状、あちこちで治安が悪化しているようです」

 

フーンと言いながら制服に腕を通す

片腕しかないため、アコに補助してもらいながら

 

「トリニティでは2000%以上治安が悪化しているそうです」

 

「そりゃ大変だな、お見舞いの電報でも送ってやろうか、『貴女方の治安組織は紅茶を嗜んでいるようですね』とでもね」

 

「やめてください」

 

送るわけないじゃん、とけらけらと笑いながら制服に着替え終わり、立ち上がる彼女

すると、ベットの方からもぞもぞと動く音がする

そうして身を起こした生徒は、未だに眠たそうに頭を揺らしている

そんな生徒に近寄る彼女

 

「おはよう、寝起きの顔も可愛いね」

 

「…んぅ…?」

 

「まだ眠いんだろう?ゆっくり寝な、起きたら部屋にあるもの使っていいからね」

 

「ありがとう…ござい…ます…」

 

そう言うと再び夢の世界へと旅立つ生徒

その生徒に毛布を掛けてやると、何やら視線を感じる

顔を向けてみれば、何やら不満そうな表情をしているアコ

 

「どうかした?」

 

「何でもありません、行きましょう」

 

拗ねたような表情で早口にそう言って歩き始めるアコ

そんなアコを見ながら後に続く彼女

 

「ふーん…ひょっとして嫉妬した?」

 

「なっ、誰が!」

 

からかうと図星なようで慌てるアコ

そんなアコに追いつくと、耳元に口を寄せて

 

「安心して、僕が好きなのはアコだけだよ」

 

小さな声で、しかし確実に聞こえる声でそういう彼女

 

「…誰にでもそう言ってるのでしょう?」

 

ジト目のまま棘のある言葉を放つアコ

それに対し、バレた?みたいな顔をして前を歩く彼女

きっと自分以外にも毎夜毎夜部屋を訪ねてくる生徒たちに対して同じ言葉を囁いているのだろう

だが、嬉しくて自分の顔が赤くなってるのがわかるぐらい、彼女が好きなのも事実だと思うアコ

そんな事を考えているのを悟られないように、目の前の彼女の予定を確認しようと手元のタブレットに視線を落とす

まぁ、いつの間にかこちらに体を向けていた彼女にはバレバレだったのだが

 

「本日も宜しくお願いしますね、フェル総帥」

 

そう言ってアコが一礼すると、相変わらず礼儀正しいねぇと言いながら、右手に持っていた帽子を被る彼女…堕天ルキフェル

後ろにアコを従えて歩き出すその姿は、まさしく総帥という肩書にふさわしい

 

「さてと…今日も頑張りますかね」

 

 

 

 

これは、連邦生徒会長が失踪し、直前に設立した組織…『シャーレ』が潰された世界線

 

「エデン条約なんて必要ない」

 

ゲヘナ学園に、とんでもないカリスマと能力を持ち

 

「僕らゲヘナが、キヴォトスの実権を握る」

 

過去に、トリニティに拉致され

 

「連邦生徒会にも邪魔させない」

 

体と心に酷い傷を負わされた

 

「トリニティは、潰す」

 

そんな彼女が率いるゲヘナと、トリニティとの全面戦争の物語

 

 

 

 

「このキヴォトスに、『混沌と自由』を」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。