正月休み中に上げるという個人的な目標のためですが……
誤字脱字は見逃してくれると喜びます
ではでは
私のせいで誠也はあんなふうになってしまった。どうやって黒森峰に入りこんだかはわからないけど、私が元に戻してあげなきゃ。私が原因だから。
たぶん、誠也のほうも私を昔に戻そうとあんな行動をとるようになったはず。
そんな思いで私は、全国大会準決勝を迎えた。
隊長同士のあいさつに向かう前に、伊都子は私に声をかけた。
「できれば、決勝で当たりたかったね。黒森峰と」
「うん」
「どうしたの? いつも以上に緊張して。準決勝だから?」
「うん」
「緊張してるってわけでもない、かな?」
つぶやくようにして言った伊都子は、私の肩をポンとたたいて班の場所へと足を向けた。
両チームにあいさつに向かうよう連絡が入り、私はその場に向かう。
相手チームからは誠也とは思えないほど代わり映えした人が来る。
「よろしくお願いします」
私から口を開くと、誠也はゆっくりと笑顔を見せて、落ち着いた声で言葉を返す。
「ええ。こちらこそ」
私は踵を返し、顔だけ向ける。
「髭、もうちょっと丁寧にそったらどう? 女の子なんだから」
誠也は顔を崩さないまま、笑っているだけだった。
「気には留めておきます」
落ち着いていた声は試合をしたくてたまらないような声に変わり、抑え切れていない闘志がピリピリと私の肌を刺す。
みんなのところへと戻った私は号令をかける。
「みんな行くよ!」
勝つんだ。絶対に。
そうすれば、誠也もきっと。
勝者が宣告たはずなのに、私たちの耳にそれは届かなかった。
力を入れて臨んでいたせいか、勝ったとわかった瞬間どっと疲れが押し寄せてきた。
体がだるい。試合の後はいつも重くなるけど、今日はとびっきり重くなってる。
勝った喜びが全くやってこない。今はただ、試合が終わったということだけが私たちを支配しているようだった。
「終わった……。早く集合しなくちゃ」
ぼそりとそう呟くとみんなそうだったといそいそと戦車を動かし始めた。
集合場所につくと、両チーム交じって地べたに座り込んでいた。みんな疲れているようで会話はほとんどなかった。
そんな中でひときわ目立っていたのはうめき声を上げている誠也だった。顔はやつれ、目は充血して表情は曇っていた。
「……そんな。……そんな」
かすれた声でそう呟いている。
「あなたの戦い方は昔の私とそっくりだった」
私がそう声をかけると、誠也はゆっくりと顔を上げ、宿敵を見ているかのように血走っている目を向けた。
「独りよがりで、自分勝手で。みんなのことを全部知っていて自分の手足のように動かせるってそう思いこんで。自分以外はこの場にいないって確信があった」
「……それで、それで君は強かった。強くあり続けられていた。だから僕は、僕は……」
「私のまねをして、昔に戻ってくれると思った? ごめんね。私そんなに頭良くないから」
「……ああっ。ああああああ」
「やっとわかった。ううん。やっと思いだせた。昔、戦車道が楽しく出来た時のこと」
「……君はみほさんたちとは違う。君は天才になれる人だった。なのに、なのに!」
焦った表情をして必死になって声を出している。
どんな声をかけていいのか悩んでいた私に大きく手を振り私を呼ぶ伊都子の声。そのほうを向くと、大洗のみんながもう帰宅準備を済ませ、帰ろうとしていた。
「みうー! 早く!」
私は向かう前に誠也に何か声をかけようとしたけど、当の誠也は私の声なんて届きそうになかった。
「……いい加減、私のこと諦めてよ……」
伊都子のもとへ向かった。
みんな疲れ果てていたせいで、移動中はぐっすりと寝ていた。それは私も同じで、すぐに眠りについてしまった。一度学校に戻って、寝起きの体に鞭を打ち解散前のミーティングを簡単に済ませた。欠伸交じりにみんなそれぞれ解散していった。
私はどうしても帰ろうという気持ちにはなれず、自然と今日の試合の映像を見ていた。こうしてみてみると、いろんな反省点が見つかる。でも、それが次絶対生かせると言い切れない。
一通り映像を見た後、帰ることにした。
思ったよりも時間は過ぎていたらしく、日はもうほとんど沈んでいた。
「お母さんに怒られちゃうかもなあ」
気休めにそんなことを呟いてみたら、誰からか言葉をかけられた。
「気楽なものですね」
透き通った声でふっと笑った女の子。
「プラウダの隊長ですよね? どうしてここに?」
「次の対戦相手にあいさつをと思って。ご迷惑でしたか?」
「ううん。大丈夫だけど」
「良かったです。てっきり私は今回の試合であなたが壊れてしまうとばかり思っていましたが、杞憂に終わったようです」
「壊れる? 君は誠也のことを知っているってこと?」
「せいや? ああ、黒森峰の隊長に化けていた人ですか。話には聞いていました。無理やり参加したとか」
「彼はあなたのために自分の高校生生活を犠牲にしたようですが、あまりいい方向に向かなかったようですね」
「うん……」
「それにしてもあなたが、戦車道をすることをよくみほさんが許しましたね。今でも驚きです」
「どうして?」
「覚えていないのですか? ……お父様がどうなったのかを。あなたはあの場にいたと聞いていましたが」
「お父さんが? それに、あの場って?」
「っ……。……ご存じでないのなら、結構です。それでは、これで」
素早く頭を下げた彼女は私から逃げるようにして踵を返し歩き出した。
「ちょっと!」
呼び止めようとしても、彼女は応答せず、早足で歩いていく。
「……何なの? もう」
お父さんがどうなったとか、そんなこと気にも留めたことないなあ。
どうしてだろう。
そんな余裕がなかったのかな?
お母さんなら何か知ってるよね。そう思った私は、急ぎ足で家へ向かった。
「ただいま~」
玄関ドアを開けながら言うと、リビングからお母さんが顔を出した。
「おかえりなさい」
お母さんは見たことのない青を基調としたジャケットを着こんでいて、その上にエプロンを付けていた。
「そのジャケット何? 買ったの?」
「ううん。もらったの。お姉ちゃんから」
「へえ」
リビングに入ると、テーブルの上にお母さんが来ているジャケットと同じものがきれいに畳まれ置いてあった。
「それは、みうのだよ」
「私の?」
お母さんはそのジャケットを手に取って私の肩にかけた。
「サイズは大丈夫かな」
「これ、どうしたの?」
「アンダー18の制服ってところかな?」
「え、お母さん、ユースの監督か何かになるの?」
「うん。みうはどう? 一応招待されてるんだけど。って言っても――」
「OKもう出しちゃってるよね?」
「ごめんね。もう大丈夫だと思ったから」
「やりたいけど、勝手にはちょっと……。お母さんらしくない」
「みうは1、2年の時に思うように成績を残せてなかったでしょ? このままじゃ推薦取れないんじゃないかなって心配だったから」
「そっか。うん、ありがとう。私疲れたからもう寝るね。お風呂も朝でいいや」
「ごはん出来てるよ?」
「じゃあ食べてから寝る」
私は椅子に座って、お母さんと一緒に晩御飯を食べた。
お母さんと食べるのは久々なような気がして、なんだかうれしかった。
食事中は代表関係の話で持ちきりだったから、お父さんのことを聞きそびれてしまった。お母さんは嬉しそうに話してくれていたけど、私は心から喜ぶことはできなかった。
結論から言うと、4話と同じ感じに終わってしまいました
続くとしたら
過去話といった感じになると思います
たぶん
戦闘シーンは完全カットで大分あれなんですが
予定としてはもう少し誠也の屑っぷりを披露するはずでした
制作に時間がかけられなくなっているため
そろそろ何か対策をと…………