俺たちのメリュ子は最強なんだ!   作:アマシロ

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1話:ワイバーン が あらわれた

 

 

 

 

 

 

 

 妖精國の黄昏の空とは一味違う、ある意味異聞帯よりは本来の環境に近い特異点の空。

 百年戦争のフランスの空気は、まあ当然ながら現代よりも遥かに空気が澄んでいるように感じられて。

 

 メリュジーヌも嫌いではないのか、ちょっぴり嬉しそうな顔で空を見上げた。

 

 

 

 

「へぇ、ここがフランスか……うん、いい景色。どこまでも続く草原に、青空……」

「それとワイバーン」

 

 

 

「うん、ワイバーンも囀って………うそでしょ!?」

 

 

 

 

 話の途中だがワイバーンだ!

 とばかりに空を飛び交うワイバーンの群れ。いつから百年戦争のフランスはこんな世紀末になったのか。

 

 

 

 

「いえ、先輩。確かに百年戦争と言われるだけあって世紀末の時期もあるのですが、今回のフランスはジャンヌ・ダルクが処刑されてからさほど日にちの経っていない1431年頃と推定されています」

 

「お、おう。ありがとうマシュ」

「世紀末ってそういうスラングだよね?」

 

 

 

 

 ガーン、とメリュ子のツッコミに呆然とするマシュだがメリュ子はちょっぴり意外そうにマシュを見た。なお百年戦争には休止期間もあって今がそれ、みたいな知識もマシュは持ってたりする。

 

 

 

 

「うーん、前は正直厄介な相手としか思ってなかったけれど―――マシュってけっこう可愛いところあるんだね」

 

「そうそう、可愛い後輩」

 

 

 

 

 なんでか慕ってくれているけれど、まあメリュ子が出会った時ほどの信頼感は未だないだろうし。なんなら本物の藤丸でもないから本来より緩くなるんじゃなかろうか。

 

 

 

 

「で、どうするマスター。ワイバーン、倒しておく?」

「うーん、なんか逃げ散ってるような」

 

 

 

「まあ、あんなの竜種(わたし)からすれば木っ端みたいなものだからね」

 

 

 

 

 

 アルビオンの気配を、さほど賢くないワイバーンでも感じ取れるのかすごい勢いで蜘蛛の子を散らすように逃げていくワイバーン。逃げに徹されると厄介なような気もするが、そこは最速とも戦闘機とも言われ、人類では、なんなら神霊を入れても間違いなく最速の英霊アキレウスとどっちが速いのかも気になるメリュジーヌ。

 

 

 

 

 

 

「よし、逃げたのが誰かを襲っても嫌だし。―――――メリュジーヌ。君の力の一端―――今ここで見せてくれ」

 

「うん、いいよ」

 

 

 

 

 

 あんまり遠いのは無理に追いかけなくてもいいけど。と言う前にメリュジーヌは笑顔で離陸した。

 およそ通常の生命体にも機械にも並の幻想種にも不可能な、慣性やら抵抗やらを無視した加速でカッ飛んだメリュジーヌが蒼い流星の如く閃き。

 

 

 

 まるで殺虫剤を浴びせられた羽虫のように、一応は劣化竜種の端くれみたいなものであるはずのワイバーンがボトボト落ちていく。

 

 最新のジェット機に追い回される小型のプロペラ機くらいには気の毒な光景であった。そんなのよりはるかに物理法則も無視してるし速度も無法なのだが。

 ゲーム(FGO)なら全体宝具でもないとそこそこ苦戦しそうな数なのだが、無双ゲーとかそういうジャンルだねこれは。

 

 

 

 

「つっよ」

「……あの、先輩? メリュジーヌさんはどのような英霊なのでしょうか……その、円卓最強の騎士、ランスロット卿の名を冠するのも納得ではあるのですが……あまりランスロット卿らしくはないというか……」

 

 

 

 

 いや「そんなところまでランスロットか!」とモルガンにキレられるくらいにはマスター誑しの横恋慕(モルガン視点)だけれども。

 なおメリュ子的には「そんな目で見られてたってコト!?」とショックを受ける程度にはランスロットの株はランスロットしている。

 

 

 

 

「とりあえずメリュ子が帰ってきたらあの雄姿を褒めたたえてあげたい」

「確かに…! マスターの激励はたいへんやる気に繋がるかと!」

 

 

 

 

 頑張ったのにスルーするとか、オーロラポイント貯まるからね。

 悪口なんて言おうものなら文句は言わないけど影でこっそり泣いてるのがメリュ子なのだ。つよつよドラゴンだがメンタルはわりと普通の女の子。プライドはあるけどむしろちょっと自己肯定感は低い。

 

 

 

 AUR(オーロラ)ポイントを貯めすぎるとある日突然「マスターはここで死んだ方が二部とかで苦しまなくて済む分幸せかも……」とかバッサリやられる可能性があがる、気がする。オーロラはやられたので慢心、ダメでござる。今日は断食でござる!

 

 

 

 とかなんとか言ってる間に光の軌跡にしか見えないメリュ子が逃げ散ったワイバーンを全部叩き斬って帰ってきた。

 

 

 

 

「どうだった、マスター!?」

「正直速すぎて光の軌跡にしか見えなかったけどすごい綺麗だった。あと強い。さすが最強のドラゴン! すごいぞ妖精騎士ランスロット! さすがアルビオンの左手! 綺麗! 尊い! メリュジーヌ!」

「!? そ、そうだよね! さっすがマスター、分かってる!」

 

 

 

「さすがマスターが初めて召喚したサーヴァントのメリュジーヌさんです!」

 

 

 

 

 マシュ、それ褒めてるのメリュ子じゃなくて俺では? と思ったがメリュ子の琴線に触れたのかすごい嬉しそうな顔で頷いた。

 

 

 

 

「だよねー! まあマシュもマスターのファーストサーヴァントだし、精進するといいよ!」

「はい!」

 

 

 

「まあ私たちのマスターだし、そのへんは余裕だろうけど」

「ですね!」

 

 

 

 

 なんで俺が褒められてんの!?

 いたたまれないしここはドクター、ヘルプ!

 

 

 

 

『竜種のサーヴァントってつまりどういうことなのか――――さっぱり分からないね!』

『メリュジーヌって伝承にあるアレかと思ったけれど、どうにも違うみたいだしねー。妖精騎士っていうくらいだし妖精なんだろうけど、なんでランスロット?』

 

 

 

「あの、ドクター。とりあえず俺が謎に褒められてるのをなんとかしてほしいんだけど……」

『僕だってマギ☆マリに褒められたいんだけど!?』

『生成AIってわりには的確に毒を吐くよねー』

 

 

 

 

『むしろ藤丸君はメリュジーヌがなんでサーヴァントになったのか知らないかい?』

「えー?」

 

 

 

 

 アルビオンの左手が特異点で妖精に憧れて姿を変えて、それが色々あって座に登録された姿だから……。

 

 

 

「メリュ子の誕生経緯は――――奇跡かな。最も(見た目が)美しい妖精が、尊いことをしたというか」

「………」

 

 

 

 

 

 ちらりとメリュ子を見ると、オーロラを思い出したのか切なさ半分、なつかしさ半分、あと苦々しさみたいなびみょーな表情をしていた。

 

 

 

 

「で、見た目も中身も美しいメリュ子が生まれたってわけ」

 

 

 

 たとえ模倣でも、最も美しいオーロラの最も輝いていた時を模倣したら美しくなるよね。多分メリュ子の「最も美しい妖精」は内面込みの評価だと思う。俺はメリュ子の見た目の方がオーロラより好きだけどその辺は好みの範疇として。

 永久に遥か黄金の妖精。

 

 

 

 

「っ。そうだ、忘れるところだった―――向こうの方で砦の残骸みたいなものがあって、兵士がいるみたいだったけど……行ってみる?」

 

「残骸かぁ」

「修理中、なんでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 褒められすぎて恥ずかしくなったのか、ちょっと慌てた様子のメリュジーヌをあんまりイジメるのも可愛そうなので移動することに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さっきの攻撃でちょうどいい感じに砦を襲おうとしたワイバーンをメリュ子が墜としたらしく、ワイバーンの死骸を前に呆然としている兵士にマシュ、メリュジーヌを連れて近づき。

 

 

 

 

『お前たちは、一体……』

 

 

 

 武器を構えた兵士に「マスターに武器を構えるとか、死にたいの?」みたいな冷たい目で見ているメリュジーヌを目線で制しつつマシュが挨拶した。

 

 

 

「ハロー、エクスキューズミー」

「あ。俺フランス語ボンジュールしか分からないぞ」

 

 

 

 というか明らかに東洋人なのは時代的にアウトなのでは?

 

 

 

「サーヴァントならそのあたりも応用が利くけどね。そっか、マシュはデミ・サーヴァントだからそういうの無いんだ」

 

 

 

 

『敵――――』

『じゃあないとも。僕がワイバーンを倒したのを見ていなかったの? まあ、死にたいなら止めはしないけど』

 

 

 

 

 蒼い閃光の如く、一瞬で兵士の持っていた槍を真っ二つにしつつアロンダイトを兵士の首に添えたメリュジーヌに、叫ぼうとした兵士は思わず声を失ってへたりこんだ。

 

 

 

 

「マスター、何か聞くことある?」

「えー、じゃあ最近何か異常な事が起こらなかったかと……一番困ってること?」

 

 

 

『最近あった異常な事と、今一番困ってることは? あ、もちろん今死にそうなこと以外でお願いね』

『……い、異常なことしかないぞ!? ジャンヌ・ダルクが魔女として復活したことも、奴が従えている邪竜のことも……』

 

 

 

「へー。なんかジャンヌ・ダルクが魔女になって邪竜と襲ってくるんだって」

「ドクター、なんとなく邪竜の方角とかってわかったりしない?」

 

 

 

『うーん、近辺に反応は……あ、微弱なサーヴァントの反応ならあるね』

「サーヴァント? あ、ほんとだ。近づいてくる」

 

「サーヴァント!? 警戒態勢を…! マスターは私の背後に!」

 

 

 

 

 即座に警戒態勢に入るマシュに、いや別に私がいれば問題ないけど……とか言いたそうなメリュ子はへたりこんでいる兵士を解放すると、倒されたワイバーンと無事な兵士を見比べて安堵した表情のジャンヌを見て言った。

 

 

 

 

「ふーん、元凶の魔女……にしては弱すぎ? モルガン陛下やバーヴァン・シーみたいな魔女というよりは普段のバーゲストみたいな堅物っぽい感じだし……」

 

「サーヴァントのジャンヌと本物ジャンヌという説もある?」

 

「さすがにそれは……いえ、サーヴァントであれば同時に存在する可能性もあるのでしょうか…?」

 

 

 

 

 実際のところはどうなんだろう。

 まあエミヤと士郎の例があるから多分可能だろうけど。

 

 

 

 

「ええっと……私はルーラー、真名はジャンヌ・ダルクです。とりあえずお話をしたいのですが……」

 

「だって、マスター。どうする? とりあえず魔女なら切開してもいいけど」

「仮に騙されてもメリュ子がいればなんとかなるし、話を聞こう」

 

 

 

「!? もちろん、君の期待には応えるよ、マスター」

 

 

 

 裏切ったら即殺る、とばかりに殺る気満々になっているメリュジーヌに「旗でも振るべき…? いやでもこれ武器ですものね」みたいな顔でちょっと遠い目をしているジャンヌ。

 

 

 

 

「その、お恥ずかしながら私は正規の召喚ではないようで……本来与えられるべき聖杯戦争に関する知識が大部分存在していません。それどころかステータスもランクダウンしている状態で……幸い生まれ故郷なので、言語だけは通じるのですが」

 

「ふーん。じゃあ情報源としては役に立ちそうもないね」

 

 

 

「うっ」

「竜の魔女? とかさっき砦の兵士が口走っていたけれど、ぜんぜん、これっぽっちも竜の気配なんて無いし」

 

『まあそもそも竜を使役するなんて最上級の魔術と言っていい。そんな反則ができるとすれば――――』

 

 

 

 

 

 

 

 聖杯の可能性がある。

 そんなこんなでとりあえず聖杯を求めて魔女に関連のありそうなオルレアン、その近くの街であるラ・シャリテを目指すことになったのだった。が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんて――――こと。まさかこんなことが起こるなんて――――笑い死んでしまいそう! 見てよジル! あの哀れな小娘を! なに、あれ羽虫? それともネズミかしら!」

 

 

 

 

 

 

 まさに街を襲撃せんとしていた5騎のサーヴァント反応。

 絶対に逃げるわけにはいかないジャンヌ、余裕のメリュ子、そしてマスターが行くなら逃げるつもりはないマシュ。まさかメリュ子が遅れを取るとは思っていない自分、というなんともいえない一行は早くも噂の魔女御一行様と邂逅していた。

 

 

 

 

 

「どうあれ同じことね! ちっぽけすぎて同情すら浮かばない! ねえジル、貴方もそう――――って、そっか。ジルは連れてきていなかったわ」

 

「あれがあの羽虫たちを従えてる羽虫の魔女か。ふーん、思ったより大したことなさそう」

 

 

 

 興味無さそうに黒いジャンヌ――――オルタを見据えるメリュジーヌの言葉に、オルタは真顔で青筋を立てた。

 

 

 

 

「ただのサーヴァント風情が……! バーサーク・ランサー。バーサーク・アサシン。その生意気な小娘を始末しなさい」

 

「いけ、メリュ子!」

「おっけー、マスター! 瞬きの間に終わらせる。切開剣技、開始――――――今は知らず(イノセンス)無垢なる湖光(アロンダイト)!」

 

 

 

 

 

 蒼い閃光が閃き、妖精騎士が飛翔した痕跡を示す。

 ランサーのクラスに相応しい、槍の如き鋭い一撃はしかし単純な直線攻撃にはもちろん留まらない。サーヴァントであっても反応が困難な速度の攻撃は、反撃や防御に先んじて軌跡を捻じ曲げる。

 

 ランスロットから転写された無窮の武錬の効果――――ではない。

 

 単純に、境界の竜であるアルビオン―――その力を持ったメリュジーヌが純粋に速く、強い。それだけの話。

 

 防がれそうだったけど、見てから反応余裕でした。そんな感じに脳内メリュジーヌはダブルピース。

 

 

 

「は―――――」

「遅い…!」

 

 

 

 

 蒼い閃光、アルビオンの外皮とも言うべきイノセンス・アロンダイトが一撃で、防御すら貫いて霊核をぶち抜く。

 驚愕の表情と共に黄金の光になって消えていくバーサーク・ランサーを一顧だにせず、そのまま次の獲物に向けて蒼き槍は飛翔する。

 

 

 

 

「真名、偽装展開―――――今は知らず(イノセンス)無垢なる湖光(アロンダイト)!」

「ガッ――――」

 

 

 

 

 僅かな時間があれば、あるいはバーサーク・ランサーなどではなく通常のランサーであれば的確に凌いでみせたかもしれないヴラド三世。それを初見殺しの速さで仕留めたメリュジーヌは、そのままサーヴァントとしては並以下の直接戦闘能力しかないカーミラも粉砕。

 

 

 

 

「な――――嘘!? なによ、コイツ! 何なのよ!?」

「ふぅん。ちょっとは面倒そうなのもいるんだ」

 

 

 

 

 

 バーサク・ライダーとセイバー。

 マルタとシュバリエ・デオン。

 ヴラド三世ほどではないにせよ守勢には優れていそうな残り二騎が油断なく構えると、メリュジーヌは霧散しかけたアロンダイトを軽く振って消滅させつつ再度構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいよ――――蹂躙してあげる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









メリュ子「せっかくだし全部一撃で仕留めてマスターにカッコイイところを見せたいのにちょっと面倒そうなのが出て来た」



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