俺たちのメリュ子は最強なんだ!   作:アマシロ

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今更ですがけっこうなネタバレを含みます。
なるべく配慮しているつもりですが、信じないでください








幕間 ■■■が あらわれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ずっと、違和感は感じていた。

 

 

 知るハズのないことを知っている。

 持っているハズのないものを持っている。

 

 万能の天才として、私は人理のため――――そして、デミ・サーヴァントとしての宿命を背負わされたマシュを見守るためにいる。

 

 

 

 普段の態度からすれば信じていい、そう思っていても。

 それでも“彼”の真意を確かめないわけにはいかなかった。“指輪”の件もある。

 

 

 

 

 

「――――で、実際どうなんだい。ロマニ」

「いやぁ、ははは」

 

 

 

「曖昧に笑って誤魔化そうとするのはキミの悪い癖だぜ。だから出会うサーヴァントみんなに胡散臭いって不評なんだ」

「ぐはっ。いや、なんというか、自分でも何て言えばいいのか―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこから聞かされた話は、信じがたい話だった。

 いつも何かに追い立てられているように見えたロマニが、本当は抱えていた真実。

 

 

 

 

 

「だから、かな。僕には彼も同じに見える。―――知ってしまった未来、もう見えない未来に押しつぶされそうになりながら踏ん張る姿に」

「……藤丸君は、確かに一般人だった。特筆すべき点も、魔術との関わりも、改めて調べても何もなかった。それでもかい?」

 

 

 

 

「そこはまあ、僕も調べたって一般人だし。―――彼は、レイシフト適性100%という稀有な才能がある」

「………精神のみのレイシフトで、未来を見てもおかしくはない?」

 

 

 

 

 

「それがどんなものかは分からない。実は“彼女”についてだけの断片的なものだけかもしれない。でも、僕らに言えないだけの理由があるんだろうね。―――僕と同じで、何も信じられないだけかもしれないけど」

 

 

 

 

 

 藤丸君は必死だった。カルデアに来てすぐから、既に。オルガマリーが、所長がカルデアスに呑み込まれてしまってから特に顕著だ。

 

 英霊召喚するまで殆ど眠れていなかったことは当然把握しているし、メンタルが危険な状態なのを理解しながら何もできなかったロマニからすれば歯がゆかっただろう。

 

 

 

 

 

「―――本当は休養を与えるよう僕が進言するべき、しなくてはいけない立場だった。司令官代理になって、それはできなくなってしまったけれど」

「………」

 

 

 

 

「彼がマシュの先輩として踏ん張っているように――――僕だって先達として彼を信じるとも」

「………馬鹿だな、ロマニは」

 

 

 

「えっ。なんで今罵倒されたの」

 

 

 

 

 

 命懸けでマシュを助けようとし、所長の死を悲しみ、人理を守るために踏ん張っている。だから、信じる。自分も隠し事があるから見逃す。単純な話だ。

 自分だけが知っている未来―――周囲を信じるわけにもいかない状況。

 

 

 けれど、ロマニの“真実”を私は知った。

 

 

 

 

 

 

「仕方ない、この万能の天才が協力してあげよう。有難く受け取るがいいさ」

「本当かい!? いや、正直助かるよ。――――君は、人理を守るために召喚された君であれば信じられる。…………いや、信じるよ。万能の天才である君を」

 

 

 

 

 

 今は全てを明かすわけにはいかない。それは、未来を知っていると思しき藤丸君に対しても同じだ。

 だから私も“共犯者”になった。

 

 

 

 

 

(――――願わくば、藤丸君にとって“彼女”がそうであるように)

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「―――――えっ、マスターとの関係? 一心同体……はそうなんだけど」

「うん」

 

 

 

「所有物……でもあるけど」

「うん?」

 

 

 

「恋人同士、でもあるんだけど……」

「うん――――いやちょっと待って」

 

 

 

「! 今マスター、うんって言ったよね! やった、これで晴れて恋人同士!」

 

 

 

 

 くっ、メリュ子が恋人を主張するのがいつものことすぎてついスルーしてしまった!?

 

 

 

 

「マスターってば、『おいおいね』ばっかりで全然恋人っぽいことしてくれないし。キスくらいしてくれてもいいと思わない?」

「未来が見えるドラゴンと人間の感覚は違うの!」

 

 

 

 

 

 急に好感度マックスの自称恋人が生えてきたら普通の人間は驚いて警戒すると思うんだ。メリュ子の言う『藤丸立香』が『俺』なのかはちょっと怪しいと思ってるし。

 

 

 

 

「むぅ………まあでも、添い寝はちゃんとしてもらうから」

「新手の拷問かな」

 

 

 

「えー。マスターが望むなら恋人……つがいとして、色々してあげてもいいのに?」

「まあいいやメリュ子は抱き心地いいし」

 

 

 

 

 抱き枕としてな!

 竜だから、ひんやりしていて心地良い。

 

 彼女がいれば、きっと夢見の悪さも多少はマシになるだろうから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――夢を見る。

 

 

 全てが燃えているカルデアスの夢。

 漂白され、全てが消え去った地球の夢。

 

 

 

 燃える、黄昏の空の夢。

 

 

 

 

 

 

 星の内海に身を投じようとする、金髪の少女がいた。

 重すぎる宿命を背負わされた、普通の女の子。

 

 

 

 

『―――――ありがとう、カルデアのマスター(リツカ)。あんな何気ないひと時が、私には一番嬉しかったのです―――――』

 

 

 

 

 

 

 妖精國最強と妖精國最強。

 目にも留まらぬ空中戦はしかし、一方的な展開で。

 

 

 

 

『――――分かってる! 分かってる!! 愛されていないことなんて、分かっている!! それでも、それでも僕は……君を愛している……愛しているんだ、オーロラ…!!』

 

 

 

 

『――――決着を付けよう、オーロラの騎士。その痛みは、私にとっては過去のものだけれど――――この身体が崩れても、この心が砕けても――――変わらないものは、あるのだから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『でも今はマスターと幸せだからオッケーです! いえーい、過去の私、見てるー!? 私はマスターにいっぱい愛されてるけど、君は?』

 

『うわあああ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――令呪三画を以って、命じる! メリュジーヌ、真の力を解放しろ! 必ず生きて帰れ! そして――――』

 

 

 

 

『――――やあ、カルデアのマスター。君はやっぱり、知っていたのかい?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――ひどい、悪夢を見ていた。

 

 

 

 

 全部知っているハズなのに、救いたいものは全て手のひらから零れ落ちていく。

 仲間も救えず、友になれたかもしれない者たちは刈り取られて消えていく。

 

 

 

 

『大丈夫だよ、マスター』

 

 

 

 

 

―――――星が、落ちる。

 

 

 

 

 

『それが君の望みなら――――私が叶えるから』

 

 

 

 

 

 

 

――――――水晶の谷、黄金の円盤。

 

 

 

 

 

 

 

『この銘はアルビオン――――境界を開く、最後の竜!』

 

 

 

 

 

 

 飛び立った竜の放つ熱線が、黄金の円盤を貫き。

 しかし、何事もなかったかのように反撃の極彩色の光が―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスター。起きて、マスター」

 

 

 

 

 目を開けると、ちょっとびっくりするくらいに綺麗な顔が眼前にあった。

 メリュジーヌは心配そうな顔で、そっと俺の目から零れた涙をぬぐった。

 

 

 

 

 

「うん。大丈夫だよ、マスター。君は、必ず私が守るから」

「俺も君を守る――――って言えれば良かったんだけど」

 

 

 

「もう十分守ってもらってるけど。心、とか」

 

 

 

 

 

 ふと、思った。

 彼女は――――彼女なら、夢の結末も知っているのだろうか。

 

 “主人公”が当然のように/奇跡のように 乗り越えて見せた滅びの光を。

 俺は、乗り越えられるのか――――彼のように。“比較”してはならないと知っているのに繰り返してしまう、弱い心なのに。

 

 

 フォウ君は寄り付かない。

 特異点で絆を繋ぐべきと知っていても、故意に原作通りにするなんて器用なこともできそうにない。

 

 

 希望はない。

 ただ来るだろう絶望が、未来が、事実としてだけそこにはある。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな顔しないで、マスター。私が強いこと、知ってるでしょう? 例え何が相手でも―――――君の恋人は最強なんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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