東方Project二次創作短編集   作:dwwyakata@2024

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捨てるというのは悲しい事です。

ましてやそれが知性や力であるのなら。






4、お仕事の後に

久しぶりに「仕事」が来た。

 

今回もまた地底。

 

ただ、今回は大物妖怪の知り合いでも成れの果てでもなく。地方の伝承が散逸してしまった妖怪だった。

 

肉塊となって呻いているそれにさわり。

 

ゆっくり時間を掛けてバカになるように促して行く。

 

ほどなく、やはり人の姿になった妖怪は。

 

ぱちくりとルーミアを見た後。

 

無邪気に笑って、手をさしのべて来た。

 

「此方で引き取ります」

 

地底を管理している(管理態勢はゆるゆるだが)サトリの姉妹の姉、古明地さとりが妖怪の手を引き、つれていく。

 

幻想郷のルールを教えた後。

 

地上に放つのだろう。

 

ルーミアは疲労を感じながら地上に戻ると。

 

新月の夜だった。

 

この暦の時だけは、ルーミアはとても相性が良いのか。闇を纏わずにも、外で疲弊せず。むしろ力がみなぎるのを感じる。

 

そうか、今日は新月だったか。

 

気持ちよく飛んでいると、チルノとばったり。向こうは遊んでいる最中だったようで、声を掛けてきた。

 

「ルーミア、良い所に! でっかい雪だるま作ってるんだけれど、一緒にやらないか?」

 

「かまわないのだー」

 

消耗しているけれど、新月なら大丈夫だろう。

 

チルノに連れて行かれた先では、妖精何体かとチルノが、一緒になっておっきな雪だるまを作っていた。

 

此処は妖怪の山の麓だけれども。

 

大丈夫なのだろうか。

 

妖怪の山は、色々な勢力がしのぎを削る魔境だと聞いているのだけれども。

 

案の定、すぐに何か飛んでくる。

 

天狗だったら逃げ散るしか無かったけれど。

 

幸いにも天狗では無かった。

 

「何をやっているんですか、貴方たち」

 

「あっ、緑の巫女!」

 

「早苗です」

 

「緑の巫女、見てみて! あたいでっかい雪だるまつくったんだ!」

 

話を聞いていないチルノに、笑顔を引きつらせる早苗。

 

今は初秋だ。

 

確かに涼しくなってきてはいるが、元気に巨大雪だるまを作る氷精の元気さというか馬鹿さというか、それに呆れてもいるのだろう。

 

「それで、この雪だるまをどうするつもりですか?」

 

「えっ? ……考えてない」

 

「勢いで作るのはかまいませんが、後片付けはきちんとするように。 雪だるまをこのまま放置したら、この辺りはグシャグシャになってしまいますよ。 遊びは片付けまでして、始めて遊びになるんです」

 

「分かったよもう」

 

口を尖らせるチルノ。

 

ルーミアは無言で雪を固めていたが。

 

ふと気付く。

 

雪だるまに、リボンをいつのまにか取り付けていた。

 

勿論自分のリボンは外せない。

 

その辺に落ちていた木くずを使って。

 

それっぽくしたのだ。

 

早苗はそれに気付いた。

 

「あら、ルーミアさん。 おしゃれをさせてあげているんですね」

 

「分かるのかー? 早苗もお年頃なのだー」

 

「ふふ、そうですね。 でも、後片付けはきちんとしてください」

 

「わかったのだー」

 

しばらく雪だるまをああでもないこうでもないと作っていたら。

 

何か良く分からないものに仕上がってしまった。

 

みなでひとしきり笑った後。

 

早苗に言われたように、きちんと片付ける。

 

雪だるまをみんなで近くの湖に運んで、其処にドボン。

 

まだ初秋だ。

 

水は充分に温い。

 

大きな雪だるまだったけれど、水に入れられてしまうとひとたまりも無い。すぐに溶けて消えていった。

 

「あー楽しかった! あたい次は何をして遊ぼうかな」

 

「私はもう帰るのだ」

 

「あれ、そういえばルーミア、地底から出てきてたよな。 あんな危ない所で何してたんだ?」

 

「秘密ー」

 

笑顔で妖精達に手を振って、その場を後にする。

 

雪だるまのリボン代わりにした木くずは、何となく持ち帰った。

 

住処につくと、紫が事前においていったチョコを口にする。

 

何度か深呼吸する。

 

フラッシュバックのダメージが、あの時。

 

死にかけたときから、少しずつ重くなっている。

 

何事も不変のものは無いとは分かっている。

 

今日は新月だったから多少消耗は抑えられたが。

 

今後は下手をすると、無理をしたらまた永遠亭送りになるかも知れない。

 

多分だが、あの同族の呪いが。

 

まだ体の何処かに残っていて。

 

それが体をむしばんでいる。

 

今度永遠亭に行く必要があるだろう。しかし、外に出ると、どうしてもバカになって遊んでしまう。

 

仕事をするときは、強い意思で自分を動かせる。

 

救う、という目的意識が、他に優先して働くからだ。

 

だが、それ以外の時は。

 

自分に対して無頓着な事が、こういうときに徒になる。

 

本来なら、リボンだって。

 

自分で大切に洗ったりして管理するべきなのだろうに。

 

封印までして状態固定しているのは、バカになっている時は自分に対する無頓着さが出て、汚してしまうから。

 

手鏡を使って、リボンを見る。

 

さっき持ち帰った木片を、何処かにつけてみると、似合うかも知れない。

 

似合うはずも無い。

 

木片は所詮木片だ。

 

疲れが溜まっているし、眠る事にする。

 

このままだとルーミアは。

 

ずっとこの誰にも知らない封印の場所で、眠り続けて。たまにだけ、外に出るようになるかも知れない。

 

それも悪くない。

 

昔は昔、今は今。

 

だとしても、昔はこのリボンをくれた子のような人間を喰らった事もあっただろうし。

 

遺族の恨みだって買っただろう。

 

深い業を背負った身だ。

 

今更、この状態のままで日の下を歩こうと思う事はない。そんな度胸が無いと言うべきなのだろう。

 

気付く。

 

しばらく寝ていただろうか。

 

いつのまにか、博麗の巫女が来ていた。

 

「退院したって聞いてね。 預かりものよ」

 

「……預かりもの?」

 

「これ」

 

目を見張る。

 

それは。

 

今頭につけているリボンによく似たリボン。

 

「親子だけあって趣味は似ているわね。 親の方は貴方の事は具体的に覚えてはいなかったけれど、子供の頃誰か大事な友達がいて、リボンをあげた事は覚えていたわよ。 無害だから紫は記憶を消さなくて良いと言っていたけれど」

 

「……」

 

「娘の方が、体を張って守ってくれたあんたにお礼をしたいって言ってね。 それで多分、あんたがつけていたリボンを覚えていたんでしょう。 似たデザインのものを見つけてきたらしいわ」

 

つけてあげると言って、ルーミアの頭にもう一つのリボンを括り。

 

更に封印の札までつけ始める霊夢。

 

分かっているのだ。

 

普段外で極めて自分に無頓着になるルーミアの性質を。

 

どうして封印までして、絶対に外れないようにリボンをつけているかも。

 

なんでだろう。

 

涙が零れてきた。

 

「こんな事しているってばれたら、ますます神社に人が来なくなるぞ」

 

「ばれやしないわよ。 此処を知ってる人間なんて、私くらい。 あんたの真相を知ってる人間も、数人。 口を滑らせる可能性もない面子よ」

 

「私が昔は……」

 

「それも分かってる。 でももう昔のあんたは死んで、今のバカが残っている。 私に取っては、それだけよ。 まあ今後、本当に人を食ったりしたら、容赦なく退治して地底送りにするけれどね」

 

リボンをつけるのが終わったらしい。

 

ちょっと頭が華やかになった。

 

基本的に仲間の妖怪以外には見せないが。

 

それでもこれは、ルーミアの新しい宝物になりそうだった。

 

「疲れたからもう少し眠る……」

 

「その呪いが抜けるまでは時間が掛かるわ。 紫から声が掛かるまでは、ずっと寝ているくらいで良いかもね」

 

「それもいいな……何も思い出さないくらいになるまで、もっとバカになりたいくらいだ」

 

「理解出来ないけれど、あんたがそれで納得しているならいいんじゃないのかしらね」

 

博麗の巫女がその場を去る。

 

ルーミアはじっと手を見る。

 

幼子の手。

 

だが本当は、多数の人間を喰らい。

 

殺し殺されてきた血に塗れた手だ。

 

美鈴が実戦仕込みの拳法を使うように。

 

本来は全く違った形の手で、多くの命を無為に奪い、そして目の敵にされ殺し返されてもきた。

 

いずれ報いは受けるのかも知れない。

 

それとも、これが報いなのだろうか。

 

あの救助対象も、いずれ紫にゆっくり記憶を消される。

 

妖怪に友好的な人間が増えすぎると困るからだ。

 

ましてやルーミアは「残忍な」「人食い妖怪」として認識されていなければならない。

 

もし、あの子の娘が成長して。

 

またその子供が出来て。

 

更に厄を呼び込む体質だったら。

 

その時に幻想郷がまだ存続していたのなら。

 

ぼんやりと闇の中で、ルーミアは。

 

その時までは。

 

生きていたいと思った。

 

 

 

(終)








古くは闇の強大な妖怪だったものは

今はただの無害な存在となっています

人と相容れることはありませんが

それでも敢えていたずらに人を傷つけようとも思わないのです。







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