東方Project二次創作短編集   作:dwwyakata@2024

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妖怪には人食いの伝承がある奴が結構いますね。

幻想郷の描写を見る限り、人なんか食ったら封印処置か地底送りが妥当みたいなので(生半可な妖怪じゃあ赤い彼奴に勝てませんので)、まあ普段霊夢と絡んでいる妖怪なんかは人なんか食ってないだろうな、というのが個人的な感想です。

それはそれとして、食糧が必要なのも事実。

外の神々に睨まれている幻想郷で、足りない食糧をどう確保しているのかは結構面白そうな話ではあります。





1、幻想郷の台所事情

八雲紫には幾つも噂がある。

 

人食いの妖怪だ。

 

神隠しをしては、たくさんの人間を喰らっている。

 

冬眠のために大量の人間をさらい、蓄えている。勿論冬眠するときに食べるためだ。

 

幻想郷にある紅魔館という建物に住んでいる吸血鬼のために、生きた人間を提供している。

 

等々である。

 

これらの噂は、実のところ全くの事実無根では無い。

 

昔は。夜が力を持っていて。闇を人間が怖れていた頃は。

 

妖怪はもっと大手を振って存在していた。

 

現在では、幻想郷の外では、神格持ちだったり、伝説になっている大妖怪くらいしか存在できない。

 

神々との力の差は圧倒的で。

 

昔のように振る舞う事は出来ないのが現実だ。

 

幻想郷を出ると。

 

紫は空間の境界を操作し。

 

ある病院に向かう。

 

この病院は。

 

幻想郷における食糧調達のために、絶対に必要な拠点の一つである。

 

まず第一に。

 

幻想郷では食糧を一とする物資が足りていない。

 

妖怪の数に対して、食糧が足りないのだ。

 

人間の恐怖を糧にするタイプの妖怪ならばいいのだけれど。

 

肉を食べないと死んでしまう妖怪もいる。

 

人肉だけしか受け付けない、という偏食家は流石にいないのだが。

 

それでも、たまには人間の肉を食べたいという妖怪もいる。

 

そしてここからが重要なのだが。

 

護法神の類は、そういった妖怪を絶対に許さない。

 

幻想郷にたまに査察に来る護法神は、人間を殺して喰らった妖怪がきちんと退治されたかどうかを、念入りに確認していく。

 

もしこれが出来ていない場合。

 

一柱でも幻想郷の妖怪が束になってもかなわない護法神が、群れを成してジェノサイドにやってくる。

 

幻想郷を作っている結界も、上位の神々の力の前には意味を成さない。

 

上位の妖怪でさえ、結界を通る事が出来る者がいるくらいなのだ。神々の実力を考えれば当然だろう。

 

結論からいうと。

 

護法神が納得する方法で。

 

合法的に人間の肉を含む物資を手に入れなければならない。

 

勿論人間が拒否するのも駄目だ。

 

其処で、紫が考えたのが。

 

このシステムである。

 

此処はとても評判が良い病院で、多くの患者が通っている。良心的な経営、腕が良い医者、献身的な介護。看護師達や医師の待遇もとても良い。此処に紫が出資しているのを知っているのは、一部の経営者と神々だけだ。

 

此処は薄暗い倉庫。

 

山のように物資が積まれている。

 

紫が音も無く姿を見せると。

 

今日来ることを知っていた経営者が一礼した。

 

まだはな垂れの頃から知っている医者だが。

 

今はすっかり頭のはげ上がった老人だ。

 

「いつも出資ありがとうございます、八雲様」

 

「いえ。 それでは物資の確認をさせてもらえるかしら」

 

「此方です」

 

頷くと。

 

紫は手に持ったリストと、薄暗い倉庫に積み上げられた物資を見比べ、チェックをしていく。

 

こればかりは他の者に任せられない。

 

紫は頭脳に関しては相応のものがあり。

 

幻想郷では意味不明な計算能力があるという事にしている。

 

実際にその辺のスパコン程度の能力はあるので、物資を確認しながら計算していくのは簡単だ。

 

チェック。

 

チェック。

 

またチェック。

 

主に此処に積まれているのは、病院に納入された後、本来は廃棄されることになった筈の物資だ。

 

病院では栄養面を考慮して、様々な食物が必要とされるし。

 

賞味期限が切れれば容赦なく廃棄もする。

 

だが賞味期限が切れても、食べられなくなる訳では無い。

 

此処にあるのは、そういう「病人には出せない食糧」である。

 

肉。

 

野菜。

 

魚。

 

いずれも加工されているものばかりだが。

 

栄養価は充分。

 

妖怪にしか基本的に回さないが。

 

それは人間が、この仕組みに勘付くと困るからである。

 

更に言うと、弱い妖怪は基本的に飢えている場合も多い。

 

人間の恐怖しか食べられないような偏食家はどうにもならないのだが。それ以外の妖怪には、紫が手を回して、こうして入手した食糧を引き渡す。

 

その正体を知らないまま妖怪達は、感謝しながら餓えを満たす。

 

そして紫に忠誠を誓う。

 

食品類は問題なし。

 

続いて消耗品類も確認する。

 

妖怪の中には、河童など、優れたテクノロジーをもっている連中もいる。

 

此奴らは独自技術で色々なものを作り出すが。

 

無から有は作れない。

 

病院で廃棄される道具類なども、全て紫が引き取り、これらの妖怪に渡している。その物資は、妖怪が色々といじくって、色々なものを作ったりするのだ。

 

少し前に守矢神社と人里をつなぐロープウェーが出来たが。

 

その材料や動力も。

 

こういった外からの物資が支えている。

 

そして、此処からだ。

 

段ボールを開けて取り出したのは輸血パックである。

 

輸血パックは鮮度の問題があり、あまり長期間保存することが出来ない。

 

これも破棄するはずだったものを。

 

紫が引き取っているのである。

 

本来破棄する筈だった血液だ。

 

引き取ることには何の問題も無い。言うまでも無いが、吸血鬼用の物資である。幻想郷に住んでいる吸血鬼の姉妹はとても小食で、これくらいあれば一月は充分にもつ。なおこの吸血鬼達、普通に人間が食べるようなものも食べられるので(なんと姉の方は納豆やらタラの芽の天ぷらやらが好物である)、本当に血液が必要なのかは甚だ疑問なのだが。この辺りは契約なので、律儀にやっている。契約を守らない存在は、信頼も得られないのだ。

 

更にこの吸血鬼姉妹は戦闘能力の観点でも幻想郷での一翼を担う重要勢力でもあるし、あまりないがしろにも出来ない。

 

幻想郷のパワーバランスを考え。

 

こういう仕事もきちんとする。

 

それが大変なのだ。

 

そして、一番重要な所に入る。

 

いずれもが。

 

破損したり。

 

腐敗しかけたり。

 

酷く病損している臓器や筋肉などだ。

 

冷凍保存されているが。

 

いずれも、カルテと、どのようにして破棄されたか、などが記載されている。

 

これらが。

 

幻想郷で、どうしても人間の肉を必要とする妖怪の腹に収まる物資である。

 

病院では献体という制度があり。

 

特殊な病気で亡くなった人間を本人や家族同意で調査する場合がある。

 

その際、基本的に調査した後の遺体は全て丁寧に縫い合わせ、元に戻すのだが。

 

破損が酷い箇所や。

 

病損している場所などは。

 

衛生的な観点から、破棄するケースがある。

 

今回引き取るのは。

 

その破棄する筈だった人体の一部だ。

 

本来は焼却処分するのだが。それを焼却しないで有り難く活用するのである。

 

勿論献体の時点で本人が納得しているし。

 

そもそも遺体から掠めた訳でもない。

 

カルテと状態をチェックして。

 

念入りに確認をしていく。

 

これらも護法神が目を光らせていて、もしもちょろまかそうとしたりしたら、何をされるか分からない。

 

故に不正がないように。

 

紫の方が、必死に目をこらして、チェックをしなければならない程なのである。

 

幻想郷の大妖怪が。

 

実際にはこんなちまちました仕事をし。

 

神々にも人間にも滅茶苦茶気を遣い。

 

どちらにも失礼がないようにしながら。

 

どうしても必要な物資を、誰もが納得する方法で入手するために頭と胃を痛めている。

 

こんな事実は身内以外には知らせる訳にはいかないし。

 

知った場合は忘れて貰う事になる。

 

具体的な方法としては、境界をいじる事になる。

 

まあ相手が紫以下の実力者だったら、これくらいは難しくない。

 

「ありがとう。 今回もリスト通りの物資がしっかり揃っているわ」

 

「いえ。 此方こそ、八雲様の支援で本当に医師も看護師も、患者のみなさんも笑顔でいられます。 あれほどの金額の支援が無ければ、助けられない患者の方も多いのです」

 

「お互いに利があるのが一番よ」

 

書類にハンコを押すと。

 

物資もろとも紫は移動。

 

幻想郷の物資保存に使っている場所へと移った。

 

誰も周囲にいなくなると。

 

嘆息。

 

此処は一種の氷室で。

 

棚が多数並んでいて。其処に物資を格納していく。

 

なお作ったのは河童だが。

 

河童は中に入れない。たまに好奇心から中に入ろうとする河童は手酷く仕置きをしている。此処はある意味で、幻想郷の最アンダーグラウンドとも言える場所なのだ。何とも情けないアンダーグラウンドではあるが。何も血なまぐさい場所がアンダーグラウンドとは限らない。

 

寒い中、白い息を吐きながら。

 

紫は黙々と一人で陳列作業を行っていく。

 

物資をある程度整理し終えたら次の病院に。

 

紫はこういう物資補充用の病院のスポンサーになっているのだが。大学病院が二つ。宗教法人系が一つ。大型の総合病院が四つ。それぞれに資金援助をしている。

 

これらは全て目的が違っていて。

 

大学病院には献体に用いられた人体の破棄部分が多く集まるし。

 

宗教法人系は色々と面倒な患者が入りやすい。

 

面倒な分、丁寧な医療と親切な対応を心がければ、患者も大いに感謝する訳で。その分色々と融通が利きやすい。

 

大型の病院の場合は、兎に角物資がたくさん集まる。

 

なお金の出所だが。

 

ある方法で文字通り金を生み出すことが出来るので。

 

別に気にしなくても大丈夫だ。

 

更にいえば、別に経済に影響を与えるほどの金を生み出せる訳でも無いので。

 

外に迷惑を掛けている訳でも無い。

 

次の病院でも似たような作業を終えると。

 

てきぱきてきぱきと得た物資を収納していく。

 

それが終わった頃には。

 

丁度今日の仕事が完了していた。

 

 

 

藍には、基本的に結界と幻想郷内部の監視を任せている。

 

実のところ、幻想郷を守る壁としての結界の管理者としては、幻想郷の東の端にある博麗神社と博麗の巫女も関わっているのだが。

 

此奴は戦闘モードになると鬼神のように強い(正直紫でも本気でやり合ったら勝てるか分からない)のに対して、普段はぐうたらで怠け者なので。時々結界を怠けて緩めたりもする。

 

それも含めて藍には常日頃から監視態勢と、紫への連絡体制を構築させており。

 

勿論紫が幻想郷にいる間はその仕事を手伝いもするのだが。

 

普段殆ど眠れない、ブラックな労働を藍にはさせてしまっている。

 

勿論妖怪だから人間とは体力が比較にならないとはいえ。

 

代わりがいないブラックな労働のため、いつもうつらうつらしている(しかも無能呼ばわりされている)可哀想な紅魔館の門番と同等か、それ以上の苦労を藍はしていると言える。

 

物資の回収が終わって幻想郷に戻ってきた紫は。

 

手に息を掛けて温めながらテーブルに着く。

 

さっそく藍が茶を出してくれる。

 

「橙は?」

 

「特に何も感じないので、問題は起きていないと思います」

 

「そう」

 

テーブルで溶けている紫は。

 

疲れ切った表情のまま茶を啜った。

 

橙は藍の式神、つまり式神の式神であり。いわゆる猫又に式神を憑依させた存在である。

 

藍の実力不足を示すように能力はどうということもなく。知能は子供程度で、まあ良くも悪くも無邪気で害が無い存在だ。

 

一応人間型を取ることは出来ているが、猫としての性質の方が強く出てしまっていることや。

 

何より能力不足もあって、八雲の姓を名乗ることは許していないが。

 

藍はたいそう可愛がっているので。

 

その内に力がついてきたら、八雲姓を名乗ることを許そうかとも思っている。

 

部下に苦労を掛けているのは、紫が一番良く知っているのだ。

 

「他の賢者の方々が、少しでも働いてくれれば良いのですが……」

 

「こればかりは性分よ」

 

「はあ……」

 

紫は昔から。

 

陣頭指揮を執るタイプだった。

 

遙か前。

 

月に住んでいる神々に、全盛期の妖怪を引き連れて、喧嘩を売りに行ったことがある。通称月面戦争である。

 

結果は神々の圧倒的過ぎる力を見せつけられまくって惨敗することになった。妖怪では何をやっても勝てないと、思い知らされることになった。

 

その当時から、紫はこの国の妖怪の頭領格で。

 

護法神に勝てる訳も無いのに粋がって悪さを働き、ゴミ掃除のように退治される妖怪達を見て頭を痛めていた。

 

やがて同士が色々考えた末。

 

幻想郷に妖怪を集め。

 

外との軋轢を減らす方法を考えたのだが。

 

しかしながら、昔の同士も今は事情が違う。結局でーんと構えているだけの奴とか、幻想郷を作った後は寝ているだけの奴とか。自分勝手なことをしている奴とかばかりになり。今でも最前線でせっせと働いているのは紫だけである。

 

アラームが鳴る。

 

食糧の配布の時間だ。

 

食糧の配布そのものは、配下にしている妖怪にやらせるのだが。

 

此奴らが不正をしないかは。

 

紫自身が監視している。

 

更に物資をあの氷室から出すのも紫自身だ。

 

というわけで、負担は多少減るものの。

 

結局監視はしなければならない訳で。

 

苦労は絶えない。

 

よろよろと腰を上げると。

 

空間の境界を操作し。スキマを作って、移動する。

 

藍が何か言いたそうに此方を見ているが。

 

此奴と同格くらいの式神が十人くらいいたら。

 

或いは楽を出来るのかも知れない。

 

しかしながら、それはそれで幻想郷のパワーバランスを崩すし。

 

何より式神達の監視をする必要も生じてくる。

 

藍は良く出来た式神だが、万能では無い。

 

九尾の狐+αだから超凄いかと思えるかも知れないが、やはり所詮は人間に退治される程度の妖怪なのである。

 

時々おっちょこちょいもやらかすし。

 

失敗をして折檻をする必要が生じる事もある。

 

スキマを出ると。

 

紫は、既によそ行きの。

 

うさんくささ全開で。

 

得体が知れない表情を作っていた。

 

控えているのは、古くから紫に仕えている妖怪達だ。いずれも古い時代の妖怪で、中には具体的な伝承が失伝してしまった者もいる。名前と形だけが残って、正体がよく分からない妖怪は、もはや幻想郷でしか存在できないのだ。

 

彼らも人型を取っているが。

 

それは幻想郷でのルールだから、である。

 

物資とチェック表を渡し。

 

誰にどれだけの物資をどう渡すかを、その場で確認する。

 

流石に最低でも数百年、或いは千年以上生きている妖怪達だ。

 

それくらいは出来る。

 

勿論此処に積んでいる食糧にしても物資にしても、幻想郷では貴重なものばかりだ。

 

紫の配下だと分かっていても。

 

襲おうとする妖怪はたまにいる。

 

そういうときのために、渡している荷車には監視の式神もつけている。

 

「物資の輸送を開始しなさい。 念を押すけれど、紅魔館の事実上の主は本当に厳しいから、注意するように」

 

「分かりました、紫様」

 

「それでは行きなさい」

 

傘で地面をついたまま。

 

紫は表情を変えず見送る。

 

まあ何かあった場合も。

 

殺すまではやらない。

 

とても怖い目にはあわせるが。

 

其処までだ。

 

実際問題、こんな状況で、「気に入らないから」などという理由で部下を殺すのはただの阿呆である。

 

流石に長い時を経ている紫だ。

 

その愚行が、如何なる代償をもたらすか位は熟知している。

 

妖怪達がいなくなると。

 

後は監視の式とのリンクを保ったまま、屋敷に戻る。

 

そして、布団に倒れ込んだ。

 

藍が苦言を言うが。

 

胃がきりきり痛い。

 

「永遠亭印の胃薬をちょうだい」

 

「またですか。 彼処に借りを作るのはあまり……」

 

「いいのよ。 利用できるものは何でも利用しないと」

 

呆れた様子で藍が粉薬をもってくる。

 

腹立たしい事に。

 

彼処に住んでいる奴は、無茶苦茶良く効く薬を作る。

 

何となく紫の苦労も知っているようで。

 

たまに様子を見に行くと、形容しがたい笑顔をされる。

 

大変ね、と。

 

少し負担を減らす方法を考えたらどうかしら、と言われた事もある。

 

だが正直な話。

 

そんな方法があるのなら。

 

紫の方が教えて欲しいくらいである。

 

粉薬を飲む。

 

死ぬほど苦くて涙目になるが。

 

文字通り良薬口に苦しである。

 

耳に甘い言葉があまり良い効果を及ぼさないように。

 

甘くて体にも優しい薬は、当然効きも悪い。

 

またテーブルで溶けていると。

 

藍がプリンを持ってきた。

 

「さぞやお疲れになったでしょう。 外のコンビニで発売された最新製品らしいですよ」

 

「あら、コンビニの品とは思えないほどの豪華さねえ」

 

「山の仙人が面白がって買ってきました」

 

「……そう」

 

山の仙人は、聖徳王とは別人で、別の意味で大変厄介な存在なのだが、まあそれはおいておく。

 

この間(多分)あいつのせいで、セイヨウタンポポが幻想郷で繁殖しかけて大変な事になりかけたのだが。

 

その時も、紫が泣きながら一本一本全部駆除し。

 

更にそれとなく噂を流して日本タンポポの一部ごとセイヨウタンポポを必死に駆除するという涙ぐましい努力を行った。

 

このプリンは確かにおいしいが。

 

このくらいでは代わりにはならないだろう。

 

まあでも美味しいのは事実だ。

 

少し機嫌も治ったし。

 

おなかがいたいのも少し収まってきた。

 

丁度良いので。

 

眠る事にする。

 

普段はころんと眠れるのだが。

 

心労が酷すぎる場合は眠れなくなるので。

 

睡眠導入剤を使う。

 

勿論永遠亭印なので。

 

藍にくどくど文句を言われるので、余計にストレスが溜まるのが悲しくてならない。

 

そして当然のことながら。

 

見るのは悪夢だ。

 

また誰かが何かやらかして。

 

幻想郷が崩壊しかける。

 

紫は奔走してやっと犯人を突き止め。

 

コタツで茶を啜っている博麗の巫女に犯人を教える。

 

後はすっ飛んでいった博麗の巫女が、犯人をぶん殴るのを見ていれば良いのだが。彼奴は兎に角やり過ぎるので、見ていて冷や冷やする。しかし幻想郷のルール上、妖怪を退治するのは人間であるのが好ましいため、黙って見ているしか無い。紫が直接手を貸すのは、余程の事態の時だけだ。

 

博麗の巫女が犯人に拳骨をくれた後も油断は出来ない。

 

実際問題、やらかす奴は。

 

反省なんて簡単にしない場合も多い。

 

以前幻想郷を文字通り潰し掛けた不良天人に至っては。

 

退治されるのを面白がっていたばかりか。

 

最後は幻想郷を丸ごと遊び半分で倒壊させようとしかけた。

 

そういう事もあるので。

 

心配だから後始末まできっちりやらなければならない。

 

これが面倒くさい事この上ない。

 

起きる。

 

全身にびっちり冷や汗を掻いていた。

 

散々悪夢を見たのだろう。

 

藍が遠い目で此方を見ていた。

 

「夢の中でまで、異変解決に奔走なさらなくても良いのでは」

 

「またそんな夢を見ていたのね……疲れが取れないわけだわ」

 

「もう少しお休みになられては」

 

「いいえ、流石に十二時間寝たし充分よ」

 

のそのそと起きだす。

 

今日も紫は。

 

眠った分は、働かなければならないのだ。

 

例え疲れが一切取れていないとしても。







お外でも滅茶苦茶苦労している紫さん。

本作ではこういう生臭い仕事を、他のあんまり仕事をしない賢者「たち」に変わって紫さんはしているのです。












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