東方Project二次創作短編集   作:dwwyakata@2024

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東方Projectの天狗勢でも人気の射命丸文。自分もかなり好きなキャラです。

悪辣パパラッチであり幻想郷最速を自負する実力者ですが(とはいっても体重絞って速度を上げているようなので、実際の力量にはかなり疑問が残る)、東方Project世界では場を引っかき回すいわゆるトリックスターとしてなかなかに面白い方かと思いますね。

この話では、そんな楽しい文さんが、とても楽しい悪巧みをする。そんな内容です。

先に断っておきますが、自分は射命丸さんはかなり好きです(繰り返し)。





射命丸文紅天に舞う
序、契約


比較的最近幻想郷に来た吸血鬼達の住まう館、紅魔館。

 

幻想郷に存在する湖の一つ、その湖畔に存在するこの館には。

 

幻想郷に幾つも存在する勢力の長として君臨する妖怪としては比較的若年の吸血鬼姉妹と。

 

実質上館を取り仕切っている、(謎は多いが、一応人間とされている)時間を操るメイド長。

 

拳法を得意としているが、代わりがいないためいつも疲れ切っていて寝ている姿が目立つ妖怪の門番や。

 

人間の寿命を超越した魔法使い。

 

更にそれらの手下の雑多な妖怪や妖精が、多数生活している。

 

恐ろしげな名前と。

 

恐ろしげな妖怪の住処だが。

 

実際問題、吸血鬼が夜な夜な人里を襲うような事はないし。

 

むしろ幻想郷を管理している博麗の巫女とは上手くやっている。

 

その館の前に降り立ったのは。

 

射命丸文。

 

普段は三流パパラッチとして振る舞っている。

 

妖怪の山の鴉天狗である。

 

鴉天狗は幻想郷の山に住まう天狗の中でも下位に位置するが、千年を経ている天狗である射命丸は、単純な実力では天狗の中でも最強。天狗の長である天魔に匹敵する。

 

普段はアルカイックスマイルを浮かべて強引な取材を行い。

 

インチキまみれの新聞の内容から誰にも煙たがられ。

 

三流と自分でも分かっている新聞を撒いては。

 

その反応を楽しんでいる。

 

更に言えば、記事がないのなら、自分で事件を起こしたりもする。

 

そんなパパラッチらしいパパラッチだが。

 

射命丸は古い時代から生きている妖怪らしく。

 

相応に恐ろしい部分も持っている。

 

特に、射命丸は自覚もしているが。

 

強い野心と上昇志向を持っていて。

 

現状の硬直化した山の天狗の組織には、著しく大きな不満を抱いていた。

 

例えば、山の天狗の縄張りを警備するのは、白狼天狗と呼ばれる天狗の一種なのだが。

 

この者達はプライドばかり高い割りには実力が伴わず。

 

事実全員をあわせても射命丸一人にも及ばない。

 

強い者が警備を。

 

戦力に劣るなら他の仕事を。

 

当たり前の話なのに。

 

それさえ出来ず。

 

この種族なのだからこうしろ。

 

年功序列なのだからこの地位で我慢しろ。

 

そういった硬直化したルールが蔓延し。

 

実力のある若手を抜擢も出来ず。

 

異変の時には射命丸だけがかり出され。

 

事実吸血鬼異変の時には後手後手に回ったばかりか、吸血鬼に好きなようにされる醜態までさらした。

 

その時も当然射命丸はいたが。

 

自分が最初から出ていれば、彼処まで好き勝手はさせなかったという思いが今でも強い。

 

勿論誰にも喋る事はないが。

 

今日、紅魔館に来たのは。

 

この館の名目上の主。

 

吸血鬼、スカーレットデビルこと。レミリア=スカーレットに用があるからである。

 

彼女の能力は、自己申告では「運命」に関するものであるのだが。

 

本人が具体的にその能力の詳細に対して口にしないように。

 

その実態については、本人も口を開きたがらないもの、ということである。

 

ただレミリア自身は優れた戦闘力を持つ吸血鬼であり、紅魔館は他の妖怪勢力に劣らない実力を有している。配下にも優秀な人材を揃えていて、懐も深い。事実上紅魔館を取り仕切っているメイド長も、レミリアに勧誘されたという噂もある。

 

門まで歩いて行くと。

 

腕組みしたまま門の側の壁に背中を預け。

 

うつらうつらと船を漕いでいる門番の前に出る。

 

中華風の服を着こなしている赤髪の彼女は。

 

幻想郷の妖怪ではかなりの長身だ。幻想郷の妖怪のスタンダードにあわせて、女の子に見える姿を取っている。つまり人型を取れる程度の格はあるという事である。

 

とはいっても、そこそこ長身の男性と同程度、くらいの背丈でしかないから。

 

それこそ妖怪辞典に出てくるような、何十メートルもあるような妖怪と比べると、人間にしか見えないが。

 

しばし笑顔を保ったまま前に立つが。

 

気付く様子も無いので。

 

デコピンをしてやる。

 

「ふあっ!?」

 

「おはようございます、美鈴さん」

 

「ああ、これはおはようございます。 ??」

 

涙目になる紅美鈴。

 

彼女は拳法の達人であり、まず人間には勝てないと言われる程の使い手だけれども。それはあくまで「普通の人間」が相手の場合。

 

魔境に等しいこの幻想郷では。

 

彼女を倒せる人間なんてゴロゴロいる。

 

本当に危ない気配には反応できるらしいのだが。

 

彼女の居眠り癖は有名で。

 

特にこの時間帯。

 

朝食が終わって、これから余裕のある時間帯、となると。

 

大体こんな感じである。

 

とはいっても、他に門番がいない紅魔館の体制にも問題があるので。休む事が出来ない彼女の事は、あまり責められないのかも知れないが。

 

「おでこがいたいんですが、なんでしょう?」

 

「さっきキツツキがとまって激しくおでこをビートしていましたよ」

 

「ええっ!? そんな酷いキツツキが! 見つけたらただじゃおきません!」

 

「そうしてください」

 

冗談を真に受ける美鈴に、少し心配をしてしまうが。

 

いずれにしても用事を伝える。

 

彼女は頷くと、仕事がある事が嬉しいと言うように紅魔館の中に駆け去り。

 

程なくメイド長を連れて戻ってきた。

 

アホみたいな嘘に騙される門番と違い。

 

こっちは手強い。

 

早速、どうせろくでもない用事で来たのだろうと。

 

射命丸を厳しい目で見ていた。

 

メイド長は美貌で知られるが、故に険しい顔になると、その鋭さも一際だ。

 

「何用でしょうか。 お嬢様の日常を貴方の新聞のオモチャにするのは避けていただきたいのですが」

 

「あやや、そんなつもりはありませんよ。 今日は新聞記者として来たのではありません」

 

「……?」

 

「貸しを二つ、使用します。 そう吸血鬼のお嬢様に伝えていただければ」

 

小首をかしげている美鈴と違い、鋭いメイド長は、その意味にすぐ気づいた。

 

空気が完全に変わるが、射命丸にとっては想定通りの展開である。

 

射命丸は記者としては三流だが。

 

情報を嗅ぎつける能力に関しては一流だ。

 

今までも色々と紅魔館には有益な情報を持ち込んでおり。

 

対価として、いざという時に貸しを必要な範囲内で使用させて欲しいと、話を付けている。

 

現在までに10近い重要情報を流し。

 

いずれもがこの館の名目上の主であるレミリアが、貸しとして認識している。

 

今回はその内の二つを利用する。

 

ほどなく、忠誠心篤いメイド長が戻ってくる。

 

何だかぴりぴりしているのに気付いたのか。

 

美鈴も既に眠気は飛んでいるようだった。

 

この幻想郷に来てからは、比較的荒事も減っているとは言え。

 

此奴の拳法は実戦仕込み。勿論相手を徒手にて殺す事を想定した本物の中華拳法だ。

 

今でこそ荒事をする事は減っていても。

 

昔はそうでは無かっただろうことは、射命丸には容易に想像がつく。

 

単純にもっと凄まじい猛者が幾らでもいるというだけの話で。

 

修羅場をくぐってきた戦士であり。

 

拳一つで戦場を生き抜いてきた猛者である事には違いないのだ。

 

外の世界の神々には及ばないかも知れない。

 

だが、それでも、普通の人間が及ぶところではない妖怪が。

 

幻想郷には幾らでもいるのである。今では、妖怪を見かけなくなった外とは違い。

 

「まさか、何か異変でも起きるんですか?」

 

「うふふ、秘密ですよ美鈴さん。 記者が情報を公開するのは、新聞においてだけです」

 

「そうなんですね!」

 

「白々しい……」

 

メイド長が、完全に据わった目で言う。

 

此奴の能力は、射命丸の天敵に等しい強力なものだ。

 

正直な話、戦って負けるとも思わないが、簡単に勝てるとも思わない。

 

機嫌を損ねると、今日の用事そのものが瓦解してしまう。

 

だからある程度怒らせないように冗談を交えていくしかない。

 

「お嬢様の許可が出ました。 場合によっては生かして館から出しませんので、精々気を付けなさい」

 

「分かっていますよ、えへへ。 それでは美鈴さん、キツツキに気を付けて」

 

「はい。 そんな不届きなキツツキは、二度と許しません」

 

「?」

 

小首をかしげるメイド長。

 

紅魔館の中はそこそこに広い。

 

何度か入った事はあるが。

 

連れられて歩いていると、構造が記憶と違っている。

 

防犯のために、空間の操作ができるメイド長が、ある程度毎回弄っているらしい。働いているメイド姿の妖精多数。

 

いずれも動きは良くないが。

 

花壇に水をやったり。

 

お掃除をしたり。

 

メイド長の手間を減らす事くらいは出来る様子だった。

 

まあ妖精は基本的に、人格を持った自然現象に過ぎず、知能にしても能力にしても、人間を遙かに下回る、幻想郷の最下層階級に過ぎない。

 

今やっている仕事も。

 

単に面白がっているだけだろうし。

 

飽きたらすぐに辞めていくのだろう。

 

パジャマ風の服を着た魔法使いが来たので、一礼してすれ違う。

 

彼女は紅魔館の名目上の主の吸血鬼、レミリアの友人であるパチュリーである。互いを渾名で呼ぶほどの親しい仲で。それなりの腕前の魔法使いだ。ただし、ぜんそく持ちで体が弱く、戦闘にはあまり向いていない。頭の回転も速いと言えず、膨大な魔力の持ち主だが、一瞬の判断が求められる戦闘より研究に向いているタイプだ。

 

紅魔館の地下には、彼女が集めた膨大な蔵書があり。

 

それを狙ってたびたび賊(※特定の一人だけだが)が侵入するため。

 

この賊とパチュリーは、いつも知恵比べを繰り広げているらしい。

 

何回かその直接の様子を取材しようと狙ったのだが。

 

上手く行かなかったのは。多分強力な妨害魔法が掛かっているから、なのだろう。

 

「動かない書庫の彼女が出てくるのは珍しいですね」

 

「館の中には色々な魔法トラップが仕掛けてあります。 メンテナンスは彼女にしか出来ないのですよ」

 

「今度取材させていただけます?」

 

「勿論却下です。 セキュリティを総入れ替えさせるつもりですか」

 

メイド長に一刀両断されるが。

 

まあいい。

 

許可が出ていなくても。

 

いずれ取材のチャンスはあるだろう。

 

紅魔館は前からトラブルが絶えない所だ。

 

幻想郷を揺るがす事件を異変と言うが、その舞台になる可能性もある。

 

その際に忍び込んで。

 

どんな風だった、というように取材するくらいならありだろう。

 

まあ気長に待つ事にする。

 

射命丸は鴉天狗。

 

つまりは妖怪だ。

 

しかも千年の時を経ている。

 

時間は人間と違い。

 

それこそいくらでもあるのだから。

 

程なく、奥の書斎に着く。

 

メイド長がノックすると。

 

少し気だるげな声が返ってくる。

 

部屋にはシックな家具が建ち並び。

 

奥のデスクには、幼い子供がついていた。

 

年齢500歳になる此処の名目上の主。スカーレットデビルこと、吸血鬼レミリア=スカーレットである。

 

何度か異変を起こした幻想郷における有力勢力の一つで。

 

幻想郷の管理人である八雲紫とも契約をしているという噂がある。

 

異変の度、時々ここのメイド長が解決のためにかり出されたり。或いはレミリア自身も出張ったりするが。

 

それはこの契約が故、らしい。

 

残念ながらこの辺りの話については、確報が得られていないので。

 

記事にも出来ないし。

 

断言も出来ないのが残念だ。

 

レミリアは背中に蝙蝠の翼さえついているが、それ以外はあまり人間の子供と見分けがつかない。

 

たまに食事の様子を取材させて貰うが。

 

精一杯背伸びしている子供にしか見えず。

 

テーブルマナーなどは相応に仕込まれているようだが。

 

味覚は子供そのもの。

 

また和風の好みらしく。

 

納豆やタラの芽の天ぷらが好みだったりと、かなり幻想郷に馴染んでいる。

 

その一方で、戦闘の際は荒々しい戦いぶりを見せる事もあり。

 

名目上であっても、勢力の長としては相応しい実力を持っていることを疑う者は誰もいない。

 

門番に勝てる人間は幻想郷に珍しくないが。

 

レミリアに勝てる人間はごく少数だろう。なお、人間同様昼間に起きていることが多いようだ。

 

「お連れしました、お嬢様」

 

「あやや、お久しぶりです、レミリアさん。 この清く正しい射命丸、少しばかり難しい話をしにまいりました」

 

「貸し二つ、ね。 まあ貴方からは色々と貴重な情報を得ているし、今後も得られるかも知れないと思うと仕方が無いわね。 内容次第では聞いてあげるわ」

 

「ではまずお人払いを」

 

メイド長の気配が変わる。

 

此奴は時間を操作し、空間もある程度操作する凄腕だ。

 

本当に人間かも疑わしく。

 

博麗の巫女や、或いは神々くらいしか、真正面からやりあって勝てると断言できる存在はいないだろう。

 

だが射命丸は動じない。

 

相手の能力が自分の天敵だろうが。

 

相手は人間。

 

妖怪であり。

 

しかも千年を経ていて。

 

幻想郷最速を自負する射命丸が。

 

人間相手に気圧されるつもりはない。

 

笑顔を保ったままの射命丸に。

 

レミリアは嘆息した。

 

「咲夜。 少し席を外していなさい」

 

「分かりました。 何かあった場合は即座にお呼びください」

 

「ふふ、鴉天狗程度に、私が遅れを取るとでも?」

 

「勿論思いません。 万が一の場合のためです」

 

心配性ねと、笑いながらレミリアはメイド長咲夜を下がらせるが。

 

その笑みは獰猛極まりないものだった。

 

すっかり平和に馴染んでいるとは思えない。

 

外で数多の修羅場をくぐってきた、闇の住人としての顔である。

 

そういう用件で射命丸が来たのだと。

 

此奴も肌で感じたのだろう。

 

子供にしか見えなくても。

 

500年の時を生き抜いてきた吸血鬼なのである。

 

外では一神教関連のヴァンパイアハンターに散々追い回されただろうし。

 

危ない目にも何度もあっているはずだ。

 

それを生き抜いてきたと言う事は。

 

相応の実力を有している、と言う事も意味している。

 

しかしながら、信仰が力に直結するこの世界。もしも本気で一神教の神や天使達を怒らせたら無事で済む筈も無いので。

 

隠れ住みながら生きてきたのだろう。

 

その程度のしたたかさも併せ持っている、と言う事だ。

 

頬杖をつくと。

 

レミリアは、子供らしくもない。

 

吸血鬼の長らしい表情を浮かべた。

 

「さて、では用件を聞かせてもらおうかしら、山の鴉天狗」

 

「用件は二つです。 一つは貴方の能力によって、私がこれからこういう条件で行動した時、どうなるかの結果を知りたく」

 

「ほう?」

 

レミリアの能力。

 

それは運命を操る能力だ。

 

自己申告に過ぎないが。

 

ある程度の未来視に近い能力は実際に使っているのを、射命丸も確認している。

 

今回用事があるのはその能力である。

 

「もう一つの用件は?」

 

「結果を口外無用、ということですよ」

 

「ふふ、余程の火遊びを目論んでいるようね」

 

「だから、契約を守る貴方の所に来たんです。 分かるでしょう?」

 

くつくつと、二人の笑いが重なる。

 

射命丸はあくまでアルカイックスマイルのままだが。

 

此処は今や人外の魔境だ。

 

そして吸血鬼レミリアは。

 

面白いと思ったのか。

 

話を受けた。

 

さて、此処からだ。

 

射命丸は充分に準備をしてきた。

 

確度が高い未来情報を得て。それで上手く行っているようでなければ、更に準備をしなければならない。上手く行かないと判断したら、引くことを考えなければならない。

 

今実行に移して上手く行くか。

 

行かないか。

 

それを確認する、最終手段としてここに来たのである。

 

「では見ましょうか」

 

レミリアが言う。

 

射命丸は、笑顔を保ったまま、結果を待つ。

 

目を閉じると、レミリアは。今後起きうる未来の運命を、見始めた。








本作の咲夜さんは忠誠度が高いまっとうな忠臣です。

おぜうさまもせっかくなのであまり触れられない能力を使うシーンを取り入れています。未来予知が完璧に出来たら負ける訳ないですので、まあ元々原作でもかなり限界はある能力なのでしょう。



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