東方Project二次創作短編集   作:dwwyakata@2024

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射命丸のクーデター大成功です。

ちなみにこの章での射命丸の言動が色々バカ丸出しなのは、おぜうの主観が混じっているからですね(笑)

そしてこういう悪さはあまり上手く行かないものなのです。







3、陰謀の果てに

肌寒いほどの上空で。

 

天狗が壊滅していく様子を見ていた射命丸は、くつくつと笑っていた。

 

周囲には青ざめている天狗達。

 

皆、思っていなかったのだろう。

 

まさか此処までの惨劇になるとは。

 

確かに戦いになるだろうとは思っていたはずだ。

 

だがある程度の所で負けを認めて、後は平和的に片がつく。

 

そんな風に思っていたのだろう。

 

愚かな。

 

これは国盗りだ。

 

始めた以上、そんな生ぬるい結末で終わるはずがない。

 

「しゃ、射命丸殿?」

 

「ああ、一つ言い忘れていましたね。 今後は私が天魔です。 ……つまり射命丸様と呼べ!」

 

もう笑顔を浮かべる必要もない。

 

作っていたアルカイックスマイルを放り捨てた射命丸は。

 

完全にすくみ上がっている天狗に、戦闘的な笑顔を向けていた。

 

これで。

 

これでやっとだ。

 

千年間、ずっと下っ端として使われてきた境遇から解放される。

 

これで天狗達は自分の配下になる。実力的にそうだった。今までは無意味な伝統だの戒律だのでしばられていた。それがなくなるのだ。

 

笑いが零れてくる。

 

実力主義の社会が来る。

 

年ばっかりとったあの天狗達の無様な様子を見ろ。

 

一瞬で祟り神の元締めに粉砕され。一瞬で天津神の柱に叩き伏せられ。

 

蛙のエジキになり。

 

その有様を写真にまで撮られて。

 

屈辱のまま這いつくばっている。

 

このような有様になって、なおも天狗の誇りが、とか口にするのだろうか。

 

だとしたら正に笑止。

 

そして此処からは。

 

射命丸による新しい時代が構築されるのだ。そう、文字通りの新時代の幕開けだ。

 

「射命丸っ!」

 

鋭い叱責。

 

見ると、白狼天狗だ。

 

犬走椛ではないか。

 

全身傷だらけだが。まだ継戦能力は残している模様である。

 

なるほど、あの戦いの中から、逃げ延びたのか。そして当たりを付けていた射命丸を探して、見つけたと言う事か。

 

まあどうでも良いが。

 

「何故無事でいる! その天狗達は! どうして傍観している! ……やはり射命丸、貴様この残忍で卑劣な奇襲に一枚噛んでいたな!」

 

「射命丸様と呼べ、犬っ!」

 

「……っ!」

 

力の絶対的な差に、椛が青ざめる。

 

そもそも射命丸は天狗の中でも、天魔に匹敵する実力者。

 

他の妖怪勢力の長達にもそうそう遅れは取らぬと自負しているほどである。

 

椛のような白狼天狗など、束になっても勝てる相手では無い。

 

それなのに、山の警備は白狼天狗の担当などと、現実にそぐわぬ組織体制に固持し。

 

それでありながら異変の解決には最大戦力の射命丸を一人出撃させる。

 

そればかりか、その様子に嫉妬した白狼天狗どもが。

 

どれだけ射命丸に鬱陶しく絡んできたか。

 

指先で招く。

 

来い、という意味だ。

 

「天狗はこれより私が掌握する。 その新しい天狗の組織に貴様はいらん。 掛かってこい……せめて戦士らしく、華々しく散らせてやろう」

 

「ほざいたなあっ!」

 

ボロボロであっても。

 

それでも、戦士としての誇りを椛は保った。

 

盾と剣を構え。

 

突進してくる。

 

だが射命丸は、軽く天狗のシンボルでもある扇を煽る。

 

それだけで。

 

風の圧倒的な壁が。

 

椛を打ち据えた。

 

空中で無様なダンスを踊る椛は、必死に体勢を立て直そうとするが。

 

その時には、既に射命丸が頭上にいた。

 

強烈な踵落としを叩き込む。

 

頭蓋を粉砕する手応えがあった。

 

地面に叩き付けられた椛は。

 

もう動かなかった。

 

だが、射命丸は更に追い打ちに蹴りを叩き込む。

 

「良くも私に今まで生意気な口を叩いてくれたな、この犬が! 今まで貴様を何度殺してやろうと思っていた事か分からぬわ。 これから貴様を封印し、二度と蘇らぬようにしてくれる! 封印の中、永遠に苦しみ続けろこの駄犬!」

 

「しゃ、射命丸様、その辺りで……」

 

「……そうだな。 それでは皆降りてこい。 隊列を組み直せ。 これより本拠に向かい、守矢の二柱と話をする」

 

「大丈夫なのでしょうか」

 

「あの二柱は腹芸も出来るが、契約を結んだ以上反故にはせん。 新しい天魔として、これより私がお前達を導いてやろう」

 

不安に顔を見合わせていた天狗達だったが。

 

やがて納得したのか、降りてくる。

 

此奴らも、硬直化しきった天狗の体制に不満を持っていた、と言う点では変わりが無いのである。

 

それにもう引き返せない。

 

だから従う。

 

それだけの簡単な理屈だ。

 

だが、予想外だったのは、守矢の二柱の実力だ。

 

強い事は分かりきっていたが。

 

本気で「戦闘」をするつもりになったら、あれほどの実力を有していたとは。

 

確かにその気になれば、二柱だけで天狗を滅ぼすのも難しくは無かっただろう。射命丸に対して言った言葉には、何一つ偽りはなかったのだ。

 

スペルカードルールという優しいお遊びだったから、どうにか対抗できていただけ。

 

もし彼奴らがその気になったら。

 

博麗の巫女でも、危ないかも知れない。

 

いずれにしても、堂々たる態度で進む事が重要だ。

 

自分は天魔になった。

 

その高揚感が、射命丸を盛り上げていたが。

 

だが経験的にこういうときが一番危ないことも知っている。

 

更に言えば、恐らく守矢は天狗を相当に弱体化させる手を採る筈だ。

 

その後、天狗を立て直すのには、長い時間が必要だろう。

 

だがそれも。

 

自分という有能な新しい天魔がいれば大丈夫だ。

 

時間は幸いいくらでもある。

 

組織を立て直し。

 

やがて隙を見て、守矢から支配権を取り戻すか。

 

或いは別の場所に、勢力を確保すれば良い。

 

別の勢力の麾下に入るという手もある。

 

各勢力の中には、拡大傾向を取っているものもあり。

 

その中には聖徳王のように。

 

どんどん有用な人材を受け入れ。

 

勢力を拡大することに意欲的な者もいる。

 

射命丸が売り込めば。

 

聖徳王はさぞ良いポストを用意するだろう。

 

駄目ならその時はその時。

 

別の手を用意すれば良い。

 

それだけである。

 

さて、天狗の本拠が見えてきた。

 

ミジャグジの呪いを注入され。

 

或いは神の柱でなぎ倒され。

 

瀕死の天狗達が縛り上げられ、項垂れたまま座らされている。その中には、今まで御簾の向こうに常に隠れ。顔も見せなかった天魔の姿もあった。

 

いい気味だ。

 

此方に守矢の二柱が気付く。

 

巫女はいないようだが。

 

まあ別に良いだろう。

 

里に向かったのだろうし。

 

此方でやるべき事は無い。

 

二柱に話しかける。

 

「やあや。 約束通りに事が進みましたな」

 

「……」

 

「約束通りだと……!?」

 

まだ息がある大天狗が呻く。

 

此奴が上司だったのも、此処までだ。

 

これからは、此奴は封印し。

 

今まで上司ぶって顎で使ってきたことを、後悔させてやる。

 

「それでは約束通り。 我等は……」

 

言いかけて、違和感を感じた。

 

胸の辺りが熱い。

 

気付くと。

 

射命丸の胸から、小さな手が生えていた。

 

手には不釣り合いなほど大きなナイフが握られていて。

 

一気に射命丸の全身から力が抜けていくのが分かった。

 

ついてきていた天狗達が、悲鳴を上げる。

 

何が、起きた。

 

というか、射命丸の後ろに回り込み、致命傷を一撃で、だと。気配もまったく感じなかった。

 

誰だ。

 

誰がこんな事をしでかした。

 

ナイフが引き抜かれ。

 

力を失った射命丸の体が、大地に倒れ伏す。

 

もがき、必死に体をよじって、相手を確認しようとする。

 

相手は逃げようとか、避けようとか。

 

天狗の群れの中にいても、そんな事さえ考えていなかった。

 

其処にいたのは、何も考えていなさそうな笑顔を浮かべた、小さな子供の妖怪。

 

しかしその笑顔は一見無垢そうに見えて。

 

よく見ると、表情というものが完全に上っ面の作り物。

 

そして、特徴的なのは。

 

胸の部分に、第三の目がある事。

 

その目は閉じられていることだ。

 

戦慄する。

 

見覚えがある。

 

此奴は、地底の支配者。

 

さとりの妖怪姉妹の妹の方。

 

古明地こいし。

 

無意識を操るという能力を持ち、能力の応用によって他人に自分を認識させなくする力を持っている。何処にでも存在し、何処にでも存在しない上、感情が存在しないため何をしでかすかさえ分からない。まさに幻想郷のトリックスター、最危険人物の一人。

 

その力の厄介さから、暗殺に関して此奴の右に出る者はいない。姉は姉で相手の心を全て見透かすという厄介極まりない存在なのだが。事実上何処にでも好き放題存在できる此奴の方が、ある意味厄介だ。

 

こいしは手慣れた様子で手を振り、射命丸の血をナイフから落としながら。

 

それこそ、パンでも拾うかのように言う。

 

「天魔さん、約束通りしたよー」

 

「……すまぬな」

 

「じゃね」

 

笑顔でこいしが手を振ると。

 

もはや既に誰もいなかったかのように、こいしを認識出来なくなる。

 

それは、どうでもいい。

 

問題は、その前の言葉だ。

 

約束通り、だと。

 

すぐに理解する。

 

そうか、天魔の奴。射命丸が離反することを読んでいたのか。

 

そのために、先に手を打っていたというわけだ。

 

地底と妖怪の山は関係が深い。

 

もともとさとり姉妹も、妖怪の山に住んでいた時代がある。

 

現在でも妖怪の山で問題を起こして地底に行く妖怪がそれなりにいるし。

 

天魔は一定の交流がさとりとあった筈だ。

 

射命丸が反乱を起こしたことが確定したのなら、刺せ。

 

そういう契約を、地底と結んでいたのだろう。

 

確かに、幻想郷最速を誇る射命丸でも、相手の攻撃を認識出来ないのではそれこそどうしようもない。

 

ぬかったわ。

 

思わず、自嘲してしまう。

 

こういうときが一番危ない。

 

そう自覚していたのに、情けない事、この上ないとしか言いようが無い。

 

地底にもコネを構築しておくべきだったか。

 

いや、この状況。

 

詰みだ。もはや、どうしようもない。

 

何しろ、後ろでは。

 

完全に戦意を失った天狗達が、守矢の二柱に対して、蛙のように這いつくばって許しを請うている有様である。

 

殺さないでくれ。

 

そう震えあがった声を聞いて。

 

ああ、なるほどと思った。

 

守矢の二柱には。

 

天狗なら関係無くブッ殺したいという顔をした、妖怪達が従っているからだ。しかも既に天狗達は殺気だった彼ら彼女らに囲まれている。

 

逃げられると思うほど、頭が花畑でもあるまい。

 

射命丸の頭が鷲づかみにされる。

 

神奈子によるものだった。

 

そのまま引きずっていかれる。

 

それに対して、文句を言う力も残っていなかった。背後からの奇襲で、当面活動不能になるほどのダメージを受けたのだ。

 

放り投げられた先には、縛り上げられ、全身を呪いに蝕まれながらも。

 

意識を保ち。

 

凄まじい怒りを目に宿している天魔の姿があった。

 

「契約通り引き渡すよ」

 

「……感謝する」

 

「契約?」

 

「契約は順番通り守らなければならないと考える主義でね。 そもそも天魔が以前、我々の所に来て、こういう契約をしていったんだよ」

 

神奈子が見せつけてくる。

 

其処には天魔の直筆により。

 

こう書かれていた。

 

射命丸文は謀反を目論んでいる。

 

もしも謀反を起こし、捕らえる機会があったのならば。

 

引き渡し願いたい。

 

契約年月は。

 

半年以上も前だ。

 

そしてそれが、呪術による強力な封印を施された紙で。しかも、天魔の力と、二柱の力が、共に感じられる事を、射命丸は悟っていた。

 

「お前との契約も守るが、それはあくまでこの契約を果たした後だ」

 

「……くっそ」

 

「お前は自分の頭を過信しすぎた。 天魔はずっと前から、お前のもくろみくらいは見透かしていたんだよ」

 

神奈子が言うだけ言うと。

 

後は震えあがっている天狗達も引っ捕らえさせ。

 

そして、憎悪に燃えている裏切られた天狗達に引き渡させる。

 

上手いやり方だ。

 

これで天狗内部に決定的な憎悪による亀裂を引き起こすことが出来る。

 

裏切られた側も疑心暗鬼に駆られ。

 

天狗の組織は文字通り崩壊することになる。

 

組織を維持するためには、それこそ守矢の傘下に入り、従うしか路は無くなるだろう。

 

天魔の頭よりも。

 

二柱の方が、遙かに上を行っている。

 

当たり前と言えば当たり前か。

 

そもそも神話の時代から、武名を馳せる二柱なのだ。

 

そして早苗の姿が見えないことからして。

 

恐らくこの醜態、既に人里にてばらまかれているとみて良いだろう。

 

天狗は致命的に弱体化する。

 

見ると、わいわいと河童と山童が天狗の本拠地に来始めていた。そして諏訪子が顎をしゃくると、喚声を挙げて中になだれ込んでいった。

 

持ち出していくのは、天狗の技術によって作られた道具類。

 

「解析後は此方に引き渡すように」

 

「へへっ、わかってまさあ」

 

諏訪子の据わった目に対して。

 

笑顔で答えるのは、力のある河童の一人、河城にとり。

 

河童は皆ブルーカラーの制服を着込んでいて、同じ規格のリュックを背負っているが、このにとりも例外では無い。

 

かなり強い河童で、普通に戦っても並の天狗をしのぐ実力を持っているだろうが。

 

今までは天狗に対して、数の暴力には勝てないとばかりに、消極的な行動を取っていた。

 

だが元々此奴は筋金入りのテキ屋であり。

 

更に技術に関する貪欲さは人間の比では無い。

 

天狗が河童とは別方向の技術を持っていることは知っていただろうし。

 

それを触って好き勝手出来るとなれば。

 

後で引き渡さなければならないとしても。

 

大喜びで守矢に従うだろう。

 

そしてそもそも、守矢は河童に組織としての力は幾つかの事例から期待していない筈で。

 

緩い契約関係を、適度に結べれば問題ない、くらいに思っているのは。

 

会話の様子からも見て取れる。

 

どうやら射命丸が思っていた以上に。

 

守矢は、周到に。

 

天狗との戦闘について、事前から練っていたようだった。

 

「射命丸……っ!」

 

顔を上げると。

 

さっき半殺しにした椛がいた。

 

妖怪は肉体を破損しても死なない。

 

妖怪が死ぬときは、精神が死んだときだ。

 

肉体を、わざわざ諏訪子が治したらしい。

 

諏訪子が半笑いで後ろで控えている中。

 

既に本縄を掛けられ。

 

強烈なさとりの呪いで身動き取れなくなっている射命丸の胸ぐらを、椛が容赦なく掴んでいた。

 

「殺してやる!」

 

「ハ、天狗はもう終わりだ、犬!」

 

「よせ、犬走」

 

「し、しかし天魔様!」

 

椛は周囲を見て。

 

そして、拍手の音を聞いて、青ざめる。

 

また大量のミジャグジが姿を見せる。

 

既に天狗の本拠は。

 

ミジャグジの巣だ。

 

ミジャグジは、怪異になれていた古代人でもどうにも出来ず、怖れていたほどの強力な祟り神である。

 

諏訪子以外に制御は効かない。

 

諏訪子がそうしろと命じれば。

 

弱体化した天狗は、もはや全員があっという間にかみ殺されるだろう。

 

「射命丸に関しては、追って沙汰を降す……今は耐えろ椛」

 

「……わかり、ました」

 

やがて、天狗の本拠からはあらゆるものが奪い去られ。

 

文字通りのすっからかんになった。

 

射命丸は檻に入れられ。

 

弱体化し、呪いに蝕まれた天狗達が。

 

皆此方を怒りの目で見ていた。

 

此処から脱出するのは不可能だ。

 

射命丸自身も致命的な呪いを喰らってしまっているし。何よりもミジャグジが周囲でおかしな動きをする天狗がいたら即座に襲いかかるべく身を伏せているだろう。そのターゲットには、確実に射命丸も含まれている。

 

声が聞こえる。

 

即座に処刑するべきだ。

 

そう声高に叫んでいるのは大天狗だろう。

 

複数のミジャグジに噛まれていただろうに、元気なことだ。

 

賛成と、多数の声が上がる。

 

だが、冷静なほどの声を天魔が張り上げていた。

 

「我々は負けたのだ。 射命丸は原因の一つに過ぎない。 今後我等は守矢の顔色を窺いながら、山の妖怪達の厳しい監視を受けつつ、何とか生きていく事を模索していかなければならない。 まずはそれが第一だ」

 

「射命丸は放置しておけと?」

 

「いいや、あの者は封印する。 牢に入れておくのも皆の気が済まぬだろう。 天狗としての最大戦力として活用できなくなるのは、この状況では極めて口惜しい事だが、あれだけの事をした以上もはや味方として数えることは出来ぬ。 二度と蘇ることが出来ぬように、封印の儀を準備せよ」

 

「処刑では無いのですか!?」

 

これは椛の声か。

 

そもそも射命丸自身が、既に座っていることさえ出来ないほど衰弱している状況なのだ。

 

誰の声かも、少しずつ曖昧になりつつあった。

 

「処刑では生ぬるい」

 

天魔の低い威圧的な声が。

 

皆を戦慄させる。

 

そう。

 

妖怪は簡単には死なない。

 

だから死ぬ事も出来ぬように身動きできぬよう封印することが、もっとも重い刑罰になる。

 

そういえばあの博麗の巫女も。

 

人里で最大の罪を犯し、妖怪化した易者を真っ二つにかち割った後。

 

封印を施し、二度と復活できぬように処置したとか。

 

射命丸も同じように刑罰を受ける訳か。

 

これこそ、最も重い罪に対する罰、と言う訳だろう。

 

嗤う。

 

まあいい。これも運命だ。

 

反乱と組織掌握に失敗したのだ。

 

そして守矢も天魔も、射命丸の上を行っていた。ならば、こうなるのもまた致し方あるまい。

 

どうせ守矢のことだ。天魔の方が与しやすいと考えて、射命丸を切り捨てる決断をしたのだろうし。

 

この結末を迎えなくても、いずれこうなっていただろう。

 

そして皮肉な話ではあるが。守矢にとって与しやすい天魔が指揮している状況なら、天狗も生き残る事が出来るはずだ。もはや山の妖怪の覇者とは名ばかりの、哀れな姿であろうが。

 

不意に、体から残されていた力の殆どが抜ける。

 

檻の外からも、天狗達の悲鳴が聞こえた。

 

人里に、天狗の壊滅と敗報が伝わったのだろう。里の人間達が、天狗が負けた。天狗が守矢より遙かに弱かった。山の妖怪達に蹂躙された。それを知ったのである。

 

流石に天狗である。消滅まではいかないだろうが。

 

里の人間に、実は守矢に一方的に蹂躙されるほどの力しか無かったと認識されることは、ここ幻想郷では致命的な事態を引き起こす。

 

射命丸は薄く笑った。

 

結局、何をしても。詰んでいたのだな、と。

 

殺気だった数名の天狗が、此方に来る。檻から引っ張り出されると、もはや身動きできない射命丸に殴る蹴るを加える。その中には、完全に精神崩壊したらしいはたての、親も混じっていた。はたての親は娘を溺愛していることで知られていたから、猛り狂っていた。妖怪は精神が滅びると死ぬ。はたては死だけは免れたらしいが、後は生きる屍も同然だろう。それは怒るのも無理はないと、射命丸は殴られながら思った。

 

ほどなく、妖怪を封印するための要石が持って来られる。

 

テクノロジーは河童に全部持って行かれただろうが。

 

こんなものは河童の眼中になかったのだろう。

 

「最後に言い残すことは?」

 

もう、言葉を発する余力も無い。

 

薄く笑ったのを、嘲弄と勘違いしたらしい天狗の一人が。

 

もう一度、射命丸を激しく殴っていた。

 

「もう良い。 封印せよ」

 

意識が薄れる中。

 

射命丸は、自分が永遠の闇に放逐されることを、どこか他人事のように思いながら。

 

負けたな、と思っていた。







※神奈子様について

この方って明らかにタケミナカタ(正確にはその奥さん)をベースとしているので国津神でもいいかと思ったのですが、色々考えた末に天津の武神としています。

というのもそうでないとタケミカヅチがいないとおかしいのですよねえ……。

風神録のキャラ設定のテキストを見る限り、大和の神格として諏訪に来たようなので、まあタケミナカタだけではなくタケミカヅチの要素も含んでいるのだと思って良さそうです。

故に悩んだ末に天津の武神としています。



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