東方Project二次創作短編集 作:dwwyakata@2024
なんだかんだでいつもとても忙しい幻想郷の賢者紫。
色々と良くない噂もありますが、妖怪化した本居小鈴さんを救ったり、ちまちま外来植物のセイヨウタンポポを駆除したりとあんまり働かない他の幻想郷の賢者よりもしっかり働いている印象です。
そんな賢者は万能ではありませんが。
可能な限り、出来る事はしているのでした。
屋敷に戻った紫は、自分の式神である藍から報告を受ける。
連日苛烈なストレスに晒されている紫は、如何にして仕事を効率化するかばかり考えているが。
今日もそれに代わりは無かった。
「ミスティア=ローレライが、命蓮寺の住職の力を借りて、山彦の幽谷響子と一緒に、人間相手にライブをやる事を決めたようです。 人間を脅かして畏怖を集めるのでは無く、むしろ共存の方向性をはかろうとしているようですね。 音楽で畏怖を集めるという点では、プリズムリバー三姉妹という例もありますし、何より幻想郷では新しい音楽ですので、少なくとも耳目は集めるでしょう」
「この間幽々子に灸を据えられたのがそれほど利いたのかしら」
「さあ、なんとも。 それに幽々子様も、本気であの夜雀を食べようとしていたようにも見えましたが……」
「その辺りは全て計算尽くよ。 庭師が見かねて助けるのも、夜雀が蓬莱人の所に逃げ込むのも、ね。 幽々子は下手すると私よりも頭が切れるし、本気だったらあの夜雀が逃げられる訳が無いわ」
くつくつと笑う紫に。
少しだけ藍は引いたようだったが。
まあいい。
次の報告に入らせる。
「霧の湖に住んでいる人魚のわかさぎ姫ですが、釣り人にもの凄く大きな魚がいるかのように見せて驚かせたようです。 拾ってきた石と、水の中で力が増す能力を利用して、大きな魚が向かってくるように誤認させたようですね。 釣り人は吃驚して、霧の湖に大きな魚がいると騒ぎになったとか」
「無害だけれど上手なやり方ね。 あの子は人間を襲う気が無いようで色々心配していたのだけれど。 霊夢にちょっかいを出させて正解だったかしら」
「本人は相変わらず綺麗な石を集めて歌うだけで満足しているようなので、義務としてやってみただけでしょう。 それにしても思い切ったことをさせましたね……」
「幻想郷を維持するには仕方が無いわ。 妖怪も人間も「税」を払って貰わないといけないのだから」
頷くと、藍は次の報告に入る。
少し前に、紫は地底に行き、精神崩壊していた鬼人正邪を引っ張って来た。
文字通りなぶり者にされていた正邪に言い含めて、今後自分の走狗として問題を任意に起こせるよう調整するためだった。
勿論正気に戻してやった後正邪は反発したが。
スペルカードルールならともかく、実力勝負では幻想郷でも最下位層に位置する正邪が、賢者に目をつけられて勝てる訳も無い。
しぶしぶという感じで従っていたが。
多分反発があったのだろう。
ふらりと洞窟に入ると。
其処で膝を抱えてずっといじけていた。
しばらく様子見していたのだが。
良い感じで貧乏神の依神紫苑と接触。
貧しさや、人を存在するだけで苦しめることの意味を知っている紫苑と接することで、良い影響があるかも知れないと思ったのだが。
どうやらその効果はあったようで。
藍の所に、正邪が来て。仕事を寄越せと言ってきたそうである。
しばらくは食事を与えて置くように、とだけ指示。
近々博麗神社で花火大会をする予定なので。
その時に正邪に暴れさせるつもりだ。
なお、藍は抜かりが無い。
既に以前の異変で正邪が騙し、徹底的に利用した小人、少名針妙丸ともきっちり会わせているようで。
針妙丸と顔を会わせると。
真顔になった針妙丸に対し、素直に正邪は謝ったそうである。
針妙丸も、多分正邪の事情は知っていたのだろう。
それで許したそうだ。
小人の一族は色々あって、あまり良い歴史を送ってきていない。
悲しい生を辿る者の気持ちは、理解出来たのだ。
ともかく、幻想郷には適度に刺激が必要である。
平和呆けしすぎないように、時々問題が発生する必要があるのだ。
かといって、強力すぎる妖怪が暴れると、大問題になってしまう。
制御可能な手駒である正邪は、今後貴重な手札として、活躍してくれるはずだった。
「それで貧乏神は」
「時々ふらりと人里に現れては、恐怖を振りまいているようですね。 ただ実害は与えていないようですが。 食事についても、命蓮寺に行ったり、博麗神社に行ったり、雑草を食べたりしているようです」
「あまりにも状況が厳しいようなら支援が必要だけれど……」
「思ったよりしっかりやっているようですね。 あれで妹よりしっかりしているのではないでしょうか」
そういえば。
正邪があれほど素直になったのも。
多分境遇が近い紫苑と接して、色々と思うところがあったから、なのだろう。
紫苑も博麗神社で力の制御を覚えて、良い影響を得ているようだし。
ここのところの大問題ばかりだった時期に比べると。
多少落ち着いた状況が到来しているかも知れない。
報告を聞き終えると、食事にする。
今日は豚カツだ。
外の世界で流通している犬のマークが書かれたソースを使うが。これは大変美味しいので気に入っている。
なんだかんだで外に行った時には、必ずたくさん入手してきて。
幻想郷でも幾つかのルートから流通させている。
美味しいご飯は力の源だ。
そしてご飯は時に恐怖の対象にもなる。
しばし藍の作った美味しい豚カツに舌鼓を打つと。
疲れも溜まっているので。
それを持ち越さないように、早めに眠る事にする。
紫は思った。
今回は随分と上手く行った。
だが、次が上手く行くとは限らない。
眠れるときに眠っておこう。
幻想郷は混沌の土地。
いつどんな致命的問題が起こるか、分からないのだから。
(終)
幻想郷における三者三様の食事事情、如何だったでしょうか。
自分の個人HPには東方Projectの二次創作も扱っていますが、本作は当たり障りがないと判断したものから選抜しました。
更に(色々な意味で)過激な作品もありますが、それを公開するかはいずれ判断いたします。