ようこそ相棒と青春を送る教室に   作:Mr.不器用

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ボクと契約して友達になってよ!

 ある日,日課のランニングをしている時だった。今日はいつもとコースを変えて寮の前を走ってみたら少し気になる光景が目に入った。

 

 それは寮にあるポストに大量の手紙があったことだ。

 

「なんでこんなに手紙が。アイドル事務所じゃあるまいし」

 

 その手紙の量はポストに入りきっておらず数枚は地面に落ちていた。常識的に考えてダメなのは重々承知だが俺の好奇心がこの手紙を見てみろと言っている。周りを十分に見渡し誰もいないことを確認したら手紙を一通だけ拝借しこの場を離れた。

 

 差出人とその送り主さんに心の中で謝罪しつつ手紙を開封する。

 

「そうか・・・・次はこれだったか」

 

 手紙の内容は「ずっと見ているよ。雫ちゃん」というメッセージと一枚の写真だ。

 

「佐倉のストーカーか。これは早急に対処すべき問題だ」

 

 俺にとってこの世界はアニメの世界ではなく現実の世界。ピンチの時は主人公が助けてくれるなどと言った展開が起こらないなんてことは十分に考えられる。

 

 原作通りに行けば清隆が助けるが原作のシナリオが変化すれば佐倉は性的暴力を受ける可能性がある。性犯罪は魂の殺人というくらい重い。今回ばかりは原作を知っている俺がどうにかする必要がある。

 

 そのためにはまず佐倉と話す必要があるがどうしたものか。

 

 佐倉はそもそも人と関わろうとしないから話しかけても上手くいく気がしないし、呼び出すにしてもストーカーかと思われて来ないだろうし、難易度が高い。

 

 帰ってから知恵を絞らないとな。

 

♢♢♢♢

 翌日

 

 昨日思いついた作戦、その名も「ボクと契約して友達になってよ」作戦!一応言っておくが、別に魔法少女にして戦わせるつもりはない。

 

 確か佐倉は自撮りが好きだったはず。おそらく自撮りという行為が好きなのではなく自分の写真を撮ることが好きなのだと思う。そこでだ、まず俺のカメラワークを見てもらう。そしたらおそらく、多分、maybe、私も撮ってくれと言ってくるはずだ。そして撮る条件として友達になってもらう。以上が作戦だ。

 

 この作戦の大前提がカメラワークであるわけだがそこは問題ない。ここで生きてくるのがホワイトルームの経験だ。なぜかカメラに関するカリキュラムもあり一流カメラマンに並ぶ腕前だと自負している。そして昨日わざわざ一眼レフカメラしかも一番高い奴を購入してきた。俺で食いついてくるはず。食いついてこなかったら、この作戦は失敗だ。

 

 佐倉の性格からすると食いついてこない可能性の方が高いがそこは持ち前のコミュニケーション能力とカメラワークと顔の力でどうにかなると信じるしかない。

 

 この作戦を実行するには下地が必要だ。なぜ必要か。佐倉が来る場所を予測しスタンバることは可能だが、俺がいると知った佐倉は場所を移すだろう。逆に佐倉がいる場所に俺が行ったとしよう。ストーカーかと思われ逃げられるのがオチだ。だからこそ下地がいる。そのためには・・・・

 

「清隆ー見てくれー、一眼レフカメラだ!すごいだろ!」

 

 遠くまで聞こえるようにわざと声を張る。

 

「確かにすごいな。いくらしたんだ?」

 

「聞いて驚け!70万」

 

「まじか・・・・というか、急にどうしたんだ」

 

「なんか!最近無性に写真を撮りたくなってさ!写真を撮りたい欲求って言うもんが抑えられないんだよ。俺の魂が写真を撮れと叫んでるんだ!」

 

「そ、そうか・・・・」

 

 お、おい若干引くのやめろ。

 

「普段は自然ばかり取ってるんだけど、たまには人も映してみたいんだよ。そこで、堀北さんちょっとモデルになってくれない?」

 

「嫌よ」

 

「そこを何とか!堀北さん可愛いから絶対にいい写真が撮れるんだ。可愛い堀北さんの写真カメラに収めさせてくれ」

 

「はぁ、そこまでいうなら「私じゃダメかな?」櫛田さん?」

 

「堀北さんなんか嫌そうだったから。陽人君、私じゃダメかな?」

 

 この上目ずかい、可愛い。これは撮らなくてはと俺の中のプロ魂が言っている。

 

 この思考に至ると同時に俺は既にシャッターを押していた。このシャッターチャンス俺じゃなかったら見逃してるね。

 

「ちょっといきなりとるのは反則だよ。こっちにも準備があるんだから!」

 

 可愛く怒りながらそう言ってくる。本当に原作知識がなかったらコロっと落ちていただろう。それほどまでに一つ一つの仕草が可愛い。

 

「ごめんごめん。でもしっかり可愛い桔梗は撮れたぞ。見てみる?」

 

「見せて欲しいな」

 

 早速撮った写真を桔梗に見せる。

 

「すごーい!すごくきれいに映ってるね!もしかして中学の時写真部だった?」

 

「そうじゃないけど、趣味の一環でね」

 

「陽人、俺にも見せてくれ」

 

「いいけど、桔梗はいいか?」

 

「ちょっと恥ずかしいけどいいよ」

 

 照れながらも写真を見せることに同意してくれた。桔梗からカメラを受け取り清隆にも見せる。

 

「確かに、これは可愛いな」

 

「だろ!この写真は我ながらいい出来前だと思うよ」

 

「た、谷風君。わ、私も撮ってもらえるかしら?」

 

『・・・・』

 

 何か信じられないものを聞いたような。キャラ崩壊というものを目の当たりにした気がする。

 

「おい、清隆。これは夢か」

 

「かもしれない。堀北が自分から写真を撮ってくれなんて言うはずがない。もしかしたら偽物かもしれない」

 

「あなたたちが私のことどう思ってるのかよく分かったわ。今のは忘れて。私もどうかしてたわ」

 

「冗談冗談、しっかりと可愛く撮らせてもらいます」

 

「うーん、でも堀北さんを可愛く撮るのって難しいんじゃない?堀北さん笑わないし」

 

『確かに』

 

 桔梗の言うことに俺と清隆は納得してしまった。確かに堀北に可愛いという言葉はあんまり似合わない気がする。少なくとも現段階は。

 

「なら、綺麗路線で行くか。堀北さん、いつも通り読書してて」

 

「・・・・これでいいかしら?」

 

「うーん。いいんだがなんか違うな。ちょっと家庭科室行ってくる」

 

 廊下を飛び出し家庭科室に行きカップとソーサーを借りる。本当は紅茶を実際に入れたいが今入れてもこぼれるし教室で淹れるわけにもいかないから今回はあくまで形だけ。

 

 速攻で教室に戻り堀北に渡す。

 

「カップを持ちながら読書する感じで。清隆窓開けて退いてくれ」

 

「了解した」

 

 カメラを構えながら時を待つ。

 

 風が吹きカーテンが揺れる。そしてこのタイミングでシャッターを押した。

 

「か、完璧に撮れた!」

 

 そう言いながら堀北に撮った写真を見せた。

 

「悪くないわね」

 

「俺にも見せてくれ」

 

 堀北がうなずいてカメラを清隆に回す。

 

「これがあの獰猛な堀北とは思えん。どうみてもお淑やかでお上品なお嬢様だ。写真ってすごいな」

 

 清隆、お前怖いもの知らずだな。堀北は現に拳を強く握りしめいつでも殴る準備はいつでもOKと言わんばかりだ。

 

「私にも見せて見せて。へーすごいね。堀北さん、綺麗に写ってるじゃん。陽人君は私と堀北さんの写真どっちが好き?」

 

 考えるまでもない。答えはすでに決まっている。というか選択肢が一つしかないというか。

 

「桔梗、かな」

 

「谷風君、彼女だからと言って贔屓する必要ないわ。思ったことを言うべきよ」

 

「へー堀北さんは陽人君がお世辞言ったように聞こえたんだ。残念だけど私は彼女だからその分上乗せされて可愛く見えてるんじゃない?堀北さんと違って、ね陽人君?」

 

「そうだな」

 

「今の明らかに言わせてるように思えたのだけど。そんな感じだと1ヶ月もしないで別れるわね」

 

「余計なお世話だと思うよ。だって私たちラブラブだから」

 

「それなら今から1ヶ月後が楽しみね」

 

 なんか前にも増して堀北と桔梗がバチバチなんだが。なんでお互いに煽り合っているかがわからん。仲が良くないのは分かるがなんでこれしきの事で喧嘩みたいになっているんだか。

 

「そ、そうだ陽人ここ最近風景の写真撮ってるって言ってたけど見せてくれないか?」

 

 ナイスだ清隆、よくこの空気を打ち破ってくれた!

 

 ようやくこの時が来た。昨日カメラを買いに行った帰り全力でいい感じに取れそうなところを何か所も探し回り撮ってきて写真を現像した。

 

 写真を出したと同時に風で飛ばされてしまった。

 

「あーしまった―写真が―」

 

「明らかにわざとだろ」

 

 わかってても言うな。窓を開けさせたのも写真をわざわざ現像したのもこれが理由。写真を佐倉に見せるため。風で飛ばされたことにして佐倉の席の方まで写真を飛ばした。

 

「ごめん!佐倉さん、ちょっと写真拾うの手伝ってもらっていい?」

 

「は、はい」

 

 佐倉に協力してもらい散らばった写真を拾う。佐倉が気にいる写真がどういうものかよくわからなかったので良いと思ったところを手あたり次第撮っていたのでかなりの数となっている。それ故に拾うのも一苦労だ。

 

「こ、この写真谷風君が撮ったんですか?」

 

「そうそう。結構うまく取れてるでしょ?佐倉さんは写真とか好き?」

 

「本当に上手ですね。そ、その、わ、私も写真撮るの結構好きで」

 

「そうなんだ!俺の周りで趣味で写真好きって人なかなかいなかったからもしかしたら気が合うかもね」

 

「私も同じ趣味の人なかなかいなくて・・・・」

 

「そうだ!もしよかったら写真のモデルになってくれない?佐倉さん絶対にいいモデルになると思うんだよね」

 

「そ、そうでしょうか。私クラスでも地味・・・・なのに」

 

「確かに口数は少ないけと思うけど地味ではないと思うよ。それに写真では別にしゃべる必要もないしね。俺にはわかる。佐倉さんは絶対にいいモデルになる」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「今日はもともと海が見えるところで写真撮ろうと思ってるんだけど、もしよかったら早速モデルになってほしいな。あ、もちろん無理にとは言わないから。気が向いたらでいいからさ」

 

「わ、分かりました・・・・か、考えておきます」

 

♢♢♢♢

 

 放課後

 

「日も結構傾き始めたけど来ないな」

 

 さすがに少し強引すぎたか。やっぱ性格からして、いきなりモデルになってくれって言われて了承はしないか。

 

「仕方ない別の作戦を・・・・ん?」

 

 かすかだが何か聞こえてきたのでその方向を見ると佐倉がこちらに走ってくるのが見えた。運動は得意ではないようで今にも倒れそうなため俺も走って近づく。

 

「はぁはぁはぁ」

 

「一回落ち着いて、深呼吸」

 

 佐倉に何回か深呼吸させた後、肩を貸しながら近くのベンチに腰掛ける。

 

「落ち着いたか?」

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

「どうしてそんなになるまで走ってきたんだ?」

 

「谷風君、学校で海の見えるところで写真を撮るって言ってたので海が見えるところ探してたんですけど・・・・なかなか見つからなくて」

 

「あ」

 

 忘れてた。この学校めちゃくちゃ広いんだった。海が見える場所って言ってもそれだけでもかなりある。そこから人ひとり探すのはなかなか困難だ。

 

「ごめん。詳しい場所いうの忘れてた」

 

「もう帰ったのかと思いましたけど見つけられて、よかったです」

 

「日も落ちて来てるし来ないかと思ってたけど待ってた甲斐があったよ」

 

「そ、その最初は迷ったんです。谷風君は私と違って友達も多いので・・・・でも、ここで行かなかったら同じ趣味の人と出会えないって思って」

 

「そうだったんだ。よし!暗くなる前にやるか。そう言えば聞いてなかったけど佐倉さんって写真撮る派、撮られる派?」

 

「両方、です。私、・・・・自撮りが趣味で」

 

「自撮りかー見せてもらってもいい?」

 

「す、すみません。今日・・・・カメラ持ってきてなくて」

 

「そっかー今度もしよかったら見せてよ」

 

「は、はい」

 

「佐倉さん、早速だけどボクと契約して友達になってよ」

 

「契約、ですか?」

 

「そ、俺は俺の持ってる技術を使って佐倉さんを撮ってあげる。その代わり俺と友達になってほしいなって。それだけだよ」

 

「それだけ・・・・ですか?」

 

「それだけ。契約なんて言ったけど実際はただただ友達になってほしいな」

 

「あ、あの、撮った写真は・・・・もらえ、ますか?」

 

「もちろん。元からそのつもりだし」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「じゃあ、やろうか。海をバックにいろんな角度から撮っていくね」

 

「お願い、します」

 

 佐倉は眼鏡をはずして位置につく。眼鏡を外すと雰囲気がガラッと変わる。心なしか佐倉も嬉しそうだ。

 

「ここら辺でいいですか?」

 

「場所はOK。角度は撮りながら調整するから。今回はなるべく自然体でいきたいからカメラ目線にならないようにお願い」

 

「分かりました」

 

 この時間、夕日が海に丁度沈む時間でありその限られた時間をフルで活用し写真を撮り続けた。

 

 そして日が完全に沈み切ったことで写真撮影は終わりとし先ほどのベンチに腰掛け撮った写真を佐倉にも見てもらってる。

 

「どう?写真の出来前は?」

 

「凄い・・・・角度とか光がしっかり調整されててすごいです」

 

「ならよかった」

 

「あ、あの!これからも写真撮ってもらえますか?」

 

「もちろん。でも、その前にやるべきことがある」

 

「やるべきこと、ですか?」

 

「最初に言っておく、俺は佐倉の味方だから安心して欲しい」

 

 制服のポケットから手紙を取り出す。

 

「!こ、これって」

 

「ごめん、寮のポストにあまりに大量の手紙が入ってたからさ。よくないのは分かってたけど気になって。単刀直入にいう佐倉、ストーカー被害にあってるな」

 

 佐倉はしばらく黙り込んだ後覚悟を決めたのか徐々に口を開いていった。

 

「・・・・はい。ここ最近ポストに私の写真が入った手紙がもう何百通も入れられてて。それに・・・・ここ最近誰かが後ろをついてくる気がして」

 

「学校には?」

 

「言ってないです。ことを大きくしたくなくて」

 

「事を大きくしたくないって言ってもな。ストーカー被害にあってる以上ある程度は大きくなるぞ」

 

 佐倉の性格を考えたら分からなくはないが流石にこの問題を学校に報告しないのは無理がある。

 

 それにしても何とか佐倉の口から聞けたから行動できるが問題はここからだ。どうやって捕まえるか。佐倉はあんまり目立ちたくないようだからこの事件を知るのは最小限の方がいい。それに・・・・

 

「さて、これからストーカーを捕まえるわけだがいいか?」

 

「あ、あの、どうして・・・・そこまでやってくれるんですか?」

 

 困っている友人がいたら助かるこんなのはある程度の良心がある人なら普通なのだがあまり人と関わってこなかった佐倉からすると無償の善意というのは信じれないのかもしれない。

 

「さっき契約して俺と佐倉は友達だろ?友達がストーカー被害にあってるのに助けないやつがどこにいるよ」

 

 ここで助けずに傍観して何かあったらこっちの目覚めも悪いし。

 

「一人で怖かっただろ。よく頑張ったな」

 

「怖かった。誰にも相談できないで・・・・いつか襲われるんじゃないかってずっと怖くて。助けを求める勇気もなくて。ずっと、ずっとこのままなのかなって思ったらもっと怖くなって。谷風君、私を・・・・助けてください」

 

「任せろ。2日でこの件に片をつける。もう少しだけ頑張れるか?」

 

「はい」




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ヒロインについて

  • 増やしていくし、同棲もする
  • 増やすが、同棲はしない
  • 一部は同棲する
  • そもそも増やさない
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