あれから一日経過し、放課後ついに作戦の実行だ。
「佐倉、俺は常に佐倉が目が見える距離にいるから安心してくれ」
「信じてます」
「一応、頼もしい助っ人も呼んでいたから大丈夫だ」
「助っ人、ですか?」
「そうだ。アクシデントがもし発生しても助っ人がどうにかする。頼れるやつだから安心してくれ」
「わ、わかりました。い、行ってきます!」
佐倉が電気屋に入り5分くらいで出てきた。狙い通り店員も少し遅れて出てきた。今にも襲いそうな雰囲気だが人目がある以上何とかこらえているような感じだ。自分で考えておいてあれだがこうも簡単に釣れるとはな。店員がまじめで職務中は動かなかったりした場合などのことを考え、いくつか他のプランも用意しておいたのだがいらなかったようだ。
ショッピングモールを出ると店員は歩くスピードを速め佐倉と距離を縮めた。佐倉もそれに気が付いているのか歩く速さが早くなっている。そしてついに佐倉が路地裏に入った。
「清隆、路地裏に入ったぞ」
『了解した。陽人が動いたら俺も動くそれでいいな?』
「ああ。アクシデントがもし発生したらその時は臨機応変だ」
万が一にも逃がさないように路地裏の道を俺ら二人で挟んでいる。そしてお互いカメラで光景を録画している。
『雫ちゃんやっと追いついた』
『そ、それ以上近寄らないでください』
『なんでそんなこと言うんだい?僕と二人っきりになりたくて人気のないところに来たんでしょ』
『もう私に付きまとうのはやめてください。はっきり言って迷惑です!何百通も手紙を送ってきて』
『なんでそんなこと言うんだい?僕と雫ちゃんは運命で結ばれてるのに。ここで出会えたのがその証拠じゃないか』
『そんなわけありません』
『どうしてわかってくれないんだよ。分かった、昨日一緒にいた男が原因なんでしょ。大丈夫だよ、僕がその男のこと忘れさせてあげるから』
ついに男が佐倉との距離さらに縮めて今にも手が届きそうな距離までになる。
『こ、来ないでください』
『大丈夫、優しくしてあげるから』
『い、いや』
「はい、そこまでおっさん。ここまで行けばもう言い逃れはできんぞ」
「た、谷風君」
「よく頑張った。ここからは任せろ」
「なんだお前邪魔するなよ!お前は・・・・昨日雫ちゃんと一緒にいた奴じゃないか!邪魔すんなよ」
「嫌だね」
「お前が居なければ、お前さえいなければ雫ちゃんは僕のものになったのに!」
「その発想自体が終わってんだ。あとは刑務所で話すんだな」
「殺してやる」
店員はあらかじめ用意しておいたのであろうナイフをポケットから出して襲い掛かってくる。構えから見て分かる通ド素人で安心した。
「清隆、しっかり守れよ」
「任せろ、同じクラスの綾小路だ。よろしく佐倉」
万が一、俺がミスって佐倉が刺されそうになった場合のことを想定して清隆に佐倉を守らせることにした。
「え、えっと」
「頼もしい助っ人だ」
「死ね!」
素人がナイフを持ったところで大した脅威ではないが油断はできない。が、ナイフを考えなしに振り回されれば俺でもうかつに近づくことはできない。素人でも振り回しておけば当たるというのがナイフの厄介なところだ。
今回は考えなしに突っ込んできてくれたので対処がしやすい。最小限の動きでナイフをよけ、ナイフで刺すために腕が伸びているので掴む。そして足を引っかけ体制を崩し、体制が低くなったところで膝を使って腕を折る。
「がぁぁぁぁーーう、腕が」
痛みで狂い悶えているところに最後、回し蹴りで壁に激突させ意識を奪った。
「ほい、いっちょ上がり」
「す、凄い」
「相変わらず手際がいいな」
「ま、ざっとこんなもんよ。それより警備員は呼んだか?」
「ああ、もうすぐ来るはずだ」
噂をするとどうやら来たみたいだ。
「君たちが通報してくれたのかい?」
「そうです、そこで伸びている男がここにいる女子生徒を襲おうとしていたので現行犯で捕らえました。捕らえる際に抵抗してナイフを出してきたので正当防衛として気絶させました。これでも証拠不十分であれば一連の流れを録画、録音しています」
「わかった。ひとまずこの男の身柄はこちらで預かろう。君たちはこれからどうするんだい?」
「ひとまず学校に行き一連の流れを報告しようかと思います」
「わかった。それならこちらからも学校に連絡しておくよ。名前を聞いてもいいかな?」
「助かります。1年Dクラスの谷風です。被害にあったのは同じクラスの佐倉さんです」
「分かった。伝えておくよ」
警備員さんは男を拘束したのち連れて行った。
「佐倉、さすがに今回の事件は学校に知らせる必要があると思うんだがいいか?もちろん、ことを大きくしないように先生には話すが」
「は、はい。大丈夫です」
「俺も行ったほうがいいか?」
「もちろん。さて、これから楽しい楽しい、交渉のお時間だ」
「な、なんだか谷風君の目が怖いです」
「だな、あいつは怒らせちゃいけない類の人間だと思う」
「佐倉、清隆、交渉ははすべて俺がやるから口出ししないでくれよ」
♢♢♢♢
「茶柱先生に用があってきました」
職員室に入るとさっきの件がもう伝わっているのか教師たちは慌ただしくしていた。
「谷風か、事情は先ほど警備員から聞いている。ついてこい」
茶柱先生に案内され会議室に通された。
「座れ」
「茶柱先生、隣にいる人は?」
「Aクラスを担当している真嶋だ」
「学校側の判断で同席してもらうことになった」
一人で話を聞くと誰しも主観を入れてしまう。より今回の事件を客観的に見るために二人体制にしたといったところか。
「早速本題に入るが、学校側は今回の事態を非常に大きく見ている。すでに対策委員会を開く用意しておりこの話が終わり次第私たちも参加することになっている」
「そこでだ、学校側としても生徒の不安を煽らないためにこの事件は伏せておくというのが今現在の結論だ。被害者である生徒、最悪の事態になる前に防いだ生徒にはそれぞれポイントを支給することになった」
「口止め料ですか」
「そう言うことだ。だが、契約書を書くなどのことはしない。君たちを信用しているということだ」
契約書まで書かされることになったら被害にあった上に金で強制的に黙らされているみたいになり印象が悪いからだろう。そちらの方がこちらも好都合だ。
「こちらもことを大きくするつもりはないので問題ありません。問題は支給される額です。いくら支給されるんですか?」
「それを今の対策会議で議論しているが最初の案として被害者に100万ポイント、他関わった生徒に50万ポイントとなっている」
やはりそう来たか。
「気に入りませんね」
「なんだと?」
茶柱先生は断られることを想定していなかったのか少し驚いた表情を見せたがすぐに元に戻った。普通に考えて50万ももらえるのならば断わるはずはないだろう。普通ならば。だがここにいるのは初日で1000万稼いだやつだ。50万なんかじゃ済まさん。
「裁判でもそうですが額を要求するのは被害者側でしょ」
「・・・・いくらならばいいんだ」
学校側はあの男を雇った加害者側に分類される。加害者が一方的に金額を決めるなんてことは許してはいけない。
「そうですね、被害者には500万ポイント、その他生徒に350万ポイントで今回は手を打ちますよ」
「いくら何でも多すぎる。その要求は吞めない」
これでも譲歩したつもりだったのだが、真嶋先生はこの要求を突っぱねた。茶柱先生は最初の一件があるので特に何も言葉を発さなかった。おそらく茶柱先生一人ならこの金額で了承していたはずだ。
なぜなら、この後の展開が予想できるから。
「いいんですか?事態を大きくしますよ?」
「事態を大きくすることは望まないんじゃなかったのか?」
「もちろん、この学校内では」
「谷風、まさか」
「何のために昨日100万ポイントで1日、外出許可取ったと思ってるんですか。大きくするとしたら学校の外ですよ。いくら学校の外で騒いでも学校内では外の情報は遮断されているので知る由はありません。それにしても外にばらまいたらどうなりますかね?3年間閉じ込められる学校で未遂とはいえ性犯罪が起きようとしていた。親御さんたちはどう思いますかね」
教師陣は顔をしかめながらしばらく考えた後、結論を出した。
「わかった。その要求を呑む」
「話が早くて助かりますよ。それと関係者はここにいる3人だけでなく、Bクラスの一之瀬帆波も関係者なので彼女にもお願いしますよ」
「わかった。その生徒にも350万送っておく」
ここまで来たら一人増えたところであまり変わらないのか何も言わずに了承してくれた。
「あと、俺に外出許可与えたままだと何かと不安ですよね?今なら350万ポイントで権利放棄しますよ」
「そこまで想定していたというのか、谷風」
「まさか、使えるものは使う。それだけですよ」
「その要求も呑もう。こちらとしても爆弾を抱えてはおきたくないからな」
思っていた以上にあっさりと受け入れられた。減額される可能性も想定したが本当に爆弾は抱えておきたくなかったのだろう。
「では、交渉成立ということで。俺たちはこれで失礼します」
「・・・・谷風、お前は既に2000万ポイントをためているはずだ。それにお前のことだ知っているのだろ?2000万ポイントで何ができるかを」
「クラス移動ですよね」
「そうだ。お前ならば知っていると思ったぞ。なのになぜおまえはDクラスにいるのだ?Aクラスになぜ上がらない」
「今Aクラスに上がったとしてもAクラスがこれからもAクラスでい続けるとは限らないからですよ」
「過去にAクラスが変わったことはなかった。お前は今後クラス変化があるそう考えているのか」
「ご想像にお任せします」
話が終わり会議室を出る時、茶柱先生は先ほどのやり取りに満足したのか微笑んでいた。
♢♢♢♢
「どうしたお前ら、さっきから黙って」
「い、いや流石に教師陣が哀れに思えてな」
「よかったな清隆、350万ゲットだぞ。佐倉も500万だ。しばらくポイントには困らないだろ」
「あ、あの、私は最小限でいいのでポイント貰ったら谷風君に上げます」
「佐倉も辛かっただろ?もらう権利は十分にある」
「額が大きすぎるというか・・・・逆に不安というか」
「分からなくはないぞ。俺も陽人からポイント貰った時はさすがに驚いた」
「だから、受け取ってくれると助かります」
「うーん、そこまで言うならわかった。ちなみに佐倉の言う最小限ていくらくらいだ?」
「じゅ、10万ですかね」
「わかった。100万な」
「え、えっと」
「そのくらいは今後を見越して持っておけ。いつか役立つから」
「わ、分かりました。では400万送りますね」
「ちなみに陽人は今回いくら稼いだんだ?」
「佐倉の400万合わせ、外出許可代100万引いてざっと1000万だな」
「恐ろしいな。まだ1学期すら終わってないのに」
「いや、でも初回ボーナスだよ。今後はこうはならない」
実際、これからはちまちまと稼いでいかないといけない。今日みたいなことは起こらないだろうし起こるにしても生徒同士、生徒が持っているポイントなんてたかが知れている。だからこそ、学校側に交渉を仕掛けるのが一番だったのだ。
正直これから何が起こるかなんて想像もつかないからポイントはいくらあってもいい。
「お前だからな、また何やらかすかわからない」
「毎回やらかしてるみたいに言うのはやめてくれ。佐倉からもなんとか言ってくれよ」
「ふふ・・・・あ、す、すみません。二人のやり取り見てたら、その、面白くて、つい。その、お、お二人は付き合い長いんですか?なんだか、ずっと一緒にいたような気がして」
「そうだな、昔からずっといたからな」
「ああ、いろいろあったが今では相棒だ」
「相棒・・・・ですか?」
「そうだ。陽人の相棒として佐倉に言っておく、佐倉、陽人の毒牙にかからないようにな」
「毒牙・・・・ですか?」
「余計なことは言わなくていい。そうだ、せっかくだし清隆とも友達になれば?佐倉さん」
「そんなにいきなり言われても佐倉が困るだろ」
「い、いえ、大丈夫です。そ、その綾小路、君の目も怖くないので」
「よかったな。善人認定されたぞ」
「これは、喜んでいいのか?」
「いいだろ。女友達がまた一人増えたんだ」
「それもそうだな。佐倉、これからよろしく」
「は、はいこちらこそ」
「よし無事解決してポイントももらったし帰るかー」
「は、はい」
「そうだな」
♢♢♢♢
「ただいまー」
玄関に入った瞬間、帆波がリビングから勢いよく飛び出してきた。
「ね、ねぇなんか急に350万ポイント振り込まれてるんだけど、は、陽人君なんかした?」
「もう振り込まれてるのか仕事が早いな」
「そう言うってことは何か知ってるんでしょ、何があったか教えてよ。急に振り込まれてなんか怖いんだけど。危ないことしてないよね」
帆波が不安そうな表情を浮かべながら聞いてくる。オロオロしててなんか可愛いし別に悪いことなんかしてないのでしばらくこのままでいいか。
「大丈夫、大丈夫、あとで話すよー」
後ろで今教えてと聞こえているが「後で後で」と言いながら手洗いうがいをしに行った。
ヒロインについて
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増やしていくし、同棲もする
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