知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第一〇四射

「エキシビジョンとはいえ、勝利の秋はやはり格別ですね」

 

夕日を前に紅茶を飲みながらアッサムは微笑む。

 

「勝負は時の運。でも今回はもっと意味のある勝利だったわ」

 

ダージリンも紅茶の香りを楽しみつつ答える。

 

「…もう出る!」

 

その近くで温泉の暑さに耐えれなくなったカチューシャが立ち上がりかけたが、ノンナに諭される。

 

「長く入らないと、良い隊長になれませんよ。肩まで浸かって一〇〇は数えて下さい」

「うぅ…」

 

そこで再び肩まで浸かると、ノンナの横に浸かるクラーラがロシア語で数え始める。

 

「『1、2、3…』」

「日本語で数えなさいよ!!」

 

カチューシャはそこでクラーラに声を荒げた。

 

「西住隊長、申し訳ありませんでした。我々が、逸って突撃したりしなければ…」

「あ、いえ。一緒にチームが組めて良かったです。色々勉強になりました」

 

ちょっと目を泳がして社交辞令を言うみほであったが、純粋な西は聞いてしまう。

 

「どの辺りが勉強になったのですか?」

「あー、精神力とか?」

「なるほど!」

 

西はパッと表情を明るくさせた。

 

「お恥ずかしい限りです。黒田隊…黒田さんと共に石原先輩から教えを乞うた身でありながらこのような失態…」

「あー、そんなことは…」

 

すると浴場に大声が入ってくる。

 

「あーはっはっはっはっ!」

 

その声の方を見ると、体を真っ赤かにしてサウナから出てきた真澄と目をぐるぐるとさせて脇に抱えられる福田。そしてサウナの前では彼女に潰されたのか、身体中を真っ赤っかにして倒れる玉田達。

 

「ちょうどよかろう?このサウナ!」

「うぅ〜。あ、頭が揺れるであります…」

 

豪快に笑う彼女はそのまま大浴場に入ると、片手に日本酒(ノンアルコール)を持って温泉に入る。入る前に飲んでいたので調子に乗って福田達を振り回したのだろう。

 

「真澄〜?やり過ぎるとお母さん呼ぶよ?」

「っ!?」

 

その後ろで呆れた眼差しを向けた榎本に言われ、ヒュッと反応をして直後にしおらしくなって大人しくする彼女。

 

「何があったの?」

「昔、真澄さん。お母さんに蓑巻きにされてボコボコにされたことがあって…」

「えぇ…」

 

みほから事情を知ってドン引きをする武部達。

 

「黒田さんって、結構色々と問題起こしているよね。ヤンキーとの喧嘩もそうだけど…ああ言う豪快なところとかでさ」

「この前も機動隊が建物を壊したとか何とかで風紀委員長と揉めてましたしね」

 

秋山はそこで最近では報道部のコラムにまで発展した機動隊の被害額を思い出した。

 

「おぉ!T29!」

 

温泉の外ではアリクイさんチームが温泉には入らずにガチャガチャを引いていた。

 

「今日の戦車は決まりだにゃー」

「受けて立つずら!」

「徹夜で戦うぞな!」

 

彼女達は後で合流して学園艦に戻る予定であった。

 

「あれは直ったのか?」

「うん、レストアはほとんど完了」

 

レオポンさんチームは密談を交わす。

 

「電装系がちょっと心配かな〜」

 

スズキが言うと、ホシノはポンと手を叩く。

 

「走らせてみるか」

「だね」

 

レオポンさんチームは自動車部らしく何かレストアの話で盛り上がってた。

 

「ん〜〜、あと一週間で新学期ですね」

 

秋山がやや腕を伸ばしてしみじみと呟く。

 

「あ、宿題まだ終わってない〜」

「また毎朝起きなければならないのか。学校などなくなって仕舞えばいいのに…」

 

新学期と聞き、露骨に嫌な顔を浮かべる冷泉に五十鈴が話しかける。

 

「廃校を免れたばかりなんですから、縁起でも…」

 

そう話すあんこうチームの近くでカメさんチームも話していた。

 

「しかし、新学期からは新しい生徒会か。私達もいよいよお役御免ね」

「柚子もようやく書類仕事から解放されるな」

 

河嶋は小山に言うと、彼女も少し笑う。

 

「本来は夏休み前に候補が決まっていますからね」

「今年はそうも言ってられなかったからね〜」

 

廃校、と言う問題を前に角谷は生徒会を通常よりも長く勤めていた。予定では秋口に投票を行い、生徒会の仕事の引き継ぎを行う予定だった。

 

「でも、真澄さんが辞退したのは驚きだったな〜」

 

小山はそこで少し前に真澄に生徒会への立候補を断った真澄を見る。彼女は今、福田達サウナで潰した知波単学園の生徒達を浴場に叩き込んでいた。

 

「次の風紀委員会委員長も断っていた。何でも『やりたいことがある』からだそうだが…」

「何をしたいんだろうねぇ」

 

角谷はそこで真澄の考えていることを想像しているとピンポンパンポンとチャイムがな流れた後に館内放送が響いた。

 

『大洗女子学園生徒会長の角谷杏様。大至急学園にお戻りください』

 

放送を聞き、ややざわつく一同。

 

『繰り返します、角谷杏様大至急学園にお戻りください』

「ん〜?」

「何でしょう、急に」

「とにかく先に戻ってるわ〜」

 

首を傾げた河嶋達に角谷は先に浴場を後にする。

 

「何かあったんでしょうか?」

「アッサム」

「はい」

 

突然の呼び出しにオレンジペコは首を傾げ、ダージリンはすぐに情報を集めるようにアッサムに言った。

 

「『315、316…』」

「ねえまだ!?まだなの!?カチューシャ、すごい隊長になっちゃうわよ!!」

 

一方でカチューシャはロシア語で数えられているので意味がわからないまま時間が経過していた。

 

「アバババ…」

「福田!大丈夫か!?」

 

サウナと冷水風呂に交互に入れられ、最後に真っ赤かになるまでサウナで熱せられた福田に西が駆け寄る。

 

「は、はい!だ、大丈夫であります…!!」

 

そう答える福田の目はぐるぐるしていた。

 

「ははは、最近の連中は弱いな〜!」

「黒田隊長…あまり無茶はさせないでくださいよ」

「分かってる分かってる」

 

西と真澄は隣に座ると、そこで目の前の夕焼けを見る。その夕焼けを見ながら真澄は話しかける。

 

「…西」

「はっ」

 

かつて、真澄の手足としてチハを乗り回した西に彼女は聞いた。

 

「私が知波単に戻らない理由が気にならないのか?」

「それは…」

 

彼女から聞かれ、西も思わず口が止まってしまう。

 

「すみません」

「どこに謝る要素があった?」

 

西に少し苦笑すると、彼女は三々五々で温泉を上がっていく大洗の生徒達を見る。

 

「ちょっとジャジャ馬を乗りこなす御者を探してる。もし見つかったら手伝ってくれ。昔のようにな」

「は?…はい!」

 

前半の意味は理解できなかったが、後半の意味から自分が必要とされていることを理解すると元気よく頷いた。その返答を見て、真澄は笑みを見せると温泉を後にする。

 

 

 

他の学校の生徒達よりも先に温泉を上る大洗の生徒達。

 

「全く、整備班の子達の仕事に車両の搬出入を追加したいね」

「真澄〜、流石に整備班の子達がブチギレるって」

 

制服に着替えながら真澄がぼやくと、外に停めてあった戦車に全員が乗り込む。

潮騒の湯から学園艦に向かう途中、港の大型駐車場の前を通過し、通常はこの時間帯だと車は少なくなる。

 

「なんかトラック多くない?」

「ね、どしたんだろ」

 

やや怪訝な目でそれを見る大久保と榎本。

 

「断捨離ブームでもきたのかなぁ…」

 

そのトラックの山を前に武部も首を傾げる。

しかし先ほどの放送も相まってやや嫌な胸騒ぎがして少し急いで戻る。

 

「あれ、暗いね」

「本当ですね、まるで灯火管制されてるみたいな」

「もうみんな寝てしまったのでしょうか?」

 

学園艦に戻ると、そこでは日が落ちてまだ時間が経っていないにも関わらず街灯が付いただけの通りがあった。

 

「…武代」

「こりゃあ、不味いかもねぇ」

 

そこで少々胸騒ぎを覚えていると、彼女の携帯に一通のメールが来た。

 

「あっ、機動隊の子からだ」

 

ほぼ名誉隊員と化した機動隊から連絡を受けた彼女は途端に顔を深刻にする。

 

「どした?」

「…あぁ、畜生」

 

その直後、真澄は叫んだ。

 

「全員!校門前に急げ!」

 

真澄の怒号に全員が驚いて慌てて校門前に到着をすると、

 

「何、あれ!」

「誰よ!勝手にこんなことするなんて!」

 

武部は驚愕し、園は車を降りて校門前に張り巡らされた規制線に文句を付ける。

 

「まさか、落書きとかもしてないよね〜?」

 

金春が首を傾げると、張られた規制線を前に阪口が首を傾げる。

 

「あれ…?キープアウトってどう言う意味だっけ?」

「体重をキープする」

「してないじゃん、アウトー!」

「ひっどーい」

「あはははー」

「そーいうこと、言ってる場合じゃないよ!」

 

一年生達はそう言うと一人が声をかけた。

 

「君たち、勝手に入っては困るよ」

 

ハッとなって全員が振り返るとそこには七三分けのスーツを着た役人が立っていた。

 

「あの…私達は、ここの生徒です!」

「もう君たちは生徒ではない」

 

河嶋に役人は静かに言い放つ。

 

「君から説明しておきたまえ」

 

役人が振り返ると、影に隠れていた角谷が現れる。

 

「会長!?」

 

沈痛な顔をしている彼女に河嶋と小山は困惑する。

 

「どうしたんですか!?会長!」

「会長?」

 

疑問に沈黙で返す角谷。困惑する一同に大きくため息を吐くと、意を決して顔を上げた。

 

「大洗女子学園は…八月三一日付けで廃校が決定した」

「えっ!?」

「廃校に基づき学園艦は解体される」

「戦車道全国大会で優勝したら廃校は免れるって…」

 

武部が聞くと、角谷は役人を一瞥してすまなそうに答える。

 

「あれは、確約ではなかったそうだ」

「何っ!?」

 

一同はさらに驚く。

 

「存続を検討してもよいという意味で正式に取り決めたわけではないそうだ」

「そんな…」

「それにしては急すぎます!」

「そうですぅ!廃校にしろ、もともとは三月末のはずじゃ…」

 

河嶋はどう言うことだと角谷に問い詰める。

 

「検討した結果、三月末では遅いと言う結論に至ったそうだ」

「なぁんで繰り上がるんですかぁ〜」

 

ガックリと肩を落とす彼女に他の面々も呆然と立ち尽くすことしかできなかった。

 

「じゃあ、私達の戦いはなんだったんですか…?学校がなくならない為に頑張ってたのに…」

 

そんな中、澤が絞り出して訴えた。

 

「納得でき〜ん!我々は、抵抗するぅ〜!」

「何をする気!?」

「学園に、立て篭もるぅー!」

 

それを見て一同はチームごとに言い合いを始める。

 

「戦艦バウンティ号の反乱だな!」

「ポチョムキン!ポチョムキン!」

「蟹工船…」

「ケイン号の反乱!」

「それはフィクションだろ」

 

どうかフィクションであって欲しいと言う願望もあったのだろう。エルヴィン達に角谷は言う。

 

「残念だが本当に廃校なんだ!我々が抵抗すれば艦内にいる一般の人たちの再就職はあっせんしない、全員解雇すると言われた」

「酷すぎる!」

「桃ちゃん」

 

心配で河嶋に手を伸ばす小山。

 

「じゃあ、何?学校がなくなるってことは私達、風紀委員じゃなくなるわけ!?」

「そこか」

「大切なことじゃない!」

 

園は胸を叩いて激昂をする。

 

「じゃあ部活もなくなるし…」

「バレー部、永久に復活できないです!」

 

河西が叫ぶと、ナカジマは天を仰ぐ。

 

「自動車部解散!?」

「学園艦GPの夢が…」

 

ウサギさんチームも顔を見合わせてしまう。

 

「私たちも一年生じゃなくなるの?」

「一年じゃなくなったらどうなるの?」

 

アリクイさんチームも真っ暗な顔を浮かべる。

 

「リアルニート…」

「素浪人か…」

「藩がなくなる前に脱藩しよう!」

「もう、なくなってるだろ!」

 

色々ともう滅茶苦茶になりかけたところを角谷は叫ぶ。

 

「みんな静かに!今は落ち着いて指示に従ってくれ」

「会長は…それでいいんですか?」

「……」

 

角谷に河嶋が聞くと、彼女も悲痛な顔で俯いてしまう。

 

「…みんな、聞こえたよね?」

 

そんな最中、落ち着きを取り戻せないまま小山が変わって口を開く。

 

「申し訳ないけど、寮の人は寮へ戻って、自宅の人も家族の方と引っ越しの準備をして下さい」

 

小山はそう言うと、食ってかかろうと園が一歩前に出て冷泉に抑え込まれていた。

 

「あ、あの!!」

「戦車は…どうなるんですか?」

「全て…文科省預かりとなる」

「っ!」

 

再び全員が衝撃を受けた。

 

「戦車まで取り上げられてしまうんですか…?」

「そんな…」

「…すまない」

 

全員が沈黙をする中、角谷は深々と頭を下げる以外何もできなかった。

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