知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第一二三射

次々と応援に駆けつけた各校の戦車達。その中でシメを務めたのは知波単学園であった。

 

『昨日の敵は今日の盟友!勇敢なる鉄獅子二十一両、推参であります!』

 

彼女はそこで大量の旧砲塔/新砲塔のチハ、九五式軽戦車を連れ、先頭で西が他の生徒達と同様に大洗の制服を着て顔を出していた。

だがダージリンが即刻、ツッコミをする。

 

『増援は私達全部で二十一両だって言ったでしょう?あなたの所は五両』

『すいません!心得違いをしておりました!十六両は待機!』

 

そのやりとりを見てすぐに真澄達は顔が引き攣る。

 

「まともに連絡聞いてなかったな?」

「多分、持ってけるだけ持ってきて雑多に引き算したんでしょうね…」

 

少なくとも絶対やると言う確信が彼女達は今までの経験でわかっていた。すると残る十六両は見事なターンで、その練度の高さを見て秋山達は舌を巻いた。

 

「ねえねえ、向こうって一式とか三式はないの?」

 

するとチハ二十一両とか言う割とどーしようも無い想像をしてしまったナカジマが聞いてきたので大久保が答える。

 

「ナイナイ。チハ会…向こうのOG会に一回真澄が相談したけど一蹴されたから」

「えぇ…」

 

知波単の裏事情を知って聞いていた面々が苦笑をすると、降りてきたダージリンが話す。

 

「どこの学校でも、同じような事情があると言うことですわね」

「戦車はアレだけどお金はあるからね。知波単」

 

少なくとも北海道までこの量の戦車を運んでいくことが可能な分、下手な学校よりも予算があった。なので大洗の予算の少なさには何度も頭を抱えたものである。

 

「これは勝てるかも…」

 

少なくともこれで三〇両、数が揃った。この増援に今までお先真っ暗だった河嶋達も希望を抱く。みほも思わず涙を浮かべそうになってしまった。

そして来賓席では辻が大慌てで電話をかけて質問をした。

 

「試合直前での選手増員はルール違反じゃないのか!?」

 

電話の相手は審判長の蝶野で、興奮する辻に平然と答える。

 

「異議を唱えられるのは、相手チームだけです」

 

彼女は冷静に戦車道のルールに則った行動を行う。

 

「我々は構いません、受けて立ちます。試合を開始してください」

 

目線を向けられた愛里寿は、毅然とした態度で答える。

そしてみほや駆けつけた戦車を見て小さく笑みを浮かべ、すぐに気を取り直す。

 

「それでは、両チーム、礼」

「「よろしくお願いします!」」

 

礼の後、大洗連合側はルールに従って十分間の作戦タイムを要望。承認を受けて試合会場横に設営されたテントの中で各校の隊長格が集まって作戦会議を行う。

 

「お世話になります」

「ん、よろしく頼むよ。西」

 

戦車を降りて挨拶をする西と真澄。

周りではそれぞれの生徒達で交流が行われており、大洗銘菓を渡したりしていた。

 

「しかし雑多な戦車だ。まるでサラダボウルだ」

 

そして一斉に整列をする戦車を見て真澄が言う。

 

「ですが間に合いました」

 

西はそう言う。彼女の所からは新砲塔チハ二両、旧砲塔二両、九五式が一両、駆けつけてくれた。

 

「よく鐵道科が動いたわね。一ヶ月前に予約取らないと動かないでしょ?」

 

彼女達の規則厳守は筋金入りのそれだったはずだと記憶していると西は訳を話す。

 

「はっ、それについては『伊藤博子氏と大隈重葉氏に受けた御恩の奉公』と…」

「あー、なるほどね」

 

理解したと納得をすると、そこで大久保が呼ぶ。

 

「真澄と西、会議するから来てって〜」

「分かった」

 

それに返事をすると、真澄は西と共に会議場に向かう。

 

 

 

十人十色ならぬ、学園十色と化した作戦会議。テーブルを挟んで呼ばれた各隊長達が座っている。

 

「では、このとおり三個中隊の編成でいきたいと思います」

 

黒板には河嶋がチョークで集まった三〇両の戦車の振り分けを行っていた。

 

「OK!」

「中隊長は?」

「それぞれお姉ちゃん…西住まほ選手、ケイさん、それから私で」

 

みほはまほを慌てて言い直してそれぞれの隊長を選抜する。

 

「西側ばかりじゃない」

「ご不満?」

「隊長やりたいんですか?」

「私がやらなくてどうするのよ!」

 

彼女はそう言った時、スッとまほが真顔でカチューシャを見た。その目は『みほの提案に意見を言うだと?』と何かしらの凄みを感じた。

 

「ま、まあ今度でいいけど…」

 

流石にこの姉の庇護パワーには、試合の時以上に恐ろしい何かを感じ取って首を横に向けてしまう。

 

「カチューシャさんには副隊長をお願いします」

「あっ、そう?仕方ないわね〜、やってあげるわ」

 

しかしすぐにみほがカチューシャを副隊長に任命したことで彼女は嬉しげに反応をした。

 

「ダージリンさんと真澄さんも副隊長をお願いします」

「よろしいわ」

「了解」

 

二人は頷くと、特に知波単の扱い方を分かっている真澄はエキシビジョンマッチのような凄惨な事故を防ぐように努力をする。

 

「よろしくね、マスミ」

「こちらこそ」

 

ちょうど隣に座っていたので、ケイと軽く会釈をしたあと、西にある宣告をする。

 

「西、今から独断専行一回につき護謨飛び(バンジージャンプ)一発ね」

「うえ”!?」

 

その宣告に西は顔が真っ青になった。隣で聞いていたケイがそんなに恐ろしいものなのかと首を傾げた。

 

「大隊長は…みほだな」

「あなたについていくわよ」

「大隊長殿、部隊名の下知をお願いします!」

 

まほがそこでこの大勢を率いるトップにみほを添えると、それに異論はなかった。

元々大洗廃校撤回のために集まった面子である。彼女以外にその役割が似合う人材はいなかった。

 

「え?じゃあ、部隊名は西住まほチームがひまわり。ケイさんのところがあさがお、うちがたんぽぽでどうでしょう?」

 

そこで中隊の名前を聞いたエリカが鼻で笑った。

 

「ずいぶんお子様な名前ですこと…」

「いいだろう」

「え?」

 

エリカはまほの返事に意外な顔をしてしまう。

 

「よろしいんじゃない?」

 

それにダージリンも同乗すると、河嶋がそれぞれ黒板にチーム名が書き加えられる。それぞれが花の名前を付け加えられ、十両三個中隊の編成が行われる。

 

「作戦はどうする?」

 

そこでアンチョビが聞いてきたので、早速各々が提案を持ち寄る。

 

「行進間射撃しかないんじゃないかしら。常に動き続けて撃ち続けるのよ」

「やめてくれ。うちの弾数少ないんだ」

 

ダージリンに突っ込む真澄。

 

「楔を打ち込み浸透突破でいくべきよ!」

「遅えチャーチルとマチルダ置いてきぼりになる」

 

エリカに突っ込む真澄。

 

「優勢火力ドクトリンじゃない?一輌に対して十輌で攻撃ね」

「圧倒的無駄」

 

ケイに突っ込む真澄。

 

「二重包囲がいいわ!それで冬まで待って冬将軍を味方につけましょう!殲滅戦は制限時間ないんだし」

「試合が終わる前に学園艦解体が始まるわよ」

 

カチューシャに突っ込む真澄。

 

「わたくしさまざまな可能性を鑑みましたが、ここは突撃するしかないかと!」

「論外だ阿呆!」

 

西に突っ込む真澄。

 

「とりあえずパスタを茹でてから考えていいか?」

「お前は何を言っているんだ?」

 

アンチョビに真顔になる真澄。次々と出てくる案を箇条書きで黒板に書いた河嶋が肩を震わせていた。

真澄はほぼほぼツッコミしか入れておらず、そこで気づいたダージリンが振った。

 

「そう言えば真澄さんはどうお考えで?」

 

彼女が聞くと、全員の視線が真澄に集まった。話を振られたので、彼女は言う。

 

「…まず前提として、大学選抜チームが編成されたのは今年だ」

 

真澄は淡々と敵の情報を他の面々にも伝えていく。

 

「後で資料渡すけど、敵の陣営はM26パージングを主力に置いた編成を組んでいる。

だが大学選抜は組織されたばかり。そして選抜方法は島田流を参考に採用している節がある」

「それって…?」

「…要するに、集団戦が強いと言うことか」

 

そこで真澄はまほに指をパチンと鳴らす。

 

Das stimmt.(その通り。)我々が突くならそこだ。殲滅戦はあくまでも最後まで戦車を温存したチームが勝つ。損害を減らしつつ集団戦闘をさせないためには…」

「…各個分散による、個別撃破」

 

エリカが呟くと、そこでダージリンが口を挟む。

 

「でも向こうの育成は順調に進んでいる。その王道の戦闘で行けるとは限らないわ。やはりここは動き続けながら射撃をするのが…」

「やっぱり二重包囲よ!固めて抑え込んで仕舞えば向こうの動きに合わせられるもの!」

 

そしてやいのやいのと各隊長が言い合いかけたところでまほが制止させる。

 

「みんなみほに従うと言っただろう。みほ」

「あ、はい」

 

そこでまほに話を振られたみほは、改めて作戦を指示する。

 

「ひまわりチームを主力として、あさがおとたんぽぽが側面を固めてください。連携が取れる距離を保ちつつ、離れすぎないよう注意してください」 

「はい」「かしこまりました」「了解」「OK」

 

各隊長は確認を終えると、そこでダージリンがカップを片手に口をひらく。

 

「で、ここからが肝心なんだけど…」

 

彼女はキラッと眼差しをみほに向ける。

 

「作戦名はどうする?」

 

切り出したのは、作戦名に関する話題だった。これは士気にも関わる重要なものであると彼女達は思っていた。

 

「三方向から攻めるんだから、三種のチーズピザ作戦」

「ビーフストロガノフ作戦がいいわ!玉ねぎと牛肉とサワークリームの取り合わせは最高よ!」

「フィッシュ&チップス&ビネガー作戦と名付けましょう」

「グリューワインとアイスバイン作戦!」

「フライドチキンステーキwithグレイビーソース作戦!」

「あんこう干し芋ハマグリ作戦!」「会長まで乗らないでください!」

「間を取ってすき焼き作戦はどうですか?」

「いや、ここは焼酎・ビール・ウヰスキー作戦はどうか?」

 

真澄を最後にまほが突っ込んだ。

 

「好きな食べ物と作戦は関係ないだろう」

 

各々好き好きに作戦名を言い合い、それ呆れたまほであったが、カチューシャが聞く。

 

「じゃあ何がいいのよ」

 

その質問に一旦間を開けて考えた彼女は作戦名を提案する。

 

「ふむ…ニュルンベルクのマイスタージンガー作戦はどうだ?これは三幕からなるオペラで「長い!」…」

 

説明が長くなりそうだったので、気の短い河嶋が怒鳴った。

いつもはワーワー騒いで無線を切ってしまうところだが、今回はそれが功を奏した。

 

「大隊長、決めてくれ」

 

まほは短くため息を吐いてからみほに譲る。

 

「じゃあ…『こっつん作戦』で。相手をを突き出して『えいっ』と攻める作戦なので」

「なにそれ、迫力ないわね」

「それでいこう」

「えぇ?」

 

エリカはまたも普段のまほからは思えない反応に素っ頓狂な顔を見せてしまう。

 

「こっつんですか、なるほど!」

「いいんじゃない?」

 

西もケイも良さげな雰囲気で頷くと、みほは指示を出す。

 

「では右側面はたんぽぽ、左にあさがお、中央にひまわりでお願いします」

『『『『『はい』』』』』

「こっつん作戦開始します。パンツァーフォー!」

 

そして作戦会議を終えると、各々生徒達はテントを後にする。

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