知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第十二射

試合開始の時刻間近。両チームはスタート地点に立つと審判の合図を待っていた。

 

『用意はいいか隊長?すべては貴様にかかっている。しっかり頼むぞ』

「はっ、はい!」

 

河嶋の呼びかけにみほは少し緊張した様子で答える。

 

『試合開始!』

「いよいよ始まりましたね!」

「うん……」

 

秋山が目を輝かせて言うと、M3リーから一年生が無線で聞いてくる。

 

『あのー、それでどうするんでしたっけー?』

「えっと、先程説明した通り、今回は殲滅戦ルールが適応されるのでどちらかが全部やられたら負けとなります」

『そうなんだー』

 

みほの分かりやすい説明に一年生は納得して答える。

 

「まず我々Aチームが偵察にでますので他のチームは百メートルほど前進したとこで待機してください」

『『『わかりました!』』』

『『『『『は~い!!』』』』』

『『『御意!』』』

『なんか作戦名はないの?』

 

全員が返事をする中、角谷が聞いてくる。それを聞きみほは一瞬考えた後に答える。

 

「こそこそ作戦です! こそこそ隠れて相手の出方を見て、こそこそ攻撃を仕掛けたいと思います」

『ふん。姑息な作戦だな』

「「「「(あんたが考えた作戦だろうが!!)」」」」

 

短十二糎の中でそうツッコミをかけてしまう。思わず喉元まで出てきた言葉にグッと堪えながら榎本は聞く。

 

「重葉?」

「問題無し」

「利子」

「砲の偏差、だいぶ慣れた」

「博子」

「無線機問題無し」

 

それぞれ確認取ると彼女たちは本来であれば居るはずの人に物足りなさを感じながら戦車を動かす。

 

 

 

 

 

その頃、聖グロリアーナ戦車隊も同様にダージリンは優雅に紅茶を飲んでいた。その光景は本当に優雅が似合っていた。

そして戦車の上に乗って紅茶を飲むと、オレンジペコと目が合った。

そしてダージリンは戦車に乗り込み、

 

「全車、前進」

 

号令を発し、六両の戦車は一斉に動き出した。

 

こうして大洗戦車道隊の初の試合が始まった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「マチルダⅡ五両、チャーチル一両、前進中……」

 

岩陰から偵察を行うみほと秋山は低速度で進む聖グロリアーナの戦車隊を確認する。

 

「さすが、きれいな隊列を組んでいますね!」

「うん!あれだけ速度を出して隊列を乱さないなんてすごい」

 

まるで宮殿に駐在する騎兵隊のように整えられた行進をする姿を見て思わず舌を巻いてしまう。

 

「こちらの徹甲弾では相手の正面装甲を抜けません」

「そこは戦術と腕かな?」

 

マチルダの正面の最大装甲は七五ミリ、今のⅣ号の二四口径の短砲身で貫通は厳しかった。

 

「はい!」

 

そして偵察を終えて岩陰から降りると、そこに隠れていたⅣ号に乗り込む。

 

「麻子さん起きて!エンジン音を響かせないよう注意しつつ、旋回してください」

 

みほが操縦席で寝ていた冷泉を優しく起こすと、彼女は眠たそうな顔をしながら操縦桿を握る。

そして、静かに移動を始めるとそのまま射撃地点へと移動を始めた。

 

 

 

 

 

そして射撃地点で双眼鏡を持つみほはそこで聖グロの戦車隊を視認した。

 

「敵、前方より接近中。砲撃準備」

「装填完了!」

「チャーチルの幅は………」

「三.二五メートル」

「四シュトリヒだから……距離八一〇メートル」

「撃て!」

 

その瞬間、二四口径の七五ミリ砲が発射され、マチルダの一歩手前で着弾した。

 

「仕掛けてきましたわね」

「こちらもお相手してさしあげましょうか」

 

そう答え、ダージリンはその射撃地点を見て追撃を行う事にした。

 

「すいません」

「大丈夫、目的は撃破じゃないから」

 

五十鈴が謝ると、みほは対して気にしたそぶりを見せていなかった。

そしてそのまま当初の予定のキルゾーンに戦車を誘導していた。

 

「あれは……Ⅳ号。となると榎本さんの短十二糎自走砲は別の場所に……全車、短十二糎自走砲に注意しつつⅣ号に砲撃開始」

 

ダージリンが指示を出し、マチルダの2ポンド砲の射撃が加わる。

 

「ダージリン様、あの戦車にそこまで気にかけるのですか?確かに砲威力は有りそうですが……」

 

そもそも短十二糎自走砲と言う珍しい車両だ。少なくとも動いているのすら初めて見るような代物。データに存在しない車両故に警戒することに越したことはないが……。

 

「問題はそれに乗っている人達よ」

「それは……」

 

オレンジペコも知っているが故に思わず次の言葉が出ない。

 

「嘗て、中学生大会で私達の戦車を打ち負かしたのがあの人達ですわ」

「五人の家臣……ですね」

 

アッサムが呟くとダージリンは頷いた。

 

「ええ、主君の真澄さんが除名処分を受けた事に反対すると言って同時に知波単学園を辞めていった人達。忠実なる僕、と言えば宜しいのでしょうか?」

 

そう言うと操縦手がダージリンに言う。

 

「ダージリン隊長!砲弾が敵に当たりません」

「思っていたよりやるわね。速度を上げて……追うわよ!」

 

すると全車両の速度が上がり、追撃を始めた。

 

「どんな走りをしようとも……我が校の戦車は一滴たりとも紅茶を零したりはしませんわ」

 

ダージリンは少しの警戒をしながら優雅に紅茶を飲んでいた。

 

 

 

 

 

その頃、Ⅳ号でみほは今回の試合相手である聖グロの戦車をキルゾーンに誘導していた。

 

「なるべくジグザグに走行してください、こっちは装甲が薄いからまともにくらったらお終いです」

「了解……」

 

操縦席で冷泉の巧みな手腕でⅣ号はするすると敵の砲弾を躱す。まるで後ろに目がついているかのようだ。すると一発の砲弾がⅣ号の横をギリギリ通っていき着弾する。

 

「ふう……」

 

みほは砲弾が外れたことに安堵する。すると通信室ハッチから武部が顔を出した。

 

「みぽりん危ないって!」

 

彼女は心配そうに言うとみほは彼女を安心させるように笑顔で言う。

 

「え? ああ、戦車の車中はカーボンでコーティングされているから大丈夫だよ」

 

みほは武部にそう言うが武部は首を振って答える。

 

「そういうんじゃなくて、そんなに身を乗り出して当たったらどうするの!」

「まぁ、めったに当たるものじゃないし、それにこうしていた方が状況がわかりやすいから」

 

事実、キューポラから顔を覗かせている人は多いわけだし。

 

「でもみぽりんにもしものことがあったら大変でしょ!? もっと中に入って!」

 

武部はみほのことを心配してそう言う。みほは彼女のやさしさに嬉しさを感じた。

 

「心配してくれてありがとね。じゃあお言葉に甘えて」

 

そう言いみほは車内に入りⅣ号はキルゾーンへと進み続けるのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その一方で、Ⅳ号が敵を誘導している頃。各チームはキルゾーンにて待機し、敵が来るのを待っていた。

 

「革命!」

「しまったどうしよ〜」

 

M3リーを動かす一年生は車体の上で大富豪をしていた。

 

「いつも心にバレーボール!」

「そ〜れ!」

 

八九式を操縦するバレー部チームは、バレーのトスの練習をしていた。

 

 

 

 

 

パチンッ!

そしてそのキルゾーンから少し離れたところで榎本達は九路盤で囲碁を打っていた。

 

「……参りました」

 

伊藤が頭を下げると見ていた囲碁の得意な大久保が感心した様子で言う。

 

「おお、上達したねえ」

「囲碁は利子から教わったからね」

 

榎本がそう言うと、短十二糎自走砲に乗っかりながら今している試合に少し申し訳なさを感じていた。

 

「やっぱ真澄がいないから、申し訳なく思っちゃうね」

「上部は気にしていないって言ってるけど……」

「あれはやりたくてウズウズしているよ」

「本人は隠しきれていると思っているけどね……」

 

昔からの付き合いだから分かる親友の心情に四人は思わず雰囲気が暗くなる。

 

「真澄も真澄だよ。態々連盟の方から除名処分撤回に名誉回復もあるのに」

「だめよ、連盟の狙いはあくまでも真澄の持ってる戦車道選手強化計画だけだもん」

「おまけにお父さんがいるうちは無理ね」

「……」

 

大隈が最後に言うと、思わず全員が黙り込んでしまっていた。

 

 

 

 

 

生徒会チームは角谷がビーチチェアに乗って日光浴。河嶋はⅣ号が中々来ない事に苛立っていた。

 

「遅い!」

「待つのも作戦の内だよ〜」

「いや、しかし……」

 

すると、無線でⅣ号から連絡が入って来た。

 

『Aチーム、敵を引きつけつつ待機地点にあと三分で到着します』

「Aチームが戻って来たぞ!!全員戦車に乗り込め!」

 

河嶋がそう言うと色々と声が返ってくる。

 

「えー、うそー」

「折角革命起こしたのに」

 

一年生チームは残念そうに言う。するとみほの無線が聞こえた。

 

『あと六百メートルで敵車両、射程内です!!』

 

みほからの無線を聞き、緊張した様子でに敵を待つ皆。待ち伏せは十八番戦法だった為に榎本達は慣れていたが……。

 

「撃て撃てー!!」

 

焦った河嶋は誘導していたⅣ号を敵と勘違いし砲撃し始める。そしてそれに釣られての車両も撃ってしまった。

 

『あっ、ちょっと待ってください!』

 

みほが焦って無線で言うも止まる様子はない。

 

「馬鹿っ!あれは味方だ!!射撃停止!!」

 

双眼鏡で状況を把握した榎本が慌てて無線で叫ぶ。

 

「味方を撃ってどうすんのよー!!」

 

武部がそう叫ぶ。そりゃそうだ。味方からの誤射で死亡なんて死んでも死に切れん。

既に作戦が露呈し、待ち伏せの意味がなくなった状態だが……。

 

「やっぱ初心者ですね」

「当たってないわね」

 

練度不足故に砲撃が全く当たっていない様子を見て伊藤と大久保はそう呟く。やはり、真澄のスケジュールとは言えこんな短期間では難しいか。

河嶋は半狂乱になって何か叫んでいるが、もはや言葉にならなかった。

 

『そんなバラバラに攻撃してもダメです、履帯を狙ってください!』

 

みほがそう言った瞬間、聖グロの車両が左右に分かれ始めるのだった。

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