敵の襲撃を前に真澄は砲撃を行ってきた部隊を見ながら思考する。
「(パーシングの登坂能力から考えて…最初に高地を捨てた?)」
彼女は思考する中で自戦車の砲撃を認識する。
「(いや、高地を明け渡したって上から砲撃陣地よろしく撃たれたらたまったもんじゃないはず…)」
少なくとも自分であれば、高地を放置するにしても完璧な占領をされないために何かしたの布石がしておく。
島田愛里寿が天才と呼ばれていようと、側背面から攻撃を受けることは絶対的に避けるはずだ。
そう考え、真澄は自分ならこうするはずなことが起こっていないことに警戒して無線機を繋げる。
「こちらあさがお、ひまわり!高地周辺に伏兵警戒!待ち伏せの可能性に注意されたし!送れ」
彼女は無線機を高地頂上に到達するひまわりチームに切り替えて警戒を促した。
その頃、砲撃を受けたたんぽぽチームでダージリンが指示を行う。
「各車両、前方の土手に車体を隠しながら応戦」
彼女は川の手前にある小さな土手を利用して前後に不規則に移動を行なって相手に狙いをつけさせないようにしつつ砲撃を行う。Ⅳ号もそこで砲撃を開始する。
「みほさん!指示を!」
ダージリンはこのまま交戦に突入を覚悟して指示を仰ぐと、武部から受け取ったホワイトボードを確認してから一息吸ってマイクのスイッチに手を当てた。
「大隊長車よりたんぽぽ各車へ。前後に移動を行って相手の射線に入らない様にして下さい!高地の上にひまわりが到着するまで耐えましょう」
「持久戦か」
その内容を聞いていたナカジマが呟く。
「いつも通りだね」
「耐えるのもレースの醍醐味さ」
「電装系が壊れないといいけど」
それにホシノやツチヤ、スズキがそれぞれ反応する。
「ま、その時は修理するよ」
ナカジマが言い放つと、他の乗員が笑いを浮かべた。
その間、たんぽぽチームに襲撃を行ったルミ中隊は不自然に前後を繰り返し、応戦を行うと撤退し、河を挟んだ砲撃戦が展開されていた。
「始まりました」
その様子を見ていたCV33でカルパッチョがつぶやいた。
「こうなるとウチらの仕事はないっすねー」
「そんなことはない。我々でまずは相手側の全車両の動向を把握するんだ。黒田真澄からもそう注文を受けただろう?」
ペパロニにアンチョビはそう答えると、彼女は首を傾げた。
「えーと、作戦なんでしたっけ?」
「『こっつん作戦』だ」
相変わらずな様子に分かってはいたので、隣でカルパッチョが作戦の概要を振り返る。
「ひまわりの火力で相手の注意を引き付けて…」
「たんぽぽ、あさがおが側面から挟撃」
「でも相手が左右から仕掛けてきましたね」
二人は作戦の概要を振り返しながら、その出鼻を挫くように動いている敵の行動に推察する。
「このまま包囲を狙ってくるのでしょうか?」
「だろうな、基本的に戦力の整っている側というのは余計なことをする必要がない」
目の前の砲撃戦で、敵車両の動向と車両数の計測を行いながらアンチョビは静観していた。
「じわじわ削られなきゃいいが…」
彼女はそう懸念していた。
その頃、メグミ中隊の奇襲を受けていたあさがおチームはみほから通信を受けて地形を利用した応戦を行っていた。
視界が悪い森な上、複数の発砲による硝煙が視界を次第に悪化させる。
『西さん!無理な突撃は極力避けるようにお願いします』
「え?」
そこでみほは名指しで西に指示を出すと、彼女は首を傾げた。
「あー、かしこまりました!」
車両を停止させ西のチハが発砲する。
「無理な突撃ってしたことないからなあ…」
その返答を聞き、次にみほは真澄に繋いだ。
『真澄さん、知波単の手綱を握ってもらっていいですか?』
「了解。任せな」
胸を張って彼女は答えると、直後に彼女は命令を伝える。
「よく聞け!これから無許可突撃は私から直々に護謨飛びと熱々おでん一発だ!」
「え”っ…」
「っ!!」
「か、かりこまりました!」
罰ゲームを聞き、忽ち聞いていた西達は顔を青ざめさせた。噂に聞く世にも恐ろしい罰ゲームを前に彼女達は戦々恐々となった。
両チームの接触で試合がヒートアップすると、観覧席では天候の悪化を前に観客達は雨具の購入に走っていく。
「天気が悪化するか…」
「視界が悪くなります。まだ戦況がどちらに傾くかはわかりません」
そこで先に売店で雨合羽を購入した清靖が巌に答えると、映像は何も見えない高地山頂を映し、その奥からひょっこりと一両の戦車が顔を覗かせた。
その影をズームアップすると、そこにいたティーガーⅠを見て大きな歓声が上がった。
「こちらひまわり、高地頂上に達した」
まほがマイクに手を当てて報告を行う。
「二〇三奪取よっ!!」
『『『『Ypaaaaaaaaaaaaa!!!』』』』
カチューシャの声にプラウダの生徒達が唱和する。
「罠はありませんでしたね」
「ああ、伏兵の気配もない」
エリカがおずおずと質問すると、事前に真澄からあった警告がなかったことにまほは安堵し、次にやや獰猛な笑みを浮かべる。
「罠があれば噛み破る。覚えておけ、それが西住流だ」
「はいっ!」
大洗のためといい、自分を押さえてしまっていたまほは奮起させる意味も込めて力強く言った。
「みぽりん!」
「やりましたね!」
あんこうチームの車内で武部と秋山は笑みを浮かべていた。これで戦局の打開ができると暁光を見たような気がした。
「ひまわりは二手に分かれて、上からあさがおとたんぽぽの援護をお願いします」
『了解した』
まほの声を聞き、みほは『なんとかなる』という安堵が、姉がいるからなんとかなりそうという安堵で眉を緩めた。
「距離五〇〇〇、いやもう少しあるな」
「理論上は届くかもしれませんが…」
高地頂上を奪取したまほ達は前方に見える敵部隊を確認する。
この距離は、ティーガーⅠの主砲では照準器から飛び出てしまう距離で、撃てないことは無いが当たらないだろうというのが容易に想像できた。
「こちらひまわり。北に敵集団を確認。警戒しつつ支援にあたる」
そのため、この目の前の敵部隊には警戒をしつつ支援砲撃を行うように展開させる。
「攻撃開始!」
みほのひまわりチームの指示を聞き、ケイは積極的攻勢に出るべきであると判断して指示を送る。
「あさがおよりひまわり、火力支援を乞う。火力支援を乞う。送れ」
真澄は砲撃を行いながら、あさがおチームの中では最も装填時間が遅いので、その間にケイが指示を行う。
「えいっ!」
「おらっ!」
福田と玉田が西の発砲に合わせて、砲弾が軽いのを利用して速射砲のように発砲を繰り返していく。
その後方を支援してくまさんチームやウサギさんチーム、サンダースが発砲する。
視界不良の中で反撃の大きさを受けてアズミ中隊は混乱しつつも、整然と並んで森の細道を通って反撃を行う。
数発が防楯などに命中したが、パーシングの対パンターを意識した装甲はこの距離では軽く音を立てて弾いてしまった。
「こんな所で足止めされるわけにはいかないのよ」
アズミは先ほどの砲撃で敵車両の大まかな位置を把握すると、一旦停車をしてから協調の取れた砲撃を行った。
「うおっ!こっち来たっ!?」
「一歩たりとも通すな!撃てぇ!」
玉田の驚愕に西が冷静に判断する。
突撃戦法を逆手に取られた形であって驚きはしたが、冷静に反撃を行うと、しかし対戦車戦闘に重きをいているはずのチハ改でも主砲の貫通力はパーシングの後方すら抜くのは難しかった。
「くそっ!履帯でも切れないかなあっ!!」
短十二糎自走砲も砲撃を行うが、そもそも徹甲弾が装備されていないどこぞの
車体に装備された副砲であれば多少マシになるが、それでは車体を晒すことになるのでできなかった。
「アリサ!ナオミ!ラビット!」
「はいっ!」
そこで敵の正体が知波単と判明したのか、パーシングはケイ達を狙いに定めて木々を薙ぎ倒していく。
「チハタンズの脇から突破する気よ!」
ケイに呼ばれた彼女達はハッとなって前方を見ると、そこでは知波単と真澄に接近するパーシングの姿があった。個別射撃による緩射で知波単や真澄は釘付けにされていた。
「前へ出て。守るわよ!!」
「了解!自分が」
ケイの指示を受けてナオミが狙いを定めようとした瞬間、激しい轟音と衝撃が彼女達を襲った。
「敵火力集中!」
「エンジン停止!」
「進めません!」
七輌のパーシングによる砲撃が嵐のように降り注ぎ、反撃の一手を許さなかった。
「エンジン再始動!Harry up!」
「Roger!」
ナオミは返答をしてエンジンを再起動させるも、砲撃で舞い上がった土が視界を悪化させていた。
『我援護不能!援護不能!』
ナオミの悔しげな声を聞き、ケイは歯噛みした。
「
怒りのあまり、やけくじみて彼女はペリスコープを動かした。
「全車照準、敵右翼へ」
サンダースの車両を一時的に無効化し、その間にアズミ中隊は余裕を持って照準を向ける。
知波単と短十二糎の目の前を姿を晒して通過していくため、そのことに玉田は血の気が上がった。
「おのれぇ!」
歯牙にもかけていない様子に細見も同意すると、彼女はそれどころか車両を前進させる。
「突撃!」
「負けるか!」
細見の突撃を見て玉田も釣られて一斉に加速を始める池田。
「あ、こら!突撃はまだ早い!」
西は慌てて静止させるが、時すでに遅く、ポツンと西と福田だけが残される。
「無理な突撃は避けろと言われたのに…」
道を進むパーシングに向けて、その右から茂みを割って知波単の車両が飛び出す。
「まるで幌馬車を襲う先住民みたいね」
問答無用で砲撃が行われ、その砲撃で車両は吹き飛んだ。
「馬鹿!停まれ!」
直後に真澄が無線機が壊れる勢いで叱責をすると、直前で細見は急制動をかけ、少しはみ出た名倉は横転しながら撃破された。
「名倉車、善戦するも撃破されました!」
「くそっ、履帯さえ切られていなければ!」
撃破された名倉の隣で玉田が歯噛みした。
「チハ一両撃破されました!面目次第もございません!!」
西は砲塔から顔を覗かせてみほに報告を行った。その間もパーシングは砲撃を行った。
「うおっ!」
砲撃で西の体が揺さぶられると、驚きを隠せなかった。
「何よ、相手にしないでどこにいく気よ!スルーってどういうことよ!馬鹿にしないでよ!?」
アリサは悠々と進んでいくパーシングを見ながらブチギレた。
オリ主とみほの戦いを先に見たいか否か。
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見たい!
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まだ先で良い