「あさがおよりひまわりへ!敵に突破されたわ、現在進撃中!」
ケイは土煙で遮られていない方角に遁走する敵部隊を確認し、全車に注意喚起と追撃指示を行う。
「アリサ!追撃の指揮は頼んだわよ!」
「イエス、マム!」
ケイの指示を聞いて頭に血が登っていたアリサ達はテンションが上がった。
「動ける子はあたしについてきてっ!」
その直後、アリサ達は大きく揺さぶられる。
「ちょっと、いい所だったのに!」
「揺れるーーー!」
「ああ!薬莢が!!」
後続のM3リーにも砲弾が着弾し、前進ができなかった。
「ぐぬぬぬーー」
阪口は道を探すが、隣で宇津木が無線で伝える。
「弾幕が凄くて前に出られません!」
「博子!」
「無理!射角足んない!」
突撃をしなかった真澄、西、福田は砲弾に押されるように後退を余儀なくされる。その間もアリサのM4A1は滅多撃ちにされていた。
「ちっくしょーー、馬鹿にして!」
そこで生き残っていた左履帯を動かそうとしたが、それも切れて動けなくなった。ようやく砲撃が止まったのでペリスコープを覗く。
「え」
そこでは最後尾で砲塔を後ろに向けていたチャーフィーがいた。
そして止めと言わんばかりに砲弾が発射されると、それは砲塔後部で弾かれて戦車は悠々と走り去っていった。
「最後まで馬鹿にしてーーー!」
激昂したアリサは地団駄を踏むと、M4A1の被害状況を知らせる。
「左右履帯破損、砲塔故障、エンジン不調…満身創痍ですが、修理可能です!」
「前に進めないよーー」
アリサとは裏腹に阪口の悲鳴が響く。
「体勢を立て直すわ!Harry up!」
ケイは顔を顰めても一瞬で毅然として指揮を執る。残存車両の確認を行い、修理の必要の有無の確認や後から追従させるかの指示を判断する必要があった。
「こちらあさがお、敵は戦線を突破!こちらの被害状況は損害一!現在ひまわりの後方に展開!」
真澄は車体の上に立って双眼鏡で走り去っていくアズミ中隊を見ていく。
「敵は包囲の可能性大!繰り返す、敵部隊戦線を突破。パーシング七輌とチャーフィー一輌だ!」
『了解した』
まほからの返答を聞き、真澄は今の状況確認を行う。
「まあ、こんなものか。……腹立たしいけど」
「A1あれだけ撃たれて無事だったのはラッキーでしたね」
キューポラから顔を出してケイは言うと、安否確認を行う。
「アリサ、大丈夫?」
聞かれた彼女は、ボロボロのA1から顔を出して顔からわかる悔しげな表情で叫ぶ。
「ずぅうぇったい勝つ!」
彼女は報復宣言を行なっていた。
「ナオミは?」
『いつものやってます』
そこでファイアフライではナオミが鬱憤を晴らすように風船ガムを大量に噛んで一気に膨らませていた。
『知波単、玉田車横転中ですが、残り三輌行けます!』
『こっちも大丈夫です!』
西と福田が返答を入れると、直後に怒号が森に響いた。
「命令無視しやがって阿呆!」
その声だけ気で誰が何を原因に叱責を起こったのかが容易に想像できた。
「まだまだ、これからね」
怒号は一発でとりあえず終わると、ケイは被害状況を確認して次に指示を出す。
「急ぐわよ!」
そこで彼女はまずはA1の修理のために人員を派遣した。
その頃、戦線を突破した連絡が高地を占領したひまわりチームに共有されていた。
そこでノンナは下を見て戦況を報告する。
「左翼敵集団、あさがおを突破して我々の後方に侵攻中」
「あさがおを援護するわよ!蹴り落としてやる!」
カチューシャはノリノリで悪い顔を浮かべて指示を出す。
「準備完了です!」
「射点につきました!」
そこでパンターに乗っていた赤星や小島がそれぞれ連絡を行う。
「中隊長!良いわねっ!」
「攻撃を許可する」
カチューシャの問いかけにまほは許可を出すと、大きく息を吸って彼女は大声で指示を出す。
「撃ってーー……」
その瞬間、カチューシャの隣から強烈な爆風が押し寄せ、号令をかき消した。
「ええええぇぇぇぇえええ!?」
舞い上がる巨大な土煙、爆炎、轟音。全てにおいて規格外であり、パンターは吹き飛び、カチューシャやカバさんチームも大きく揺さぶられた。
「だんっちゃーーーーーーーーーく!!」
「何なの〜〜〜〜っ!!」
エルヴィンが帽子を押さえて土煙を見上げた。
「どうしたっ!」
まほが聞くが、舞い上がった大量の土砂のせいで報告どころではなかった。
『わかりません!上からの砲撃みたいですが!』
『なんなのよこの規模!!』
『無茶苦茶だべ!!』
あらゆる箇所で阿鼻叫喚の悲鳴が上がっていた。
「っ!!?」
その砲撃はもちろん、高地山頂で起こっていたので真澄やみほも見ていた。
『あー、こちらカメさんチーム。上から飛んできたっぽいぞー。すっごく大きいやつだと思うけど、気のせいかな〜』
『気のせいではありません!』
河嶋の後ろの絶叫も混ざりながらヘッツァーから連絡が入ると、呆然とみほは見ていた。
「なんだ今の砲撃!!?」
「艦砲射撃か!?」
「T92でも連れてきたのか?」
「馬鹿!あれはオープントップだ!」
「
砲撃音を前に榎本達は困惑していた。そんな中、自分の調べたノートを開いて武部が推察した。
「きっと、これだよっ!ブルマくまッ!」
「爆発が大きすぎます」
「えー」
しかし秋山に即決で切られて武部はがっかりしていた。
「ハッ!もしかして!シュトゥルムティーガー!?」
そこで気がついたように秋山はスマホを取り出して検索を行った。
「あった!これです!」
「…何これ」
彼女から見せられた映像に彼女は困惑していた。
「弾じゃなくて人間が飛び出すの?」
「380mmです!」
南斗人間砲弾を想像した武部に秋山は反論するように口径を口にした。
「いや、これおかしいよ」
「損傷したティーガーの車体に、海軍のロケット推進式380mm臼砲を搭載した自走砲ですよ。約三五〇キロの砲弾を五キロほど飛ばすことができて、着弾付近の周囲にいた戦車を行動不能にした記録もありますし、きっとこれです!」
解説をしている中、みほはキューポラから顔を出して耳を済ませる。
すると遠くから重低音の発射音が聞こえた。その中で彼女は目を顰めて砲弾の飛来方向を見た。
「戻って大丈夫?」
「ほら、砲弾は同じところに落ちないって、一番安全なのは前の着弾点だから」
パンター二輌がゆっくりと後退を行っており、車長である赤星と小島が話していた。
「次弾、来ます!!」
その直後、エリカが忠告を行うとパンターが同時に吹き飛ばされた。
「ええーー、何でーー」
「だから言ったのに!」
そのままパンターは斜面を転がり落ちると、ひっくり返ったまま白旗が上がった。
『パンター一号車、撃破されました』
『二号車行動不能』
通信と同時に白旗が上がっていた。
「三発目が来る前に前進しろ!」
「くっ!」
急いでまほが指示をすると、全車両が前進を始めた。
カチューシャもⅢ突の後を追って高地を降りかけると、今度は通常の砲弾が着弾を始める。
「!」
砲撃で一斉に全車両が停止する。
「前方の敵、砲撃を開始!」
「後退!」
先ほどまで遠距離にいた敵部隊が接近を開始していた。まほは慌てて後退指示を出すと、突出していたⅢ突の周りに砲弾が集中した。
「うおっ!」
「もったいないけど戻るぞ!」
その前方で隠れていたヘッツァーが残念そうに叫ぶと、直後に姿を現したことで砲撃が集中した。
「ダメだ、戻れ戻れー!」
「あれ?これって……」
パニックになった河嶋に角谷はハッとなって、小山が悲鳴を上げた。
「包囲されてる!」
あさがおを突破したアズミ中隊が高地後方に位置し、その直後に再度再び大きな爆炎が上がった。
「後方からの半包囲、上から謎の砲撃、しかも前からは敵本隊」
戦況図を記してまほは渋い顔を浮かべる。
「このままここに居たら全滅です!!」
「中隊長、どうにかしろ!やられたあ〜!」
「やられてないって」
悲鳴をあげる河嶋に小山が助言を入れると、まほはその雑音のみをシャットダウンして現場から最も最適解を導き出す。
「前方斜面をこのまま降りる。中隊全速前進!!たんぽぽと合流するぞ!」
まほはそのまま高地右斜面を駆け降りて、湿地帯でまだ大きな被害のないたんぽぽチームまでの避難を開始する。しかしひまわりチームを塞ぎ込むようにパーシングが現れる。
「装甲が厚い私が先陣を切ります」
「頼む」
「はいっ!」
ティーガーⅡがティーガーⅠの前に出て加速を開始する中、エリカは後ろを振り返った。
「小梅…」
そこでは横転したパンターが二輌、高地頂上で横たわっていた。
『振り返るな』
そんな彼女の所作を見てまほが繋いできた。
「目の前のことに集中しろ。無念を抱いた者に我々ができるのはそれだけだ」
彼女の声はエリカの耳によく響く。
「それでも立ち止まりそうになったのなら、今その手に握っているものを見つめれば良い」
そう言われた彼女は、試合前に話した会話を思い出していた。
それは試合開始地点での話。
エリカは作戦会議から戻ってくると、そこで小島がコインタワーを作っていることを訝しんでいたことから始まった。
「全く…みんな気が抜けているんじゃないの?」
「そんなことありませんよ」
コインタワーを前にエリカは呆れて嘆息すると、隣で赤星が言う。
「みんなみほさんを助けるために短い時間で目一杯練習してきましたから」
彼女はそこで一拍おいて志願制でここに訪れた黒森峰の乗組員達を見る。
「負けられません」
赤星の言葉にエリカは少し鼻で笑ってねこにゃー達と親しく話しているみほを見る。
「今の言葉、本人に言ってあげたら?喜ぶんじゃないの?」
「伝えません」
しかし赤星はキッパリと言ったのだ。
「みほさんは新しい居場所を得ました」
そして少し名残惜しくも、納得した様子で言う。
「なら私たちは、これ以上踏み込むべきではないのではと思いまして…」
彼女はそう言い、遠くでねこにゃー達と話しながら笑っているみほを見た。
その彼女の言葉に、エリカは本来であれば今自分がいる場所にみほがいたという幻想を思った。
ーーそうか、もう
ーーもうみほは
その事実が、あの明るい笑みを見せるみほを見てまざまざと見せつけられていた。
それが痛いくらいに眩しく思えるのは、今の自分がこの立場に相応しくないと思ってしまっているからなのだろう。
「まあせいぜいしっかりやんなさい。何せ大隊長が頼りないものね」
「もう、エリカさん!」
「冗談よ」
赤星は不満げに言うと、エリカは肩をすくめていた。その後、まほも交えた談笑になったのを思い出していた。
そのことを思い出したエリカは答える。
「はい!」
彼女はグッと手のひらで幸運の象徴の1マルク硬貨を握っていた。
オリ主とみほの戦いを先に見たいか否か。
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見たい!
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まだ先で良い