撤退の最中、エリカのティーガーⅡに追従してティーガーⅠ。そこにⅢ突、ヘッツァーが合流し、その後をノンナのIS-2、KV-2、T-34/85が二輌続く。
先頭のティーガーⅡに砲弾が着弾するが、傾斜装甲によって180mm並みの装甲を持ち合わせた車両は見事に弾き返して先陣を切って陣形を切り崩しにかかる。
「後方七時、パーシング三輌!」
そこであさがおチームを突破した部隊が追い縋ろうとしていた。
最後尾のカチューシャは砲塔を後ろに向けて牽制を行うと、高地頂上から煙を突っ切ってパーシングが来たのを確認する。
「撃て!」
彼女は指示をすると砲撃はパーシングに命中して、角度が悪くて弾かれてしまったが、それでも先頭車を停止したことで追撃の時間稼ぎを行う。
『アズミ中隊、高地到着』
そこで山頂に到着したアズミが連絡を入れた。
『大洗中央集団は斜面一時方向へ移動。逃げられました』
「向こうの判断が早かったな」
報告を聞き、雨がポツポツと降り始めたことを愛里寿は認識する。
『このまま追撃に移る』
「了解!」
そして指示を下すと、パーシングは全速力でひまわりチームに追撃を行っていく。
「プラウダはIS-2以外全車後方警戒!当たんなくてもいいから撃ちまくりなさい!なんとしてでも切り抜けるわよ!!」
カチューシャは無線機に向かって怒鳴りつけた。
「逃げ切るべか?」
「
「まあ、追いつかれたらそんときはそんときだ。覚悟決めるべ」
「んだ」
車内でニーナ達はそう話していると、そこでそれを聞いていたかは知らないが、カチューシャは言った。
『いい?早々にやられでもしてそれが原因で負けたりしたら、その車輌メンバーはシベリア送り25ルーブルだからね!』
「シベッ……!!」
その督戦令を聞いて彼女達は顔を青ざめさせた。
「全力だ!全力で逃げるべ!!」
「絶対に諦めんな!」
「んだ!」
彼女達はそう意気込んで泥道を走り続ける。
「プラウダの隊長車のみを狙え。絶対に逃すな」
愛里寿は指示をすると、パーシングの砲撃が最後尾のカチューシャに集中する。さらに上空から巨大な砲弾がカチューシャの側面に着弾して大爆発を起こした。
「見てごらんなさい!私には当たらないわよ!」
そしてその砲撃で距離をとっているパーシングを見る。彼女らも追撃中にこの巨大砲弾の砲撃に巻き込まれるのを恐れてか、積極的に接近戦を仕掛けてこなかった。
『パーシング接近!五時方向!』
エリカの通信がそこで飛び込むと、そこで前方から接近してくる三輌のパーシングを確認した。
「何よ、狙い撃ちっ!?」
カチューシャが殿を務めるひまわりチームはたんぽぽチームとの合流を最優先として右に迂回していくことで前方部隊を避けるが、半包囲を行なっていたアズミ中隊の追撃を代わりに受ける。
そして愛里寿の指示通りに全部隊はカチューシャの車両を狙い始めていた。
小さな丘を越えてゾロゾロとパーシングが現れると、メグミ組中隊の半数の四輌、アズミ中隊の二輌がカチューシャを狙い撃ちにしていた。
「雨?」
カチューシャはそこで上から降ってきた水滴を確認して空を見上げた。
「…」
雨がひどくなった場合の想定を直後に彼女はしていた。
「
その間もカチューシャは集中砲火を受けており、それをペリスコープ越しにクラーラが見て叫んだ。
「
「
ノンナにクラーラは首を小さく左右に振って俯く。
「
「っ!
ノンナは驚くと、その行為を止めさせようとする。
「
「
その間もカチューシャには砲弾が届き、雨足は強くなっていく。
「ちょっとあなた達!だから日本語で喋りなさいって!何度言ったら分かるの!?」
その二人のロシア語の会話にカチューシャは切れて怒鳴ると、その瞬間に一台のT-34/85が路肩に停車して最後尾についた。
「え?」
『カチューシャ様、お先にどうぞ』
「ちょっと、今の誰?」
何が何だかと驚愕する間、カチューシャは今の日本語が誰のものなのかが理解できなかった。
『それではごきげんよう』
「何っ!その流暢な日本語っ!?」
『クラーラは日本語が堪能なんです』
ノンナが追い打ちをかけるようにようやく理解したカチューシャに言った。
「先に言いなさいよっ!!」
そしていつものように怒鳴った彼女だが、同時にクラーラのセリフを思い返して順番を入れ替えた意味を理解する。
「うっ、何する気っ!?」
彼女は雨足強まるにも関わらずキューポラを開ける。
「クラーラ?」
そして意味では分かっても理解できない状況で、悪路にも強い幅広履帯が警戒に悪路を走っていく。
「戻りなさい!クラーラ!」
「いいえ。カチューシャ様こそ、退いてください」
彼女の言葉にカチューシャは反論する。
「嫌よ!仲間を見捨てて逃げるなんて隊長じゃないわ!」
「そうです、逃げてはいけません」
彼女のその言葉にカチューシャは言葉を詰まらせる。
「普段は味方を駒として効率よく使えるのに、いざ守勢に入ると皆を助けようとするあまり自らを犠牲にしようとする。カチューシャ様の悪い癖です。
皆がまだあなたを必要としています。その責務からだけは、決して逃げてはいけません」
彼女はそう言うと、最後に言い残す。
「カチューシャ様、一緒に戦うことができて光栄でした」
その言葉にカシューシャが叫んだ。
「クラーラッ!」
「
彼女は叫ぶと、後退を始めたパーシングに向かって彼女は突撃を敢行する。
この細道では、車両が止まれば血栓のようになって追撃は逃れられると目算していた。
だが直後に着弾した空からの攻撃がクラーラの決意を砕いた。直撃した砲弾はあっという間にクラーラを包み込んだ。
「クラーラ!」
強くある雨の中、カチューシャの絶叫だけが響き渡った。
観客席の大型ディスプレイ前では、煙の中に立つ白旗が映し出される。
その様子を見て降り出した雨での視界不良や、大学選抜チームへの不満から観客がブーイングを起こした。
彼らが求めるのは
そういったものを求めており、こんなちゃぶ台返のような蹂躙は誰も求めていなかった。
ただでさえ三輌がこの大規模な砲撃で撃破されており、見栄えのない映像やただの一方的な屠殺のような状況に不満を抱いていた。
「…やれやれ、大人気ないね」
雨合羽を着て観戦していた清子は口に漏らすと、その視線は一段下に座る二人の立派の家元に向けられた。
片方は傘を開き、片方は雨の中でも海軍将校よろしく一切の傘を立てずにどっしりと構えていた。
ただ、自分の知る島田千代は、このような状況で傘を差すような人物ではないことを彼女は知っていた。
雨の中、ひまわりチームが撤退をする斜面に穿たれた一本道を下り続ける。差し違えても止めようとしたクラーラの奮戦虚しく、砲撃で道を塞ぐことはなく、大学選抜の車両がやや遅れて追撃を再開していた。
「カチューシャ様がまた狙われるだ」
再度最後尾となったカチューシャ車に砲撃が集中していたのを、砲塔旋回させていたニーナ達は見ていた。
「あのちびっこ隊長にはいっつも無茶ばっかされられてきたぎゃ。でも、ここでやらてまってば」
「それに、隊長が遅れてるの、うちらの足が遅いからだっぺ?」
彼女達は時折反撃の砲を撃つが、それでも元々搭載している152mm砲の砲弾は重いので、積極的な反撃はできなかった。
「なあ、うちの車、おっきいから盾になるんでないかい?」
その時、搭乗員の一人が提案した事で彼女達は顔を合わせて相談する。
「行くべか?」
「いぐべ」
砲弾片手に彼女達は笑みを浮かべ合う。
「みんなもいいがい?」
「仕方ないだな」
彼女達は次々と確認をし合う。
「ん」
「いがべし」
「いぐべし」
「んだ」
そこでニーナが笑う。
「みんなでいきゃ、シベリアも怖がねえっぺだ」
彼女はそう言うと、KV-2は路肩に停車してT-34/85に道を譲った。
「かーベーたん!?」
その行動を見ていたカチューシャは驚愕して振り返ると、自然と最後尾になったKV-2はパーシングからの砲撃を受けた。
「ああっ!」
その様子を見て軽く悲鳴に近い声を漏らすカチューシャ。自分のお気に入りでもある戦車が、島津の退き口のように小道に停まったのだ。
「まんだまだっ!」
「撃てるだけ撃つべ!」
そこでKV-2は砲撃を行うと、着弾した際にまた上がった土煙でパーシングは潰走していたひまわりチームに追撃を行う。
「街道上に怪物舐めんなよ!」
そこで砲撃を行うと、KV-2は史実のようにパーシングの足止めを開始する。
カチューシャはそこで限界を迎える。
「停止、反転の後、反撃!」
その様子をペリスコープで見ていたノンナは、僅かにKV-2が仁王立ちをしていた小道に隙間がある事に気がつく。
「まずい…カチューシャ!逃げて下さいっ!!」
その隙間を大学選抜が通らないわけがない。ノンナはそう判断して自分のIS-2を反転させる。
「逃げるなんて隊長じゃないわっ!!」
「お願いです」
そしてカチューシャのT-34/85の横を通過してKV-2の援護に向かう。
「来ちゃダメよ!ノンナまで失うわけにはいかないわ!」
彼女は叫ぶと、ノンナは答える。
「『逆境で生まれる力』カチューシャ、あなたの好きなカモミールの花言葉です。ここから先、私たちはあなたを助ける事が出来ません。ですが、信じています。崇拝などではありません、ずっと見て来た私には、わかるんです。あなたはこの試合に必要な方です!」
そして122mm砲の砲撃が行われる。
「あなたはウラル山脈より高い理想と、バイカル湖の様に深い思慮を秘めている!」
発砲をすると、パーシング一輌に命中して白旗が上がる。
「今ですっ!カチューシャ、私達が居なくても、あなたは絶対……」
照準器を覗きながらノンナは確信した様子で呟く。
「勝利します」
そしてノンナのIS-2は砲撃を行うと、小道を進んでいたパーシングと相打ちの形で砲撃が刺さりあってIS-2に白旗が上がった。
オリ主とみほの戦いを先に見たいか否か。
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見たい!
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まだ先で良い