知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第一三四射

観客席の大型ディスプレイにカールの映像が映し出されると、その威容に観客は息を呑み、あちこちで歓声や怒号が上がる。

それを見た児玉が横に座る辻に軽く避難の声を浴びせた。

 

「これを直前になって認可させたのは、この試合のためだったんですな……」

「言いがかりは、よしていただきたい」

 

辻はしれっと言い返す。

 

「しかし、オープントップなのに戦車と認めていいんですか?」

「考え方しだいですよ」

 

高校戦車道では、乗員が走行に覆われた車体の中に入れることが原則である。しかし装甲で覆われない部分は安全上の問題で使用が禁止されていた。

その点カールは砲が剥き出し、装填機構も剥き出し、乗員は屋外に出て作業をしなければならなかった。

 

「あの程度、世界大会になったら、欧州の国はどんなルールの変更を行なってくるか。欧州式の戦車道は、欧州の仲良しクラブ以外は勝たせて貰えない上に、ルール変更権は向こうが持っている。

我々が世界で勝利するには、圧倒的な実力を見せつけるしかないのだ」

 

彼は小声で呟くと、その声は誰にも聞こえなかった。

 

「ええ…、何あれ?」

 

そこで現れたカールを見て尾崎達は愕然となって見ていた。

 

「大きすぎる…」

 

尾崎の隣で原が食べかけのスパゲッティのフォークが止まってしまう。

 

「カール自走臼砲。ドイツが開発した臼砲を装備した自走砲ですね。あの砲身の短いのは60cm砲弾を発射する前期型。セヴァストポリ包囲戦やワルシャワ蜂起で有名な車両ですね」

「く、詳しいね…」

 

高橋が説明を入れると、隣で幣原が苦笑する。

 

「覚えましたので」

 

眼鏡を直しながら高橋は自慢げに返した。

そんな彼女達の後ろでは、観戦に来ていた機動隊の隊員達が不安げにカールを見ていた。

 

「あれは反則ではないのか?」

「先ほど問い合わせたら『試験運用中』だそうだ」

「阿呆か!」

「どうする、あいつに三輌も喰われているぞ?」

 

彼女達はカールを見て不安を口に出していた。

 

 

 

 

 

どんぐり小隊が慎重に身を隠しながら前進するに従って、周囲の状況も判明してきた。

 

「パーシングが三輌、カールを守ってるよ!」

「全車停止!」

 

ヘッツァーの上から河嶋が双眼鏡で観測する。

 

「会長、撤退しましょう!」

「…」

 

角谷はその進言に少し考える。

 

「四輌で突っ込むか」

「無理です!」

『それはパスタを生で食べるくらい無茶だ!!』

 

彼女の提案に小山とアンチョビが反対をした。

 

「撤退しかありません!」

 

河嶋も反対をする。その中で八九式の車内で礒部達が円陣を組んで相談を行っていた。そして磯部が顔を上げると、無線で話しかける。

 

「待ってください!良い考えがあります!!」

 

彼女の提案と聞き、河嶋は全国大会でのマウス討伐の一件がよぎり、顔を青くさせる。

 

「まさか、また戦車の上に乗るのか!?」

「いいね〜」

 

その提案に角谷は実績ある戦法に乗り気であった。

 

「違います!」

「カールに上がれる方法ないですから!」

 

そこでハッチを開けながら佐々木と近藤が否定した。

 

「私達が考えたのは……」

「殺人レシーブ作戦です!作戦内容は……」

 

最後に磯部が身を乗り出して作戦を伝えた。

 

 

 

砲撃を行ったカールの近くで護衛を行っていた三輌のパーシングでは、一人が遠くで響く砲撃音を聞いていた。

 

「あ〜〜〜あ、良いわね本隊は〜〜、派手に戦えて」

「こらー、文句言わないの。こっちだって大事な任務よ」

 

するともう一人が軽く注意をした。しかし注意をすると、彼女は暗い考え事をしているように見えた。

 

「どうしたのよ」

「いやさ〜」

 

聞かれて彼女は聞き返してきた。

 

「戦車道…どこまで続けようか考えたことある?」

「え?」

 

その質問に驚いた声を漏らしてしまう。

 

「選抜チームってさ、プロリーグ見据えた編成だって言うじゃん」

 

そこで車体から砲弾を取り出して装填作業を行うカールを見る。

 

「メンバーに選ばれたときは嬉しかったけどさ、訓練では隊長にボコボコにされるわ、今やっていることなんてほぼ留守番だし」

 

そして薬莢を薬室から放出するカールを見る。

 

「これって競技としてプロ化したとしても私たちはお呼びじゃないってことだよね」

「そ、そんなことは…」

「昔はそんなこと気にせず乗れたのにさ、考えちゃうよね〜〜」

 

彼女のそんな呟きはカールの砲撃によってかき消されてしまった。

 

 

 

 

 

カールの砲撃を受けているたんぽぽチームは、ひまわりチームとの合流を行うために沼地で待機していた。

 

「おのれぇ〜〜!!」

 

待機が耐えきれずにローズヒップがCV33を真似るように川沿いをちょろちょろとしていると、どんぐり小隊の一報を聞いてダージリンが指示を出した。

 

「ローズヒップ、戻りなさい」

『おかんむりですわーっ!!』

 

そして直後に着弾した砲撃で車体が浮かんでしまうと、尻尾を巻いてローズヒップは戻ってきた。

 

 

 

高地右手から退却を行なっていたあさがおチームでは、大会進行に電話で真澄が怒鳴り散らしていた。

 

「阿呆かぁ!オープントップ車両を無人化したから戦車と一時的に認めるだあ!!?」

 

カールの砲撃を受け、彼女は国家予算で導入されたその車両と容易に推察ができて大会運営に怒鳴り込みをかけていた。

試合中に異議申し立てを行えるわけではないが、彼女は『どういう意味だ?』と問い合わせを行っていたのだ。

 

「そんな理屈が通るなら他車両も装甲板で覆えば問題ないってことで良いんですかねえ!!?」

 

彼女はそう叫ぶと、その怒号を聞いていた榎本達はその激昂ぶりに静観するしか無かった。

 

「荒れてんな〜」

「そりゃそうでしょ」

「いくらプロリーグに突っ込むったってこれはねえ…」

 

耳栓代わりにヘッドホンをつけて鼓膜防護を行っていた彼女達は車内の無線を使って話していた。

 

「これ、どこかで圧力かかってません?」

「まあ欧州戦車道を見たらこれいれたくなる気持ちはわかるけどさ…」

「そしたら本物の戦場になりますよ」

「うわぁ…オープントップ車両を改造したらってことは他にも色々と自走砲が出てくることになるね」

 

簡単に地獄絵図の戦場になることが容易に見えてしまい、大久保は嫌な未来を見た気がした。

 

「チッ、あの木端官僚め。しっかりと情報伝えなさいよね!」

 

その上では話にならんと電話を切り、苛立ちながら彼女は直後に会場に響く重たい砲声を聞いていた。

 

 

 

 

 

作戦を聞き終わった角谷が満面に笑う。

 

「それ良いね~」

「そうですかぁ〜?」

 

感心する角谷に小山と河嶋は不安げに首を傾げる。

 

「継続ちゃ~ん、聞いてた?ちょっと手伝ってほしいんだけど」

 

無線を繋いで角谷は話しかけると、カンテラを弾いていたミカは苦笑のような表情を一瞬浮かべた。

 

「CV33ではカールを撃ち抜けないだろうね。……この作戦に意味があるとは思えない」

「じゃあ従わないの?」

 

隣でアキが頬杖をつきながら質問をする。ミカはそこで微笑んでからカンテラを弾く指を止める。

 

「しかし、彼女たちの判断を信じよう」

 

アキは一瞬驚くが、すぐに真顔になって正面を見る。

そしてミカは先ほどとは違い、高らかにカンテラを鳴らしていく。

 

それを聞いてミッコが操縦席のハッチを開けて楽しげに笑みを浮かべる。

そしてミカの足踏みに合わせてクラッチを操作して、シフトチェンジを行うとエンジンを勢い良く吹かす。

 

「……行くぞ!」

 

ミカは落ち着いて指示を出すと、ミッコはクラッチを足から外して白煙を撒き散らしながら藪の中を突き進む。

 

「強さ…ですか」

 

そして辻の意見を聞いた児玉は呟く。

 

「私も選手達に強くなってほしいと日々願っています。ですがその質というか、方向性はあなたと少し違いますかな」

 

彼はそう話した瞬間、大型ディスプレイに中洲に大ジャンプをかまして放物線を描いて飛び出すBT-42をみた。

 

「「「っ!?」」」

 

その映像に誰もがアッと声を漏らして驚愕していた。見ていたパーシングの車長はあまりの光景にスロー再生されているように見えた。

そして着陸をすると、ミッコは急ブレーキをっけて白煙を撒き散らしながらドリフトをするように二輌のパーシングの間で旋回をすると、そのままの勢いでパーシングの真後ろにつけて至近距離で主砲の114mm榴弾砲を命中させる。

 

「くそっ、やられた!」

 

白旗を見てキューポラから車長は悔しげに無線機を手に取る。

 

「小隊、追うぞ!」

 

そして中洲から降りていくBT-42を追いかけていく。

カールのいた場所は枯れた湖の中洲で、近くには古い鉄道橋があった。橋は途中で崩落しており、廃線となって久しかった。

 

「これは人生にとって必要な戦いなの!?」

「恐らくね」

 

アキは尾栓を閉じながら聞くと、後ろの観察口から外を見ながらミカはカンテレを弾く。

その後ろで追いかける二輌のパーシングは、左右でBT-42を囲い込もうと動く。

 

「今だ!」

 

その隙に、後部にCV33を乗せた八九式が爆走、急ターンを決めて橋梁に飛び出す。

 

「しまったぁぁあああ!?」

 

その様子を橋梁を見上げてパーシングの車長が叫んだ。

 

「大丈夫、木端微塵にしてやるわ!」

 

しかしカールの車長は余裕げに答えた。彼女は車体を旋回させると、その巨大な砲口を見せてきた。

 

「勝敗も大事ですが、競技を通じて人との関わり合いや問題を解決する方法を学んでほしい」

 

その様子を見た児玉は独言る。

 

「そうして培ったものは、この先の困難に打ち克つ力となるでしょう」

 

無線の悲鳴を聞き、観客は愕然となっていた。

 

「そう言った場として戦車道を提供したいのです」

『う”あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”あ”ぁ”あ”あ”あ”!!ごっじみ”でるぞぉぉお”お”お”お”!!』

 

アンチョビの濁点混じりの悲鳴を聞くと、直後にカールが発砲した。

 

総帥(ドゥーチェ)、そろそろ中に入ってください。当たったらツインテールだけになっちゃいますよ〜」

「大丈夫です!」

 

カルパッチョが叫ぶアンチョビに言うと、河西は目の前の砲弾の照準を見る。

 

「当たりません!」

 

彼女は直後に発砲した後、その弾道を見切って目一杯橋梁の隅に車体を避けると、彼女達の真横を巨大な砲弾が通過し、二九〇キロ近い爆薬が炸裂した。

 

「う、うわああっ!?」

 

そして爆発の衝撃で土煙が彼女達を覆い隠す。

オリ主とみほの戦いを先に見たいか否か。

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