知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第一三五射

カールの放った砲弾の命中で橋梁は丸々吹き飛ぶと、湖底を爆走していたBT-42でミッコは舌なめずりをさせて加速すると、目の前で瓦礫が落下してくる橋梁の中を突っ込んで行く。

そしてBT-7譲りの細身の車体を滑り込ませて瓦礫の隙間を抜けると、後続のパーシングは無作為に後を追ったために勢いよく瓦礫の中に突っ込んでスタック。強引に通過しようとしたが、上から落ちた瓦礫によって砲身が押しつぶされて白旗が上がった。

 

「残り一輌!」

 

砲塔を回しながら満面の笑みを浮かべるアキ。その瞬間、ミカは顔を上げて指示を出した。

 

「ミッコ、左!」

 

咄嗟に左に進路を左に曲げるが、そこではパーシングが突っ込んできていた。

 

「いいぃぃいっ!!?」

 

そしてそのままパーシングと接触をすると、BT-42は軽々と吹き飛ばされて、その衝撃で両方の履帯がちぎれて誘導輪も吹き飛び、車体は何度も回転しながら溝に落ちていった。

その後を追ってパーシングの護衛隊長車はキューポラから落ちたBT-42の所在確認を行う。

 

「っ!でやぁあっ!」

 

そこで横転したBT-42の操縦席でミッコはハンドルを取り出し、アキは車外に出て簡単に操作を行う。

その直後、起動輪と転輪が激しく回転を始めると、ロケットスタートでBT-42は再始動して溝から飛び出す。

 

「何!?履帯無しなのにっ!?」

 

彼女は驚愕して照準を合わせるが、細かく挙動するBT-42をうまく狙えなかった。

 

「天下のクリスティー式、舐めんなよぉおっ!」

 

歯を見せてミッコは笑みを浮かべると、ミカはカンテレを弾き、アキは主砲の照準を付ける。

 

 

 

橋梁の上では、爆炎の中から八九式が加速すると、ややCV33が後ろに下がり、重量がかかっていたことで前輪が浮き始める。

 

「いっけーーーーー!!」

 

河西は絶叫し、急ブレーキをかける。

 

「必殺っ!」

 

するとてこの原理で空高くCV33が空中で回転しながら投げ出された。

 

「「「「殺人レシーブ!!」」」」

 

そしてアヒルさんチームの全員が叫ぶ。

 

「やった!」

「賢いね〜、私達っ!!」

 

車内で飛んでいったCV33を見て近藤と佐々木は言う。

 

「今だ!マズルを狙えぇえっ!」

 

アンチョビはカルパッチョに指示を出し、機関銃を発射。しかしカールの重厚な砲身はものともしていなかった。

元々これだけの巨砲を運用するので、全てが機関銃程度には問題ない装甲しか持ち合わせていなかったのだ。

 

「ぐえっ」

 

そして崩落していない橋梁の寸前に落下し、亀のようにひっくり返ってしまった。

 

「あれ?」

 

予想と違う展開に磯部が首を傾げ、なんとも言えない沈黙が流れた。

 

その橋の下ではパーシングとBT-42が回り車のように橋脚を中心にぐるぐる回る滑稽な展開が繰り広げられていた。

至近距離であるが、速度の速いBT-42を前に照準がつけられなかった。

 

「用意!」

 

上部ハッチから顔を出したミカは指示を出す。

その直後に主砲を発砲するが、その砲弾はパーシングの分厚い防楯に命中して弾かれる。

一瞬怯んだパーシングは、照準器越しに一瞬速度を緩めたBT-42を見て反射的に砲撃を行うと、そこを合図にBT-42は高速でバック走行をし、砲塔はその後を追いかけて旋回をしながら後進し、BT-42を追いかける。

 

「折角踏み台になったのにーっ!」

 

じわじわとカールが接近してくるのを見て近藤は落胆していた。

 

「作戦失敗だ、撤退しろーっ!!」

 

河嶋もパニックになって叫ぶが、彼女のいつもの仕草に全員が気にしていなかった。

 

「くそーー」

 

ひっくり返ったCV33の車内でアンチョビは腕を組んで唸っていた。

 

 

 

その様子を見て一喜一憂していた辻の隣で児玉は話しかけていた。

 

「辻くんは角谷くんのことをどう見ています?」

 

話しかけられた辻は眼鏡を直しながら答える。

 

「まあ、才気はあるでしょうね。少々人を食ったところがありますが」

「はは、私もそう思いますよ」

 

児玉もそれには頷き、目の前の光景を見つめる。

 

「我々大人相手に堂々と渡り合っている」

 

そしてこの試合を用意するきっかけを作った彼女に期待を寄せていた。

 

「大洗の生徒達も、皆きっとああ言った溌剌さを持っているのでしょう」

 

彼はそう言い、角谷の強かさを前に苦労したことを思い出す。

 

 

 

「逃げるぞペパロニ!」

「無理っす姐さん。逆さになったんじゃあ走る地面がありませんよ!」

『あっ』

 

橋梁の隅でひっくり返ったアンチョビとペパロニのやりとりを見て角谷は気がついた様子で声を漏らした。

 

「チョビ子!履帯を回転させろっ!!」

 

そして無線で言うと、その口調にムッとなった。

 

「命令するな!私を誰だと思って……」

「干し芋パスタを作ってやるからさ〜」

 

アンチョビのセリフを遮って片手に干し芋を持ちながら彼女は言うと、彼女達は目を見開いた。

 

「パスタッ!!」

「マジっすかっ!?」

 

そこで一気に履帯が回転してピンと張力を持った。

 

「よしっ!」

 

そしてヘッツァーが勢い付いて加速を始めると、避けた八九式の真隣を通過する。

 

 

 

「私が彼女くらいの年頃は、なんと言うかこう…もっと鈍かった」

 

「今となっては、せめて若い世代が良い方向へと進めるよう、道を整えてあげたい」

 

そう言い、見つめる大型ディスプレイにはCV33をダッシュパネルにして飛翔したヘッツァーを見た。

 

『飛ぉべぇええええっ!』

 

そして加速して、放物線を描いたヘッツァーを見て、誰もが困惑していた。

 

 

 

「会長!お願いしますっ!!」

 

その砲手席に座った角谷は河嶋に言われてニヤッと笑みを浮かべると、カールも慌てて装填を行おうとした。が、その前に砲口からヘッツァーは砲撃を叩き込んだ。

そして車輌後部にヘッツァーはぶつかりながら着陸をすると、その視界には白旗の上がったカールが現れた。

 

「やった〜!」

 

撃破に成功した角谷は歓喜すると、他の二人は着地の衝撃でヘロヘロになっていた。

 

「お見事です、会長!」

大洗(ウチ)っぽかっただろう?」

 

そこで角谷は少し得意げに河嶋を見上げて返した。

 

「なんだあれは?!無茶苦茶だ!」

「まあ、道が用意されていなくとも、彼女達ならどうにかしてしまいそうですが」

 

隣で辻が困惑して喚く中、静かに児玉は大型ディスプレイを見る。

 

「眩しい限りです。いつも逆境を飛び越えてしまいますな」

 

自分の想像だにしない一手を次々と打ってくる大洗に、彼はとても期待していた。

 

 

 

そしてカールに白旗があがったのは、ミカも見ていた。

 

『西住ちゃーん、おっきいのはかたづいたよ〜』

『ありがとうございます、会長!』

 

その連絡を境に、護衛のパーシングは追う側から追われる側に変わっていた。

カールが撃破され、本隊との合流を図っての遁走であったが、大洗側のBT-42の追撃を受けていたのだ。

 

「いい音だ」

 

ミカは白旗の上がったカールを見ながら呟くと、車内に戻った。

 

「ミッコ。合わせるから好きに動いていいよ」

 

そしてミカから許可が出たことでミッコは満面の笑みでハンドルを握る。

 

「戦車は面白いね」

 

そして爆走する車内で彼女は呟く。

 

「目的の達成だけを追求した乗り物、徹底した合理性の塊」

「それのどこが面白いの?」

 

そこでアキが照準器を覗き込みながら聞く。

 

「どの車輌も勝利を求めて走ってるのに出来上がってきた形は、こんなにも違うんだから」

 

速度差でこのまま近距離での砲撃で撃破に持ち込もうとするが、簡単にはやられまいとパーシングは急停車をしてBT-42の後ろをとった。

そして絶好のタイミングで照準をして発砲をすると、砲弾はBT-42の左転輪をごっそり破壊する。BT-42は車体が傾き、片輪走行になっても車体を旋回して安定させると、ミッコが巧みな操縦テクニックを見せつけてバランスをとりながらパーシングに突っ込んでいく。

 

「嘘!?」

 

車長はその技前に驚愕すると、半ば疲れていた。先ほどから自分の想定外の事態の連続で、それによって頭の処理能力を超えてしまっていたからだ。

 

「あんなことがてきるの…?まるで…」

 

その動きに車長は困惑していた。

 

「まるで踊っているみたいじゃない…!」

 

片輪走行で走るBT-42に向かって叫んだが、そんな彼女の事情など知らず、ミカは言う。

 

「幸せになると言う目的は一緒なのに、そうなるための奏で方がこんなにも違うんだから、人は面白いね」

 

それは楽しさからくる笑みだった。彼女はこの状況、この環境を心の底から笑って楽しんでいた。

 

「奏でてみたい音でいっぱいだ」

 

そこでBT-42の車内でミカは指示をした。

 

Tulta(撃て)!」

 

直後にアキは発射レバーを引くと、パーシングも直後に発砲をした。双方の砲弾が交差したので、どちらもその場で爆発。

そして右の転輪も次々と吹き飛びながらBT-42は湖底の土に埋まっていく。そして白旗が上がり、車内が大混乱になりながらミカはいい笑顔で顔を上げた。

 

「皆さんの健闘を祈ります」

 

彼女はそう言ってからカンテレを拾って軽く音を鳴らした。

 

 

 

その様子を見ながら白旗の上がったパーシングの車両が無線機を繋ぐ。

 

『完敗ね』

「まったく、私たちすっかりいい面の皮だわ」

 

そこで小隊長は軽く吐息する。

 

『小さかった』

「ええ、あんな戦力なのにしてやられたわ」

 

彼女はそこで土に半分埋まったBT-42を見る。

 

『違うわよ』

「え?」

 

帽子を一旦被り直して彼女は驚くと、先ほど戦車道の話をしていた車長が言った。

 

『私』

 

そう言い、自分を指差して今の状況を見て反省をしていた。

 

「まだ、終われないわね」

『そうね』

 

その時、どこか彼女は思い出したような懐かしくも、悔しげな微笑みを浮かべて晴れた空を見ていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「カールがやられたですって?!」

 

アズミが報告を聞いて思わず声を上げる。詳細を聞こうとしたが、直後に無線が切れた。

 

「隊長、カールと護衛小隊が全滅した模様です」

『放っておけ』

 

愛里寿に報告を行うが、全く興味のない声が返ってきた。尚もアズミは言い募る。

 

「ですが…」

『あんなでかいのはいらない』

 

彼女の断言にアズミも納得した様子で即答をした。

 

「はい」

『第二弾作戦に移行する』

 

愛里寿の指示を聞いて、ルミ中隊へアズミが後退指示を出す。

オリ主とみほの戦いを先に見たいか否か。

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