たんぽぽチームにひまわりチームが合流し、さらにあさがおチームが丘の上からルミ中隊に奇襲をかけたところで後退命令が出たため、ルミ中隊は整然と後退していた。その間に大洗連合は渡河を行い、移動を開始していた。
そしてⅣ号戦車を先頭に草原を走る大洗連合。
「BT-42、パンター二輌、T-34/85、IS-2、KV-2、チハ旧砲塔一輌、合計七輌が撃破されました」
ハッチから顔を出して秋山が片手に集計作業を行っていた。
「でもでも、こっちはカールとパーシング五輌を撃破したよ」
「これで二三対二四ですね」
「ずいぶん減ったね」
「いや、よく持ち堪えた方だ」
そこで資料をまとめながら武部達が話していた。
「継続さんが頑張ってくれましたよね」
秋山がそう話すと、その真後ろで真澄が呟く。
「流石に一台で三輌喰ってくれたのは大きいわね」
そこで上空の脅威を排除した上でパーシングを三輌破壊し、車両数で言えばほぼ互角まで持ち込んだことを喜んでいた。
「うちもな」
「もちろんです!」
すると得意げに隣を走行するCV33からアンチョビが顔を覗かせて言った。
「バレー部さんと会長さんたちのおかげです」
そこでカルパッチョが身を乗り出して割り込んで言った。
河嶋は無線を聞いてドヤ顔で砲手席に座っていた。
「カールを倒す判断をした我々の勝利だ」
だが小山がツッコミを入れた。
「桃ちゃん、撤退って言ってたじゃない」
「覚えていない!」
「まーまー、芋食いねえ」
角谷はそう言いながら河嶋に干し芋を押し込んだ。
「西住さん、我が校から一輌の戦列を離れてしまい、誠に申し訳ございません!」
「いえいえ」
西は不甲斐無さげに頭を下げると、みほは苦笑した。
「後で細身には熱々おでんの刑を執行するから、楽しみにしてて?」
「それは止めた方が良いんじゃ…」
その後ろで真澄がホワイトボードに推定されるパーシングの車両数と事前情報で知っていたチャーフィー、愛里寿の乗るセンチュリオンの車両数の計測を完了させる。
「こんなところ?」
「センチュリオン一、パーシング二〇、チャーフィー三輌?」
「まあさっきのカールみたいなヘンテコ車両出したら当てにならいけどね」
車内で榎本達と相談をしながら真澄は肩をすくめていた。伊藤による事前の情報収集で、敵車両の編成はパーシングとチャーフィーが主体であることを掴んでおり、彼女達は脳内でそのように編成が行われていたのだが、あのカールの登場でこの事前情報がまるまる使えない情報になってしまっていた。
「申し訳ありません。正確な情報収集ができなくて…」
「大丈夫よ、その時はまた臨機応変に対応すればいいだけよ」
彼女はそう言い、残りの残存兵力を改めて再確認していた。
「うちはカチューシャだけになっちゃった…」
その呟きを聞いたのか隣でダージリンがカップ片手に話しかける。
「大丈夫。まだあなたが残っているわ、カチューシャ」
「わかってるわよ!」
的確に指摘をされたことでカチューシャは照れ隠しのように声を荒げていた。
「ふふふっ」
その反応にダージリンは笑みを大きくした。
今は知っている草原は見晴らしが良いため、全車両が指定された方角に砲塔を回して警戒を行っていた。
「すみません、私の責任です。互角に持ち込めると思ったんですけど」
そこで最後尾を守っていたまほが間髪入れずに答える。
「定石通り、やりすぎたな。らしくもない……」
その指摘を受け、みほは少し俯いてしまった。
「みほはみほの戦いをすればいいんだ」
「!」
そこでまほからの言葉にハッと顔をあげると、ケイが空気を変えるように明るく質問をした。
「ここからの作戦は?大隊長」
みほはそこで少し考えると、自分の、そして大洗女子学園の得意技を述べた。
「局地戦に持ち込んで個々の特徴を生かしてチームワークで戦いましょう」
それを聞いたエリカは冷笑した。
「急造チームでチームワーク?」
「急造でもチームはチームだ」
「…」
まほに言われ、エリカも返す言葉がなくしゅんと俯く。
「お互いに足りないところを補い合って、戦うしかない」
その集団の先には大きな堰堤が見えた。するとエリカに無線で真澄が話しかけた。
「馬鹿ねえ、私との仲じゃないのよ」
「はあ!?誰があんたと仲がいいのよ!ふざけんじゃないわよ!」
そこでエリカは顔を真っ赤っかにして地団駄を踏んだので、聞いていティーガーⅡ乗員は苦笑気味に微笑ましく見ていた。
その様子を見ていたまほは無線機を手に取ってある人物達に繋いだ。
「カチューシャ、真澄」
『何よマホーシャ、こそこそと』
『どした、プライベートで繋いできて?』
無線で反応をしたカチューシャと真澄は首を傾げると、まほはそこで言った。
『頼みたいことがある』
彼女はそう言ってから改めてエリカを見た。
『この先もし、私が戦列を離れることになってエリカが残ることがあったら、カシューシャと真澄が導いてやってくれないだろうか?』
『は?なんであたしがあなた達の面倒を見なきゃいけないのよ?』
カチューシャはやや不満げにまほに返すと、彼女は言った。
『今のカチューシャは少し塞ぎ込んでいるように見える』
『なっ…!そんなことないわよ!』
図星だった様子でカチューシャは少し強めに反論をした。
『そう言う時は普段とは違うことをしてみるのもいいだろう』
『ふん』
軽く鼻を鳴らしてカチューシャはまほに返す。
『エリカは私の言葉を重く受け止めてしまうきらいがある。西住に囚われ過ぎているというか、でもそうじゃないんだ』
彼女はそう言ってからすこい不安げな顔をしているエリカを見つめた。
『もっと広く、違う景色があるのだと言うことを見せてやってほしい』
まほはその後、少し申し訳なさそうに顔を俯かせた。
「私には、できそうにもないからな」
そこで真澄はまほに苦笑して聞いた。
「それ、下級生にお願いすることですか?」
『真澄は昔からそう言う立ち回りをやってくれただろう?』
「…」
まほに言われて閉口をする真澄。
『頼む。
「…へいへい。分かりましたっせ…」
真澄はそこで『流石に想像がつくか』と少し微笑みながら無線機で返答を行う。
「義姉御」
その返事に、答え合わせが正解した時のように微笑み、しかし少し悲しを持ってまほは個人回線を切った。
そんな様子でいい雰囲気で緊張感がほぐれてくると、みほは遠くに映る景色を見つめる。
「チームを再編成してあそこを目指します」
「OK」
車列の外周から加速したCV33が全速で堰堤を越え、勢い余ってジャンプする。
「負けませんことよ」
それに釣られてローズヒップのクルセイダーが加速してジャンプを試みていた。
「うんうん戦車はジャンプだよね」
「ドリフトもいいぞ」
「後でメンテナンスするのが大変だけどな」
「電装系がー」
その跳び具合を前にナカジマ達が染み染みと共感した様子で反応していた。
「あの中だと遭遇戦がやりやすくなります」
みほの指差す先を一同は見つめる。
「確かにそうね」
「でも背水の陣になるわ」
「そう言う戦い得意だよ、うちは!」
角谷が自信満々で言い放つと、アンチョビも乗っかる。
「アンツィオも得意だ」
「そっすか?」
だがペパロニがまぜっ返したので台無しになってしまった。
「では」
その右腕を大きく振り下ろして前進命令を出す。
「パンツァー・フォー!」
彼女らの視線の先には巨大な遊園地の姿があった。
かつて営業が行われていたが、今は廃墟となってしまったその場所を前に正面から彼女達は入っていく。
「改めて、チーム分けをします」
そこで最初に入ったⅣ号戦車からみほは指示を送った。
戦いが新たな局面を迎えようとしていることは、大型ディスプレイや配信を見ていた全員が感じ取っていた。
続々と遊園地に入っていく車両を見て大洗女子学園の生徒達もその様子を不安げに見つめていた。
「こんな辺鄙な場所まで撤退するとは……」
「違う玉田。これは転進だ」
「なるほど、転進ですか!」
戦車が余裕で通れる道を見ながら西達のやりとりを見て真澄達は呆れていた。
「いい加減撤退に慣れなさいよ」
「これも辻先輩の教育の賜物かな?」
嫌味混じりに大隈と大久保が言うと、伊藤と榎本が首を傾げた。
「大山先輩か石原先輩に怒られなかったんですか?」
「どうせ全部まとめてチハ会の面々に言われたんでしょ」
彼女達はそう話し、知波単学園から距離を置いた数年で知った世間を前にすっかり口調も変わってしまっていたことに、最初は西達からおどろかっれたものだったことを思い出す。
「…」
「なんだ、福田、廃墟が珍しいのか?」
「幽霊は出ないぞ」
「違うであります。あの観覧車、とても大きいでありますね!」
彼女はそう言い、丘の上にある100mはありそうな巨大な観覧車を見ていた。
「見て見てノンナ、観覧車よ、観覧車!」
パッと目を光らせて振り返るが、そこにはいつも隣にいたノンナの姿はなかった。
一瞬顔を暗くしたが、首を振って心を立て直す。
「ふふん、このプラウダの隊長であるカチューシャが一人でも強いところを見せてあげないとね」
カチューシャの高笑いを聞いて、T-34/85車内で乗員達が顔を見合わせる。
「なぁ、隊長我々がいるのを忘れてねえだが?」
「しっ、訊かれたらシベリア送りになるだよ」
ちらっと車長席のカチューシャを見上げて、声を顰めるカチューシャ車の乗員であった。
その様子を丘の上から偵察していたルミが報告を入れた。
「全車、遊園地跡に移動」
その一報を聞いてアズミが愛里寿を褒める。
「展開としては隊長の想定通りです。逃げ場のない場所での籠城を取った。これで決まりね」
「いや、逃げ場がないのは大洗も織り込み済みなんだろうから、油断するなよ」
「分かってるわよ」
ルミが被せてくるように行ってきたので、彼女も頷いて答える。
「高校生の思考って感じで可愛い〜」
アズミは頬に手を当ててニコニコした。
『私たちも行きましょう』
ルミはそんな彼女をほっぽって愛里寿に指示を仰いだ。その時、愛里寿はあの限定ボコぬいぐるみを見つめていた。
「隊長?」
「…いや、なんでもない」
彼女はそう言い、みほから受け取ったボコのぬいぐるみをポケットに押し込む。
「自分と、試合に関わるすべての人に恥じない戦いをしよう」
『『『はい!』』』
愛里寿の言葉に全員は頷いで進撃を開始した。
オリ主とみほの戦いを先に見たいか否か。
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見たい!
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まだ先で良い