遊園地跡に移動する中、チャーチルの車内でダージリンは呟く。
「面白い戦いになりそうね」
「お言葉ですが、データの上ではかなり厳しい戦いになりそうです」
アッサムはそこで残存車両の推定編成と、火力比を見て暗い顔を浮かべる。
「覚悟の上じゃないですか」
オレンジペコが微笑んで、ダージリンも同様に笑みを見せてからマイクを手に取った。
「運命は浮気者。不利な方が負けるとは限らないわ。ね、隊長?」
『はい』
みほは目に力を込める。
「私たちは、私たちにできる戦いをしましょう」
そして決意新たに顔を上げた。
「私たちにできる戦い…」
「なんだろう?」
M3リーの中で山郷と澤が考え、悩んだ。
「突撃?いや、違う…」
西も一瞬目を閉じて自問自答する。そして目を開けて空を見上げる。
その隣で福田は無線機である人に個人回線を繋いだ。
「黒田隊…いえ、黒田殿」
『どうした?』
そこで音楽を聴いていた真澄は答えると、福田はそこで聞いた。
「いえ、少し聞いて欲しいことがございまして…」
『何かな?』
イヤホンを外して真澄は彼女の話を聞く。
「敵の車両は極めて重装甲であります。これを突破する方法を、実は黒田殿は思い付かれておりませんか?」
『…ふむ』
福田に聞かれた真澄は少しニヤつき、顎に手を当ててから彼女に聞く。
『福田は『熱殺蜂球』と言うのを知っているか?』
「は…?」
そこで意外な言葉を聞き、福田は首を傾げた。
その後、遊園地跡に移動した大洗連合は中央広場の富士山を模った展望台の上でⅣ号戦車が止まっていた。
そのⅣ号の上でみほと秋山が立ち、みほは双眼鏡を、秋山は自前の砲隊鏡を使って周囲を見張っていた。
「アンツィオさんの皆さんが調べてくれた情報によれば、遊園地の城壁を戦車砲で撃ち抜くのは困難だそうです。
なので私たちは通行可能な三つに一口で防御しつつ、相手を圏内に誘い込んでからの遭遇戦を仕掛けます」
その頃、丘上で愛里寿も無線機を使って部隊全員に通達を行う。
「向こうの狙いは我々をおびき寄せてから園内施設を利用しての分断だ。
なのでこちらは誘いに乗る形で逆に相手を追い立てる。火力で押し込み中央を押さえたのち、各所に散った大洗車輌を各個撃破していく」
みほ達はそこで先ほどの高地から見える微かな土煙と、遊園地から数キロ先の谷から見える猛烈な土煙を見る。
「奥のは戦車でしょうか?それとも風の影響でしょうか?」
秋山の報告にみほも双眼鏡を向ける。
「ちょっと遠すぎて、でも島田流だったら他にまだ罠を仕込んでいるかも。みんな注意するように伝えて」
「了解です」
秋山が武部に連絡をすると、他の部隊から報告が挙がってきた。
「南正面入り口、配置完了」
大洗連合が入ってきた南正面入り口、そこにはティーガーⅠ、ティーガーⅡ、T-34/85、短十二糎自走砲が防御を固める。
「西裏門、こちらも配置済みであります」
その場所は付近が狭いことから西が率いる知波単、旧砲塔チハ二輌と新砲塔チハ一輌、九五式が待機していた。
本当は待ち伏せに適していて火力もあるヘッツァーやⅢ突を配備したかったが、西から統率は難しいと言われて断られていた。ならばとかつて知波単に在籍していた真澄を提案したが、それは真澄から断られ、西も策があるからと最終的にみほは折れていた。
「東通用門、こちらも固めたわ」
頑丈な塀で囲まれた通用門、ここは防御戦闘に向いたチャーチルを主軸にマチルダⅡ、クルセイダーが援護についていた。
「中央広場、あと三分で整備終わるよ〜」
中央広場では柔軟に対応できるように予備兵力を待機させ、その間に自動車部を中心としたメンバーが整備を行なっていた。先ほど集中砲火を受けていたM4A1は、一旦ここで本格的な修理と点検を行なっていた。
「こんな感じ?」
武部は通信を聞きながらホワイトボードに遊園地の簡略図にマグネットを置いていく。
「大丈夫だと思います。でも、どこから攻めて来るのでしょうか?」
「多分正門じゃないかなあ……それか西裏門?」
やや自信なさげに武部は答える。
五十鈴は武部がある程度戦況を理解していたことを素直に感心していた。
「何?」
「いえ、随分勉強したんですね」
「みぽりんと学校のためだし」
「その努力を普段の勉強でもなぜしない」
冷泉がぽそっと呟くが、武部は答えずにむくれるだけだった。
急斜面をゆっくり登っていくCV33。ハッチからアンチョビが髪をたなびかせ、正面を見つめていく。
その車内でペパロニの声が響いてくる。
「ドゥーチェ、マジっすか?」
「マジだ」
「敵に見つかりませんかね」
心配そうなカルパッチョの声もする。
「タンケッテは小さいから見つかりにくい」
「見つかったら逃げ場ありませんけどね」
その瞬間、CV33は坂の頂上に到着する。レールが走り、左右には安全柵の手すりが組まれたジェットコースターのコース上。園内でも有数の高所にあり、遊園地はおろか先ほどいた高地までしっかり見渡せる場所である。
アンチョビはそこで四つん這いになって双眼鏡を取り出すと、南に三本の巨大な煙を見ると、無線機のマイクを受け取る。
「
そして全車に通信を行う。
『敵は南正門にまとまって進撃中。どうやら合流している模様』
その土煙はみほ達も視認していたが、巧妙に地形を盾にして姿を隠しており、戦車の姿は見えなかった。
「縦深突破ですかね」
「第一陣は南正門に移動してください」
秋山が推測を立てると、隣でみほは指示をする。
「西裏門、東通用門のみなさんも警戒を怠らないようにしてください」
その指示に合わせてて武部はマグネットを動かす。
「サンダースの皆さんは機動防御のための総予備として、ここに残ってください」
「オーケー」
ケイは承諾する。
その頃、南正門で待機していたまほ率いる四輌。
「さて、二輌目のカールも警戒しておかないとね」
『なぜだ?』
まほは真澄の呟きに首を傾げると、彼女はそう言った訳を話す。
「私だったら、ここであえて二輌のカールを用意して、この破壊できない遊園地の城壁を破壊して突破するから」
『ええ…』
カチューシャが聞いていて引いたが『彼女ならやりかねん…』と同時に思ってしまった。少なくともこういう容赦ない戦法を取らせるととことん非道と言われる一手を打ちにいくだろう彼女の想定が容易に窺えた。
「…」
そんな冗談混じりの会話をしていてもエリカは表情を暗くして俯いていた。
「やれやれ…」
カチューシャはそんな彼女を見て少し苦笑気味に彼女の後ろの車両を寄せると、彼女のことを見つめた。
「何よちびっ子、ジロジロと」
「あなたの名前、ロシア風だったらなんて呼ぶか知ってる?」
流石にここまであからさまに視線を受けると、エリカも気がついて少し苛立って振り返る。するとカチューシャから意外な問い掛けをされたので、彼女は少し強めに返す。
「何それ?知るわけないじゃない」
「おー怖い。ピリピリしてるわね」
エリカの反応に茶化すようにカチューシャはいうと、エリカは反応を強くする。
「うるさいわね。そっちだってさっきまで荒んでたくせに」
「う…」
嫌なところを刺されて一瞬言葉に詰まるが、彼女はそれでも返す。
「でもカチューシャはもう切り替えたんだから。あなたも私を見習っていいのよ?」
「ふん」
ツンツンしているエリカを見てカチューシャは自分の中で感じた内容を合わせていく。
「あなたを見ていると、まあちょっとだけ昔の私を思い出すわ」
「は?一緒にしないでくれる?」
エリカはカチューシャにいつもの調子で反応をすると、彼女は余裕すらある笑みを見せる。
「どうかしら?なんならあなたの気持ち、言い当ててあげましょうか」
そう言い、彼女はエリカを見ながら指摘した。
「自分のこのモヤモヤとした気持ちはなんなのだろう。この思いをずっとこの先もずっと抱えていかなければならないのか」
その時、エリカは大きく目を見開いた。まるで図星であることを表しているようだった。
「どうすれは解消できるのか、カチューシャに教えてほしい?」
その反応を見てニヤつくカチューシャにエリカは腹を立てる。
「モヤモヤなんてしないわよ!何勝手なこと!」
「あっそう、ならいいけど」
彼女は分かっていたように早々に諦めてから、軽く注意を入れる。
「でも、もしそうでもこの試合には持ち込まないことね」
そこで話を聞いていた真澄が割り込んで話してくる。
「そうそう、君がどうだろうとこっちの知ったこっちゃないね。あなたがまほ姐さんのためだけにこっちに来たんじゃないってんなら、しっかり働けよ〜」
「大洗を勝たす。そのためにカチューシャはきたんだから」
彼女がそう言った時、駆けつけたM3リーやヘッツァーなどの増援部隊が到着する。
「んまっ、カチューシャに名前を呼ばせるくらいの働きをすることね」
「ふん!偉そうに」
エリカはやや激昂してカチューシャと真澄を見ると、一斉に全員が照準を合わせた。
ジェットコースターのレール上でアンチョビが双眼鏡で南正面の先を見つめている。
「あと三分くらいかな」
「にしても、あいつら随分とかっ飛ばしてますね」
ペパロニが胡散臭そうに土煙を見つめる。
「そういえばさっき雨が降ったから、普通に走っていたら土煙なんて上がらないですよね」
「あえて大袈裟に土煙を立てるように走って、威圧感を出そうとしているのかもしれないな」
「ハッタリかましてるんスね。うちのマカロニ作戦みたいなもんだ」
「違うと思います」
彼女達が観測を行う間も大洗連合の第一陣が正門裏に集まり、障害物に影に身を隠したと一報が入る。
その瞬間、試合前になぜP40で来なかったんだと真澄に聞かれた際に、直前にアンツィオを訪れたダージリンが無茶な操縦をやってぶっ壊したからと答えて、直後に真澄がダージリンを白眼視していたことがなぜが思い出されてしまった。
「来た来た」
そして接近した土煙の先で先頭の車両が双眼鏡で視認可能な距離まで入ってきた。
「敵、双眼鏡視認距離に到達」
カルパッチョが報告を行い、それをみほも確認する。
大学選抜は一旦建物の影に隠れるが、次に現れるときは双方が直接視認可能。つまり砲撃も可能な距離になると判断し、みほは双眼鏡を下ろして全車両に連絡を入れる。
「戦闘準備」
その通達を聞いて澤が緊張している他の乗員に優しく指示を出す。
「来るよ、みんな落ち着いてね」
そう言うとハッチを閉めて他の車両も同様にハッチを閉めていくが、まほだけはキューポラから身を乗り出したまま接近してくるエンジン音を聞く。
そしてエンジン音が小さくなった瞬間、土煙の中から砲弾が立て続けに二発飛来し、正門に飛び込んで来た。
「撃て」
発砲を確認し、まほは全車に砲撃指示を出した。
オリ主とみほの戦いを先に見たいか否か。
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見たい!
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まだ先で良い