知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第一三八射

まほの指示に合わせて事前に砲撃のタイミングを合わせていた部隊は的確に命中できるように砲撃を行ったが、向こうも通れる箇所が一箇所に絞られるために、発砲と同時に車体を隠して致命傷を避けていた。

 

「避けたか」

 

初動で数を減らしたかったのだが、予想以上の機敏な動にまほは僅かに違和感を覚えた。

その後ろではヘッツァーで気分を良くした河嶋が叫んでいた。

 

「いいぞー、向こうはこっちの弾幕に頭を引っ込めたままだ。どんどん撃て!」

「桃ちゃんうるさい」

 

小山が咎めるが、河嶋は興奮したままだった。

その砲撃はアンチョビにも見えていたが、濛々と立ち込める煙に苛立ってしまう。

 

「ん〜〜くそ!全然見えないぞ」

 

手持ち無沙汰になったペパロニが貧乏ゆすりをした。

 

「いーなー、うちもド派手に戦いたいな〜」

「でも変ですね。雨が上がって間もないのに、あんなに土煙が上がるなんて」

 

そこでカルパッチョが雨と土煙の関係を口にして、アンチョビは歌うように呟く。

 

「雨上がり、土煙、今は昼下がり」

「何かの歌詞っすか?」

 

ペパロニが聞くが、アンチョビは首を傾げて無言で考えていた。

 

 

 

その時、正門で砲撃を見ていた伊藤が呟く。

 

「ああ〜、私も撃ち返したい」

 

そう呟く彼女に隣で大隈が言う。

 

「アンタのは一泡吹かせ兵器なんだからそんなに出番ある訳ないでしょ」

「そりゃそうだけどね…」

 

伊藤はそこで改造が施されて激狭空間となった無線手席を見つめる。照準器から見える砲撃を見て違和感を覚えた。

 

「一、二…」

 

そして自前の懐中時計と砲撃の回数を確認して首を傾げた。

 

「砲撃が少なすぎないですか?」

 

伊藤はそう言い顔を上げると、真澄に話しかける。

 

「あ、やっぱり?」

 

真澄もその違和感に納得がいった様子で顔を下げると、姿を隠しながらとはいえ推定でも二〇輌以上いるはずの車両群を前に砲撃回数が少ないことに違和感を覚えていた。

 

「みほちゃん」

 

真澄はそこでマイクに手を当てて疑念を伝えようとした。

その時、アンチョビも風で流れる煙の動きを見て移動している車両のものではないと気が付く。

 

「これは土煙じゃないぞ、くそっ騙された!」

 

アンチョビはそこで慌ててマイクを取り出す。

 

「隊長!陽動作戦だ。あの煙は煙幕だ!」

「兵法三十六計『声東撃西』ですね」

「へーほー?」

 

カルパッチョの知識にペパロニは首を傾げていた。

 

「南正門でないとすると、相手の狙いは西か東になりますね」

「でも東通用門は大部隊が通るには狭すぎるし…」

 

みほが次々と連絡を受けて正門は陽動で他二つの門から、特に手薄な西裏門に敵は回り込んだと判断した。

 

「西裏門の西さん、敵がそちらに回り込もうとしています。サンダースの皆さんが応援に向かいますので、戦闘準備お願いします」

『かしこまりました』

 

みほからの命令に細見が武者震いをする。

 

「よーし、敵が見えたら全力で突っ込んでやる!」

「先ほどの面目を果たす時が来た!」

 

それに玉田も気合いを入れる。

 

「知波単名物総突撃!」

「全軍で突撃し、玉砕する、これこそ知波単魂!」

「恐れながら申し上げます!」

 

細見と玉田が盛り上がる中で福田が意を決して口を挟んだ。

 

「悪戯に突撃して全滅しては、それこそ知波単の面目に関わるかと」

「何だと!!」

「福田、伝統を蔑ろにする気か!?」

 

激昂する二人を前に西は感心して福田を見た。

 

「申し訳ございません!」

「まあ待て」

 

先輩方に叱責をされ、慌てて頭を下げたところを西が諭すように口を挟んだ。

 

「先ほど黒田隊長から言われたばかりだろう?」

「っ!」

「それは…」

 

その一言で二人は沈黙すると、西は少し期待したようなニヤ付きをして彼女に問いかけた。

 

「福田、何か策があるな?」

 

その時、パァッと福田は目を輝かせた。

 

「先ほど西住隊長は、自分たちにできる戦いをすると仰いました」

「それが突撃だ!」

 

福田に玉田が勢いよく答える。

 

「はい、突撃ですが、我々が考えるべきは突撃のやり方ではないでしょうか」

「やり…」

「方?」

 

玉田と細見が首を傾げると、西は頷きながら聞いた。

 

 

 

次いでみほはダージリンに連絡を行う。

 

「東通用門のダージリンさん、そちらも注意してください」

 

みほの通信を受けてダージリンは戦闘準備を行う。

 

「各自戦闘配置」

「こちらの東通用門は精々チャーフィーが通り抜けられる幅しかありません。大丈夫かと」

 

アッサムが指示を聞いてダージリンを仰ぎ見る。その報告にダージリンがふっと小さく微笑む。

 

「一オンスの慎重は一ポンドの知恵に値する」

 

格言にオレンジペコは首を傾げて口を開こうとすると、噛み砕いて彼女は話す。

 

「念には念を入れて、くれぐれも紅茶を溢すような野蛮な戦い方をしてはダメよ、ローズヒップ」

「こぼしませんことよ!」

 

それが自分に言われていたのだと気がついてローズヒップは姿勢を正す。が、姿勢を正した時に思い切り紅茶をこぼしていた。

その時、照準器を覗き込んでいたアッサムが言う。

 

「…来る」

 

直後、通用門のシャッターが砲撃で吹き飛んだ。

 

「チャーフィーいざ尋常に勝負!!」

 

その直後に飛び出してくクルセイダー。加速と同時に砲撃を行うと、チャーフィーでも貫通可能な砲弾が甲高い音ともに弾かれた。

その後、煙の中から現れたどう見ても75mm砲ではない分厚く長い砲身と巨大なマズルブレーキ。何よりクルセイダーの絶対に命中するはずの砲撃を弾いた装甲。そしてあの大きさのマズルブレーキを持った主砲では、装甲が50mm程度のクルセイダーでは容易に撃破される。

そんなことがダージリンの脳裏を駆け巡ると、同時に号令が飛び出た。

 

「戻りなさい、ローズヒップ!」

「ほ?」

 

ローズヒップも彼女からの指示と同時に車体を反射的に滑らせ、反転した直後、クルセイダーがいた場所に砲撃が飛び、その衝撃でクルセイダーの車体が軽く浮き上がってから施設に着弾した。

その間に煙が収まると、その中から通り抜けてきた車両が前進して現れる。その車両は瓦礫を粉々に粉砕しながら軋む音を上げてダージリンは驚愕する。

 

「何てこった…T28重戦車がいるぞ!」

 

その巨大な姿を双眼鏡で捉えたアンチョビが叫んだ。その声を無線で聞いてⅣ号でみほが小さく頷くと、アンチョビはペパロニの首根っこを掴んでCV33に放り込むと、カルパッチョが素早くCV33の後ろにつき、アンチョビと共に車両を押してコースターの斜面に向かう。

 

「T28ってどれ〜?」

 

武部は無線を聞いて自作ノートをめくる。

 

「これかな?」

 

そこには短い主砲と副砲を砲塔に備えた多砲塔戦車があった。それはソ連が開発したT-28中(・)戦車であった。

 

「重戦車だから、こちらでは?」

 

五十鈴がそこで重戦車と聞いてその隣のT28を指差した。

 

「カールの次はT28か。やれやれ、ビックリ戦車博覧会だな」

 

車両を聞いて冷泉は呆れたため息を吐いていた。

 

「ヘッツァーの大きなお兄ちゃんみたい…ちょっと、正面装甲300mmって何!?」

 

武部は自分が書いたはずの諸元に驚愕し、その性能に大声を上げた。

 

「あらあら、黒森峰のマウスよりも装甲が厚いんですね」

「どうすのよ、こんなの」

 

五十鈴がおっとりとした口調で驚くと、武部は呆れた顔を浮かべた。

 

「105mmの主砲と戦艦の砲撃にもたられる300mmの正面装甲。四本の履帯を持つアメリカの超重戦車です!」

 

秋山はやや顔を顰めながら解説を行った。

 

「まずいですね、あんな化け物を持ち出してくるなんて。ティーガーⅡの主砲でも抜けません」

 

それを聞いてみほは軽く眉を顰めた。

 

 

 

東通用門でT28と撃ち合う聖グロリアーナ女学院のチームは、先頭を走り見事にその盾役としての力を存分に発揮しているT28の後続の車両をみる。

 

「私たちもトータスを持ってくれおばよかったわ」

「持ってませんけど」

 

簡単に砲撃を弾くT28を見て、ダージリンの軽口にオレンジペコは突っ込んだ。

 

 

 

斜面寸前でCV33に飛び乗るカルパッチョとアンチョビは、カルパッチョが乗り込んだことを確認してアンチョビが指示を出す。

 

「ういっす」

 

惰性でそのまま坂に差し掛かったCV33、アンチョビも慌てて乗り込もうとした瞬間、一気に車両は坂を下り出した。

 

「うわっーーー」

 

思わず上がったアンチョビの悲鳴をカルパッチョが口を塞いだことでCV33は坂を降っていく。

何とか車内にアンチョビは潜り込めると、ペパロニに耳元でそっと指示を出した。

 

「いいか、エンジンはできるだけ絞って静かに、静かに行けよ」

 

坂を下った惰性を利用して。大学選抜に気づかれないようにCV33はレールの上を東通用門の上まで移動する。

 

「こちらドゥーチェ。こりゃあ間違いなくこっちが主力だぞ!」

 

彼女達の眼下にはT28の後ろをピッタリくっつくパーシングの群れを見た。

 

「七、八、九…まだいます。パーシングが少なくとも十輌以上」

 

カルパッチョが確認をしてみほに報告を行った。

 

 

 

彼女達の報告を受けてみほは急いで指示を行う。

 

「サンダースの皆さん、東通用門に向かってください!」

『もう向かってるよ』

 

ケイは安心させるように応えると、みほは安心した様子で反応した。

 

「Go a head!」

 

それを聞いて全速で東通用門に移動するサンダースの車輌。

 

 

 

続いてみほは東通用門のまほに連絡する。

 

「お姉ちゃん、T28が」

『分かっている。落ち着け』

「うん。大洗のチームも増援へ」

『了解した。ここは任せておけ』

 

みほは慌てかけていたが、まほは自信満々で安心させる。無線を切るとまほが大洗の増援車両に指示を出す。

 

「聞いた通りだ。直ちに東に向かってくれ」

「了解!」

 

ナカジマが良い返事をすると真っ先に移動を始める。

 

「あとは頼むね〜」

 

角谷も手を振って去って行く。

 

「私はどうする?」

「真澄は残ってくれ。こっちを手早く片付けたい」

「了解」

 

真澄はまほと確認をとって正門に残ると、残りも砲撃を行って牽制を続ける。

 

「まあ、どのみち私たちが向かっても無意味だろうけどね」

「そもそもあのバケモン抜ける車両、こっち持ってないんだけど」

 

やや苦笑気味に真澄達は出てきたT28の対応に悩ませた。

 

 

 

そして東通用門に移動する中で角谷が少し目を輝かせた。

 

「ヘッツァーのお兄ちゃんか〜、うちもT28改造キット欲しいなあ」

「売ってません」

 

小山はそれを聞いて『勘弁してくれ』と言わんばかりに否定した。

オリ主とみほの戦いを先に見たいか否か。

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