知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第十三射

聖グロチームは崖の上で射撃を行う大洗戦車隊をみて、彼らの作戦を理解した。やはり初心者らしい安直な作戦のようだ。

 

「こんな安直な囮作戦、わたくしたちには通用しませんわ」

 

ダージリンはほくそ笑む。これは何もしなくても真澄の望む結果になるかも知れない。

 

「アッサム、短十二糎は?」

「見当たりません」

「そう……」

 

ダージリンは周囲の状況を見た後に指示を出す。

 

「全車両……前進」

 

そしてマチルダとチャーチルが分かれて大洗チームを包囲するように進み、そして……

 

「……攻撃」

 

彼女の指示でマチルダの2ポンド砲やチャーチルの七五ミリ砲が火を吹く。そして発射された砲弾は彼女たちの近くに着弾する。

 

「すごいアタック…!?」

「ありえなーい!」

 

初めての他校から集中攻撃に動揺を隠しきれていない。

 

「落ち着いてください……攻撃をやめないで!」

 

みほはそんな大混乱のチームメイトを落ち着かせようとするが……。

 

「無理です!」

「もういやー!」

「あ~、逃げちゃだめだよー!」

 

あまりの恐怖に一年生達はM3から飛び降りて逃げ出してしまった。

そしてその瞬間、マチルダの砲撃が命中し白旗が上がった。

 

「馬鹿者!敵前逃亡は重罪だぞ!!」

「まあまあ、仕方ないよ」

「外でちゃダメでしょうに……」

 

試合中に砲弾飛び交う試合場で生身のまま、それも戦闘中に逃げ出すのは危険だと言ってしまう。その一方で、

 

「あれ?あれれ?」

 

攻撃を受けていた38tは相手の砲弾が着弾した時。車体が浮き、そして操縦ができなくなってしまう。さっきの砲撃が原因で履帯が外れてしまったのだ。

 

「あー、履帯外れちゃったねー。38tは外れやすいからな~」

 

38tの側で着弾した砲撃の衝撃で38tの履帯が外れてしまった。小山は必死に操縦桿を動かして体制を立て直そうとするが角谷は何処か他人事の様に言う。そして38tは履帯が外れた状態でバックして窪んだ穴にはまってしまう。

 

「行く?」

「いや、このままで良いよ」

「え?」

「ああ、そう言う?」

 

榎本の意見に伊藤が納得する。

 

「失敗させて経験を積ませると?」

「そんな所」

 

元々この試合は当たって砕けろの精神ですると真澄から事前に聞いている。すなわち、わざと負けさせて経験を積ませる必要があった。

 

「でもみほちゃんにあんこう踊りさせないために敵は全員撃破する」

「「「押忍!!」」」

 

すると無線で連絡が入る。

 

『武代さん、こっちは次の段階に入ります』

「了解した。よろしく頼む」

『はい!』

 

無線で確認を取ると、伊藤が報告した。

 

「武代、みほちゃんに紅茶さんが着いて行った。でも一両残って残党狩りをするようよ」

「そう……」

 

双眼鏡で坂を登るマチルダを見ると、榎本は指示を出す。

 

「照準、目の前のマチルダⅡ」

「了解っ!」

 

そう言い、短十二糎自走砲は坂を登るマチルダに照準を合わせた。

 

 

 

 

 

「私たちどうしたら?』

「隊長殿、指示を!」

「撃って撃って撃ちまくれー!!」

 

残された38tを狙うマチルダを見て生徒会トリオは混乱状態にあった。

 

「桃ちゃん外れているよ」

「桃ちゃん言うな!」

「やっぱ38tの主砲じゃ豆鉄砲か……」

 

まるで最後の詩を読むように三人はそれぞれ大慌てだった。そんな中、マチルダの乗員は嗤う。

 

「馬鹿め、軽戦車の主砲で抜けるものか!」

 

そう言い一発で確実に仕留めるために接近し、照準を納めた直後。

 

ドゴーン!!

 

「きゃあっ!?」

 

凄まじい衝撃がマチルダⅡを襲い、白旗が上がった。

 

「何事……っ?!」

 

何があったかと見ると、車体後部の上面が盛大に破壊されおり。巨大な榴弾が当たった後のようだった。

 

「まさか……」

 

その時、反対側の崖に隠れていた一両の戦車を見つけた。その特徴的な短い砲身は元は対潜迫撃砲の用途で使われていた主砲であった。

 

「短十二糎自走砲……」

 

完全に森の中に隠れていたその戦車は砲塔横に四本の竹刀を備えたマーキングが施されていた。

 

「五人の家臣……」

 

聖グロリアーナでは半分伝説と化しているその話を彷彿としてしまった。

するとその自走砲はそのまま走り去ってどこかに消えてしまった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

そしてキルゾーンを離れたみほは車両の点呼をとった後に無線で他の残存車両に言おうとした時。

 

『あー、みほちゃん』

「はい!」

『こっちマチルダⅡを一両撃破。今から38tの救援を行う』

「分かりました」

 

撃破報告を聞き、みほは安堵すると改めて指示を出す。

 

「B、Cチーム。私達の後について来て下さい!移動します!!」

『分かりました!」

『心得た!』

『何っ?!』

 

しれっと仲間外れにされている河嶋。そう、昨晩みほや榎本など生徒会チームを除いた車長達に伝えた作戦をここで決行したのだ。

 

「『もっとこそこそ作戦』を開始します!」

 

 

 

 

 

「いやはや、助かったよ」

 

その頃、角谷達の38tの前で角谷は相変わらず河嶋達に履帯修理を行わせながら反対に立つ榎本達に感謝する。

 

「おい榎本!なんであそこで撃たなかった!」

 

後ろで履帯を直しながら錯乱する河嶋を角谷が制する。

 

「河嶋、少し静かにして」

 

そう言い角谷は榎本を見ると言った。

 

「まっ、私たちは履帯が治るまで動けないから。後よろしく頼んだよ」

「ええ、分かりました」

 

そう言うと彼女は短十二糎に戻るとそのまま走り出していった。

 

みほ発案の『もっとこそこそ作戦』の内容は、ざっくり言うと市街地を使ったゲリラ戦である。

大洗町は学園艦に通う者であれば庭同然であり、戦車を隠すのにうってつけな場所も熟知していた。

その点聖グロリアーナは大洗町をよく知らない。地の利を生かした戦いに対応できるかどうか……。

 

「これより市街地に入ります。地形を最大限に活かして下さい」

『Bei Gott』

『大洗は庭です!』

『任せて下さい』

 

そう言うと大洗戦車隊は街に散って行った。

 

 

 

 

 

「……消えた?」

 

一気にその姿が見えなくなった事にダージリンは驚いていると、

 

『こちら六号車!』

 

38tの残党狩りに行かせた車両から無線が入る。

 

「38tを仕留めたの?」

『いえ、その前に短十二糎にやられました。申し訳ありません!』

「……」

 

やはりどこかに隠れていたかとダージリンは驚きつつも納得する自分がいた。

 

「(丸一年戦車道に触れていないとはいえ、腕は落ちていないようね……向こうの動きが読めない以上。まとめての運用は危険ね)」

 

なにせ十二糎の大口径榴弾だ。当たったら無事にはすまないのは明確。だからこそ……

 

「各車分散。短十二糎の砲撃には気をつけなさい」

『『『『了解!』』』』

 

そして聖グロ戦車隊も同様に街に分散していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「くっ、何処に行ったのかしら……」

 

一両のマチルダがそう言い街中を進む。そして薬局の前を過ぎろうとしていた。

だが、マチルダの乗員達は気付かなかった。その薬局の旗に混じって新撰組の誠の旗や真田六文銭の旗がある事に……そうと知らずに通り過ぎようとしていた時。

 

ドゴーンッ!!

 

その側の奥に隠れていたⅢ突に気づかれる事なく弱点の側面を大ぴらに曝け出し、至近距離の砲撃で撃破されてしまった。

 

 

 

 

 

また一方では、マチルダが駐車場の前に差し掛かった時、車庫のランプが点滅していた。おそらくはこの中に戦車がいるのだろうとマチルダに乗るルクリリは予測した。

 

「ふっ……馬鹿め」

 

目の前から撃破してやると彼女はほくそ笑む。

しかしこれはトリックだった。シャッターが開くと同時に後ろの昇降式駐車場が動いており、その中に八九式は隠れていた。

そう、身動きができない駐車場にあえて誘い出し。そこで敵を釘付けにした状態で弱点の後部から撃ち抜く算段だった。その光景はまさに『Hiya, Georgie!』そのものだった。半分トラウマもんだ。

 

「……はっ!!後だ!!」

 

それに気づいた時はもう遅かった。

 

「そーれぇ!」

「「「そーれっ!!」」」

 

そして八九式の五七ミリの主砲が火を吹いた。

 

『こちらCチーム。一両撃破!』

『Bチーム。一両撃破!』

 

そう答えると、それを聞いた榎本達は感心していた。

 

「やるわね」

「ええ、中学生大会決勝を思い出すわ」

「ああ、みほちゃんを孤立させるために何度もやったあれね」

「懐かしいねえ」

 

ゲリラ戦術や待ち伏せ攻撃は彼女達の十八番戦術。まあ余りの型破りさに真澄が除名される理由となってしまったわけだが……。

 

「重葉、場所は?」

「まもなく到着します」

 

そう確認を取ると、短十二糎は準備を進めていた。

そして攻撃を受けたマチルダⅡはそれぞれ報告をダージリンにあげる。

 

『攻撃を受け走行不能!』

『こちら被弾につき現在確認中!』

「なっ!?」

 

その報告を聞いて思わずダージリンは持っていたカップを落としてしまうほどの衝撃を受けた。

 

「なかなかやりますわね……けどここまでよ!」

 

ダージリンはそこで今までとは打って変わって本気になり出した。

 

 

 

 

 

その頃、Ⅲ突では。

 

「「はっはっはっ!」」

 

車長のエルヴィンとカエサルが高笑いをしていると前方にマチルダが現れた。

 

「路地裏に逃げ込め!」

 

エルヴィンはすぐさま路地裏に逃げ込む様指示をする。

 

「入り組んだ道に入ってしまえばい良い。Ⅲ突は車高が低いからな」

 

Ⅲ突の特徴でもある車高の低さを利用して塀に隠れながら進むが、Ⅲ突に付けていた旗により敵に居場所がバレてしまい、Ⅲ突は側面を砲撃され白旗が上がる。

 

 

 

そして八九式では。

 

「Bクイック大成功!」

 

磯部達は、炎上するマチルダに歓喜するがそれも束の間だった。

煙が晴れるとそこに黒焦げになりながら砲塔をこちらに向けて健在するマチルダの姿。白旗は立っていない。

八九式の五七ミリ砲は元々歩兵支援のための榴弾なので貫徹力が低いのだ。おまけに撃ち抜いたのは後部の燃料タンクだった。

 

「うわぁー生きてた!どうしよう!!どうしよう!!」

「これでも食らえ!」

 

八九式はマチルダに向け砲撃するが弾かれてしまう。

 

「サーブ権取られた」

 

次の瞬間八九式はマチルダの放った砲弾により撃破された。

 

 

 

 

『Cチーム走行不能!』

『Bチーム敵撃破失敗及び走行不能!すみません!』

 

それぞれ撃破されたとみほに伝える。

 

「残ってるのは我々と榎本殿の車両だけです!」

「向こうは何両?」

「四両です」

 

そう言った瞬間、目の前に二両のマチルダが現れた。

 

「来た……!囲まれたらまずい!」

「どうする?」

 

冷泉が聞くと、みほは答える。

 

「とにかく敵を振り切って!」

「了解」

 

そう言うとⅣ号を追いかける壮大なタンクチェイスが始まった。

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