武部に戦況図を見せられたみほが、大学選抜の意図を読み取って全体に通信を行う。
『相手の狙いは私たちを撹乱して各個撃破することです。できるだけ分散しないように、逆に相手を孤立させるようにしてください』
建物の影に隠れて応戦する大洗連合。ダージリンが後退しながら防戦を続けていた。
「挑発に乗らなければ良いのね」
「任せといて。バラバラになんかさせないわよ」
ケイが周囲の車両を見まわし、決意を決めて宣言する。だが全然話を聞いていないローズヒップが動き出す。
「知波単でも撃破できたなら、私にもやれるはずですわ!」
「戻りなさい、ローズヒップ」
しかしダージリンが強く手綱を引っ張ったことでこれを御していた。
「なんとかマホ達と挟撃したいところだけど厳しそうね、T28が見当たらない」
ケイはそこで東通用門を突破し、こちらを攻撃してくる部隊の中にあの巨大な車両が見当たらないことに警戒を促す。
『裏周りを狙っている」
「あんな鈍足にそんなことさせるなんてね」
元々搭載しているエンジンは五〇〇馬力のパーシングと同じエンジンを装備している。
しかしパーシングでさえ馬力不足が指摘されている中で。パーシングの車重の約四二トンよりも圧倒的に重い約八六トンの重量では、流石に速度が遅すぎる鈍亀もいいところであり、最高速度は時速約十三キロと悲しいほどに遅い。少なくともこれで遠回りをしろと言われたら時間稼ぎをする必要があった。
「きっと優雅に締め上げたいんでしょう」
ダージリンは勝手な嫌味混じりの推測をしながら砲撃による遅滞戦術を行っていた。
愛里寿はその戦況図をじっと見つめていた。
『こちら南正面、偵察班、残存車両チャーフィー1、北目標へ移動中』
『西裏門、一号車喪失。二号車、四号車履帯修理完了。敵は予想外にも縦深防御によって遊撃戦を仕掛けています』
『なかなか強固な防御線ね』
次々と飛び込んでくる報告を聞いて、少し考えると、愛里寿がマイクを取り上げる。
「作戦を変更する。分散が嫌なら望み通りにしてやろう」
『了解』
全車両からそろった返事を聞き、彼女は笑みを浮かべた。
その頃、西裏門を突破した分隊は再進撃を行っていた。
「いいか、さっきと手順は一緒だ」
その途中で西は玉田達にいう。
「うう〜〜、さっきの手応えをまた味わえるのか!」
車内で玉田は先ほど撃破したパーシングのことを思い返しながら拳を強く握る。
「西隊長、まだでありますか?」
「まだまだ」
「そろそろ頃合いかと!」
「まだまだ」
サファリゾーンに身を隠した彼女達は、先ほどと同じく擬態を行って奇襲を仕掛ける算段であったが、玉田は先ほどの襲撃成功を前に前のめりになっていた。
「もはや我慢の限界であります!」
「こら、無闇に動くんじゃない。風船はデリケートなんだぞ!」
モゾモゾと動き出したアヒルに西が注意をした直後、そのアヒルが破裂すると、中から玉田の新砲塔チハが姿を現した。
「しまった!!撤退的前進!」
その後、蜘蛛の子を散らしたようにアヒル達は逃げ出す。
「待つのはやはり難しいであります!」
「おっかしいな、昔はできたんだけどなあ〜」
福田と西はそんなことを言いながら退散をする中、玉田のみ先ほどの影響で気をよくしていたのかパーシングに突貫して砲撃を行うが、簡単に防楯で弾かれてしまった。
「あれ」
全く効果が見受けられなかったことで、玉田も他の車両を追って慌てて逃げ出した。
その頃、東通用門では突破した大学選抜の本隊と大洗連合の増援とダージリン達の攻防戦が続いていた。
「だんだん追い込まれているね」
「うん…」
しかし火力で勝る大学選抜を前にジリジリと後退しているのを見て山郷と澤が唾を飲み込んでいた。
するとその直後、お化け屋敷が吹き飛び、中から血まみれのマネキンの首が飛んできてナオミから声にならない悲鳴が上がった。
「え!?なに!?」
「来たわね…T28…!!」
そこで瓦礫の奥から出てきたT28を見てアリサが冷や汗をかく。
『右側面から敵戦車出現!』
「なんだって!?」
その報告に河嶋は驚愕した。
「建物を突っ切ってきたの!?」
「出た!」
「逃げろー」
阪口が逃走しようとするが、T28が邪魔で前進できない。
「あ、ちょっと、そっちじゃない!」
慌ててUターンして、澤の注意が聞こえずに逃げ出していく。
建物に囲まれた場所で一方からパーシングに撃たれているが、M3リーのみが尻尾を巻いて逃げ出していく。
「ご丁寧に玄関からお越しくださるとは、優雅ですこと」
「でっかいからっていい気にならないでよ!」
ケイが嫌味を呟く隣で園が叫ぶ。
「こうしてやる!」
そして彼女が砲撃をすると、B1bisの砲弾は簡単に弾かれてしまった。
「くぅ…」
「あんな車両が出てくるなんて…」
「…日頃の行いかな、最近素行悪かったし」
あっけない火力差に後藤と金春はつぶやいた。
「側面を晒している今がチャンスだ!T28が瓦礫を越えたら手に負えないぞ!」
「おう!」
エルヴィンに左衛門左が頷くと、直後に砲撃が集中する。
「ぐっ、だめだ正面のパーシングに狙われる!」
そして本隊の妨害を受けている間にT28は前後に大洗連合を分断した。
「気を付けて、囲まれるわよ」
「南南東の路地に逃げ込んで!正面ドームを逆時計回りに!」
「はい!」
「はいにゃ」
ダージリンの注意喚起にケイが冷静に指示を出すと、磯部とねこにゃーが返事をした。
そしてパーシングのいる方向に向かって加速し、建物の横を右折していく大洗連合。
「南南東ってどっち!?」
「わかんな〜い!!」
しかしM3リーだけは先に逃げ出して、周りが建物だらけなことが災いして現在位置を見失ってしまった。
他の車両は路地に入り、ポルシェティーガーを先頭に建物から飛び出すと、直後に待ち構えていたパーシングの砲撃を受けた。しかし角度が悪く側面の装甲に阻まれ、転輪を破壊しただけで終わる。
「敵の包囲が始まってるわ」
「こちらの選択肢が狭められてる。よくない状況ね」
その砲撃を見てM4と八九式の砲撃が行われ、次々と砲撃が来るのでパーシングは後退をしていく。
一方、正門側では残存車両のチャーフィーをまほ達が追撃していた。
しかし本来であればその快速性を活かしてあっという間に距離を離せるはずだが、まほ達との距離感を重視している印象があった。
「こちら正門チーム、チャーフィーの動きに仕組まれた何かを感じる。通用門組は注意せよ」
その違和感にまほは無線で警戒を促した。
西裏門から続く通路では三輌のパーシングの側面を西達がアヒル頭を被って追撃を行っていた。しかしパーシングは急いでいる様子で彼女達に牽制すらしてこなかった。
「うーん、気がついているのに無視されている気がしないでもないのだが、気のせいかな?」
その様子に西は首を傾げた。
なし崩しにケイが指揮することになった部隊は、ドーム外縁を回って中央広場へ合流を図っていた。
「前方、パーシング!」
「ドンピシャ!」
先頭でポルシェティーガーが急制動を行って照準器にパーシングを収めて砲撃を行うと、白旗を上げる。
そして後続のヘッツァーや八九式が進路を変えて進撃をする。
「貰った!」
ファイアフライが隙の出たパーシングの側面めがけて砲撃を行うと、再び白旗を上げた。
「こちら最後尾、追義攻撃は散発的…妙ね」
最後尾で追撃の様子を見ていたダージリンは一貫性のない砲撃を訝しんでいた。
「いえ、ダージリン。先頭は丁重なもてなしを受けているわ」
しかし指揮をとっていたケイは表情を暗くさせた。
アキはTV映像を見ながら戦果に興奮していた。
「すごーい、パーシングを立て続けに撃破したよ。みんな頑張ってるね」
そこで撃破されて引き上げられたBT-42の上でカンテラを弾いていたミカがたしなめる。
「頑張ればいいってもんじゃない」
「なんでそんなに捻くれたことばっかり言うのよ!」
アキは少々怒って食って掛かると、ミカはふっと微笑んだ。
「よーく見てごらん」
「?」
彼女の言葉に従って再度テレビを見ると、そこで遊園地全体の動きを写した図が映し出される。
「あっ」
「これって」
それに気がつき、操舵室にいたミッコも驚きの声を上げた。
愛里寿のタブレットにも現在の状況を予測した作戦図が表示される。
『こちらメグミ、大洗側はフタマルに移動中』
『こちらルミ、離散への警戒が仇になりましたね』
次々と入ってくる報告に戦況が随時更新されていく。
『こちらアズミ、さすが隊長、予想通りです』
彼女達は作戦図の通りに動いていることに驚いていた。
武部は報告を参考にホワイトボードを動かすと、その動きを五十鈴が見て眉を顰めた。
「…これ、まずくないですか?」
「みぽりん!」
武部は慌ててみほに連絡を行った。
そして変わらずレール上で偵察を行っていたアンチョビ達もそれに気がつく。
「やっべー」
「ダメだダメだ!そっちはダメだぞ!」
ペパロニとアンチョビは興奮して叫ぶと、隣でカルパッチョが状況をみほに報告する。
「こちらGPS。西住さん、東通用門組がYO地点にて包囲されようとしています」
『分かりました。すぐに向かいます』
通信を聞いてすぐにみほはⅣ号の中に戻って北に向かいように指示を出す。
「よく見ないで降りれるね」
「見えない方が安心だ」
そしてバックで躊躇なく展望台を降りたことに武部は驚いていた。
「南正面組、西裏門組、YO地点に向かってください。こちらも駆けつけます。包囲網の完成を阻止してください」
展望台を降りると、みほが残りチームに集合命令を出した。
左右に欧州風建築の並ぶ通路をチャーフィー無視して北上するように命令を受ける。
「分かった」
そして先頭をT-34/85、ティーガーⅠ、ティーガーⅡ、短十二糎と続き、チャーフィーが妨害をしようとすると短十二糎の砲撃が着弾して爆発。慌てて後退していった。
「ちょっと、弾数少ないんだから当てなさいよ」
「それができたら苦労しない!」
大久保は怒鳴って真澄に返していた。
みほの通信を聞き、隠れていた西達は焦った声がした。
「しまった、謀られた!奴らも合流する気だな!?道理でいつまで待ってもこないわけだ!」
そして四台のアヒル頭は慌ててひまわりの造花畑から飛び出した。
オリ主とみほの戦いを先に見たいか否か。
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見たい!
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まだ先で良い