「…花道を用意してくれた見たい」
ケイは前方を見ながら苦い表情で無線のマイクを取る。
「奈落のステージまでのね」
彼女の視線の先にはすでに包囲が始まっている遊園地内の野外劇場を見る。
「…では、このままお招きに預かるとしましょうか」
ダージリンもその様子を見て冷や汗まじりに流されるがままに野外劇場に吸い込まれていった。
知波単の動きとは反対に丘の途中の遊歩道をM3リーが走っていた。
「迷っちゃった…」
無線を聞いていたが、現在位置を把握できていない澤が困惑していた。
「ごめんなさい!」
「どうしよ〜」
宇津木は動揺し、阪口は謝罪を口にしていた。
「大丈夫。落ち着いて。私たちにできることをしよう」
そこでも澤は全員を落ち着かせるように話しかけていた。
「…まるでカンナエのローマ軍だ」
照準器越しにその景色を見てカエサルは冷や汗をかく。
外周にはずらりとパーシングとチャーフィーが並び、さらにT28も現れる。
「絶体絶命…」
「逆境に勝る教育無し…でも、これは」
オレンジペコは呆然となり、ダージリンも困り果てていた。
『通用門組の皆さん。こちらが包囲網の完成を阻止しますので、それまで耐えてください』
みほからの無線を聞くと、野外劇場中央部に集まったヘッツァーの車内で角谷が言う。
「ステージであんこう踊り疲労すればその間は攻撃を控えてくれるんじゃない?」
「無理です〜」
小山がそれに泣き目で反論していた。そんな中でケイは無線を手に取る。
『いいニュースと、もっといいニュースがあるんだけど。どっちから聞きたい?』
包囲かにある自分たちを勇気付けるように彼女は言う。
『いいニュースってのは、包囲殲滅っていうのがそもそもそんな簡単にはできないってこと。
この前の大洗のエキシビションで大洗のみんなも体験したでしょう?ここになあの局面を凌ぎ切った聖グロリアーナもいるし』
ケイが言うと、そこでの情景が見ていた面々は思い起こされた。
『それでもっといいニュースってのが、あの時勇足をしたチハタンズが、今度は包囲を阻止する側として外側にいるってこと』
彼女はそこで知波単が残っていることを支えに無線で話す。
「彼女達があの失敗を教訓にして…『おおおぉぉぉおおおお!!』」
その時、割り込むように無線に大声が響いた。
『うおおぉぉぉおお!!』
西の号令が無線に飛び込んできた。
『行け!包囲網に楔を打ち込め!』
それを聞いて一瞬オレンジペコが喜びの顔を浮かべる。
そして全速力で駆け込んできたアヒル頭が発砲を行うと、中から知波単の車両が現れた。
だが後ろに目があるようにスッとパーシングが左右に分かれると、勢い余って知波単の車両が滑り落ちる。
「ああーー、このまま行ったらダメなのですーー」
福田が視界が開けたことに慌てた。
「急停止、急停止」
操縦手に指示をするが、時すでに遅く。他の車両と合わせてステージに転がり落ちた。
「やっぱり」
オレンジペコは呟き、失望の色を濃くする。
「…」
その行動には流石にケイも愕然となってしまう。
「教訓にして?」
そこで追撃のようにナオミが質問すると、彼女は苦笑まじりに答える。
「こうやってそばに来てくれたから、もう寂しくないってことよ」
そこでさらに包囲かにある車両が増えたことに絶望の色が濃くなった。
「ま、まだだ…」
河嶋はそこで顔を青くさせて妄言のように呟く。
「まだ西住達や正門組が残っている!」
そこでは野外劇場に到着したみほ達が、建物の角を曲がった先でパーシングの待ち伏せを受けていた。
その間にT28はゆっくりと野外劇場の淵から身を乗り出し、前傾姿勢になって大洗連合に照準を合わせる。
「はぁ!?もう着いた!!?馬鹿!着いたなら先に報告しないか!」
無線でステージに転がり込んだ西達に真澄は驚愕し、怒鳴って叱責していた。
「どうしよう、ここは一挙に突破して」
「いや、向こうが砲撃を行う瞬間、同時攻撃を仕掛ける。エリカ、頼むぞ」
「はいっ!」
「カチューシャも行くわよ」
「頼む」
解囲行動のための下準備は着々と進められていた。
包囲網ではアズミが報告を行う。
「包囲完了」
メグミは態とらしく顔を顰める。
「一方的すぎて心苦しいわ」
「あとは私たちに任せてください」
ルミがアズミに続いて報告を行うと、愛里寿は頷いて承諾した。
丘の中腹で停まっているM3リーの上に全員が乗ってすり鉢状の野外劇場を見下ろしていた。
「何か知らないけど先輩達、囲まれてない?」
宇津木が言うと、大野が慌てる。
「やばーい」
「突撃して敵をやっつけよう!」
阪口が言うが、山郷が諌める。
「一輌だけじゃ無理」
「でも助けないと!どうすれば」
打開策が思いつかずに困り果てると澤の肩を誰かが小突いた。
「ん?」
振り向くと、そこでは丸山が何か言いたげな様子で周りを白い蝶が飛び回っていた。
「沙希ちゃん、蝶々は後にして!今は試合中だからね!」
先の大洗での嫌な記憶が蘇って澤は言うと、丸山は気にした様子もなく後ろを振り向いた。
「観覧車」
彼女が指さしたのは、蝶ではなくその先の観覧車だった。
「?」
一瞬全員が首を傾げたが、澤が真っ先に理解した。
「あ、そうか!観覧車といえば!」
「!!」
その言葉に他の面々も理解する。
「そっか!」
大野も理解したが、宇津木のみは訳が分かっていなかった。
「?」
それでも少し考えてからようやく思い出した。
「……ああ!」
「全員乗車!」
澤の指示で全員がM3リーに乗り込んだ。そしてエンジンを吹かして観覧車に向けて蛇行運転を行うと、必中距離まで近づいて停止。ゆっくりと主砲と副砲の照準を合わせる。
「よーし、ミフネ作戦、行きます!撃て!」
澤の号令で二門の砲が一斉に放たれる。
砲弾は狙った通りに観覧車の車軸を破壊。その直後に円形のフレームがずり落ちた。
「やった!」
「沙希ちゃん天才!」
ゴンドラのついた観覧車が地面に落ちると、澤達は歓声をあげた。
「あれぇ〜?」
だがM3リーは丘の中腹で棒立ちしていたので、そこに向かって接近してくる観覧車に困惑する。
「た、退却〜!」
慌てて阪口はM3リーを反転させて下に逃げ出す。
「ノシイカになるのはやだー」
全員がパニックになる中、澤が冷静になれない中指示を出した。
「ちょっと、同じ方向に逃げてどうすんの!?」
「そっか!」
指示をかろうじて理解できた阪口が車体を右にずらしてギリギリのところで観覧車を避けると、観覧車はそのまま轟音を立てて野外劇場に転がっていく。
「は?」
「え、なにあれ?」
その衝撃と轟音を聞いていた真澄と榎本は、困惑気味に顔を乗り出して丘上から転がってくる観覧車に困惑する。
「大洗もこれで詰みだな」
その時、ルミは勝ちを確信して大洗連合を見下ろしていた。
「なんだ?」
メグミとルミは金属を擦り合わせ多様な音をに気がつく。
「何ですの?」
アズミが振り返ると、そこには巨大な観覧車が迫ってきていた。
「はぁっ!?」
「退避行動!」
何でだ?と言う疑問よりも命の危険を感じた包囲中のパーシングが一斉に逃げ出す。
「えっ…?」
アリサが口から思わずもれ、おそらく見ていた全員が同じことを思ったであろう。
「ツァーリタンクか!?」
「パンジャンドラムか!?」
カエサルとエルヴィンがハッチを開けて迫り来る観覧車を見て思わず叫ぶ。
「Wow!」
ケイも歓声をあげると、包囲していたパーシングがいきなり逃げ出したので安堵したのも束の間、転がってきた観覧車に慌て始める。
「「「「うわぁぁあああっ!!」」」」
そして観覧車は轟音と共にステージに転がり込んできた。
「キター!」
「こっち来るぞー」
「逃げろー!」
「逃走的前進!」
「Get away」
各々に避難を叫ぶと、逃げ出していく。
「何だこれ!?」
「大学選抜の攻撃!?」
ナカジマ達が観覧車に驚愕すると、見ていたねこにゃーは素早く判断する。
「む、向こうも慌てているみたいだから、西住さん達がよこしたのかも」
「これを使って脱出しろってこと!?」
「どっちでもいいから潰されないようにしろ!」
小山の推測に河嶋が悲鳴混じりに観覧車に叫んだ。
「ローズヒップにお任せなのですわ!」
「待って!この観覧車、放っておけばこのままステージ外に出そうだから…」
園が言いかけようとした時、すでに機関銃を放っていたクルセイダー。
「てい!」
「あっ…」
そして砲撃が加えられたことで客席を登っていきかけた観覧車は大きく進路変更をした。
「あら、変ですわ〜?」
再びステージ側に転がってきたのを見てアリサの悲鳴が上がる。
「『変ですわ』じゃないっ!」
「戻ってきたーっ!!」
「余計な事すんなーーっ!」
ルクリリと河嶋も絶叫すると角谷の指示に従って逃げ出したところを観覧車が転がる。
「逃げろーー!」
その観覧車の飛び込み参加にメグミ達も驚愕していた。
「ちょっと何なのよ!あの観覧車!!」
「知るか!今のうちに攻撃するぞ!」
敵も味方も阿鼻叫喚地獄と化した野外劇場。
「撃ぇーーっ!」
転がる観覧車に西が指示を送ると、玉田のみ砲撃を行い、あとは機関銃で攻撃を行っていた。
そして攻撃を受けた観覧車はそのまま座席をぐるりと一周回って大学選抜の前を盾のように転がっていく。
「うわっ」
「くそっ…!これじゃ迂闊に手が出せないぞ!」
ルミは歯噛みして転がる観覧車を見ていた。
「追い出せません。舞台から降りたくないようです。見上げた役者魂」
「呑気に言わないでください!」
西に磯部が怒鳴って反論していた。
「…なんかミホーシャのチームって、毎回こんなのばっかりね」
その様子を見ていたカチューシャも呆れて転がる観覧車を前に呆然と立ち尽くして見ていた。
「うんまあ…」
「ははは…」
これには真澄もみほも苦笑い以外で答える方法が見当たらなかった。
「大丈夫かな…これ逆に状況悪化させてない?」
「どうしよ〜」
その様子を見下ろしていた宇津木と阪口はやや顔を青くさせていた。
「…」
その動きをナオミがジッと見つめて進路を変えるタイミングを狙って渾身の一撃を放つ。
「!!」
数個のゴンドラを吹き飛ばしながら今後は勢いよく転がっていく観覧車は、ステージ外周の観客席を勢いよく飛び越えていった。
「今だ!後に続けーー!!」
その隙を逃さず角谷は指示を出す。
そして観覧車が飛び出たことでできた穴に一斉に全車両が突入をしていく。
「逃がさないわよ!」
アズミは逃げ出す大洗連合に照準を合わせようと一段降りていた野外劇場から乗り出そうとすると、直後に爆発して誘導輪が吹き飛んだ。
「チッ、西住流…!!」
そこでは建物の陰から飛び出したみほ達が砲撃を行って妨害を行っていた。
「やーい、履帯丸出しでやんの」
「これは酷い」
その様子を見て真澄も半眼で離脱した大洗連合や、追撃がまるで間に合っていない大学選抜を見ていた。
オリ主とみほの戦いを先に見たいか否か。
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見たい!
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まだ先で良い