その様子を見ていた観客席では、大笑いと絶叫、絶句や歓声が湧き上がっていた。
「すごい…」
「梓ちゃん達、凄いね。あんな方法思いつくなんて」
一時は野外劇場で包囲され、絶望していた彼女達であったが、観覧車という乱入による大混乱は見ていた者を唖然とさせていた。
「あんな方法、普通思いつきません…」
「よく避けたよね」
尾崎達は全員が同じ感情を抱きながら野外劇場から脱出した大洗連合を見ていた。
観覧車の乱入によって包囲網をかき乱され、一斉に逃げ出されたのを見てルミは歯噛みした。
「…逃したか」
「あんなの想定外だわ」
「問題ない」
アズミも慰めるように言うと、メグミが無線で話す。
「当初の予定通り、個別に潰していけばいい。気を引き締めていくわよ」
『了解』
そこでまずは短十二糎の榴弾の直撃で誘導輪ごと履帯が吹き飛んだアズミ車の修理を始めた。
その頃、真澄は無線で澤達を絶賛していた。
「よくやったぞチビ達!帰ったら腹一杯、飯食わせてやる」
『『『『『やったー!!』』』』』
無線機の先でウサギさんチームの全員が歓声をあげていた。
『あんこう鍋食べたい!』
『私、たらし焼きが良いです』
『えー、そこは焼肉でしょ』
盛り上がっている車内を微笑ましく伊藤達は聞いていた。
「お騒がせしました。この後どうします、隊長」
ダージリンが落ち着きを払ってみほに尋ねた。
「相手がほぼ全部園内に侵入したので、プランFで戦います」
「GPS役なら任せとけ」
ジェットコースターのレール上でアンチョビが手を振った。
「相手以上にこちらが分散するので、見えない仲間の把握に心がけてください」
「はい!」
そこで混乱から立ち直った大学選抜の追撃が散発的に入るが、どれも命中打には程遠かった。
「あら、もう追撃?」
「思ったより立て直しが早いわね」
そこでキューポラに榎本が出ると、真澄の体格と合わさって窮屈になる。
「そのままハマって出られないとかやめてよ?」
「んなことあるかい!」
「ありそうだから言ってんの!」
その様子を車内で大隈が不安げに見て言っていると、異音が観覧車から聞こえた。
「お?」
「あら観覧車さん、力尽きそうね」
おりょうとダージリンが気がつき、ふらついて左に傾く観覧車。
「観覧車先輩、お疲れ様でした!」
「バイバイ、カンちゃん」
「達者でな」
「See you」
各々、三叉路の左側に消えていく観覧車に別れを告げていく。
さらにその先で彼女達は分岐すると、バラバラになって進んでいく。
後から別れて行動をしていたM3リーは大学選抜によって合流に失敗したので、建物の影に隠れてパーシングをやり過ごしていた。
「意外と気が付かないもんだね」
「戦車って視界悪いし」
「西住隊長達みたいに身を乗り出してないとダメなんだね」
澤と山郷が話すと、山郷が考え込む。
「結局さぁ、私たちにできることって何だろう?」
「重戦車キラー」
宇津木が反射的に答える。
「違うと思うな」
「もっと身の丈にあった戦い方をしようよ」
「例えば?」
「うーん」
大野の疑問に答えられずに悩む澤。そこで彼女はキューポラから外を見ると、そこには加速するチャーフィーの姿があった。
「あっ!」
その時、澤はハッと納得した表情を浮かべた。
その頃、みほと別れて園内を進んでいた真澄は彼女に連絡していた。
「こちらクマさん。ちょっと残弾数が少なくなってきたわ」
『分かりました』
元々小柄の車体に大口径砲を装備した代償に短十二糎は装弾数が少なく、継戦能力の低さがネックとなっていた。そして今までの戦闘による発砲で残弾数はあまり心許なかった。
『でしたら、クマさんチームに一つお願いしても良いですか?』
「何だい?」
そこでみほは罫線能力の低下が見られる真澄達に一つ依頼を出した。
『クマさんチームは隠れながらで良いので、アンツィオの皆さんと情報共有をしながら情報の整理をお願いしてもらっても良いですか?』
「え?大丈夫なの?」
『はい。現状、なるべく車両数は温存する必要があるので、クマさんチームはアンツィオさんと共同で索敵をお願いします』
「OK、まあ指示通りに動いてみるわ」
無線で連絡をすると、彼女は無線を切った後に伊藤に呼びかける。
「博子。あんたの出番よ」
「了解です」
彼女は真澄に言われてから無線機の周波数を大きく変更していくと、メモ帳を開いて書き連ねていく。これでこの戦域で流れる敵味方問わない有象無象の文言が一斉に彼女の耳に入ってくる。
その上で真澄は自分たちはここで別れる旨を伝えようとした時、異音を感じ取ってその方に視線を向けると、やや驚いてまほに無線を繋いだ。
「まほさんまほさん」
『どうした?』
無線をつなぐと、まだ気が付いていない様子であったので彼女は連絡した。
「足回りから火花散っています。フェンダーか、履帯がやられたかも」
『了解した』
まほは通報を承知すると、少し間を開けてからみほに無線を繋いでいた。
『大隊長、こちら西住。黒森峰車両、ティーガーⅠ、履帯破損の恐れあり。ティーガーⅡ、動力系に異常の兆し。二輌とも整備案件により、戦線一時離脱の許可求む』
彼女はみほに要請をしていた。
その頃、遊園地内の中華街エリアではケイ達サンダース大の部隊が展開していた。
『「信地旋回したなら報告せんかい」
「ラジエーター交換でエンジンマジ冷えーたー」』
その場所に聞こえる空気というのは、下手な冷える日よりもよく冷え込んでいた。
『「整備士ジェイクは砲身の整備中に笑えないジョークを言ってばっかり。
それにうんざりした新人砲手カトリーナは車長のドナにこう尋ねるの『ねえ、ドナ。ジェイクったら何であんなにつまらない話ばかりするの?』」』
つまらない話なのはこれだよ、と誰も突っ込む勇気も元気もない。
『「それはね、彼が一流の整備士だからよ」
「意味が分からないわドナ。全然関係ないことじゃない」』
ただただ、無言で彼女達は右から左にそれを垂れ流していく。
『するとドナはこう答えたの「あらカトリーナ。あなたにとっては大事なことなのよ」』
誰かに救いを求めることもなく、やめてくれと許しを乞うこともない。
『「だって砲身が詰まったら、弾を飛ばすことができないじゃない」ってね』
ケイはマイクに向かって楽しげに語っていると、聴衆はそれでも静寂に。それこそオーケストラのコンサートの直前のような静けさで聞いていた。
ただその時と分かりやすく違うのは、聞いている面々が全員漏れなく、死んだ魚のような目をしていたというところだろうか。
『そんなジェイクのジョークだけど、試合が終わった後に披露された時だけは…』
「え…まだ続くの?無線切って」
アリサはついに耐えきれず、試合中ではあまり推奨されない無線切断を断行する。
「隊長、盛り上げようとしてくれているんでしょうけど…」
「無線、しばらく切っとけ」
ナオミもこの演説地獄から逃れるために指示をすると、誰も文句を言うことなく静かに無線の電源を落とす。
「まだマスミ達に聞かれないだけマシだと思おう」
「ですね…他学園にまで飛び火されたら堪りませんし…」
自分たちの問題を他学校まで知られれば
「ああ、それにマスミの場合はジョークがジョークと分からないと普通に聞いてしまうからな」
「おー、それは何と恐ろしい…」
「だから絶対に聞かせてはならないぞ」
ナオミの説得力ある理由に乗員も大いに賛同し、同時に高地争奪戦をしていた際の内容を聞かれなくて、とても安堵していた。
「まあ、一応フォローをしておくと、隊長の
「え?」
ナオミに少し意外な表情をする車長。
「目標を狙う際、熱くなったり、焦ったりした時だ」
「ナオミさんにもそう言うのあるんですか?」
「ああ」
彼女は頷くと、静かで安寧とした空間を彼女は過ごす。
「そんな時に今の気持ちを思い出すんだ。
まるで気の抜けた炭酸飲料を飲んだ時のようなこの感情を。
そんな脱力感がかえって私を
その理由を聞き、車長は納得した上で後々が恐ろしくなって無線機に手を伸ばす。
「…じゃあいっぱい聞いて補給しとかないと」
「笑えないジョークだ」
「そろそろ無線つけますね」
これで反応に遅れでも出たら軽く面倒な地獄が待っているので、覚悟して無線機に電源を入れた。
『「…ーーAがOで終われるじゃない」ってね』
「ちょうど終わったところですね」
「ナイスタイミング。でかした」
途端にナオミ達の目に光が戻ってくると、直後にアリサ達はケイを煽てる。
「隊長、今回も面白かったです!」
「このところ、特に冴え渡ってますね」
捲し立てるようにアリサとナオミは話してくる。
『毎回どうやったらそんな話が作れるんです?』
「え、そ、そお?えへへ…」
ケイは褒められたと思って少し嬉しげに頭をかいた。
『じゃ、じゃあ他の話も披露「さあ、士気も上がったので切り替えていきましょう!」…』
アリサが割り込んでケイの言葉を切ると、直後に連絡が入る。
『サンダースの皆さん、こちら大隊長車』
みほはケイ達に伝達を行った。
「黒森峰の二輌に車両トラブルが発生し、戦列を離れることになりました」
その一言で概ねケイ達は事情を把握する。
『全体のプランに変更はないのですが…』
「オッケー、マホ達が狙われないように私たちが注意を引き付けておくわ」
『はい。助かります』
「任せといて」
無線で連絡を終えると、次にケイは無線を繋ぎ直す。
「二人とも聞いたわね」
『重戦車は終盤での展開を決める鍵。勝つためにここで失うわけにはいかないってことですね』
「分かってるじゃない」
アリサ達は仕事がやってきたことでケイのジョークをしばらく聞かなくて良くなると安堵しながら、もっと仕事を遣してくれとみほに願った。
「だから今、私たちができるベストを尽くして、大洗にとって最高の結末を迎えられるようにするわよ!」
『Yes ma'am!』
二人はハキハキと答えると、三台は作戦に向かった。
オリ主とみほの戦いを先に見たいか否か。
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見たい!
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まだ先で良い