知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第十七射

その日、みほたちはとある会館に向かっていた。

そこでは第63回戦車道全国高校生大会のトーナメント抽選が行われていたのだ。

壇上に上がったみほが抽選箱から番号を引いた。

 

『大洗女子学園、八番!』

 

そして大洗女子学園の大会最初の相手チームはサンダース大附属高校だった。

無名の高校の名を聞き、既に勝利を確信して大喜びの生徒たち。

 

「おいおい…」

「仕方ないけどさ……」

「ねぇ、サンダースって強いの?」

 

そんな武部の問いに秋山が答える。

 

「はい。優勝候補のひとつです」

「え~?大丈夫?」

 

それを聞き心配になる武部。

 

「初戦から強豪ですね…」

「負けられない…負けてしまったら私たちは…」

 

そんな中、生徒会トリオは何処か含みある言い方でそう呟く。その何かに迫られた言い方に榎本達は違和感を感じていた。

 

「こっちの装備で倒せる?」

「うーん、真澄が連盟と相談して装備を増やすとか言ってたけど……」

 

何せ資料が少ない短十二糎自走砲だ。この前の練習試合では榴弾しか使えなかったので、もう少し弾種を増やす為に今真澄が連盟と相談していた。

 

「大丈夫なの?」

 

大久保はそんな行き当たりばったりな様子に少し不安を覚えていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

抽選会が終わり、榎本達はそこで先に訪れていた真澄と合流する。

ここは喫茶ルクレール、戦車道をするものからすれば人気の店であった。

 

「おっ、抽選どうだった?」

「初戦でサンダースだった」

「おほー、そりゃまずい」

 

そう言うと彼女は甘酒を飲む。

 

「向こうは物量で攻めてくるよ……」

「そっちは?」

 

榎本が聞くと、真澄は少々疲れた様子で答える。

 

「なんとか徹甲榴弾の許可は取り付けたよ」

「え?成形炸薬弾とかじゃなく?」

 

確か成形炸薬弾の有無があるとか無いとか言っていたが……それはどうなったのかと思うと真澄は言う。

 

「うーん、性能テストも兼ねてだって。元々があまりのレア車だからよく分からないんだと」

「ああ、なるほど」

「でも弾種が増えるだけ有難いわ」

「ええ、直射で倒せる可能性が出てきたもの」

 

十二糎の砲弾の直射なんてまずほぼ全ての車両で耐えられないだろう。

最悪信管抜いた榴弾を投げるかと相談したりしていたが、早急の問題が解決して取り敢えず安堵していた。

 

「あれ?黒田殿達ではありませんか!」

「お?おお、秋山。それにみほちゃん」

 

店に入ってきたみほ達五人はバッタリ真澄達と出会した。

ちょうど隣の席が会いていたのでそこにみほ達は座ると、そのまま秋山はそのまま注文ボタンを押す。すると、

 

ドーンッ!

 

かなり精巧な砲撃音が聞こえた。すると店員さんがやって来た。

 

「ご注文はお決まりですか?」

「はい。ケーキセットでチョコレートケーキ二つとイチゴタルト、レモンパイにニューヨークチーズケーキ一つづつお願いします」

「承りました。少々お待ち下さい」

 

ウェイトレスは、オーダーをとると敬礼して厨房へと行った。

 

「このボタン。主砲の音になってるんだ」

「この音は90式ですね」

 

さすが戦車マニア、音を聞いただけで何の車種かわかるとは……。

 

「流石は戦車喫茶ですね」

「あ〜、この音を聞くと最早ちょっと快感の自分が怖い」

 

五十鈴が言う様に他の席からも主砲の発射音が聞こえて来る。確かにそれも微妙に違った。

顔を赤くして砲撃音に快感を抱くと言う武部。変態の片足突っ込んでいるとしか思えなかった。

 

 

 

しばらくして専用のレーンから大きなトラックのような車がケーキを運んできた。

 

「あっ!?なにこれ?」

「これ、ドラゴンワゴンですよ」

「かわいい~」

「ケーキも可愛いですね~」

 

女子らしくケーキで盛り上がっている一方、真澄達はあんみつやみつ豆などを嗜んでいた。

 

「知波単の頃じゃあ、あり得ない光景よね」

「ええ、質素倹約が常ですし……」

「あんぱんが出ただけで大騒ぎだったよ」

「今思うと良い思い出だけど……」

「あれのおかげで節約術が身についた」

「「「「それはそう」」」」

 

真澄が言うと全員が頷いていた。

因みに元母校の知波単学園は初っ端から黒森峰女学院と言う、絶望しか見えない対戦相手だった。

するとみほは後ろで申し訳なさそうに武部たちに言っていた。

 

「ごめんね……、一回戦から強いとこと当たっちゃって」

「くじ運だもの。仕方ないわ」

 

反対の席から真澄がそう返す。

 

「サンダース大付属ってそんなに強いんですか?」

「強いっていうかすごくリッチな学校で、戦車保有台数が全国一なんです!チーム数も一軍から三軍まであって……」

「公式戦の一回戦は戦車の数は十両までって決まってるから、砲弾の総数も決まってるし」

 

そう、この大会では戦車道の数は一回、二回戦までは十両、準決勝では十五両、決勝では二〇両で勝敗決めは指定された相手チームのフラッグ車を先に撃破した方が勝利のフラッグ戦となっている。つまり弱小校でも強豪校相手に勝てるチャンスがあるって言うことだ。

 

「でも十両って…うちのほぼ倍じゃん!それって勝てないんじゃ……」

「単位は?」

「負けたらもらえないんじゃない?」

 

冷泉がそう言い武部がそう返すと冷泉は少し不機嫌になり、手に持っていたフォークを思いっきりケーキにぶっさす。それを見て驚く他全員。

 

「それより全国大会ってテレビ中継されるんでしょ!ファンレターとか来ちゃったらどうしよ〜」

「生中継は決勝だけですよ」

 

すると明らかに武部は気を落とした。

 

「……うんじゃあ、決勝に行けるようガンバロ~ほら。みほも食べて食べて!」

「あ、うん」

 

そう言い、みほがケーキを食べ始めた時。

 

「みh……副隊長?」

 

ふと声のした方を見ると、そこにはジャーマングレーの制服に身を包んだ銀髪の生徒と、目元の少し鋭い少女たちが立ってこちらを見ていた。

 

「……お姉ちゃん」

 

その目元の鋭い少女を見てみほが思わず呟く。ああ、まほさんに……エリカか。

 

「まだ戦車道をしているとは思わなかった……」 

 

まほうは無表情でそう答える。すると秋山が立ち上がった。

 

「お言葉ですが!あの試合でのみほさんの判断は間違ってませんでした!!」 

 

事情を知っているのか、秋山がそういうと銀髪の少女が睨みつける。

 

「部外者は口を出さないで欲しいわね」

「…すいません」

 

一回睨まれてすっかり戦意喪失した秋山は力無く座り込んだ。

 

「秋山、あんたチキンハートすぎるでしょ……」

「「っ!?」」

 

その声を聞いたまほと銀髪の少女……逸見エリカは心底驚いた表情を浮かべた。

 

「その声…真澄か?」

「ええ、お久しぶりですね、西住まほさん。二年ぶりでしょうか?」

「ああ……」

 

あのまほさんですら驚きが少し表に出ていた。よっぽどだったんだなこりゃ。

 

「ってか、アンタ生きていたの!?」

「ええ、御生憎とね」

 

そう言うと彼女は珈琲を一口傾ける。その目はとても無機質なものだった。

 

「エリカ、行くぞ」

「はっ、はい」

 

そう言い店を出て行こうとすると、エリカは思い出したようにみほに言う。

 

「あっ……一回戦はサンダース大付属と当たるんでしょ?無様な戦いをして、西住流の名を汚さない事ね」

 

皮肉を込めた言葉をみほに言うと、真澄達は小さくため息が出てしまう。

 

「何よその言い方!!」

「あまりにも失礼じゃ…」

 

思わず武部と五十鈴さんが立ち上がって抗議するが、エリカが冷たい目をして言う。

 

「あなた達こそ、戦車道に対して失礼じゃない?まだ無名校なのに。この大会はね、戦車道のイメージダウンになるような学校は参加しないのが暗黙のルールよ」

 

彼女はそういうが……。

 

「強豪校が有利になるように、示し合わせて作った暗黙のルールとやらで負けたら恥ずかしいな」

 

冷泉がケーキを頬張りながらそう答えると、エリカも思わず言葉に詰まってしまっていた。

 

「もし、あんたたちと戦ったら絶対に負けないんだから!」

「ふっ……頑張りなさい」

 

武部の反論にエリカは鼻であしらうと、彼女はみほしか聞こえない程度の声で言う。

 

「サンダースにはファイアフライが居るわ。気を付けなさい」

「え……?」

 

するとエリカはそのまま店を去って行った。

 

「何あれ、ものすごい失礼なやつね!」

「嫌な感じですわ…」

 

武部と五十鈴さんが言う中、秋山が説明した。

 

「あの、今の黒森峰は去年の準優勝校ですよ、それまでは九連覇してて…」

「えっ!?そうなの!?」

 

そう驚く武部は今度は真澄に聞く。

 

「ってか、ますみん。あいつらと知り合いなの!?」

「知り合いというか……」

 

真澄が少しお茶を濁して言うと、榎本が直球に言う。

 

「どっちかって言うと喧嘩相手だよね?」

「「「うん」」」

「……」

 

同時に答えた大久保達を見て、武部たちはそれ以上何も突っ込むことはなかった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

そしてその後、みほ達は鬱憤を晴らすようにケーキを食べ。支払いをした真澄の財布が軽くなってしまった。

そして真澄自身は榎本達と別れて単身近くの川の土手でソーダシガレットを咥えながら寝そべっていると、ふと名前を呼ばれた。

 

「真澄」

 

そこで声のした方に顔を向けると、そこには先ほど武部たちに嫌味(笑)を言っていたエリカの姿があった。

 

「よぉ、忠犬ちゃん」

「そのあだ名、相変わらずね」

 

彼女はそう言い少し懐かしさを覚えていると、真澄の横に座り込んだ。

 

「生きていたのね」

「のうのうとね……」

 

そう言うと川にかかった橋を列車が走り抜けていく。

 

「相変わらず君はまほさんにゾッコンなのかい?」

「アンタねぇ……はぁ」

 

エリカはもはや呆れた表情で真澄を見る。すると、真澄は彼女に聞いた。

 

「……一体何があったの?」

「……」

「私が戦車道を除名されて二年、界隈はだいぶ動いたみたいね」

 

真澄がそう言うと、エリカは軽くため息が漏れた後にみほが大洗に転向するきっかけとなった去年の高校生大会の話を真澄にした。

 

 

 

 

 

「…なるほど。だからみほちゃんは戦車道のない大洗に……」

 

それを聞いた真澄は納得した後で少し恨めしく口にする。

 

「あの時、私や隊長。西住師範ができる最大限だった……」

「かーっ、相変わらずOG会は叩くことが好きだねぇ……」

 

みほの一年前に叩かれて、見せしめに処刑された彼女だからこそ言える話だ。

 

「貴方がいたらもうちょっと変わっていたかもしれないわね」

「いや、私も多分同じ選択をしていたわ。追放という形で彼女を遠い場所の、戦車道の無い場所に行かせてたわ」

 

それが最も安全な方法だから……。

 

「でも私だったら報復で多分、同窓会のメンバーの悪事を暴露しているかも。例えば戦車道連盟の人事とかで」

「相変わらずやることがえげつないわね……」

 

エリカは少しだけ苦笑していた。

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