サンダース大付属高校の学園艦はその巨大さ故に一日じゃ回れない土地がある。
そしてその中にはさまざまな施設も存在し、その中には……。
「突ぃぃぃぃぃいいいいっ!!!」
当然にように道場が存在していた。そこでは威勢の良い声と共に被っていた面が外れながらすっ飛んでいく一人の生徒。
そして飛んできた生徒を躱すために慌てて逃げる観戦していた生徒。
「ごはっ?!」
そしてそのまま生徒は道場の壁に叩きつけられて気絶する。それを見て唖然となる生徒。
「た、担架!担架持ってきて!!」
あわてて人が吹っ飛んできて逃げた生徒が慌てて叫ぶ。
「今日何人目?」
「五人……」
「倒した人数は?」
「……四〇人」
誰かがそう呟くと他の生徒がドン引く。
「えぐっ」
「えぇ……」(困惑
「竹刀ってあんな曲がるっけ?」
思わず困惑するサンダース剣道部の生徒は飛び入りで訪れたその生徒を見る。
「戦車道のケイから連絡があったドージョー破りとは……」
「まさにこの事」
「何というブシドー」
「エキサイティング……」
思わずその吹っ飛び方に剣道部の面々は興奮気味に彼女の試合を見る。
「確か、カンベエとか言ってたわね」
「ええ、何でもこのサンダースに殴り込みに来たとか!」
「ドージョー破りしにきただけあって、伊達じゃ無いわね」
そう言うと審判係の生徒が手に旗を持って竹刀を持つ二人の選手を見る。
「初め!」
「「ヤァッ!!!」」
そして試合が始まって直ぐに『官兵衛』と書かれた垂の選手が竹刀を振って叫ぶ。
「胴ぉぉぉおあああああっ!!!」
「!?!?!?」
叩きつけられた竹刀はこれでもかとしなやかに曲がった後、対戦した生徒の身体を横にくの字にしながら横に吹っ飛ばした。
そしてこれで簡単にまた一人を倒した真澄はそのまま一礼をするとそのまま被っていた、借りた面を外す。
「ふぅ……」
そこでふと一息つくと、真澄はその時後ろから声をかけられた。
「相変わらずね」
「っ!…なんだ、ケイさんですか……」
そこで陽気に声をかけて来たのは先ほど別れたケイだった。
「仕事はどうしたのです?」
「そんなのちゃっちゃと終わらせたわ。道場で大暴れしている生徒がいるって聞きつけてね」
「そうですか……」
噂が流れるのが早いと思うのと同時、歯応えがなかったとも思う。
「不完全燃焼ね?」
「ええ、まぁ……」
「少なくとも警察関係者に勝てる時点で何とも……」
ケイ自身も少し困った様子で真澄を見る。彼女の剣道の強さは折り紙付きである事は知っていた。だからこそこの惨劇を容易に想像できたわけだが……。
「流石に保健室に運ばれた人間がこうも多いとね……」
「これでも警察道場に叩き込まれた時より手は抜いていますよ」
「気絶させているのに?」
呆れた表情で彼女は答えると、真澄は付けていた装備やら袴やらを感謝を備えて返却してジャージを羽織っていた。
「何というか……ダサいわね」
「五月蝿いですよ」
ケイのツッコミに思わず彼女は反応した。
現在、サンダースを訪れている彼女はケイと別れた。どうも彼女は真澄の試合を見たかっただけらしい。
学園艦を歩いていると、そこで彼女はいかにもサンダースらしい場所に訪れていた。
「射撃場か……」
そこには射撃音がよく聞こえる射撃場があった。時間を見ると空いたばかりの様子。
銃刀法の関係上でBB弾ではあるが、威力はとてもじゃないが対人用には威力の大きいものだった。ベニヤ板に跡がつく時点でおかしいよ。
「……撃ってみるか」
少し考えた後に真澄はその射撃場の扉を押して入った。
「いらっしゃい」
「すまない、射撃をしたいのだが……」
「はいはい、どれにいたします?拳銃、機関銃、小銃。何でもありますよ」
カウンターで生徒がそう答えると、彼女はあるかどうか分からない拳銃を聞いた。
「二式拳銃はあるか?」
「ええ、こちらに……少しお待ちを」
そう言い、その少女は奥から少し埃の被った箱を持ち出した。
「十発一〇〇円ね」
「これで」
「じゃあ五番の射撃場で撃って頂戴」
破格の安さだが、真澄は小銭を数枚渡すとそのまま純正のBB弾と二式拳銃の箱を持って射撃場に向かう。
「五番か……」
番号を数えていき、拳銃用の三〇メートルの射撃場に到着すると。そこで真澄は弾倉にBB弾を装填して世にも珍しい幻の拳銃を向けていた。
それから少しした頃、射撃場に一人のショートヘアにガムを噛んだ生徒が入ってきた。
「いらっしゃいナオミ」
「いつものを頼む」
「はいはい」
そのイケメン少女は常連客のように話しかけると、少女も慣れた様子で彼女にM1ガーランドを受け取る。
「奥の七番が空いているわ」
「分かった」
そう言い、彼女は射撃場を見ると。そこでは一人のダサいジャージ姿の少女がすでに拳銃を撃っていた。
「先客がいたのか……」
「ええ、今日は珍しくね」
いつもは開店後一番にくる彼女は珍しいこともあるものだと思いながらBB弾を受け取ってレーンを移動する。
そしてそこで二式拳銃と言う珍しい種類の拳銃を撃っている少女に物珍しさを感じて、思わず誰なのかと顔を見た時に思わず彼女は固まってしまった。
「(っ!!)」
見間違えるはずがなかった。彼女はかつて戦車道を追いやられて消息不明となっていた少女だった。
一時期は死亡説まで出ていてなってにケイが葬式をやろうとしていたくらいだった。
「(黒田…真澄……!!)」
なるほど、通りすがった時にケイの顔がとても嬉しそうだったのはこれだったのか。
「……」
射撃を終え、真澄は的に当たったBB弾の弾痕を見る。
「(全部外れてる……やっぱ思うように飛ばないわね)」
当たった様子の無いBB弾に思わず苦笑してしまう。相変わらず射撃は下手くそのままだと……。
「(これで終わりにしようかな……)」
こればかりは上達しないかと半分諦めていた彼女は、そのまま拳銃を返そうとした時。
「手を挙げなさい」
「……」
後頭部に銃口が当てられる。いや、こりゃ指だな。
「両手を後ろに回して。こちらに顔を見せなさい」
「……」
その少女はそう言うと、真澄は苦笑した様子で答える。
「普通そこ、地面にうつ伏せじゃ無いんですか?」
真澄がそう答えると、その少女は言った。
「うつ伏せだと、君の顔を見る事はできないからな」
「……その声は間違い無いですね」
そう言うと真澄はゆっくりと後ろを振り向きながら答えた。
「ナオミさん」
そう言うと、真澄はサンダースの戦車道チームを率いるナオミをまっすぐ見ていた。彼女は今、高校戦車道チームの副隊長を務めていた。
するとナオミは懐かしげに真澄を見て話しかける。
「軍師黒田。久々に会えて光栄だ」
「ええ、こちらこそ。あのパーティー以来の出会いですわね」
指で作った銃を向けていたナオミは真澄の顔を見て納得と安堵、それから喜びの表情をうっすらと見せた。
「生きていたんだな」
「ちょっと、私を亡霊みたいに言わないでくださる?」
「すまんな。ケイが音信不通の君の葬式をしようとしていたものだから……」
そう聞き、真澄は唖然となった後に呆れた様子で言う。
「……あの人、たまにとんでも無いことしますよね?」
「たまにじゃ無い。いつもだ」
ナオミは彼女の言葉に修正を加えると、真澄は尚更苦笑する。
そこでナオミはそんな彼女の射撃跡を見ると、諦めたような表情で言う。
「相変わらず射撃は下手なんだな」
「こればかりはね。どうしても上達しないわ」
「君は銃よりも竹刀を持った方が強い」
ナオミはそんな真澄の能力を言うと、彼女も納得した様子で言う。
「ええ、ついさっきも剣道部にお邪魔したわ」
「ああ……あの六人が保健室に搬送された奴か」
とんでも無い刺客が訪れたと学校で大騒動になっていた。名前までは分からなかったが、六人が試合で気絶して保健室搬送をされたと聞いた時は何かの冗談かと思っていたが。真澄がやったのなら納得だった。
「学校中で噂だったぞ」
「あら、相変わらず噂が出回るの早いわね」
思わず感心していると、ナオミは真澄に聞いた。
「この二年、どうしていたんだ?」
「ええ、大洗女子学園ってとこで不良狩りを……」
「あそこか……」
ナオミは少し驚いた様子で真澄を見る。彼女は今度の対戦相手の学校にいると言う事だ。それ即ち、苦戦が予想される可能性があった。
「ならば、私は戻った方が良さそうだな」
「ああ、その心配はご無用。私、試合には出ないから」
そんなナオミにすぐさま真澄は否定すると、ナオミはその瞬間に表情を暗くして聞いた。
「……まだ、許されていないのか?」
「ええ、ご生憎とね」
「……私は、あの時の真澄の対応に今でも腹を立てている」
「あら、同情してくれるの?」
真澄がそう答えると、ナオミは真剣な表情で答える。
「同情じゃ無い、事実だ。あんな嘘っぱちの証拠如きで真澄を除名した事を……私は許せなかった」
「……」
本物の怒気を孕んだ眼差しで彼女は言う。
「私達はあの時、必死に君の無罪を主張した。完璧なアリバイもあった。
それなのに戦車道連盟は、君を除名処分にして徹底的に吊し上げた……」
まるで公開処刑のようだったと彼女は言った。
「あの時、私は何もできなかった。私だけじゃない、ケイだって…上の者に証拠を握りつぶされたことが……。
権力のある者が行う横暴に太刀打ちできなかった……」
だからこそ、真澄のような情報戦が重要であると学んだと言った。
「真澄が最後の抵抗でネット上に流した『戦車道車両強化計画』のお陰で、連盟は気軽に世界大会選抜チームに使用する車両の更新をしづらくなった」
「私の気まぐれよ」
「気まぐれじゃ無い。計算された上での意図的な嫌がらせであると言うのは分かっている」
ナオミはキッパリと真澄の言葉を否定する。散々不満をこぼしたナオミであったが、彼女は真澄を見て言った。
「だが、今は真澄が生きていた事を喜ぼう。ついでにブリーフィングに付いて来てくれ」
「いいの?私、敵チームのマネージャーしてるけど」
「いいんだ。ケイはそれほどのことで文句を言ったりはしない。むしろ真澄が来てくれるだけで私たちは大歓迎だ」
「そのまま勧誘しないでよ?」
真澄はそう言うと、ナオミは笑った。
「無理だろう?今の君は除名された選手だ」