知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第二二射

黒田真澄のマネージャーとしての朝は早い。

戦車道部は騒音などの関係で朝練の砲撃訓練は原則禁止となっている。もし朝に練習を行う場合は事前に注意喚起が入れられるようになっていた。その為戦車道部の朝練は走行訓練を行うだけである。

 

 

 

そして機動隊創設の責任者として彼女達を監督する立場にある真澄はマネージャーの他にも多くの仕事を抱えていた。

 

「いーちっ!にーっ!いっちに!!」

『『『いーちっ!にーっ!いっちに!!』』』

 

片手に白文字の『風紀』と書かれたジュラルミンの盾を持って広場を走る生徒達。体には黒色のプロテクターやヘルメットなどの防護装備を備えており、その重さは総重量十三キロほどであった。

車庫には灰色と白色に塗られたかまぼこ型のバスや、機関銃の代わりに放水銃を備えた九三式装甲自動車が待機していた。

 

今年に入って自分たちが戦車道を履修する代わりに創設が約束された風紀機動隊。

元々は不良狩りの集団であったが、それが正式に風紀委員の傘下の部隊として認められた形での発足である。大規模な暴動や不良の行動を監視するためにあらゆる行動が許可されていた。

この部隊の発足は学園艦全体の治安向上に繋がり、結果的に風紀委員会としても良い結果を齎らすものとなっていた。

 

「確かに機動隊の登場で街の治安は向上したわ。でもあなた達が不良撃退の際に出る損害はどうすれば良いって言うのよ!!」

 

視察に訪れた真澄の横で園みどり子、通称そど子が怒鳴り散らす。強制おかっぱ制度が生徒会によって強制的に廃止されているが、風紀委員会本部だけは彼女の影響力が強いからかいまだにおかっぱの風習が続いていた。

 

「あなた監督官なんでしょ!そこの所しっかりしなさいよ!!」

「いやぁ、出動命令をバンバカ出しているのは本部の方でしょうに……」

「この前の暴動の時の損害。とんでもない請求額が風紀委員に届いたわよ」

 

園はそう言い、横に立つ巨人の如き真澄を見上げてバインダーに挟まれた領収書の束を見せつける。

 

「破壊した窓ガラスに民家の扉、潰した子供用ボール……おまけに何よ、この車両整備費って!なんでこれだけそんな高いのよ!」

 

どう言うことか説明しろと叫ぶ彼女に真澄は淡々と答える。

 

「全部向こうの暴徒側がしでかしたことですよ?その証拠にほら、捕まった不良は矯正局で真面目な生徒に早変わりです」

 

そう言い機動隊創設と合わせて、風紀を乱す生徒に風紀の必要性を教え込む『矯正局』を園はこっそりと作り上げていた。中で何が行われているのか、それは分からないが。どんな生徒も矯正局を出てくる頃には真面目な生徒に早変わりしていることからどこからでも恐れられていた。

 

「ええ、確かに今まで重大違反を引き起こしていた生徒はみんな矯正局送りよ。でもね、その足元にいる機動隊はやりすぎだって言っているのよ!もっと経費抑えなさいよ!」

「でもその代わり治安は良くなりましたよ?」

「もっと低コストでできないかって言っているの!!」

 

小言の多い姑の如く園は真澄に文句を言うが、真澄はそれは無理だと言った表情で答える。

 

「それは無理ですよ。ただでさえ機動隊に加入したいっていう人は日に日に増えていっているんですから……」

 

そう言い、すでに第八機動隊まで編成されている現状に少し困った表情を浮かべていた。

 

 

 

ほぼ毎日のように風紀委員会本部から出撃命令の出ている機動隊はその果敢さゆえか入隊希望者が殺到していたのだ。風紀委員会よりも人気なそれは軽い体力テストをして選抜しなければならないほどだった。

機動隊監督官を角谷より指名された真澄はそんな機動隊の編成人事も統括して行っていた。

そして機動隊発足式の際、彼女は壇上でこう言った。

 

「良いか!我々機動隊にとって最も必要なことは『叩き潰し。叩き潰し。叩き潰しまくる事』だ!」

 

後に日本最強の風紀委員会と称される大洗風紀機動隊のスローガンとなったこの言葉は、車庫や機動隊詰め所の壁に立てかけられていた。

 

「隊員達に配る装備も作らないといけませんし、色々とやることは多いんですよ?」

「分かっているわよ。でもね、私としては本当は全員おかっぱにしてやりたいんだから!」

 

おかっぱに対するもはや執念に近い何かを感じた真澄は思わず引いてしまう。

 

「じゃあ私はこれから戦車道の訓練があるので、失礼するわ」

 

そう言うと園が半分呆れた表情で真澄を見る。彼女自身、まさか自分の風紀委員長の立場を狙われていた事実に驚きを隠せなかったようだ。その恩があるが故に園はあまり真澄に強くは言えないのかもしれない。

 

「あなたも大概忙しいのね」

「まあ戦車道の方は部下に任せられるのでまだマシですよ」

 

そう言い残すと遠くでは掛け声と共に新人隊員を訓練する古参隊員の力強い掛け声が響いていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「では、今日の訓練はここまで。お疲れ様」

『『『お疲れ様でした!』』』

 

真澄の号令でみほ達は一礼をして解散する。戦車道部のマネージャーとしても仕事のある彼女は彼女達の一日の訓練予定や試合の調整を行なっていた。

元より機動隊員の何人かが応援という名の後方要員で真澄の補助を行っているので幾らか仕事量は少ないが、それでもやることが多いのが戦車道だ。

 

「今日の訓練で使用した戦車の燃料、並びに砲弾の量の確認。怠らないでね」

「「「はい!」」」

 

戦車道部の後方要員の為に設置された設備の整った部屋で指揮を執る真澄の姿はまるで補給将校のようであった。言ってしまうとゴ⚪︎プ的立ち位置である。

 

「今回破損した部品は……」

「マネージャー!」

「何?」

 

今ではすっかり戦車道の時はマネージャー、機動隊の時は監督官呼びをされる事が定着した彼女は戦車道補給係の生徒から言われる。

 

「戦車道隊長の西住さんと副隊長の榎本さんから相談があると言います」

「相談?分かったすぐ行く」

 

一体何の相談だと思いながら、大方サンダース戦のことでの相談だろうと思いながら彼女は部屋を出てみほ達の元に向かっていった。

 

 

 

 

 

対サンダース戦まで残り一週間となったこの日、みほ達は朝練や休日を潰してまでの訓練をしていた。

試合が近づくにつれ、必要な資材や衣装も滞りなく準備していた。

中でも大洗女子学園のパンツァージャケットも制作されており、紺色服に白のスカートのシンプルなデザインだった。

そして後方係は『戦車道』と書かれた腕章を付けるだけというシンプルなものだった。

 

それから今までAチームだのBチームなどと少し事務っぽい言い方の名前を変えていた。名付けたのは主にみほだが、各チームは名称変更がされた。

 

Ⅳ号戦車Aチームはあんこうチーム

バレー部八九式中戦車Bチームはアヒルさんチーム

歴女達Ⅲ号突撃砲Cチームはカバさんチーム

一年生達M3リー中戦車Dチームはウサギさんチーム

生徒会38t戦車Eチームはカメさんチーム

そして自分たち短十二糎自走砲Fチームはクマさんチーム

 

と言った具合で改称された。なんでうちらかクマさんなのかというとみほの感性から来ていた。

なんでも車両が何もなくクマに見えるらしい……。その為か、みほより直々に車体側面のパーソナルマークはボコに近づけるよう言われていた。

 

「と言うわけで、次の試合会場は南の島でーす」

「「「いえーい!!」」」

 

南国と聞いて大興奮の生徒たち。もう既に遊ぶ気満々であった。それを聞いて真澄はボード片手に注意を呼びかける。

 

「試合中は戦車の中が地獄のように熱くなるので必ず水分補給をしっかり摂ること。試合前に必ず輜重係から補給品を受け取ってください」

「しちょう?」

「何それ?」

 

輜重の意味が分からない阪口と大野が首を傾げると、そこで秋山が説明を入れる。

 

「輜重とは軍隊で必要な物資全般のことを指します。そして旧日本軍では輜重兵科と呼ばれる補給専門の部隊が存在していたしました。

私達の物資補給は真澄殿が編成した輜重係にお願いすれば注文をしてくれますよ」

「「はぇ〜」」

 

いまいち分かっていないが、兎に角物がもらえるのだろうと思った彼女達はそこで真澄に言う。

 

「もしかしてお菓子貰える!?」

「わあ食べたい食べたい!!」

「無理に決まってんでしょう……」

 

真澄が半分呆れながら答える。そんな補給品に入れられる甘味なんてたかが知れてる。

する高さで何か閃いたのだろう、嫌な笑みを浮かべて真澄は阪口達に言う。

 

「そんなに欲しいならDレーションでも入れてあげようか?」

「何それ?」

「チョコレート」

「っ!!欲しい欲しい!!」

「チョコ入れてくれるんですか?」

 

それを聞いて阪口と山郷がそう言うと秋山がそんな二人に水を差すように言う。

 

「でもDレーションって、ジャガイモみたいな味のする戦闘糧食のチョコレートですよ?」

「「え?」」

「確かに甘さの風味は残っていますが、それでも硬くてそのままじゃ食べるのは難しいですね」

「ちっ……」

 

軽く真澄が舌打ちをすると二人は真澄を睨んだ。

 

「ひっどーい!この人ワザとまずいもの食べさせようとした!」

「有り得なーい」

「そもそも嗜好品が満足に食べられるだけありがたいと思いなさいよ!」

 

真澄が思わずそう反論してしまう。それを見て苦笑する榎本達やみほ。

 

「真澄さんらしいね」

「甘いものに特段厳しからねー」

「必要だけど無駄食いしちゃうからねー」

「甘いものの誘惑は強いから……」

「彼方も散々言われたもん」

 

彼女たちは真澄の心中を察すると、彼女は一息ついた後に話を続けた。

 

「まあ、ともかく。今回は南方での試合だから、ポ○リを多めに支給するわ」

「ええ、アク○リのほうが……」

 

近藤が完全に好みの問題を持ち込むと、真澄は少し笑って言う。その目は笑っていなかった。

 

「あら、○S-1にしてあげようか?」

「いえ、何でもありません!」

 

彼女はそう答えると最後に言う。こういうとき人の腹を握る補給係ほど強い者もいないと思ってしまった。

 

「じゃあ、大会初戦。頑張ってください」

『『『『『はいっ!!』』』』』

 

いよいよ始まる大会に皆は少し緊張していた。

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