知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第二三射

そして迎えた『第63回全国戦車道高校生大会』第一回戦。

会場は南の島の森林地帯。会場はすでに大盛り上がりであり、新設されたばかりの大洗女子と違ってサンダースはチアリーダーまで連れてきていた。

 

「全車、整備点検。全て終わりました」

「了解」

「補給物資も渡し終わりました」

「分かった」

 

大洗側の車庫で真澄は報告を受ける。

 

「河嶋広報、準備完了です」

「分かった」

 

河嶋に報告を入れると、そこでみほ達も言う。

 

「準備完了!」

「私たちも大丈夫です!」

「Ⅳ号も完了です!」

 

そう言い、あの馬鹿げた塗装から普通の迷彩色に直され。動物のマーキングが施された戦車達を眺める。

因みにクマさんチームは少し塗装を変更し、黄帯のない旧日本軍の前期迷彩の塗装を施していた。

 

「よし!それでは試合開始まで待機!」

 

河嶋がそう指示を出すと一年生達が思い出したように軽い口調で言う。

 

「あっ!砲弾忘れちゃった!」

「ちょっ、それ一番大切なヤツじゃん!」

「ゴメ~ン」

 

笑い事じゃないんだが?と思わず口から飛び出そうになる真澄はバインダーを持って立っていると、

 

「呑気なものね。よくそれでよくノコノコと全国大会に来れたわね?」

 

そこにアリサやナオミが現れた。

 

「あ!」

 

秋山は偵察のことを思い出してみほの後ろに隠れた。大丈夫よ、この二人が殴るときは反省会の時だけだから。

 

「貴様等、何しに来た!」

「試合前に交流も兼ねて食事でもどうかと思いまして」

「あ〜、いいね〜」

 

警戒する河嶋にナオミがそう提案すると角谷は提案に乗っていた。

するとナオミは今度は真澄を見た。

 

「どうです?ジャージの軍師は?」

「うーん、行こうかしら」

 

私の事はサンダースではジャージというあだ名がついているらしい。なんとも安直なネーミング…。

 

 

 

 

 

そして招かれた彼女達はサンダースに行くとそこで驚くべき光景を目にしていた。

 

「すごっ!」

「救護車にシャワー車、ヘアーサロン車まで!!」

「本当にリッチな学校なんですね……」

 

秋山と五十鈴が感心したように声を漏らす。

 

「ヘイ、アンジー!!」

 

するとそこでケイたちが大きく手を振って角谷さんに挨拶をする。と言うよりアンジーって?

 

「角谷杏だから、アンジー?」

「なれなれしい奴だ」

 

なるほど、会長とは仲が随分と良さそうなことで。

 

「やあ、やあ、ケイ。お招きどうも」

 

そんな光景を見ながら角谷は招待したケイの手をとって軽く挨拶する。

 

「良いのよ別に。そんなことよりも、何でも好きなの食べていってね!OK?」

「オーケーオーケー………おケイ!だけにね!」

「アハハハ!ナイスジョーク!!」

 

どや顔で角谷さんがそう言うとケイは腹を掲げて笑い出す。そんなに笑えるジョークか?むしろ背筋が凍るタイプだぞ。

するとケイは少し離れたところにいた秋山に気づく。

 

「あっ、HEY!オットボール三等軍曹!マスミ!」

 

見つかったと思ったら秋山は怒られるかと思っていた。

 

「あ、見つかった」

「お、怒られるのでしょうか?」

 

そんな中、ケイは近づく。するとそこで真澄が初めに挨拶をする。

 

「この前は案内どうも」

「どういたしまして。私もこの前はあなたたちが来てくれて本当に楽しかったわ……で、オットボール。あの時は大丈夫だった?怪我とかしていない?」

 

ケイにそう言われて思わず目を丸くした秋山は慌ててそう答える。

 

「え?ああ、大丈夫です」

「そう。それは良かったわ。またいつでも遊びに来てね。ウチは何時でもオープンだから!今度は友達と一緒に来てね。歓迎するから♪」

「は、はい!」

 

ケイの良すぎる人柄に思わず真澄も苦笑する。するとケイは真澄を見て言う。

 

「マスミは今回は出ないのね」

「ええ、私はマネージャーで終わるわよ」

「でも私はいつか貴方と試合をするって決めているから」

 

彼女はそう言うとそれを見ていた角谷は少しだけ目元を細めた。

 

「あんな結末、認めていない人が多いってこと。忘れないで」

「……ええ」

 

そう言うとケイはみほ達を見ながら言う。

 

「じゃあ、試合はフェアプレイで行きましょう」

 

そう言うと彼女は去って行った。

 

「良かった〜、隊長は良い人そうで」

「あれがケイさんだから」

 

そう言うとみほ達はサンダースの屋台を回り始めていた。

 

 

 

 

 

そしてサンダースの屋台を、砲手の大久保も堪能していた。

 

「何これ?LLサイズの間違いじゃないの?」

 

注文したハンバーガーの大きさに思わず首を傾げていると、その横で一人の生徒が座る。

 

「その顔、大久保利子だな?」

「……貴方は?」

 

いきなり名前呼びされた事に少しだけ利子は目元を細めながらハンバーガーを口に入れる。

 

「ナオミだ」

「ナオミ……ああ、サンダースの」

「そうだ、三年前。知波単学園との練習試合で君に倒された者だ」

「……何の用かしら?私はただの砲手よ」

 

そう言うとナオミは即座に否定する。

 

「いや、君は五人の家臣の内の一人。長距離砲撃を主任務とする竹刀隊の隊長を務めていた。そして三年前、我がサンダース中等部との練習試合で地の利があるはずだった我々は敗北を喫した」

「……そうだったわね」

 

大久保はそこで少し思い出に浸ると、ナオミに聞く。

 

「それで?今日はなんのご用件で?」

「リベンジマッチを申し込みに来た」

「……」

 

ナオミの目を見た彼女はそこでかぶりついていたハンバーガーをおくと答える。

 

「分かりました。試合会場で会えばお相手いたしましょう」

「いいのか?」

「ええ、受けた勝負は逃げない主義ですの」

 

そう言い果たし状を受け取った大久保はその瞬間、アナウンスが鳴った。

 

「じゃあ、次は試合会場で」

「ああ、よろしく頼む」

 

そう言うと食べかけのハンバーガーを持ちながら去っていく大久保をナオミは眺めていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

そして始まった試合の画面には角谷とケイが向かい合っていた。

 

『これより、サンダース大学附属高校と、大洗女子学園の試合を開始する!』

「よろしく」

「ああ」

 

アナウンスの言葉に角谷とケイは固い握手をして、そして角谷はジープに乗ってみんなのいる場所へと戻った。

 

「みんな行くよ」

「「「「おおっーーっ!!」」」」

 

そう答えると、そんな中で榎本達は言う。

 

「さて、やりますかね」

「やるからには全力で」

「それが私達の戦車道」

「うまくいくと良いけど……」

 

彼女達は短十二糎自走砲に乗り込見ながらそう話す。

すると遠くで試合開始の合図の花火が打ち上がり、

 

『試合開始!!』

 

アナウンスと共に第一回戦が始まった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

試合が始まった頃。大洗戦車道チーム後方要員は各々自由時間となり、噂のサンダースの屋台に繰り出したりしていた。

 

「…」

 

そんな中、真澄はある封筒を見ていた。蝋封されており、中身を見るとそこには一言。

 

『観客席にいる。来なければわかっているな?』

 

と書かれていた。これだけ読むとほぼ脅しだよな。少なくとも慣れていないと怯えてしまいそうな手紙だが、真澄自体は相変わらずだと受け流せるレベルには慣れていた。

 

「探しますかね……」

 

少なくともこの人数からあの制服を探すのは少し苦労しそうだ。

 

 

 

試合が始まり、両校の戦車隊が進み始める。その様子を観客席の後ろの丘から眺めるジャーマングレー色の制服に身を包む二人の少女は画面を見ていた。

その二人は黒森峰女学院戦車道部隊長の西住まほと、その副隊長の逸見エリカだった。

 

「始まりましたね…」

「ああ、そうだな…」

 

両校の動きを見ながらエリカの呟きにまほは頷く。

 

「どちらが勝つと思いますか?」

「分からない。試合は最後まで何が起こるか予測不可能だからな。物量で勝っていても、戦略次第で戦局を覆す事はある」

「はい……」

 

それを身に染みて分かっているエリカは再び画面に目を映すと、そこにはキューポラから顔を出しているみほの姿があった。

 

「みほ……」

 

そこで小さくまほは妹の名前を呟くと、そこで二人は声をかけられる。

 

「やれやれ、ここに居ましたか……」

「っ!真澄!!」

「やあ、久しぶり」

 

エリカが驚くと、片手に一升瓶を持つ彼女は少し疲れた顔を見せる。

 

「観客席にいると聞いていたけど、結構離れているじゃないですか」

「……すまない」

「良いですよ、私もどうせ暇ですから」

 

そういうと彼女はまほ達の横に座ると持ってきた一升瓶の蓋を開けた。

 

「どうです?自慢の一品、ノンアルコール純米大吟醸です」

「……頂こう」

「わ、私も」

 

まほに釣られてエリカもそう言うと真澄は猪口を三つ取り出すとそれぞれに注いでいた。

普段から黒森峰ではノンアルコールビールを飲んで来たが、これはあまり慣れないかもしれないと思ってしまった。

 

するとそこで真澄はまほを見ながら聞いてきた。

 

「さて、わざわざ私を呼んだ理由をお聞かせ願えますか?」

 

その疑問にまほは少しゆっくりとした口調で真澄に言う。

 

「二年ぶりだというのに…変わらない言い方だな」

「まあ、私とってみればこんな二年はあっという間でしたからね」

 

彼女はそう答えると、まほも思う部分があったのだろう。納得した様子で小さく頷いていた。するとそこで今度は安堵と共に悔しげな様子を浮かべて真澄を見る。

 

「二年前…私はお前を守りきれなかった……」

「……はぁ」

 

まほのこの後の話が予測出来た真澄はそこでまほの言葉を遮るようにため息をついた。

 

「大丈夫ですよまほさん。あの時は運がなかっただけです」

「運がないどころではない。あの冤罪事件で、真澄は戦車道を永遠に失うこととなってしまったのだ。あんな私利私欲の感情で潰されるべきではない」

「ええ、確かにそうかもしれません」

 

真澄はそう言うとまほは聞いた。

 

「何故だ?我々には無実の証明の証拠はあった。しかし連盟はその証拠を揉み消し、真澄を除名処分にした。なぜそんな横暴が許されたのだ?」

 

純粋な疑問を抱えながらまほは聞いた。するとその疑問に真澄は嘲笑混じりに答える。

 

「そりゃ、知波単学園の同窓会が圧力を掛けたのでしょう?」

「違うな。黒森峰なら兎も角、知波単学園にそこまでの影響は存在しない」

 

キッパリとまほは言うと、真澄はそこで軽くため息を吐きながら言う。

 

「まほさん、どう足掻いても私の除名処分が外れる事はありませんよ」

「何故だ?」

「簡単な話です。

 

 

圧力を掛けているのがこの国でも強い権力を持つ私の身内だからですよ」

 

 

「っ!…まさか……」

 

そこでまほは察して信じられないといった様子を浮かべたが、真澄は目線で答えた。すると彼女は立ち上がりながら言う。

 

「そんなもんです。だからあなたたちがどれだけ私の無実を訴えたところで、私の罪鎖が外れる事はありませんよ」

 

そう言うと彼女は『聖グロにも呼ばれているから』と言ってまほの元を去っていく。

 

「また会いましょう」

 

そう言い残すと彼女は去って行った。

 

 

 

 

 

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