知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第二六射

サンダースのシャーマンを二両も先制撃破できた事実に秋山は興奮気味に言う。

 

「西住殿、榎本殿、やりましたね!!」

「まさかわたくし達が先に相手を撃破できるなんて」

「うまく行ったけどこれはフラッグ戦。相手のフラッグ車を見つけないと勝ちは来ないわよ」

 

榎本の言う通り、この試合ではどれだけ倒しても制限時間以内にフラッグ車を倒さなければならない。

だからこそ、すぐに次の作戦に移る必要があった。

 

「じゃあ、榎本さん。お願いできますか?」

 

心配な表情でみほは彼女を見ると、榎本は自身ありげに答える。

 

「大丈夫よ。重葉の操縦技術はピカイチなのはみほちゃんもよく知っているでしょう?」

「はい……」

 

みほ自身、その戦術に翻弄された過去があるが故に大隈の腕を疑うことはなかった。

 

「じゃあ、私たちはそろそろ行くから」

「うん、気をつけて」

「あいよっ」

 

そう言うと、榎本達短十二糎はそのまま移動を始めた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「大洗め…良い気になるなよ……!」

 

アリサはそう愚痴りながらつまみを回す。いまだに自分の計画が破綻した事実を受け入れられないのか、気づいていないのか。彼女はいまだに盗聴器を使っていたのだ。

するとそこで新たにみほの通信が聞こえた。

 

『全車、128高地に集合して下さい。ファイアフライが居る限りこちらに勝ち目はありません。危険ではありますが128高地に陣取って上からファイアフライを一気に叩きます!』

 

それを聴き、アリサは高笑いをする。それがまだ欺瞞であることに気づかないまま……。

 

「ク……クククッ……アハハハハハハハッ!!彼奴等、捨て身の作戦に出たわね!」

 

そこで彼女は意気揚々と無線機に手を取る。

 

「でも、愚かな判断ねぇ……丘を上がったら此方の良い標的になるだけよ。…隊長、大至急128高地に向かってください!」

『どう言うこと?』

「敵の全車両が集まる模様です」

『ちょっとアリサ、それ本当!?どうして分かっちゃうわけ?』

 

流石のケイもこのアリサの報告に疑念を抱き始める。そこまで鮮明に敵の動きが読める高い場所なんて、このフィールドに存在しないからだ。

 

「私の情報は確実です……!」

『OK!全車、Go a head!』

 

自信満々なアリサの言葉に取り敢えずケイは信用するとそのまま車両を飛ばし始めた。

 

 

 

 

 

「アヒルさんチームはサンダースのフラッグ車を探してください。見つけても、その場で撃破しようとは考えず。直ぐに戻ってきてください」

『分かりました』

 

そう言うと八九式は偵察に向かうためにみほ達の元を離れて単独行動に向かう。

 

「おそらくフラッグ車はここかここ、それからここの筈」

 

みほは地図を指差しながら先ほど見えた気球の場所からおおよその場所を予測していた。そして秋山は、箱乗りになりながら双眼鏡で辺りを見回す。

 

「まだ視認出来ません」

 

彼女はそういうと武部の携帯に連絡が入った。

 

「メール?」

「あっ、クマさんチームからだ『ニイタカヤマノボレ一二八』だって」

「っ…」

 

みほはそれを聞いて一瞬緊張してしまった。この作戦が成功すれば、まだ勝ち目は見えると彼女は踏んでいたからだ。

 

 

 

 

 

同じ頃、短十二糎の中で榎本達は敵のシャーマンを見かけた。

 

「敵視認」

「戦闘はケイさんね……大久保、最後尾の車両を狙って撹乱。そのまま本隊を移動させるわよ」

「了解」

「大隈」

「軽戦車ばりの動きを見せてあげる」

「数を減らすことも忘れずに。行くわよ」

 

そう言うと榎本達は茂みに隠れながら時を待っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

そしてアリサの名を受けて128高地に向かったケイ達が見た光景は……。

 

「なにもないよ〜!!」

 

ただ風のたなびく平原が広がっており。戦車は愚か、エンジンの音さえ聞こえなかった。

 

「そ、そんなはずはありません!!」

 

思わずアリサは驚愕する。すると無線の奥からでも聞こえるほどの巨大な砲声と共に向こうの本隊で混乱した声が聞こえる。

 

『砲撃?!ベッキーやられました!』

『気をつけて!奇襲よ!』

『敵視認!……っ!!短十二糎自走砲!』

『居たわね!砲撃!』

『きゃあっ!』

 

二発目までの間隔が思いのほか早いのか、驚きの声が聞こえる。

 

『アレックス被弾!』

『あっ!逃げたぞ!』

『CQ!CQ!追いかけるわよ!Hurry up!』

『イエス、マム!』

 

そう言うとケイの方の無線が切れてしまった。何があったのかとアリサは困惑していると、それでも愚痴る。

 

「じゃあ大洗の戦車隊は何処に……?」

 

するとその瞬間アリサの居た竹林の柵を薙ぎ倒しながら履帯の音と、一両の戦車……八九式中戦車が姿を現した。

 

「……え?」

「……ん?」

 

あまりにも突然な出来事に二人は固まってしまう。そして少しして磯部が車体を軽くノックすると、慌てて叫んだ。

 

コンコンッ「右に転換!急げぇええっ!!うぉっ?!」

 

その瞬間、彼女の声でハッとなったアリサは急発進して逃げる八九式を見て叫ぶ。

 

「蹂躙してやりなさい!!」

 

そう言い慌ててM4A1も旋回をすると八九式を追いかけ始める。

 

『連絡しますか?』

「するまでも無いわ!!撃てぇ!撃てぇー!!」

 

砲塔を旋回しながらの砲撃の為、照準がまるで定まっておらず。砲弾は八九式に命中しなかった。自棄になったアリサは突然の出来事にとにかく錯乱状態だった。

 

 

 

一方で磯部は比較的落ち着いた状況で無線をとる。

 

『此方アヒルさんチーム敵フラッグ車0765地点にて発見しました!!でも、此方も見つかりました!』

 

無線で一報を入れると、みほはそこで確認をとった。

 

「0765地点ですね!逃げ回って敵を引き付けて下さい!0615地点へ全車両前進!!武部さんメールをお願いします!」

「分かった!」

 

みほの命令で武部はメールを早く打つと、一斉に全員に送信する。

一方フラッグ車を見つけた八九式はそのままキルゾーンである場所まで敵を誘引することに注力しており、アリサ車は砲撃してくる。

そこで砲撃を一旦辞めさせる為に磯部は発煙筒を持ち出して得意のバレーの技術を活かしてその発煙筒をM4A1の照準機やペリスコープを覆うように車体上面にサーブを入れて投げつけた。

 

 

 

そしてM4A1の中ではアリサが錯乱状態で叫ぶ。

 

「何をやっている相手はあの八九式()()()だぞ!」

「あ、あの……八九式は軽戦車じゃなくて()()()では?」

「そんなことはどうでもいいわよ!早く撃ち倒しなさい!!」

「で、ですがアリサさん。煙幕のせいで視界が!」

「良いから撃て!」

 

しかし適当に撃ったとしてもさすがは七五ミリ砲。その威力は絶大で、近くに着弾しただけでも八九式に大きな衝撃を与えていた。

 

「キャプテン!激しいスパイクの連続です!」

 

大きく揺れる車内で佐々木が悲鳴を思わずあげると、そこで磯部は彼女に真面目な顔で言う。

 

「相手のスパイクを絶対に受けないで!逆リベロよ!」

「……意味が分かりません」

 

磯部の言葉にバレー経験者である佐々木ですら意味不明と言った表情を浮かべていた。

 

 

 

「装填まだなの?早くしなさい!」

 

その頃M4A1の車内ではアリサが文句を垂らしながらヘルメットを被る装填手の少女に聞く。

 

「すみません、砲弾が遠くて……」

 

そう、この車両は無線傍受機を乗せており、その影響で砲弾が取りづらくなってしまったのだ。まさに身から出た錆、自業自得とも言えるのだろう。

装填手の子がそう言うとアリサは指示を出す。

 

「機銃で撃ちなさい!」

「えぇ!機銃で撃つなんてかっこ悪いじゃ無いですか!?」

「戦いにかっこいいも悪いもあるか!手段を選ぶな!」

 

アリサがそう怒鳴ると、装填手の少女は渋々機関銃を撃ち始める。七.六二ミリの機関銃弾は時々八九式に命中するも効果はなく、八九式はキルゾーンである0615地点につく。

そしてそれを0615地点に待機して双眼鏡でその様子を見たみほ。

 

「八九式来ました、突撃します!但し、カメさんはウサギさんとカバさんで守ってください!クマさんチーム、撤退を開始してこちらに合流してください!」

 

そう伝えると、待機していた他の車両はM4A1に照準を合わせ始めていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その報告を受けた伊藤は榎本に報告を入れる。

 

「武代、作戦成功です」

「了解。そろそろ引き上げるわ」

 

そう言い後ろをついてきているシャーマン軍団五両を見ると榎本は指示を飛ばす。

 

「煙幕展開。あんこうのいる0615地点に戻るわ」

「了解」

「バレないように少し遠回りをして」

「了解」

 

そう言うと大隈はスイッチを入れると、勢いよく煙幕が吹き出してシャーマン軍団を覆う。

そして煙幕が晴れると、そこに短十二糎の姿はどこにも見当たらなかった。

 

「Oh、何処にいったのかしら……?まるで忍者ね」

 

その景色に思わずケイはそんな言葉を漏らすと、横にいたナオミが言う。

 

『ケイ、何かがおかしい』

「え?」

 

するとナオミは今まで見てきた光景からその違和感を感じ取った。

 

『あの短十二糎以外に他の大洗の戦車を見かけない。それにこのまま真っ直ぐ進むと会場の端だ』

「じゃあ、何処にいったの?」

 

ケイの疑問にナオミは答える。

 

『私たちの誘引するのが目的じゃ無いか?真澄ならこう言う時は火力を集中投入しているはずだ』

「……」

 

確かにとケイは感じていた。彼女の十八番戦術であれば。まず間違いなく、向こうは戦力を集中して投入してくると思うからだ。すると突然、ケイ達に無線が入った。

 

『大洗女子学園、残り全車両こちらに向かって来ます!!』

 

その事実にケイは思わず困惑する。

 

「ちょっとちょっと、話が違うじゃ無い!?何で?」

『はい、恐らく……無線傍受を逆手に取られたのかと』

 

アリサは覚悟を決めて恐る恐る言うと、無線の奥から凄まじい怒声が聞こえた。

 

 

 

「バァッカモーン!!」

 

 

 

某七人家族と猫一匹の家の父親のように怒鳴ったケイ。それに思わず身を震わせるアリサ。まるで蛇に睨まれたカエル状態だ。

 

『申し訳ありません……』

「戦いはフェアプレイでって、いつも言ってるでしょ!」

 

ケイはそう怒鳴ると、その向こうで複数の砲声が聞こえた。確かに集中砲火を浴びているようだった。

 

「とにかくさっさと逃げなさい!Hurry up!!」

『い、Yes,ma'am!!』

 

そして無線を切ったケイはそこでアリサの無線傍受の件に呆れて溜息をついた。

 

「う〜ん……無線傍受しておいて全車両で反撃ってのもアンフェアね。……こっちも同じ数で行こうか」

 

罪滅ぼしというには違うかもしれないが、せめてもの妥協案という形でケイは指示を出す。

 

「敵は六両……四両だけ私についてきて。ナオミ、出番よ」

『Yes,ma'am』

 

 

 

 

 

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