知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第二七射

アリサのフラッグ車が追いかけられ、ケイ達が救援に向かっている中。観客席では面白い展開になってきたことに盛り上がり始めていた。

 

「これはある意味で、予想外の展開ですね。ダージリン様?」

「ええ、そうねペコ。ふふ…それにしてもまるで鬼ごっこね……でもこれが勝負の面白い所」

 

彼女はそう言うと、この状況をとても楽しんでいた。

 

「あなたはどうお思いで?」

 

ダージリンはそう言い、再び真澄に話しかけると。彼女も自分が淹れた紅茶を飲みながら答える。

 

「そうね……少なくとも、先行きが見えなくて面白いわ」

「あら、あなたでも?」

 

ダージリンは興味深く真澄を見た。

 

「まあ、この状況だと武代達より先にシャーマンが早く着くわね」

「……」

 

相変わらずの冷徹な判断にダージリンは昔のままだと思う。

 

「それまでに片付けるか、到着してある意味での挟み込みにあってみほちゃん達が賭けに出るか。このどちらかでしょうね」

 

彼女はそう言うと、紅茶を一口飲みながらクッキーを嗜んでいた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

一方、大洗本隊に追われるサンダースフラッグ車であるM4A1の車内ではアリサが怒鳴っていた。

 

「こ、このタフなシャーマンがやられる訳がないわ!」

 

激しい砲撃音と揺れの中アリサがそう言う。

 

「な、何せ!五万輌も造られたと言う大ベストセラーよ!

丈夫で壊れにくいし、おまけに居住性も高い!

馬鹿でも扱える程操縦が簡単で、馬鹿でも分かるマニュアル付きよ!

そして戦後でも使い続けられてきたまさに名戦車なのよ!!」

 

完全にパ二クッてなぜか自分の乗る戦車のプロフィールをしゃべり始める。確かにM4は最近まで正規軍に使われた戦車だが、今は試合とは全く関係ない話だ。

 

「お言葉ですがそれ自慢になっていません!!」

「うるさいわよ!」

 

砲手の子がそう突っ込むがアリサが怒鳴り返し、そして装填手の子に装填を急がせるように言う。

そしてアリサはスコープで追いかけてくる大洗の戦車を睨んだ。

 

「なんで私たちがあんなド素人集団に追いかけられなければならないのよ!其所、右!」

 

アリサはそのまま錯乱しながらも、残っていた正気で少し乱暴に指示を出す。

 

「私達の学校は、アンタ達のような連中とは格が違うのよ!撃てぇ!!」

 

そう指示しM4から砲弾が放たれるがあっさりと躱されてしまう。それを見たアリサは怒鳴る。

 

「なんなのよ、あの戦車!的にすらならないじゃない!当たればイチコロなのに!修正、右に三度!!それと装填急いで!!」

 

砲手にそう指示し装填手の子は何やら落ち込み、ため息をつきながら砲弾を取る。

 

「ホントに何なのよあの子達は!?こんな場所にノコノコやって来て、どうせ直ぐ廃校になる癖に!さっさと潰れちゃえば良いのよ!」

 

まるで子供の様にに喚き散らすアリサに車内の乗員は再び深いため息をするのであった。

そしてアリサの乗るシャーマンを追いかけるみほたちはM4A1の砲塔のハッチから、アリサが自分達に向かって何かを叫んでいるのを見ていた。

 

「何か喚きながら逃げてます?」

「うん……沙織さん。クマさんチームは今何処ですか?」

 

五十鈴の言葉を半分にみほは榎本達の居場所を聞く。

 

「最短距離で隠れながら走ってるって。敵二両やったってさ」

「分かりました」

 

そう言うと無線機に手を当てた。

 

「敵フラッグ車との距離、徐々に縮まっています!現在の距離は約六百メートルです!六〇秒後、順次発砲を許可します!前方に上り坂。迂回しながら目標に接近してください」

 

そう言うと返事が聞こえ、全車がM4に狙いを定めて撃ち始めた。

 

 

 

 

 

その頃、アリサのM4A1では地獄のような光景が広がっていた。

 

「なんでタカシはあの子が好きなの?どうして私の気持ちに、気づかないのよぉーっ!!」

 

錯乱し、ついにアリサは試合に本当に関係のない恋愛話をし始める。

他の乗員達も諦めムードに突入し、無線盗聴した報いだとも思い始めていた。しかしの瞬間……

 

ドゴーンッ!!

 

明らかに威力のある異色の砲声が平原に轟く。

少なくとも大洗の短十二糎砲では無い大きさだ。

 

「この音……もしかして」

「はい、ファイアフライの17ポンド砲の音です!」

 

その異質な砲声にみほは嫌な予感を感じ、秋山がその大砲の音の正体を口にする。

みほはそこでキューポラから顔を出すと、そこで双眼鏡を使っ見えるほどの距離にいるシャーマンファイアフライ、そして他にシャーマン四両の姿を確認できた。

 

「なんかやばい音だったけど大丈夫なの?」

「大丈夫、距離は約五千メートル。ファイアフライの有効射程は三千メートル、まだ余裕があります!」

 

シャーマンファイアフライはイギリスが大戦中に開発した連合軍最強と謳われた17ポンド砲を搭載した魔改造戦車だ。

どうしても17ポンド砲を戦車に載せたいと思うイギリスがシャーマンを急遽改造して作り上げた英国と米国の混血戦車だ。なお、後イギリスは17ポンド砲を載せたいがためにアーチャー自走砲なる車体の前後が逆の珍兵器を作り上げることとなった。

そして、当時は砲弾の質の関係上。今のような狙撃任務は苦手としていた。

 

「来たぁぁぁぁーーーーっ!!」

 

その砲声はまさに窮地に追い込まれていたアリサ達にとってみれば天使のラッパの様に聞こえただろう。思わず歓喜の声と共にハイタッチしてしまう。

彼女達はこの後の反省会なんてすっかり抜けてしまっていた。

 

「よぉーし!!こうなったら百倍返しで反撃よ!!」

 

勢いを取り戻したアリサ達はそこで大洗の戦車隊に砲撃を始める。

 

「どうする?みぽりん!」

 

事実上の挟み込みに武部はみほに聞くと、彼女は周囲の状況を鑑みて指示を出す。

 

「ウサギさんとアヒルさんチームは、カメさんを守りながら後方の相手をお願いします!我々あんこうとカバさんでフラッグ車を狙います!」

 

そう言うとフラッグ車の38tを中心に輪陣形を組むとM3の中で澤が言う。

 

「今度は、逃げないから」

「「「「「うん!」」」」」

 

初陣に比べてかなり成長した一年生達はそう答える。

するとⅢ突では歴女達が例え話をしていた。

 

「この戦いは、まるでアラスの戦いに似ている!」

「いやいや、甲州勝沼の戦いだろう」

「いや、天王寺の戦いで決まりだな」

「「「それだっ!!」」」

 

そして38tの車内では生徒会トリオが緊張した面で呟く。

 

「ここで負けるわけにはいかんのだ!」

 

そう言い河嶋が発砲するが、点で外れた方向に砲弾が飛んでいく。安定のクソエイムである。

 

「モモちゃん……当たってないよ」

「うるさい!!」

 

小山のツッコミに河嶋が怒鳴る。そんな中、角谷は余裕そうしながらいう。

 

「いや~、壮絶な撃ち合いだね~」

 

そう言い彼女は干し芋を頬張っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「大洗、ピンチですね」

 

そんな光景を目にし、オレンジペコも思わず冷や汗をかく。

 

「ねえペコ、知っているかしら?サンドイッチはね、パンよりもキュウリの方が美味しいの」

「それは…どう言う意味ですか?」

 

彼女はそう聞くと、横にいた真澄が解説する。

 

「挟まれた物の方が良い味を出すってこと。それにまだフラッグ車がやられた訳じゃない」

 

そう言うと真澄は少しニヤリと笑う。

 

「この試合、時間とタイミングが命って事ね」

 

 

 

 

 

その頃、森の中を掛ける榎本達は。

 

「くそっ、遠回りしすぎた!」

「あと七分、いや五分で着きます!」

 

大隈がそう言いながら操縦桿を動かす。すると伊藤がまずい表情で榎本に伝える。

 

「不味いよ、このままだとエンジン逝くかも」

「逝っても最悪白旗が上がらなければ良い!急いで!」

「いつでも撃てるよ」

「よしっ、先手必勝!」

 

森の中を最大速度で通過していた。

 

 

 

 

 

その頃、大洗本隊では苦戦を強いられていた。

 

「撃てぇーッ!」

「「「アタック!!」」」

 

アヒルさんチームの八九式が砲塔を後ろに旋回させて追って来るシャーマンに向けて砲撃した直後。

 

「「「「きゃぁああああーっ!!」」」」

 

八九式の後部にファイアフライの放った17ポンド砲弾が命中。エンジンから黒煙を上げて徐々にスピードを落として行き最終的に岩に衝突して停車する。

 

「あっ!?」

 

みほが気付いた時には時既に遅く八九式から白旗が上がっていた。

 

「アヒルチーム怪我人は!?」

『『『『大丈夫です!!』』』』

『すみません、戦闘不能です!』

 

通信から皆無事な事が確認されて安堵するも、それも一瞬の束の間だった。ファイアフライの砲手ナオミが次の標的をウサギさんチームのM3中戦車に合わせる。

 

ナオミは表情を変える事なくガムを噛みながらスコープを覗いて照準を八九式と同じくM3中戦車のエンジン部分に狙いを定め狙いをつけると引き金を引いて砲弾を発射する。

 

放たれた砲弾はナオミの狙い通りM3のエンジンに命中して大きな爆発を起こし、M3はスピードを落として行き、M3は砲弾で出来た穴に嵌った。

 

『すみません、鼻が長いのにやられました!』

「ファイアフライです……」

「M3も……」

 

二両もファイアフライの餌食に成り、残るは四両。

戦力で言えばサンダースの方が有利になり始めていた。そんな様子を受けてアリサは叫ぶ。

 

「ほ〜ら見なさい!あんた達なんか蟻よ蟻!!呆気なく象に踏み潰されるねぇ!!所詮蟻が像に敵うわけないのよ!!そもそも無名校が私達サンダースに挑む事自体間違っているのよ!!」

 

そう言い調子に乗りまくっている彼女は完全に油断していた。

そして徐々に不利になる戦局にカバさんチームのⅢ突でも暗い雰囲気が漂い始める。

 

「まるで弁慶の立ち往生だな……」

「どんなに足掻いても、最早これまでか……」

「蜂の巣に されてボコボコ さようなら」

「辞世の句を詠むな!」

 

そして38tの生徒会トリオでも、絶望的な空気が広まり始めていた。

 

「もう、ダメだ……何もかもが終わりだ……」

 

顔を真っ青にして彼女はそう言うと、Ⅳ号の中でみほは無意識に握った手が震えていた。

 

「(どうすれば…もう打つ手は……)」

 

みほがいい諦めかけたその時、最後尾を走っていたシャーマンが突如大爆発を起こして横転しながら撃破された。

 

「何っ!?」

「ホワイッ!?」

 

その奇襲攻撃にナオミやケイも思わず驚いてしまった。

すると次の瞬間、轟音と共に二発目が最後尾から二両目のシャーマンの至近距離に着弾し、破裂した砲弾がシャーマンの車体を大きく揺さぶった。

 

「これは……!!」

 

それを見た秋山の顔が明るくなる。すると、無線がみほ達に聞こえた。

 

『間に合ったようね……』

「榎本さん!!」

 

すると森の中から一両の戦車、短十二糎自走砲が飛び出してきていた。

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