知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第二八射

サンダース主力部隊に追い詰められていたみほ達は、そこで頼もしい援軍を見ていた。

 

『あーあー、聞こえている?』

「はい!」

 

無線の様子を見て榎本はみほに聞いた。

 

『えーっと、誰狙えば宜しいかしら?』

「えっ!?えっと……」

 

みほはこの状況で困惑していると、榎本が聞いてくる。

 

『何諦めた声出しているのよ。まだ試合中よ?』

「え?で、ですが今の状況では……」

 

すると榎本は軽くため息をついた様子でみほに言う。

 

『いい?戦いごとは何でもねちっこい方が勝つのよ。それに行進間射撃なんて最近の戦車しかできないんだから。ほら、おまけに今はブラック車は単独。絶好の機会よ』

「ですが……」

『ほら、シャキッとしなさい。隊長が弱気でどうすんのよ。ほら、よく言うじゃない『諦めたらそこで終わり』って』

 

弱気な様子のみほに榎本は最後の一押しをする、

 

『みほちゃん、貴方には貴方の戦い方がある。十人十色、みんな違うのは当たり前。自分の行動に自信を持ちなさい』

「榎本さん……」

 

それを聞き、みほは少し悩んだ後に心の中で呟く。

 

「(そうだね……諦めたらそこで終わり)……みなさん落ち着いてください!」

 

みほが無線でそう言うと先ほどまでうろたえていた二両の乗員は驚き、そしてみほは言う。

 

「落ち着いて……攻撃を続けて下さい!敵も走りながら撃ってきますから、当たる確率は低いです!今はフラッグ車を叩く事だけに専念します!!今がチャンスなんです!当てさえすれば勝つんです、諦めたら……負けなんです!!」

 

そんなみほの絞り出した言葉に他の生徒達は何かが付き動かされた気がした

 

「諦めたら……」

「負け……」

 

Ⅲ突の中でエルヴィンとカエサルがそう呟くと。

 

「いや、もうダメだよ柚ちゃ~ん!!」

「モモちゃん。大丈夫、大丈夫だから……」 

 

38tの中では悲鳴をあげて泣き散らす河嶋と、そんな彼女を慰める小山。

 

「……西住殿の言う通りですね!」

 

そしてⅣ号でな秋山が頷いた。

 

「そうですね。確かに西住さんの言う通りです。諦めたら負けなんですね!」

 

それに続いて五十鈴が答える。

 

「そうだよね……諦めたら負けなんだよね……華!撃って撃って撃ちまくって!!下手な鉄砲数撃ちゃあたるって!恋愛だってそうだもん!!」

 

武部が自信を持っていうと、五十鈴が一言。

 

「いいえ、一発でいいはずです」

「……え?」

 

五十鈴の冷静な言葉に武部は首をかしげる。すると五十鈴が覗いていた砲の照準器に小高い丘が見えた。

 

「冷泉さん。丘の上へ」

 

それを見た五十鈴は冷泉にそう言い五十鈴は顔をみほに向ける。

 

「上から狙います」

 

五十鈴さんの言葉にみほは頷きそしてその丘を見た。

 

「丘からの稜線射撃は危険だけど有利に立てる。賭けてみましょう」

「はい」

「じゃあ、行くぞ」

 

そう言い冷泉はⅣ号の速度を上げる。

 

「クマさん、援護をお願いできますか?」

『了解』

 

みほが聞くと榎本は頷いた。

 

 

 

 

 

そして、そんな大洗の行動は当然ケイも見ていた。

 

「アリサ、上から来るわよ」

 

それにアリサは頷くと、次にケイはナオミに言う。

 

「ナオミはあの自走砲を狙って」

『……良いのか?』

 

ケイの指示に思わず彼女は聞き返すと、彼女は言う。

 

「当然、リベンジマッチを申し込んだのでしょう?」

『……』

 

ケイは気づいていたのかと思った。

三年前、サンダース対知波単の練習試合の際、M3スチュアートに搭乗していた彼女は試製一式砲戦車ホイで構成された知波単の砲兵小隊の攻撃で撃破された。

その時、その砲兵小隊の隊長を務めていたのが大久保利子だった。

試合前にリベンジマッチを申し込んだのも、今の自分があれからどれだけ成長したのかを見るためでもあった。

 

「敵のフラッグ車を追撃中にやられる可能性があるし、どうやらあの自走砲は38tを守る動きをしているわ。引き留めてくれる?」

『Yes…ma'am』

 

ナオミはケイの計らいに感謝しながらファイアフライを動かし始めた。

 

「残りの一両は38tを追撃して。私はⅣ号を追撃するわ」

 

ケイはそう指示を出すと、シャーマンを動かし始めた。

 

 

 

 

 

「みほちゃんたちの援護。行くわよ」

「了解」

「ありゃケイさんの車両だな……」

「ん?ちょっと待って!」

 

その違和感を感じた伊藤が叫ぶと、榎本の口が動いた。その違和感に彼女も気づいたからだ。

 

「停止っ!」

 

するとその瞬間、目の前を巨大な砲弾が着弾した。その飛んできた方を見ると、そこにはファイアフライの姿があった。

 

「なるほど……」

「例のリべンジマッチね……」

「ああ、やってやる」

 

そう大久保が言うと、情報係の伊藤が言う。

 

「こちらの主砲は徹甲榴弾を使えば何処でも抜ける!」

「榴弾は?」

「……上面なら」

「ふっ……相変わらずね、この車両は」

 

そう思わず溢すと、大久保は照準器に目を合わせた。

 

 

 

「所詮はチハの改造品。当たれば一撃」

 

ファイアフライの中でナオミはそう呟く。無類の火力を誇る17ポンド砲であればチハなど簡単に撃破できる。おまけに今は上をとっており、有利な立ち位置にあった。

そして照準に短十二糎自走砲を捉える。

 

「「勝負!!」」

 

そう同時にそれぞれの砲手が叫ぶと、それぞの車両から同時に砲弾が発射される。

 

硝煙が広がり、その煙が晴れるとそこでは白旗の上がったファイアフライと短十二糎自走砲の姿があった。

 

「……()()()()

 

この状況でナオミはそう呟いた。圧倒的優位な場所にいるのにも関わらず、自分の撃破されてしまった。実質的な負けであるとナオミは思っていた。

しかしこの結果に不満足なわけでは無かった。なぜなら、一方的に撃破されたあの時よりは自分の腕が上がっていると思えたからだ。

 

「痛たたた……」

「あちゃー、流石に蛍シャーマン相手に無茶だったか……」

「仕方ない。相打ちでも儲け物よ」

 

車内では伊藤達がそう溢していた。本当はファイアフライを倒してみほたちの援護に行きたかったが、あとは託すしかなかった。

 

「頼んだわよ、みほちゃん」

 

そして撃破された榎本はみほ達の作戦の成功を祈っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

そしてその頃、みほ達は丘を登っていた。

 

「停車」

 

するとその瞬間、近くに砲弾が着弾した。

 

「っ!?」

 

その方を見ると、みほの車両を追って一両のシャーマンが登ってきているのが見えた。

 

「シャーマンが次の弾を撃ってくるまでの間が勝負です!」

「はい」

 

みほはそう言うと、五十鈴が頷いた。

そしてⅣ号が丘の頂上にたどり着くとフラッグ車を照準に合わせる。

 

「花を生ける時のように集中して…………」

 

そう呟きながら五十鈴はスコープを覗くと、そこでアリサの乗るM4A1を収める。

 

「隊長、砲弾の装填終わりました!」

「OK、もらったわ!」

 

そしてその後ろでケイも砲撃準備を整えると、みほとケイは同時に指示を出した。

 

「発射!」「ファイヤー!」

 

そう言い、二両から発射された砲弾はそれぞれⅣ号とM4A1のエンジン部分に着弾。

そこでそれぞれから白旗が上がると、一瞬時が止まったような空気に満ちた後。アナウンスが入った。

 

『大洗女子学園の勝利!!』

 

そのアナウンスを聞き、観客席から歓声の声が沸き立った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「勝ったか……」

「ええ、その様ね」

 

その歓声を聴きながら真澄とダージリンはそう話す。

その時の真澄の目は何処か満足げな様子だった。少なくとも、練習試合の時のようなあのドス黒い無機質なものは感じ取れなかった。

すると彼女は席を立ちながら呟く。

 

「それじゃ、一回戦通過記念の宴会準備でも始めますか」

「あら、良いですわね。私達もやりましょうか?」

「……いえ、結構かと」

 

その時のオレンジペコの顔は『頼むから辞めてくれ』と言う悲痛に似たような表情だった。一体何があったんだ……。

 

「じゃあ、また会いましょう。ダージリンさん」

「ええ、その時は是非とも試合会場で会いましょう」

「……」

 

ダージリンの言葉に真澄は答えることなく去って行った。

 

 

 

 

 

「勝ちましたね」

「ああ……」

 

大洗勝利に沸き立つ観客達を見ながらまほ達もそう話す。

 

「しかし、これで厄介な問題も出てくる。そうでしょう?」

「……」

 

その声を聞いたまほにエリカが聞いてくる。

 

「どうして戻ってきたのよ。真澄」

 

そう言いジャージ姿の真澄を見ると、彼女は飄々とした様子で答えた。

 

「いやぁ、そう言えば渡したお猪口の回収してなかったなって思って」

「……」

 

いやらしいやり方だとエリカは思った。明らかに故意で置いて言ったのだろうが、と言いたかったが。まほはそんな真澄を見ながら聞いた。

 

「真澄、それはどういう事だ?」

 

そう聞くと彼女は『分かっているでしょうに』と言いたげな様子を浮かべながら言う。

 

「この試合、多分明日の新聞に載ります。それを見た黒森峰の同窓会の方々はどう思うでしょうね」

 

嫌味も交えた様子で彼女は言うと、まほは真澄に聞いた。

 

「……知っているのか?」

「ええ、相変わらずだなと」

 

まほの問いにそう答えると、真澄はまほに一枚の名刺を差し出した。

そこには真澄の名前や役職、連絡先などが書かれていた。

 

「私の新しい連絡先です。何かあればこちらに」

「……」

 

戦車道を除名された時に彼女は携帯を変えていた。だから、今まで連絡ができずにみほの一件でも相談できなかった。

まほはもう少し早ければという感情と、仕方がないと会う感情が背反していた。

すると真澄は去り際にまほに言う。

 

「みほちゃんを守ってほしいと言うのならば大丈夫です。あの子は今の戦車道に必要な人材ですので、彼女の周囲の安全は私が責任を持ちます」

 

力強く言い放ったその一言にまほは思わず溢す。

 

「……頼もしいな」

「私は散々叩かれた身です。みほちゃんに来る電話くらい、慣れっこですよ」

 

彼女は少しそう言って自傷げに笑うとそのまままほ達から離れていった。

 

 

 

 

 

そして真澄が去った後、改めてその渡された名刺を見ると思わず首を傾げた。

 

「機動隊……監督官?」

「何ですか?これ……」

 

そこに書かれた役職には『大洗戦車道部マネージャー兼大洗風紀機動隊監督官』と記されており、一体転校先で何をしているのかが少し気になってしまった。

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