知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第二射

「ただいま〜」

 

放課後、あの後色々と考え込んでしまったせいで不思議と教室に残ってしまった彼女は物思いにふけたまま家に帰った。

 

「あっ、おかえり」

 

帰った家から顔を覗かせた一人のセミロングの女生徒を見る。彼女は榎本武代、真澄の昔からの幼馴染であった。今は大洗女子学園において真澄とシェアハウスをする同級生達の一人だった。

 

「おぉ、帰って来たか」

 

そう言い手をタオルで拭きながら現れたボブカットの少女、大隈重葉は真澄を見てややほっとした様子を見せる。

 

「今日も問題なく帰ってこれたさ」

「そりゃあ良い。昨日一戦やったばかりやしな」

 

大隈はそう言うと真澄は聞き返す。

 

「利子と博子は?」

「部活。そろそろ帰ってくるんじゃないかな」

 

そう言うとちょうどシェアハウスの家の扉が開いた。

 

「「ただいま〜」」

「おっ、帰ってきた」

 

そう言いポニーテールの大久保利子と長めのおかっぱが特徴的な伊藤博子は部活動の荷物を持ったまま帰ってくる。

 

「帰りどうだった?」

「んー、特になし」

「襲撃はなかったよ」

 

そして家に集まった五人は台所に立つ武代の側に寄る。

 

「さっき連絡があったよ。昨日確保した倉庫に車両を移動したってさ」

「そっか、じゃあ車両は?」

「整備中。今三両が中に居て」

「あと一両の特別な奴ね」

 

夕食を摂りながら五人はそんな話をしていると、半分呆れた様子で大隈がその車両を思い出していた。

 

「よく見つけたよあんなの」

「偶々ね。制圧した倉庫の隅にあったのよ」

「懐かしい車体……あっ」

 

伊藤がハッとなって一瞬申し訳なく思うと、咄嗟に真澄の方を見てしまう。

しかし彼女は気にした様子もなく答える。

 

「ええそうね。もう遠い昔のようよ……」

「……ねえ、何かあった?」

 

思わず榎本が真澄に聞くと、彼女は少し間を置いた後に今日の出来事を呟いた。

 

「今日、生徒会トリオから戦車道を取れって言われたのよ」

「「「「えっ?!」」」」

 

その事実に他の四人は思わず驚いた声を上げてしまう。

 

「戦車道だって?」

「無くなったんじゃないの?」

「それたちは復活するってこと?」

「じゃあもしや……」

 

その瞬間、榎本達の携帯が鳴る。それは学生の個人通信用のメールであり、相手は生徒会から出されたものだった。

 

「「「「うわっ、来やがった!!」」」」

 

特に生徒会トリオを毛嫌いしている大久保に至っては明らかに顔を顰めていた。

 

「どうする?」

「無視だ無視」

 

そう言い伊藤がメールを無視しようとした矢先。

 

「あっ、来なかったら今までの行為を全部暴露するって」

「「「野郎!!」」」

 

さらに火に油が注がれた瞬間であった。思えば自業自得かもしれんが……。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「「「「お断りします!!」」」」

「お前達までもか!!」

 

生徒会室で四人は同時に答えると、河嶋が地団駄を踏んだ。その一致の様に思わず角谷ですら苦笑していた。

 

「第一戦車ないじゃないですか」

「そうよ、よく考えてみてくださいよ」

「戦車無いのに戦車道するんですか?」

「どうやって?刺突爆雷で突っ込めとでも言うんですか?」

 

四者四様にそう答えると、角谷は干し芋を手に持ちながら四人に言う。

 

「どうして?戦車道を取ってくれたら色々と特典も付けるよ?」

「その特典、干し芋なら許しませんよ?」

「君ってエスパー?」

「……」

 

まさかのドンピシャに榎本は顔を顰める。

 

「他にも二百日間連続で遅刻しても全部パーにしてもらえるし、単位は普通授業の三倍貰えるし、極め付きには学食の食券百枚プレゼントする予定だよ~」

 

明らかに何か狙っているとしか思えないそのモリモリな特典に怪しさ満点であった。

 

「会長、何か隠していませんか?」

「うーん、それはどうかなぁ〜」

「何か逼迫した状況でもなければこんな事しませんよね?」

「少なくとも今は言えなーい」

 

初めに榎本が聞き、次に大久保が聞き、大隈が少し苛立った様子で聞き、最後に伊藤が聞く。

 

「ふざけているんですか?」

「ふざけてはいないよ。至って真面目、この学校で戦車道を再開する」

「この学校では二十年前に戦車道を辞めた筈では?」

「うん、だけど戦車が何両かある筈なんだ」

 

四人がそれぞれ角谷に問いかけると、最後に四人は纏めて答える。

 

「「「「ですが、私たちは戦車道をやるつもりはありません!その為にここに来たんです!」」」」

 

息ぴったりなその連携に小山ですら感心した目で見ていた。

 

 

 

 

 

キッパリと断ったが、猶予期間の与えられた四人はそれぞれ愚痴を言い合う。

 

「何考えてんだあの干し芋会長?」

「戦車道がないからここの来たのに」

「馬鹿馬鹿しい。やってられっかってんだ」

「お断りよ。大体、

 

 

 

真澄のいない戦車道なんて……」

 

 

 

伊藤がそう言うと、他三人も大いに頷いていた。

 

「私達は真澄について来ただけなのに」

「言うてうちらも大概バカだけどな」

「いいじゃん。青春って感じで」

「ふふっ、そうね」

 

そう答えると四人は帰路に着いて行った。

 

 

 

 

 

「大丈夫ですか?あんな様子で……」

「やっぱり、言ったほうが……」

 

生徒会室では河嶋と小山が心配げな表情をして角谷を見た。

しかし彼女はそんな二人に言う。

 

「確かに、あの状態では言ったほうが良かったかもしれない。

…でも、それじゃあ強制的に縛ることになってしまう。強迫観念に取り憑かれた人間は必ず焦りを生んでしまう。彼女達にはのびのびとやって貰うしかない」

 

そう答えると彼女は干し芋の最後の一口を口に入れると、今度は深刻げな表情でパソコンの画面を見た。

 

「ただそれよりも……」

 

そしてその画面には戦車道連盟の名簿表が映っていた。

 

「この、除名者リストに載っている問題を解決しないと……」

 

そう言いなぜ彼女がこの名簿に載っているのか首を傾げていると、小山が話しかけてくる。

 

「一体、何をしでかしたのでしょう?」

「喧嘩でもしたんじゃないのか?こんな処分を喰らう様な人間を誘うのはどうかと……」

 

河嶋がそう答えると、角谷はどこか引っ掛かりを覚えていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「戦車道か……」

 

シェアハウスのバルコニー。そこで真澄は空に浮かぶ月を見ながらふとある友人を思い出す。

 

「元気にしてっかなぁ……」

 

いつも物怖じしていて引っ込み思案で……だけど、友人のためならばどんな手も尽くすことのできる、家の風格と全く合わない少女。

 

「でも母さんも人付き合い苦手なんだよな……」

 

いつからあんな引っ込み思案になったのか、小学生の頃はもっとこう…溌剌としていたような……。

すると横から榎本が話しかける。

 

「どうしたの?」

「ん?ああ、思い出してたのよ」

 

すると察したのだろう、榎本はその少女を思い出すと少し微笑んだ。

 

「最後の会ったの、あの大会後のパーティーだったわね」

「ええ、今思えば一番楽しかった試合だった……最終的には負けだけど、悔いは無かった」

 

懐かしげにそう語る真澄は片手にノンアルコール日本酒を瓶ごと行っていた。

 

「やけ酒?」

「違うね。こんなクソッタレみたいな日常に乾杯してんのさ」

「結局同じことよ」

 

そう言うと彼女は懐からお猪口を取り出した。

 

「私にも一杯頂戴」

「もう口つけちゃったけど?」

「今更そんな仲じゃないでしょ」

 

そう答えると真澄は少し微笑んだ後にお猪口にノンアル日本酒を注いでいた。

 

 

 

 

 

そして翌日

 

「うう……」

 

顔を青くして真澄はヨタヨタと通学する。昨晩飲みすぎた様で、顔が完全に死んでいた。

榎本は起こした様だが、置いて行ってしまい。卓上に軽い朝食を置いたまま先に出て行ってしまった。

いつもの様に家に飾っている軍刀に一礼した後、家を出たがこれは……。

 

「やべっ、吐きそう……」

 

一気に駆け込んだせいか、吐きそうな所を必死に堪えて歩いていると、目の前に知り合いが歩いていた。

 

「あぁ、冷泉……」

「なんだ、お前……顔が死んでいるぞ」

「ちょっと…吐きそうで……」

「私にぶっかけるなよ」

 

そう言い、同じサボり魔の冷泉と共に学校に向かうとそこでいつもの人がガミガミと二人を見て言ってきた。

 

「あなた達!遅いじゃないの!」

 

そう、風紀委員の園みどり子だ。

 

「冷泉さん、黒田さん。また遅刻するとこだったわよ。いい加減にしないと留年してしまうわよ」

「わかっている……そど子」

「ちょっ!何度も言ってるでしょ!私の名前は園みどり子!何度もあってるんだからいい加減覚えなさいよ!」

「わかってる……そど子」

 

冷泉と園はいつもの言い合いをしていると、その後ろで段々と表情がシワシワになっていく真澄を見た。

 

「ちょっと!どうしたのよ?!」

 

そんな問いかけに真澄は一言。

 

「もう……限界」

「へ?」

 

 

 

Nice boat.

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「あっ、一限目来なかったけど大丈夫?」

「ええ、平気」

 

全校集会として体育館に集められた真澄達はそう話す。朝の顔色に比べてやけにスッキリしているが、何かあったのだろうか?

元々半グレ集団ゆえか彼女達の周りを囲うように舎弟達が座り、体育館に背のデカい少女がいる事に化け物を見る様な目で見られていた。

 

そして壇上に生徒会トリオが立った瞬間、五人は立ち上がった。

 

「行こう」

「「「「うん」」」」

「あれ?姉御は見ていかないんです?」

 

すると舎弟の一人が真澄に聞くと、榎本が答えた。

 

「ええ、興味ないもの」

「行きましょう」

 

そう言い、すぐさま五人が出て行ったのを皮切りに他の不良生たちも体育館を徐々に後にしていった。

 

 

 

 

 

放課後、生徒達の話題は専ら戦車道にあった。あの特典の内、干し芋以外はマジな話だったようでそのあまりにも魅力的な内容に入ろうかなどと話し合っていた。

 

「さて、今日はどうします?姉御」

「茶化すなよ……」

 

榎本に軽く苦笑しながら真澄は帰路の戸に着く。あの後、学校の校舎屋上で下の海賊が出てきていないかなどの情報を集めて今日の巡回メンバーを話し合っていたりしていた。

先日、最後の不良グループを叩きのめした真澄達は一番の不良グループとなっていた。と言っても中身はほぼ風紀委員を抜けたり、元風紀委員志望のメンバーであり、それほど邪悪な連中じゃ無かったりする。

 

「今日もあそこ集合ね〜」

「OKっす」

 

舎弟に確認を取ると、そのまま二人は一旦家路に着くのであった。




登場人物の名前、ほぼ偉人の名前をちょっともじっただけと言うね……。

名前設定時の話

メンコ「こんなん雑すぎない?」
裏方「良いんだよ。こう言うのは元ネタの人間がいた方が人物像が出来やすい」
メンコ「でもそれって書くの面倒くさくならない?」
裏方「……あとは任せた」
メンコ「?!」

ってな感じで主人公の名前は決まりました。
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