知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第三四射

その日、中学生大会決勝を迎えた知波単学園戦車道部。対するは強豪、黒森峰女学院中等部。

今までも何度か練習試合をしてはフルボッコにされて来たからか……。

 

「今までの借りを返す絶好の機会!」

「必ず勝利してやる!」

「え、えっと……」

「大丈夫だ西、いつもの事だ」

 

横で燃えている大隈や大久保にドン引く西、まあ彼女はこの因縁を知らない訳だしな。

 

「宜しく頼むわよ」

「「「「はっ!!」」」」

 

すると真澄はそんな彼女達の側で立つ一際小さな少女に顔を合わせる。

 

「貴方もね。福田」

「はっ、はい!誠心誠意努力するで有ります!!」

 

そう言いブカブカのヘルメットに三つ編みおさげの少女はそう言うと、少し恥ずかしげにしていた。

 

「他の者も、今日我々がここまで来れたのは君達の努力の賜物だ。改めて私の方から感謝したい。ありがとう」

 

そう言うと彼女は準備を進める他の生徒達に頭を下げた。

それを見て他の生徒達はだからこそ付いてきたのだと思っていた。

 

「そんなこと言わずとも、みんな軍師殿に着いてくるわよ」

「そうか?」

「ええ、貴方は誠実で面倒見のいい隊長さんだからね」

「……」

 

そう言うと榎本は少し笑う。

この中学生大会は二九トン以下の重量の戦車しか使えないこと以外は高校生大会とほぼ変わらないルールだ。

今回のフラッグ車は真澄の乗る新砲塔チハであり、今回はホイやチハ改で編成した部隊だった。

 

「やっぱり黒森峰だから?」

「ああ、それ以外に何がある?」

 

真澄は榎本とそう話すと、その横で大隈や大久保が話す。

 

「相手は西住流の妹殿です」

「警戒に越したことはないかと」

 

そう言うと今度は伊藤が現れて報告を入れた。

彼女は真澄が極秘に編成した情報部隊の33部隊隊長を務めており、試合には出ないが重要な人物であった。

 

「黒田隊長、こちらが敵の編成です」

「うむ、ご苦労だ」

 

そう言い敵の編成を記した情報を見ると、大久保が溢す。

 

「しかし、これは卑怯ではありませぬか?」

 

諜報を行っての敵の把握は不平等ではないかと言うと、真澄は答える。

 

「ではもし、黒森峰側がこちらの情報を把握していた場合は?」

「え?」

「今年の黒森峰はいつもと違うと思っておくが良い」

 

そう言うと真澄は何処か楽しげに笑っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

同じ頃、黒森峰ではみほが赤星から紙を受け取っていた。

 

「隊長、此方が知波単部隊の編成です」

「有難うございます」

 

そう言い今回の知波単の編成を記した紙を受け取ると、そこで同じ部屋にいたエリカが苦笑する。

 

「まさか上が違うだけで知波単がこうも変わるとはね……」

「誰なんです?その黒田真澄って……」

 

そこで小島エミが聞くと、横にいた飛騨エマが言う。

 

「忘れたの?去年の練習試合で隊長を撃破した上で副隊長を『忠犬』ってあだ名してた人」

 

そう言うとピンと来た様子の彼女。

 

「ああっ!あいつか!あのノッポね!」

「でも、その人確か副隊長と喧嘩してませんでした?」

「あっ、取っ組み合いしてた人?」

 

赤星が思わずエリカを見ると、彼女は答えた。

 

「ええ、確かに大喧嘩しているわね」

「でもメール交換してましたよね?」

「なんならその人と船を降りたときに遊んでいるって聞きましたよ?」

「そっ、そんなわけないでしょ!?!?//」

 

思わず顔を赤くして答えるエリカに部屋にいた全員が暖かい目を向けていた。

 

「とっ、兎も角。そろそろ挨拶に行くわよ」

「はい」

 

エリカの後を追うようにみほも少し緊張しながら部屋を出て行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

そして迎えた決勝戦前の挨拶。先に九五式小型乗用車に乗って待っていた真澄と榎本をみほ達は見た。

 

「あっ、久しぶり。真澄さん」

「やぁ、みほちゃん」

 

そう言いみほと真澄は嬉しそうに再会をしていると、その後ろで榎本とエリカはなんとも言えない様子で見ていた。

 

「エリカ、みほちゃんに変な粗相を起こしたりしていないわよね?」

「そんな訳ないでしょうが!」

 

思わずエリカはそう突っ込むと、真澄は飄々とした様子で言う。

 

「やだなぁ、そう強く答えると本当にやってる見たいに聞こえるじゃないか」

「……」

 

思わず獣のような目でガッと睨み返された真澄は『おー、怖。www』と返すと、そのまま審判がやって来た。

 

「一同、礼」

『『『『『宜しくお願いします!』』』』』

 

そう言うと一斉に彼女達は試合会場へと向かった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『黒森峰女学院の勝利!!』

 

白旗の上がるチハ改に乗りながら真澄は周りに転がる白旗の上がった寮車と敵の戦車。そして、一台残ったみほの乗るⅢ号J型を見る。

 

「……ふふっ、」

 

思わず笑いが込み上げてくる。姉や西住流と言う視線が少なくなっただけでこうも化けるのかと真澄は思わず笑ってしまう。

 

「ハハハハッ!!いやぁ、こんなに面白いことはなかったわ!!」

 

ほぼ相打ちのような状態で、残っていた車両はみほのⅢ号だけ。他の全ての車両は撃破されていた。

 

試合はみほか率いる別動隊が何重にも張られた自分たちの防衛戦を破り、各々の判断を重視したみほの部隊がエリカ率いる本隊が知波単の部隊を全滅覚悟で相手している隙に後方に回り込んでの撃破だった。

 

「どうしてでしょうね。負けたのに悔しくないなんて……」

 

表彰台に上がるみほを見ながらそんな言葉が漏れる。するとそこで大隈が答える。

 

「それは軍事殿が持てる実力を全て出し切っての結果だからではありませんか?」

「そうか…そうかもしれんな」

 

拍手を送りながらみほ達は中学生大会のトロフィーを受け取っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その後,みほ達や他の学校の生徒たちも交えた巨大なパーティーが開かれ。そこに真澄達知波単学園の各小隊長達は招かれていた。

 

「「「おおーっ!!」」」

 

その大きさや並べられた料理を見た大久保達は目を輝かせていた。

 

「これ、全て食べて良いのでありますか?」

「ああ良いとも」

「これは夢でありますか?」

「現実だよ」

 

大久保と大熊の言葉に真澄と榎本が答える。

 

「こ、こんな場所に招かれてもよかったのでしょうか……」

「準優勝したんだ。これくらいの事は許される。さっ、好きなだけ食べてくると良い」

 

他の子達は学園艦でどんちゃん騒ぎの宴会を行っており、真澄達は交友もかねてこちらのパーティーの方に参加していた。

 

「軍師殿、それは何でありますか?」

 

パーティーを楽しむ大久保は真澄の持っていた飲み物興味を示した。

 

「これはノンアルコールシャンパンだ。BC自由学園の名産品だな」

「なるほど……私も持ってまいります!!」

 

そう言うと大久保はそのままピューっと去って行った。

元々高校生大会よりは盛り上がらない中学生大会。パッとしない上に就職に影響して来るわけでもないおまけのような大会で、真澄達の知波単学園は初の準優勝を果たしていた。

みほはこのパーティーに来ておらず、代理でエリカが挨拶をしてきていた。

 

「相変わらずあなたは大きいから見つけやすいですわね」

「あっ!」

 

そんな彼女に声をかけた人物に思わず真澄は声をあげようとした。

 

「ダーs」パシンッ!!「グォォォ……」

 

途中でダージリンに持っていた扇子でデコを叩かれた彼女は悲鳴をあげて蹲った。

 

「その呼び方、二度と呼ぶんじゃないのね」

 

彼女は卒業生枠で参加しており、既に何人かの生徒と話した後の様子だった。

 

「馬鹿になっちゃいますって……」

 

真澄が叩かれた部分を摩ると、ダージリンは言う。

 

「この前の試合、私もアーカイブで見ました」

「……」

「あなたが目に掛けた理由がよく理解できたわ」

「そうですか……」

 

そこで真澄は一変、真剣な眼差しをすると片手にノンアルコール赤ワインを飲んで答える。

ダージリンとは練習試合などで知り合い、共に未来の戦車道の変革を願う同志としてよく連絡をする仲となっていた。

 

「確かに、彼女であれば。戦車道を変えることが出来るかもしれないわね」

「西住流とも違う新たな戦い方の新芽の誕生だと思っています」

「四年後の国際大会でなくとも、その次の国際大会でも使える人材ですわね」

 

二人はそう話していると、そんな彼女たちに声をかける人が一人。

 

「Hey!何話してんの、マスミ」

「あっ、ケイさん……」

 

そこに現れた一人の生徒、去年卒業して高校生になったサンダースのケイ、その人だった。

 

「あら、貴方の知り合い?」

「去年の練習試合の相手です。それから良くして貰っています」

「なるほど……」

 

するとケイはそんな真澄に聞いた。

 

「新芽がなんだって、言ってなかった?」

「ああ、この前の試合の話をしていただけです」

「あぁ、あの別働隊を率いていた子ね。確かに、良い腕を持っていた気がするわ。あんな戦局が一気に傾いた試合、なかなか見られなかったもの」

「「……」」

 

ケイのそんな直感に二人は一瞬驚いてしまう。ふつう、あの試合は一般人からすればギリギリで勝てた微妙な戦いか接戦だったと思うだろう。

それなのにケイはそう答えていた。

 

「「(これは行けるかもしれない)」」

 

ダージリンと真澄は思わず顔を見合わせるとケイに話しかける。

 

「ケイさん、ちょっとお話いいですか?」

「?良いわよ」

 

そう言うと真澄はケイにこれから日本の戦車道で起こそうとしている革命の話を持ちかけた。

一通り話をした後に彼女は二つ返事で答える。

 

「面白そうだから私を参加させて頂戴!」

 

彼女は二つ返事で答えると、ダージリンは少しだけ苦笑していた。

 

「貴方、随分と大雑把ですことで……」

「良いのよ。私自身、今の日本の戦車道が世界から遅れ始めているのは思う部分があるもの」

「「……」」

 

気づいていたかとダージリンと真澄は互いに顔を見合わせていた。

 

「プロリーグを持ってない日本じゃあ、国際大会だと国が作った公設団体として出るしかない。

世界じゃあプロリーグが当たり前のようにあるけど、日本の場合だとそのプロリーグの設営が出来ていないのよね〜」

「ええ、日本の戦車道は衰退していますからね」

 

そう言うとダージリンが紅茶を飲みながら言う。

 

「戦車道の文化を守るためにもプロリーグの発足は必須」

「日本が国際大会で勝てるようにする為にはそうするしか、今の所道がないんですよ」

 

そう話すとケイも真面目に話を聞いていつの間にか三人で談義をしてしまっていた。

 

 

 

 

 

「今日の話、秘密にしておけばいいのね?」

「ええ、その様にお願いします」

「分かったわ」

 

会場を出て行く時、ケイと真澄はそう話す。

 

「今度会う時があれば、その時はまた楽しみましょうね」

「ええ、うちの学校に来たら目一杯だべさせてあげるから!」

「ははは、勘弁してください」

 

そう言うと彼女は去って行く。

 

 

 

 

 

その数日後、とある内部告発が日本戦車道連盟に送られていた。

 

 

 

 

 

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