なんでなの?理由知っている人、誰か教えてくれメンス。
二回戦へと駒を進めた大洗女子学園戦車道部は、毎日真澄の組んだ訓練スケジュールに沿って練習を積んでおり、徐々にではあるが射撃の腕や操縦技術なども上がってきていた。
そんな中、生徒会室では生徒会トリオが資料を見ながら話し合っていた。
「一回戦は西住ちゃん達のおかげで勝てたけど、二回戦は今の戦力で勝てるかな?」
「絶対に勝たねばならんのだ!」
小山が不安げにそう言うと河嶋が握り拳で机を叩き、勝つ事への執念を見せる。
「でも、二回戦の相手はアンツィオ高校だよ?」
「う~ん、乗りと勢いは……あるからね~」
角谷会長が椅子を滑らせてそう言うと河嶋は頷き、小山が言う。
「調子が出ると手強い相手です。榎本さんや西住さんたちのおかげでチームもまとまって来て。みんなのやる気も高まっているけど、今のままの数では少し厳しいかもしれません」
「そっか……じゃあ、その点の解決策を考えないとね~」
小山の言葉に角谷は少し考えるそぶりを見せるのだった。
放課後、訓練前の戦車道倉庫で集まった戦車道履修者は河嶋広報の演説を聞いていた。
「一回戦に勝ったからといって気を抜いてはいかん! 次も絶対に勝ちぬくのだ! いいな腰抜けども!」
「「「はい!」」」
「頑張りまーす」
おい、広報が人を貶してどないすんねん。これ鼓舞じゃなくて暴言だよ……。
「勝って兜の緒を締めよ。だぁー!」
「「「おぉー!」」」
河嶋の応援(?)を受け、士気の上がった彼女達は今日も今日とて観覧に励む。
停止射撃による長距離砲撃、並びに稜線越しの射撃。隊列を組んでの射撃など実に様々な訓練を行っていた。
「だいぶ腕が上がったわね」
「ええ、この調子なら二回戦も何とかなるかもしれないわね」
そんな射撃訓練の途中、真澄と榎本は車両を降りた状態でそう話す。
『射撃命中!距離八百メートル!』
そして観測所から無線で連絡が入る。今撃ったのはⅢ突のはずだ。
「もう八百メートルを静止で当てるか」
「だいぶ腕が上がったわね」
そう話している後ろで十二糎砲弾を積み込んでいる。
「おいっ!」
「はいよっ」
そう言い十五キロ以上ある砲弾を大久保が投げては大隈が受け取っていた。
「よくあんな砲弾を投げれますね」
そう苦笑しながら伊藤が言うと、真澄がそんな彼女に聞く。
「あら忘れたの?ウチらの訓練方法」
「まぁ…あんな強烈な光景は忘れられませんよ……」
そう言い彼女はゲンナリとした様子を見せた。
無理もない。なにせチハの四七粍弾頭(一.五キロ)を七つ(十.五キロ)を背負って学園艦を走るあの体力訓練はアホみたいだった。真澄と榎本に至っては十一個(一六.五キロ)を背負って笑いながら走っていたのだから化け物以外の何者でもない。自衛隊員じゃねえんだそ……。
主に装填手を務める生徒に参加を要請していたが、隊長の真澄が出ていると言う事でいつの間にか全員が参加していたのはいい思い出だ。
「あれからも時々走っていたしね」
「まあ体力は必要ですからね」
「博子には無理な話だな」
真澄が言うとその横で彼女はため息をつく。
「当たり前です。私の主任務は情報収集だったのですから……」
そう言い彼女が知波単にいた頃に、真澄がわざわざスカウトに来た光景を思い出す。
「今となってはいい経験ですが……」
「ん?」
「いえ、何でも……」
伊藤はそう答えると、懐かしげにしていた。
「兎も角、これが今日の課題です」
「ああ、ありがとう」
そう言い彼女は伊藤の作った宿題を受け取ると、そのまま他の車両の砲撃音を聞いていた。
『『『『『お疲れ様でした!!』』』』』
そして練習が終わり、皆が挨拶を終わらせるとそこで真澄が全員に紙を配り出す。
「はーい、これが今日の課題です」
「「「うげっ!」」」
そう言い彼女の出す課題に一部の人間が嫌な顔をする。この課題と言うのは自分たちが乗る車両の砲性能で該当戦車のどの部分が抜けるのかを考える宿題だった。
「今日の戦車は何でありますか?!」
秋山が聞くと、そこで真澄は言う。
「今日はフランスの戦車で〜す」
「おお!フランスですね!お任せください!」
戦車の知識に自信のある秋山が言うと、近藤や阪口が呟く。
「フランスですか……」
「フランスパンが美味しいよね!」
そう言いながらも課題を受け取った彼女達はそのまま解散していく。
「お疲れ、みほちゃん」
「はい、真澄さんも……」
そう言いみほと話すと、そこで真澄は武部を見てふと思った。
「あれ?武部少し痩せた?」
「え~わかるの!そうなのよ〜。私、戦車に乗り始めてからやせたんだ〜!」
真澄のの言葉に武部が嬉しそうな顔をする。すると冷泉も同じような事を言う。
「そう言えば私も少しだけ低血圧が改善された気がする……」
「血行が良くなったのでは?」
「血の気が増えたのかも。戦車乗りって頭に血が上る人が多いから」
「それ関係ある?」
みほの言葉に武部が首をかしげる。まぁ、戦車は集中するし、動くし、神経削ぐし、ルーティンを作らないといけない。健康になるのもわかる気がする。
そう思っていると私達は声を掛けられた。
「西住、榎本。生徒会室で次の試合に向けた戦術会議をするぞ」
「黒田さん。さっき言ってた交換部品の書類が欲しいんだけど……」
小山と河嶋が西住や自分に声をかける。
「はい」「了解」
「ああ、持ってきますね」
そう言い三人は頷くと、そこに数人の生徒がみほの元を訪れる。
「先輩、照準をもっと早く合わせるにはどうしたらいいんですか?」
「どうしてもカーブが上手く回れないんですけど」
そこに佐々木と河西がみほの所へやってきてそう訊いた。
「え、えっと……、待ってね、今順番に……」
みほはいきなり聞かれた事に困惑してしまっていた。
「隊長、躍進射撃の射撃時間短縮について」
「ずっと乗ってると臀部がこすれていたいんだがどうすれば」
すると今度はカバさんチームの面々がやってくる。
「隊長、戦車の中にクーラーってつけれないんですか?」
「せんぱーい、戦車の話をすると男友達がひいちゃうんです」
「私は彼氏に逃げられました~」
そしてそれに続いて今度はうさぎさんチームもやってきてみほにそう訊く。と言うか最後の戦車関係ないじゃん!!
「えっと……その……」
次々と色んな人たちから質問攻めに会って対応に困るみほ。
「あの、メカニカルな事でしたら私が多少分かりますので」
「射撃関係は私も少しはお教えできるかと……」
「……操縦関係は私が…」
「恋愛関係なら任して!」
するとそこで武部達がみほ達の手伝いを申し出る。
「それなら私達も色々と手伝うわ」
「みほさんの負担を減らしてあげないと」
「そうね」
「何てってウチらは経験者ですしお寿司」
「何でもかんでも自分でやろうとするんじゃないよ」
そう言い真澄達がみほの方を持つと、彼女は微笑んで感謝をした。
「ありがとう……」
そう言いみほ達は生徒会室に向かうと、倉庫ではカバさんチームに秋山が担当した。
「そう言えば、Ⅲ突と言うのは戦車なのか?」
「いえ、砲兵科扱いの歩兵直協車両ですから支援車両ですよ」
「軽装歩兵の様だな?」
「単純に自走砲じゃないですか?」
「「「「それだ!!」」」」
そしてアヒルさんチームは冷泉と大隈が担当すると、冷泉は戦車の扱い方を記した本をパラパラと速読した後に操縦席に乗り込むと、そこで簡単に操縦桿を動かして倉庫に積み上げられていた段ボールの直前で綺麗に停車した。
「凄いです」
「どうやったらそんなに上手く操縦出来るんですか?」
思わず聞いてしまうと、そこで冷泉が首を傾げながら答える。
「マニュアル通りにやればなんとなく出来る」
「普通は出来ません!」
「ニュータ○プじゃないんだからさ……」
それを見て大隈が呆れたようにため息を吐くと、そこで彼女は河西達に操縦方法を教えていた。
そしてウサギさんチームの一年生には、武部が恋愛について講義していた。
「恋愛も戦車と一緒だと思うんだ!前進あるのみって感じかな?」
「凄い、恋愛の達人」
「先輩、今まで何人くらい付き合ったんですか?」
「え!?」
そこで経験人数を聞かれた彼女はウッと顔色を青くすると、そのまま気分が完全に沈んでしまっていた。
「あ、先輩大丈夫ですよ!」
「戦車が恋人でいいじゃないですか」
「そうです!元気出して下さい!!」
慌てて一年生達がそう言うが、それはフォローどころか余計に武部に追い討ちをかけるだけだった。
そして射撃に関しての講義で砲手の大久保は他の各車両の砲手に弾種、空気の湿度、風向きなどを考慮した弾道落下計算の方法などのガチ講義を行って、誰もがついていけずに困惑していた。
伊藤に関しては情報の重要性を無線手のメンバーに口説きまくり、こちらもこちらで頭が渋滞を引き起こしていた。
そして生徒会室では五十鈴と小山、真澄やみほが書類の整理をしていた。
「グリスは、一ダースでいいですか?」
「はい」
「そちらの書類は?」
「戦車関係の古い資料、ここで一緒に整理しようかと思って」
「お手伝いします」
「本当!助かる」
小山はそう言うと、五十鈴は机に飾られている花瓶に気が付いた。
「あ、やっぱりお花があるといいね。私も華道やってみたいな」
「小山先輩、お花の名前付いてますもんね。確か、桃さん……」
「あ、私は柚子。桃ちゃんはねえ〜、桃ちゃ〜ん!」
「言うな!」
小山は手を振って河嶋の名前を呼ぶと河嶋は過剰反応する。そんな中、相変わらず角谷は干し芋を食べてながら言う。
「西住ちゃん、黒田ちゃん。チームもいい感じにまとまって来たんじゃない?二人のおかげだよ。ありがとね」
「あ、はい……」
「予想以上に腕が良くなっているのでこっちは驚きですね。私としても嬉しい限りですよ」
真澄は片手に書類を持って読みながらそう呟く。
「私もお礼を言いたいのは私の方で……。最初はどうなるかと思いましたけど。でも私、今までとは違う自分だけの戦車道が見つかるような気がしてます」
確かに、黒森峰でもあなたは自分の個性を押し殺して生きていた。
姉に関してはもとより向いていたのが西住流であり、それほど問題になっていなかった。
ただみほに関しては違った。縛るものがないこの場所では、みほは完全に個性を見出していると言っても過言ではないだろう。
「(その日を楽しみにしているわよ)」
真澄はまるで娘を見るような目でみほを見ていると、そこでみほは現実的な話をする。
「それは結構だが、だが次も絶対に勝つぞ」
「勝てるかね~?」
「チームはまとまって来て、みんなのやる気も高まってきていますけど……」
「問題は戦車ね……」
「うん。正直今の戦力だと……」
確かに練度は上がって来ている。あのサンダースに勝てた事で全員の士気が上がってきたのに加えて、戦車に慣れて来たと言うのもある。だが、物量に関してはやはり数を増やすしか対処方法は無い。
「せめて十両くらいあれば……」
ふとそんな言葉が漏れてしまった。
一回戦では満足な量の十両さえあれば、まだ何とかなると思っていると五十鈴が聞いてきた。
「あの、お話中すみません。書類上では他にも戦車があった形跡が?」
「「「「…………え?」」」」
数が合わない…………それ即ち、まだ見つからずに残っている戦車がこの学園艦にあると言うことだった。