知波単学園最強の軍師   作:Aa_おにぎり

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第三射

その日の夜、真澄達のグループの本拠地となった学園端の廃倉庫では多くの舎弟や真澄達が集まってパーティーをしていた。

 

「君たちのお陰で、我々はついに地上の不良どもを地上より一層した」

 

その壇上で九三式装甲自動車を背に真澄は杯を掲げる。

 

「これにより、我々の残る敵は一つとなった」

 

そう言うと真澄は演説を行いながら盃を掲げる。

 

「現在の風紀委員会が強制おかっぱ制度を導入してはや三年。我々はおかっぱになる事を拒否した、言わば捻くれ者であった」

 

そう言うと、三年生のメンバーが感慨深くその時の情景を思い出す。

 

「しかし!我々の中に残っていた正義の心の火は消えることはなかった。だからこそ、我々は今日まで戦い続けることができた!」

「「「おぉ……!!」」」

 

そして彼女は力強く発言する。

 

「我々の中にある正義の心は誰にも理解されることはないだろう。

しかし!我々は、我々個人の思念を持って戦う!

そして、今日における風紀委員会の甘ったれた規則は我々の手で変えなければならない!」

 

おかっぱ強制よりもやる事があるだろうと言う彼女達の意見には真澄達も賛同していた。だから、このチームに彼女達は参加していたわけだが……。

 

「我らの夢見る風紀機動隊実現の為に。あと一息、諸君らの力を私に貸して頂きたい!!

そして私は、この学園に機動隊を創設することであろう!!」

『『『『『うおぉぉぉおおおおお!!』』』』』

 

一気に倉庫中から歓声が上がる。彼らは学園の風紀をより一層強い権限で取り締まる『機動隊』の創設を掲げる過激派とも言える集団だった。

その数およそ百名、これだけの人数があれば機動隊創設も夢では無い。

 

「お疲れ様」

「やれやれ、これじゃ道化みたいだよ」

 

演説を終え、舎弟……いや、部下達を鼓舞した真澄は装甲車を降りると榎本とそんな会話をする。

と言うより服装守っていないやつが多い時点で風紀委員もクソもない気がする。

 

「まあまあ、せっかく受け継いだ機動隊創設だ。夢があるじゃないか」

「まあ、今度の作戦がうまく行けば。我々は風紀委員会のトップに立つことが可能だ」

 

そう大久保と彼女を誘った三年生が話すと、真澄は聞いた。

 

「その為の準備は?」

「はい、こちらに」

 

そう言い榎本が地図を広げる。

 

「風紀委員会本部の入り口はここ。風紀委員会会長が毎朝見回りを終えた後の報告をしにいくのが大体この時間なので……」

「作戦開始はいつにする?」

 

三年生の問いに真澄は少し考えた後に答える。

 

「このままであれば、一ヶ月後だな」

「一ヶ月後だな。了解した。それまでに部隊に装備を渡しておこう」

 

そう言い彼女はその廃倉庫に集められた、この学園中から拾い集めてきたスクラップの山を眺めていた。

 

「部品回収の部隊が今日も転がっていた部品を回収してきた」

「そのようで……」

 

そう言い部品の洗浄を行なっているその姿はさながらテロリストそのものだった。

 

「では作戦開始日まで」

「ああ、今の風紀委員を正しき道に」

 

そう言うと、その三年生は廃倉庫を後にして行った。

それを眺め、真澄達は顔を近づけると小さく話し合う。

 

「どうする?」

「作戦直前に縛る。今の風紀委員長は我々のいい盾になってもらう方が良い」

「そうね」

「まだ使い道があるものね」

「あくまでも私たちの目的はおかっぱ制度の廃止と機動隊の創設。園みどり子を引き摺り下ろす為じゃない」

 

改めて確認を取ると、真澄達は頷いた後に三年生達を見ていた。すでに部隊の主導権はこちらが握っていた。あとは……

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

翌日

昨晩での激励会を終え、真澄達は学校の廊下を歩いていた。どうせ授業を聞いても全て履修済みなので、参加しようがいまいが変わらなかった。

 

「んで、脅しのあの車両はどうするの?」

「そのまま放置でいい。ただでさえ部品が足りないんだ」

「まぁ、そうだね」

 

そう言い、真澄と榎本は廃倉庫の隅に放置されていたあの車両の話をして曲がり角を曲がった瞬間。

 

「おっと」

「きゃっ!」

 

誰かとぶつかってしまった。ただでさえ身長がアホでかい真澄はぶつかっただけで誰かを弾き飛ばす筋力も無駄にあった。

 

「すみません」

「あっ、いえ。こちらこそ……っ?!」

「え?!」

 

その顔を見た瞬間、真澄達は表情が凍りついた。

 

「み、みほちゃん?!」

「ま、真澄さん……!!」

 

そこには黒森峰にいるはずの友人、西住みほの姿があった。この顔は見間違えるはずがなかった。

 

「それに榎本さんまで……」

「なんで、あなたここにいるの……?!」

「ご丁寧に大洗の制服まで着ちゃって……」

 

そう言って困惑する二人を見て、周囲の生徒も何事かと言って訝しむ目で見ていた。

 

「えっと……」

 

大洗の制服を着ていることにやや答えづらくなっていたみほに真澄が答える。

 

「何か事情があるのでしょう?悪かったわね」

「あ、いえ……もう過ぎたことですから。それよりも、真澄さん達。ここに居たんですね…髪も長くなって……」

「成り行きでね」

 

そう言い、懐かしの再開に驚いていると。

 

『普通I科A組、西住みほ。普通I科A組、西住みほ。至急生徒会室まで来るように。繰り返す。普通I科A組、西住みほ。至急生徒会室まで来るように』

 

館内放送でみほを呼ぶ声が聞こえた。

 

「何かあったの?」

「あ、ううん……」

「きっと戦車道ね。うちらにも言ってきたんだもの」

 

みほの事を誰よりも理解していると自負している真澄の洞察力にみほは小さく舌を巻いていた。

 

「さ、さすがですね……」

「みほちゃんの考えていることはわかるわよ。ここまでの付き合いで」

 

そう言うと、真澄達は生徒会室の方に向かって進んでいくみほを見て、目線を合わせてその後を追いかけることにした。

 

『さっきから聞いてれば勝手な事ばかりじゃん!みほは戦車道とらないからね!』

『そうですよ、西住さんのことは諦めてください!!』

 

生徒会室前に着くと知らない二人の声が聞こえる。誰だろうか?

 

「みほちゃんの息遣いが聞こえる」

「まじ?じゃあ、もしや……」

「多分ね」

 

生徒会の思惑を知り、思わず榎本が溢す。

 

「ミンチよりひでえ事しやがる」

「よりにもよってみほちゃんに……」

 

少々殺意の波動を漏らした真澄に相変わらずだと内心思いながら榎本は生徒会室の扉をノックした。

 

『誰だ?』

「普通Ⅲ科D組、榎本武代です。この前の返答をしに来ました」

『お〜、入って入って〜』

 

どこか飄々とした様子で角谷が答えると、入ってきた二人を見て部屋の中にいた人物達を見てああやっぱりかと思った。

 

「おっと、君まで来たの?」

「私はただの付き添い」

 

そう言い角谷は生徒会室にやって来た真澄を見てやや驚いた目をし、入って来た二人を見たみほとその取り巻き二人。特に取り巻き二人は明らかに警戒した眼差しをこちらに向けていた。

そしてそこですかざず真澄は角谷に話しかける。

 

「んで、みほちゃん脅して何しようってんだい?」

 

軽々しくみほの名を行ったことに取り巻き二人や角谷達は驚いた目線を向けたが、角谷は瞬時に頭を回して答えた。

 

「やだなぁ、戦車道を私たちは彼女に戦車道を取ってほしい。さもないと退学にするぞ~って言ってるだけだよ」

「それを脅すつってんだよ」

「おっと、出るとこ出る感じ?」

 

ヤル気満々な榎本を見て。みほの取り巻きのうち、セミロングの方の少女がみほの方に近づいて話しかける。

 

「みぽりん、離れないでね」

「大丈夫だよ武部さん」

「いいえ、この人達は何をしでかすか分かったもんじゃありません」

「そんな、五十鈴さんまで……」

 

みほはこの状況にどうしたものかと困っていると、真澄が話しかける。

 

「んで?どうすんのみほちゃん?」

「戦車道をやるか、やらないか」

「出方次第じゃ、こっちからやっちまうからね」

 

そう言い、みほの味方よりの姿勢の二人に武部が言う。

 

「二人がみほの味方ならなんかガツンと言ってよ!」

「いや、お前らが西住の知り合いなら。お前らから戦車道を取る様に言え!」

 

ここで状況を把握した武部という生徒と河嶋はそれぞれ言い合うと、そこで榎本が一瞬睨みを聞かせて二人を黙らせて、そこで改めて真澄が聞いた。

 

「あなた自身の心に聞きなさい。私はみほちゃんの判断に任せる」

「真澄さん……」

 

みほはそこで少し迷った。

 

「あ、あの!」

 

そしてその後、少し変な声が出ながらも彼女は答えた。

 

「私、戦車道やります!!」

 

 

 

 

 

「いやはや、まさか西住ちゃんと知り合いとはね」

 

みほ達がいなくなった生徒会室で角谷達はそう話す。

 

「んで、ウチらを残させた理由は?」

「とっとと帰りたいんですけど」

 

そう言い生徒会室のソファに座って真澄と榎本が太々しく座る。入口では河嶋と小山が抑えていたが、正直バリケードにすらなり得ないだろう。

 

「いや、君たちの答えが欲しいんだよ」

 

角谷はそう言うと、生徒会室に入って来た理由を思い出しながら聞いた。

 

「へっ、さっき散々悪役ぶってたくせに」

「そういうの性に合わないでしょう?バレバレですよ」

「まあ、本職の人には敵わないよ」

 

彼女は飄々とした様子でそう答えると、榎本が角谷に交渉をした。

 

「条件次第です」

「ほぉ?」

 

榎本の提案に角谷は興味ありげに乗ってきた。

 

「昨晩相談をしあった結果、主な条件は四つ」

 

そう言うと彼女は手を出しながら指を出す。

 

1、風紀委員会の強制おかっぱ制度撤廃。

2、風紀機動隊の創設。

3、風紀機動隊の編成並びに管理は全てはこちらで行う事。

4、今までの自分たちの行動に目を瞑る事。

 

「主な要求はこの四つです」

「なっ!!」

「!!」

 

無茶とも取れる意見に河嶋達は一瞬目を見開いた。そんな事を許せば、機動隊による圧政が待っている可能性だってあり得た。普通であれば拒否するような話だ。

 

 

 

そう、普通であれば……

 

 

 

「いいよ」

「「え?」」

 

その二つ返事に思わず真澄達も鳩が豆鉄砲を喰らったような表情になってしまった。思わず真澄達は『この会長、遂にとち狂ったか』と思ってしまった。

 

「機動隊の編成。認めてあげる」

「会長!!」

 

思わず河嶋が乗り出そうとした所で角谷が言う。

 

「ただし、こっちからも条件がある」

「……なんですか?」

 

一瞬息を呑みながら真澄達は角谷からの条件を聞いていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「HA・NA・SE!」

「何しやがる!!」

 

その日の晩、廃倉庫にて三年生が捕まっていた。それを見て他の仲間達の前を真澄達は冷めた目で見送る。

 

「申し訳ありません。こちらで既に念書は受け取ったものですから」

「?!」

 

そう言って見せた念書には生徒会長のサインと判子が押され覚書があった。それは機動隊設立許可とおかっぱ制度廃止などの要項が記されていた。

 

「それに貴方、風紀委員会を乗っ取るのが目的だったでしょう?だから……」

 

そう言うと廃倉庫の出口では園みどり子率いるおかっぱ風紀委員、通称穏健派の面々が集まっていた。

 

「確かに預かったわ」

 

機動隊、後に強硬派と呼ばれる集団から革命を起こそうとした三年生を預かった園は真澄達を見ていた。

 

「私は不承不承って事。よく覚えておくのね」

「ヘイヘーイ」

「わかりましたよ」

 

そう言い、園に睨まれた真澄達はノーダメな様子で適当に答えていた。まあ彼女としても問題生徒の部類の真澄に風紀委員の仕事なんてやらせたくないだろう。まぁ、園に関しては朝の一件が混ざっているかもしれないが……。

 

「まあ、その代償もデカかったよね」

「仕方あるまい。これだけの人員だ」

 

そう言い後ろで機動隊創設に歓喜する部下達を見他あと。その覚書に記された一文を見ていた。

 

 

 

『創設した機動隊の隊員は戦車道の後方要員として強制的に入部させる事』

 

 

 

後から面倒なことになりそうだと、少々気苦労を想像してしまった。

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