戦車の捜索中に遭難したと言う武部達を救助しに行く為に学園艦を降りていくみほ達。
「久々に来たわね……」
薄暗い通路を歩きながら真澄はそう呟く。
「真澄さんは来たことがあるの?」
「ええ、昔喧嘩した時に……うちらが上に上がってきた海賊風情相手にボッコボコにした時に」
「ああ、はい」
みほはそこでもう何も言うまいと言った表情で真澄を見ていた。
彼女達はヘッドライトの付いたヘルメットを被った秋山を先頭にして僅かな明かりを頼りに艦内を進む。
「何か、お化け屋敷みたいですね」
「本当、化け物でも出てきそう」
「そうかい?じゃあ景気付けに……」
そう言うと真澄は携帯から『ゲ○ゲの鬼太郎』を流し始める。
「「「「真澄さん(黒田殿)のバカァ!!」」
「痛って!あっ、おい!音楽止めるな!」
思い切りみほにビンタされ、携帯を奪われた真澄。面白いと思ったのだが……。
するとその瞬間、何かの金属が落ちる音が聞こえた。
「「きゃああああああっ!!」」
咄嗟に秋山とみほが真澄の両腕にしがみついた。
「落ち着きなさいよ。どっかでボルトが外れただけだから……」
「そ、そうか。よかった〜」
「大丈夫ですよ」
その横を五十鈴が平然と通り過ぎていく。
「五十鈴殿、本当肝が座ってますよね」
「「うんうん」」
それには秋山や真澄も頷いていた。
「でもこう言う時に大きい人がいると安心です」
「そうだね」
「おい、私を肉壁みたいに言うんじゃないよ」
そう言い横で真澄は秋山の言葉に突っ込むと、その後ろで冷泉は顔を青ざめていた。
「麻子さん、大丈夫?」
みほが心配げに聞くと、冷泉は顔を青くしていた理由を言う。
「お……お化けは早起き以上に無理」
「じゃあ、毎朝おばけの格好かホラー曲を流せば起きるね」
「黒田は私に○ねと言うのか!?」
「いずれ慣れるでしょ」
すっかり冷泉の目には真澄が鬼に見えていた。
「ってか真澄さんはお化けとか怖くないの?」
みほが聞くと、真澄は遠い目をしながら答える。
「いやぁ、お化けより怖い人がいるからなぁ……」
「ああ……はい」
「?」
そう答えると、みほは察し。秋山は首を傾げていた。
その頃、武部達はどこかの倉庫の様な場所で救助が来るのを待っていた。
「今、メールで真澄達がここに来るって」
「あぁ、よかった……」
メールを見た榎本が言うと武部が安心していた、その横で一年生が呟く。
「お腹、空いたね……」
「うん……」
「今夜は、此処で過ごすのかな……?」
不安になり、泣きだしそうになるとそれを見た武部は少し慌てながら言った。
「だ、大丈夫!あ、そうだ!私チョコ持ってるから、皆で食べようよ!」
「甘いもの食べると不安も吹き飛ぶわよ」
そう言い、泣き出しそうな一年生を励ましていた。
同じ頃、みほ達は今の居場所と地図を照らし合わせていた。
「第十七予備倉庫近くだったら、この辺りだと思うんだけど」
地図と睨めっこするみほ、そんな時突然何処からか砲撃音がした。
「ふぇっ!」
突然の砲撃音に驚く冷泉だが、秋山は平然とした表情で携帯を取り出す。いや、着メロおかしいだろ!!
「あ、カエサル殿だ。はい!」
『西を探せ、グデーリアン』
「西部戦線ですね、了解です!」
それだけ言って秋山は携帯を切る。お前は何言っているんだ?
「誰?その名前」
「魂の名前を付けてもらったんですよ」
嬉しそうに言う秋山。するとそこで五十鈴が首を傾げる。
「西って言ってもどちらを探せば……」
「コンパスがあればなー」
「あ、それ私が持っております」
秋山はそう言いコンパスを出す。君、本当になんでも持っているね。あだ名四次○ポケットってつけたい気分。すると冷泉は疑問に思った。
「そもそも、なんで西なんだ?」
「卦、だそうです」
「「「は?」」」
秋山の返答に全員が変な声を出す。
「当たるも八卦、当たらぬも八卦ですね……」
五十鈴がそう言うと救助隊は西に向かい始めていた。
そうして進む事数分。
「何か、灯が見えるぞ?」
「本当だ」
「ひ、人魂か……?」
と奥に一筋の光が見えた。冷泉が顔が青く染まって行く。
「いや、多分あれは……」
真澄がそう言って光の所へと向かうとそこには行方不明だったB班の面々がいた。
「みぽりん!」
灯りを見た武部が喜ぶと、一年生達も顔が明るくなっていた。
「やった!」
「救助隊だ!」
「助かった!」
と一年生達は泣きながら武部に抱き着く。見た目が完全に幼稚園の先生……。
「もう、大丈夫だよ」
「武部殿、モテモテですね」
「本当ですね、希望していたモテかたとは違うようですが……」
うん、やっぱり君は結婚よりも幼稚園の先生になる方が早そうだ。本人に言ったら多分裁かれるだろうが……。
すると榎本が近づいてきた。
「あっ、真澄も来ていたのね」
「うん、それはいいんだけど……何でそんな汗びっしょり?」
そう言いやや汗臭くなった制服を見ながら聞く。すると彼女は少し晴れやかな表情で答えた。
「暇だから腕立て伏せを……」
「……」
この筋肉バカがと言いたくなってしまったが、そこで榎本は後ろに指を刺しながら言った。
「だけどいい収穫もあったわよ」
「ん?」
指差した先には戦車があった。暗くてよく見えないが、重厚感たっぷりの戦車だった。
「ヒュ〜。大戦果」
「でしょう?見つけたときは驚いたわ」
彼女はそう言うと、携帯を持って連絡を入れていた。
その後、探索を終えたみほ達は大浴場で汗を流していた。そこで河嶋が一言。
「みんな、遅くまでご苦労だった。次の試合には間に合わないが、先を勝ち抜く希望が見えて来た。次のアンツィオ戦もやるぞ。西住、締めをやれ!」
「え?は、はい」
河嶋にそう言われてみほは皆を見て言った。
「み、皆さん!!つ、次も頑張りましょう!!」
「「「「「おおおーーーっ!!」」」」」
大浴場に履修生達の声が響き渡った。
そして浴場を後にした真澄はその後、戦車倉庫に訪れていた。
「差し入れでーす」
そう言い彼女は夜食用のおにぎりと経口飲料水を置く。
「ありがとうございます」
「いつもすみませんね」
そう言い戦車整備を主に担当する自動車部のナカジマ達はありがたく夜食を頂いていた。
「どこのくらいでB1は戦力化できますか?」
「うーん、だいぶ中が汚れていたから今度の二回戦は間に合わないだろうね」
「もう一両はまず引っ張り出すところからだし……」
「でもなかなか面白そうな戦車だったよね」
「うん、パーツとか色々つけないといけないけど……」
そう答え、少し渋い様子を見せると真澄はそこでさらに聞く。
「砲身の方は?」
「うーん、長い間外に放置されていたみたいだから、どちらにしろ戦力化するのは二回戦の後だろうね」
「わかりました」
そこで真澄は次の対戦相手を考えて今回の探索で見つかった部品や戦車を考えるとそのまま倉庫を後にしていた。
真澄達が戦車を探し終えて帰宅した頃、生徒会室では角谷がどこかに電話をかけていた。
「……分かりました」
部屋の明かりは消されており、そこにはいつもいるはずの河嶋や小山の姿もなかった。
「ご協力に感謝します」
そう言い角谷は電話を切ると、そこで卓上に置かれたバインダーを見る。
そこには一枚の紙が貼り付けられ、サインと共にハンコが押された正式な書類でもあった。
書かれている名前はダージリンやケイなど錚々たる面々の名前もあり。今の高校生戦車道界隈でも十分影響力のある人物達だった。
「あとは誰に書いてもらうか……」
角谷はそう溢すと、そこに書かれた紙を見る。
『黒田真澄に関する除名処分撤回を求める署名』
紙にはそう書かれており、角谷は彼女の周囲で起こった事件を当時の状況や証言を集めて。彼女はなんとしても真澄を戦車道に復帰させようと奔走していた。
「……」
そしてそれら署名はあえて真澄達の預かり知らぬ関係者を中心に行なっており、署名の数は順調に集まりつつあった。
「それだけ彼女は人気があったと言うことか……」
角谷はそこで目を閉じて考える。
元々、虐めが原因で戦車道を除名処分された彼女だったが。その後に多くのアリバイや証言が当時の戦車道連盟に多数寄せられた。
また、彼女が除名処分を受けた際。知波単中等部の履修生の殆どが戦車道を辞めていた。そこから考えるに彼女は戦車道の中でも慕われていた部類であると言うことだった。。
そこで分かったのは初めは戦車道連盟も真澄を除名処分をする予定はなかったと言うことだ。
「誰かが圧力をかけたのか……」
まず初めに思い浮かんだのが知波単学園の同窓会だ。元々虐めの映像の出所はダージリンの聖グロの協力もあって同窓会に協力していた生徒であることは把握していた。
おまけに彼女は知波単の同窓会とは折り合いが悪かったことも把握している。
「しかし、その同窓会ですらないのなら一体誰が……」
しかし、その同窓会ですら真澄が除名処分を受けた事実を聞き大混乱したと言う。つまり、彼らにとっても真澄の除名処分は想定外の事態だったと言うことになる。
「もっと大きな権力がある人間が圧力をかけたとしか思えないんだよなあ……」
それこそ、無罪の人間を有罪に無理やり変える事の出来る程権力を持った人間でないと……。
「……」
そこで角谷は考える。真澄の周囲にいて、かつ戦車道連盟ですら逆らえないほど権力を持った人間。
聖グロとの練習試合の時にもわざわざ戦車道連盟の方から直々に人がきて、真澄が何か言った後にすごすごと帰っていたのも彼女は把握していた。
「……もしかして」
そこで一人、角谷は思い当たる人間が浮上した。しかし、真っ先にありえないと思う自分がいた。
なぜなら、もしそれが本当なら自分の子供を陥れたとも同義だからだ。自らのキャリアの危険を冒してまでするのかと思ってしまった。
「……」
しかし引っ掛かりを覚えた角谷は、その違和感を切り捨てることなく電話を再びかけていた。
「でももしそうだったらどうしようか……」
一番の懸念材料ができてしまい、同時に角谷は頭を悩ませてしまう。
「お偉いさんを相手にすると言うのだけは避けたいなぁ……」
そう思わずこぼしてしまうと、彼女の実父の役職を思い出していた。
リトルアーミー重版しないかなぁ……