真澄達が戦車を探している頃。
二回戦の相手であるアンツィオ高校ではアンツィオ高校の観光名所のひとつ、スペイン
「全員、気を付け!」
とある女子生徒の掛け声により、アンツィオ高校戦車道チームのメンバー全員が一斉に気を付けをし。自分達の目の前の階段の上に立つ他の生徒とは違い制服に黒いマントを羽織った女生徒は片手に鞭を持って言い始める。
「きっと奴等は言っている!ノリと勢いだけはある、調子に乗ると手強い!」
そしてその女生徒、アンチョビが高らかにそう言うとチームメンバー全員から歓喜の声があがる。
「おおおっー強いって!」
「照れるな〜」
「でも、姐さん。だけってどう言う意味すか?」
周りの生徒が喜びの声を出す中で一人の生徒が疑問の声をあげた。
「つまり、こう言う事だ。ノリと勢い以外は何も無い。調子が無ければ総崩れ」
とアンチョビがそう言うと先まで舞い上がっていた雰囲気から一変してメンバー全員が青筋浮かべて怒り出した。
「なんだと〜!!」
「舐めやがって!!」
「言わせといて良いんすか!!」
「戦車でカチコミ行きましょ!!」
口々にそう言うっていると、副官と思わしき金髪の生徒が言う。
「皆、落ち着いて。実際言われた訳じゃないから」
「あくまでも、総師による冷静な分析だ」
そう言うとアンチョビは頷いた。
「そうだ。二人の言う通り、私の想像だ」
「なんだ~」
「あ~びっくりした」
アンチョビがそう言うと生徒たちはほっとした顔になる。
「いいか。お前たち。根も葉もない噂にいちいち惑わされるな。私たちはあの防御戦術の強いと言われたマジノ女学園に勝ったんだぞ!!」
「おぉ!そうだった!」
「そういえばそうだったね!!」
アンチョビの言葉にみんなは嬉しそうにそう言うとアンチョビの傍にいる二人の内、金髪の少女が苦笑する。
「苦戦しましたけどね……」
「確かに苦戦したが勝ちは勝ちだ。カルパッチョ」
「なにもノリと勢いは悪い意味だけではない。この勢いを二回戦までもっていくぞ!次は、あの西住流率いる大洗女子だ!」
アンチョビが高らかにそう言うとメンバー全員の反応は微々たるものだった。
「西住流って何かやばくないすか?」
「勝てる気しないっす」
次々に不安な声が出る中で、アンチョビは言う。
「心配するな。いや、ちょっとしろ。何の為に三度のおやつを二度にして、何の為にパスタをペペロンチーノにした?」
因みにイタリアでペペロンチーノは質素の部類で、日本で言うところの風邪引いた時に食べる粥の感覚で食べるらしい……やっぱ昼からワイン飲む国は違うZE☆
「何ででしたけ?」
「さぁ?」
「前に話しただろ!?それは、秘密兵器を買う為だ!!」
「「「「「おおっー!!」」」」」
秘密兵器と聞いてメンバー全員が歓声を上げる。
「秘密兵器と諸君の持っているノリと勢い、そして少しの考える頭があれば必ず我ら悲願の三回戦出場を果たせるだろう!!この勝利の先に我等の悲願である優勝を掴み取る!」
アンチョビはそう言って鞭を緑色のシートに向けてメンバー全員が振り向くと、そこには緑色のシートを両端を持っていたペパロニとカルパッチョがシートを取り払う態勢に入っていた。
「みんな驚け!これが我がアンツィオ校の必殺秘密兵器だーーー」
アンチョビが言いかけたその時、学校の大時計の鐘が鳴り響く。これは昼休みを告げるチャイムだった。
「昼御飯!ご飯、ご飯!」
「パスタ!パスタ!」
「あっ、こら!お前らそれでいいのか!?」
チャイムが鳴った途端、その場にいたメンバー全員が校舎へと走り出しって行きアンチョビの静止も聞かずに去って行く。
「今の季節食堂のランチ売り切れ早いすよ!!」
「そうっすよ!戦車も大切ですが今は食堂のパスタが命っす!」
遂には、アンチョビと副官のペパロニとカルパッチョだけが残される事になった。
「はぁ〜…まっ、自分の気持ちに素直な子が多いのがこの学校のいい所なんだけどな……」
そう呟いて肩を落とすアンチョビ。
「みんなのあのやる気が少しでも戦車道に回して欲しいものだなぁ……仕方ない秘密兵器のお披露目はまた次回にするとしよう……じゃあ、私たちも食事にするか……」
「はい。それと今日のランチ。私が奢りますね」
「ありがとなカルパッチョ……」
肩を落としながらアンチョビはため息をついていた。するとペパロニが思い出したように呟く。
「そういえば向こうには短十二糎自走砲ってのがいるらしいっすね」
「なんだそりゃ?」
「自走砲っすよ。珍しい戦車だって言ってこの前記事なっていたっすよ」
「ふーん」
「なんでも十二センチ榴弾を持っているとかなんとかで」
「十二センチ?!」
その口径に思わず彼女は驚く。
「うちらの天敵じゃないか」
「でもチハの改造品ですから倒せますよ」
「だといいんだが……」
アンチョビは不安を抱えると、そのまま食堂に向かっていた。
その日、大洗女子学園生徒会室では。秋山と真澄の二人が招集されていた。
「お呼びでしょうか?」
「遅い!」
わーお、河嶋広報がお怒りで。カルシウム取った方がいいですよ。そう思いつつ私は秋山と並ぶと角谷会長が言う。
「やー、いきなり呼んで悪いね」
「結構です。それより、私が呼ばれた理由をお聞かせください」
「黒田ちゃんはせっかちだねー。……秋山ちゃん達には前にサンダースに潜入偵察に行ってくたじゃん〜」
「はい……」
なんだか嫌な予感がして来たぞ。そう思っていると角谷は私たちに言った。
「そこで、秋山ちゃんたちにもう一度潜入偵察に行ってきて欲しいんだよね~アンツィオ高校に」
「えぇ……」
「はい!偵察任務ならこの不肖、秋山優花里にお任せ下さい!!」
秋山はノリノリだ。まぁ、戦車が見られるから嬉しいのだらうが……。
「(い、行きたくねぇ……)」
正直マネージャーの仕事が立て込み始めているので真澄としてはゴメンだった。するとそこで角谷は逃げられない様追い打ちをかけた。
「断ったらあんこう踊りね」
「……」チキショーメーッ!
某ちょび髭閣下の空耳を心の中で叫ぶ真澄に秋山は疑問に感じていた。
「そんなわけで、宜しくね〜」
「あの、マネージャーの仕事で忙しいんですが?」
「大丈夫。既に他の子には伝えてあるから」
「……」
この野郎、しっかり根回ししてやがった。
「経費で落としてくれるのはありがたいけどさ……」
放課後、真澄はいつもの戦車道倶楽部に訪れるとそこで秋山が聞いてくる。
「今回はジャージで行くのですか?」
「いや、さすがはアンツィオは初めてだからな。変装する必要がある」
「なるほど!ならばお任せくださいっ!!」
そう言うと彼女は奥からアンツィオ高校の制服を持ってきた。ああ、制服はここで買ったのね。
「あっ、でも黒田殿の入るサイズの制服があるかどうか……」
「あはは……」
そうして店内を見ていると、ふとそこである記事が目に入った。
『またも大番狂せ!アンツィオ高校がマジノ女学院を破る!!』
「マジノ女学院か……」
古臭い戦術だったなということを覚えている。
中学生大会ではルノーR35をフラッグ車にしていたが、新砲塔チハとホイの集中砲火を受けて倒していた。
それを思うとちゃんとしていたんだなって……。戦術はまるで騎兵隊のようだったが……。
ただ無砲塔車両ばかりの学校でマジノ女学院を倒したのは確かにすごい事かもしれない。
そこで真澄は次の対戦相手であるアンツィオ高校の情報を集める為にその記事を読んでいた。
アンツィオ高校は日本に来日したイタリア人が自国の文化を伝えようと作った学校だ。なので使用戦車もイタリア戦車ばかりで、CV33とセモヴェンテM41の使用が確認されていた。
『今回の勝利、おめでとうございます。二回戦は大洗女子学園との事ですが、何か意義込みはありますか?』
『そうだとも!聞いて驚け!我がアンツィオ高校は今度の試合で秘密兵器を投入する!!』
記事には当時の会話をそのまま文字に起こした文書が記されていた。
『はぁ、それでその秘密兵器とは?』
『えっ!なんだったかな。確かイタリアの……』
『おおっと、そこまでだペパロニ!すみませんが取材はここで切り上げさせてもらいます!!』
そう言うとそこで取材が中断されまた旨が書かれていた。何やってんのアンツィオ……。
「秘密兵器?」
「彼女達が隠すという事はM41よりも火力や装甲がある車両……」
イタリア戦車で思いつくものといえば……。
「P40でしょうか?」「セモヴェンテM43?」
二人して違う車両が出てきた。
P40はイタリアで第二次世界大戦中に開発された重戦車であり。セモヴェンテM43は同じく第二次対戦中のイタリアで開発された最強の自走砲である。
この二両は後にドイツ軍にも使われるほどの傑作車両であり、完成度は高いものであった。前者は全周砲塔の七五ミリ砲を搭載し、後者は一〇五ミリの固定砲を搭載していた。
「「あっ……」」
どちらもありそうな話故に二人は固まってしまった。
「それも偵察をすればわかる話ね」
「はい、そうですね」
秋山もそう頷くと早速自分用の制服を購入していた。
「でも黒田殿の体格だと一瞬でバレてしまいそうですよね。黒田殿の入る制服も見つかりませんでしたし……」
「ええ、だから私は観光客として入ろうかなって」
彼女がそう言うと秋山は首を傾げていたが、そこで真澄は携帯を取り出した。
「あの学校、観光名所が多いから外から大量の人を入れているんだとさ」
「へぇ……」
そう言い携帯で学校のホームページを見せると、そこにはまるで観光案内のような学校のサイトがあり、多くの観光客を呼び込む為に船やヘリが出入りしているようだった。それに紛れ込んで入れば簡単に侵入できるだろう。
「だから当日は私は私服で行くわ」
「なるほど、了解です」
秋山は納得するとそこで敢えて真澄に忠告する。
「間違ってもジャージ姿では来ないでくださいね?」
「分かってるわよ」
そう答えると彼女は頷いていた。